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交通事故の遅延損害金|支払いを受けられるケースや計算方法は?

更新日:

2020年4月1日改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

交通事故では、裁判をした場合に遅延損害金を損害額に加算して請求することができます

遅延損害金とは、債務の履行(損害賠償債務では損害金の支払い)を遅滞した場合に、債務者が債権者に支払う必要のある損害賠償金のことです。

遅延損害金は、損害金の元本や支払いまでの期間によっては、非常に高額になるケースもあります。

もっとも、実際に遅延損害金の支払いを受けるためには、ある対応をする必要があります。

この記事では、交通事故で遅延損害金の支払いを受けられるケースや請求できる遅延損害金の適切な計算方法につき、具体例を交えてご説明したいと思います。

遅延損害金の支払いを受けるには?

裁判(訴訟)での損害賠償請求が必要

裁判(民事訴訟)では、原告(交通事故の被害者)が被告(交通事故の加害者や加害者側保険会社)に請求する損害賠償額の範囲を確定する権利があります。

反対にいうと、裁判所は、原告が請求していないお金については、被告に支払い義務があるかどうかの判断をしてくれません。

そのため、裁判(民事訴訟)で遅延損害金の支払いを受けるには、遅延損害金を加算して損害賠償請求することがまず必要になります。

裁判所による判決までもらう必要あり

交通事故の裁判の流れ

交通事故の裁判の流れは大まかにいうと上記のようになりますが、裁判した場合の解決方法には「判決」と「(裁判上の)和解」という2つの方法があります。

判決

民事訴訟においては、裁判所による原告の請求を認めるか否かについての判断

裁判上の和解

訴訟手続き進行中に裁判所の関与の下、原告と被告が原告の請求した権利関係に関する合意及び訴訟終了についての合意をすること

このうち、遅延損害金の支払いを受けられるのは、裁判所の判決をもらうという方法で解決したケースになります。

一般的に、和解よりも判決の方が解決までに時間がかかりますが、その分支払いを受けられる金額は高額になるケースが多いです。

裁判上の和解で解決したケースでは?

裁判上の和解による解決は、判決と比較して、解決までの時間を短縮できることや合意した金額を確実に支払ってもらいやすいといったメリットがあります。

一方で、遅延損害金の支払いを受けられないのがデメリットになります。

ただし、裁判上の和解で解決したケースでも、調整金という費目で、遅延損害金の一部に相当する金額を支払ってもらえることがあります。

もっとも、和解協議の場で原告(被害者)が強く主張をしないと、調整金の費目が含まれない形での和解になってしまうケースもあるので注意しましょう。

示談では遅延損害金が支払われない

交通事故による損害賠償の請求は、裁判をせずに示談で解決するケースも非常に多いです。

示談

裁判外において、民事上の争いを当事者同士が話し合い、合意により事件を解決する手続きであり、民法上の和解契約(695条)の一種

示談による解決は、裁判と比較して解決までに時間がかからないというメリットがあります。

一方で、示談では遅延損害金が支払われないというデメリットがあります。

法律上は示談交渉においても遅延損害金の請求はできますが、実務上支払われる(=保険会社が支払いに合意する)ことはまずありません。

なお、示談では、弁護士に示談交渉を頼まない限り、適切かつ妥当な基準で計算された損害賠償金額の支払いが受けられないというデメリットもあります。

上記の点につき詳しく知りたい方は『交通事故の示談金相場は?計算方法や増額させるコツ、交渉の注意点を解説』の記事をご覧ください。

ADRでも遅延損害金は支払われない

交通事故による損害賠償請求問題の解決方法には、裁判と示談の中間的なものとしてADR機関を利用した解決方法があります。

ADR

訴訟手続きによらず、裁判所以外の第三者機関の関与の下、紛争を解決する方法

交通事故では、交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センターなどの機関が代表的なADR機関

ADR機関を利用した解決は、裁判よりは時間がかからないにもかかわらず、裁判した場合に準じた計算方法での金額の支払いを受けられるというメリットがあります。

一方で、裁判した場合と異なり、ADR機関を利用して解決したケースでは、遅延損害金が支払われないというデメリットがあります。

つまり、交通事故において、裁判は遅延損害金の支払いを実務上受けられる唯一の解決方法ということになります。

解決方法遅延損害金
裁判
(判決)
裁判
(和解)
△※
示談×
ADR×

※調整金の費目で遅延損害金の一部に相当する金額が支払われるケースがある

遅延損害金はどうやって計算する?

では、交通事故被害者が裁判で遅延損害金の支払いを請求するには、どのように計算すればいいのでしょうか?

民法改正で法定利率は年5%→3%に

交通事故の被害者は、加害者に対し、法律上、不法行為に基づく損害賠償請求権(民法709条)を有することになります。

不法行為に基づく損害賠償は、金銭の支払いという方法により行われると法律上定められています(民法722条1項417条)。

そして、金銭債務の不履行については、特に立証をせずに、法定利率で計算した遅延損害金を請求できることが法律上定められています(民法419条)。

民法上、法定利率は年率で割合が規定されているため、具体的な遅延損害金計算方法は下記のとおりになります。

請求元本×法定利率×遅滞期間(日数)÷365日

この法定利率は、2020年4月1日に施行された民法改正により年5%から年3%に引き下げられた上、3年ごとに見直しをすることになりました。

1 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。

2 法定利率は、年三パーセントとする。

3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。

(以下略)

民法第404条

つまり、民法改正により請求できる遅延損害金は減額することになります。

減額する金額は、遅滞期間が経過すればするほど民法改正の影響を受けることになります。

例えば、請求元本が1億円で遅滞期間が1年の場合、民法改正により請求できる金額は500万円から300万円になり、200万円減額することになります。

一方、請求元本が1億円で遅滞期間が2年の場合、民法改正により請求できる金額は1000万円から600万円になり、400万円も減額することになります。

交通事故発生日の法定利率で計算する

遅延損害金の利率を年3%で計算するか、年5%で計算するかは交通事故発生日が2020年4月1日以降かどうかで判断します。

改正民法419条1項では「債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率」を適用すると定められています。

そして、不法行為に基づく損害賠償債務は損害発生と同時に遅滞に陥ると最高裁判例では判示されています。

不法行為によりこうむった損害の賠償債務(略)は、損害の発生と同時に、何らの催告を要することなく、遅滞に陥ると解するものが相当である。(以下略)

最判昭和37年9月4日

そのため、遅延損害金の利率は交通事故発生日の法定利率で計算するということになります。

交通事故発生当日を起算日に計算する

遅延損害金は交通事故発生日を起算日にして計算します。

ここで注意すべきなのは、起算日が交通事故が発生した翌日ではなく当日であるということです。

期間や日数の計算については、法律上、「初日不算入の原則」が定められており(民法140条)、この原則からすると起算日は交通事故の翌日になりそうです。

しかし、先ほどご紹介した最高裁判例で、不法行為に基づく損害賠償請求権は、発生と同時に遅滞に陥るものと判示されています。

そのため、交通事故の遅延損害金には初日不算入の原則が適用されず、交通事故発生日(当日)を起算日にして金額を計算しています。

【参考】民法改正の逸失利益への影響

逸失利益の計算では有利に働く

民法改正による法定利率の引き下げは、被害者が、後遺障害が認定されたケースで請求できる損害賠償項目の一つである逸失利益の計算では有利に働きます。

逸失利益とは、交通事故に遭わなければ将来受け取れたはずの収入・利益の減少を補償する損害賠償項目です。

将来受け取るはずだった利益をまとめて先に受け取る形になるため、適正な損害賠償額を計算するために、受け取るはずだった時までの利息分を差し引きます。

このことを「中間利息控除」といいます。

今回の民法改正では、交通事故の逸失利益などの損害賠償額を計算する中間利息控除にも、法定利率が適用されることが明記されました(722条417条の2)。

法定利率が年5%から年3%に変更されたことで、差し引かれる中間利息の金額が減額するため、被害者が受け取れる逸失利益の金額は増額する形になります。

適用される法定利率・起算日は交通事故発生日が基準

注意すべきなのは、逸失利益や遅延損害金の計算に適用される法定利率・起算日は、症状固定日ではなく交通事故発生日が基準になるということです。

交通事故では、たとえば発生日が民法改正前の2017年(平成29年)、症状固定日が民法改正後の2020年(令和2年)4月1日以降となるケースも考えられます。

そして、改正民法417条の2や419条1項では「損害賠償の請求権が生じた時点」や「遅滞の責任を負った最初の時点」の法定利率によると定められています。

不法行為に基づく損害賠償請求権は、発生と同時に遅滞に陥ると判示されているため、後遺障害に関する損害賠償請求権がいつ発生したかが問題になります。

この点、後遺障害に関する損害は、症状固定した段階で計算可能になるものの、請求権自体は交通事故時に既に発生しているものと実務上考えます。

そのため、逸失利益や遅延損害金の計算に適用される法定利率は交通事故発生日を基準に考え、遅延損害金も発生日を起算日として計算することになります。

なお、遅延損害金の適用利率や起算日が交通事故発生日を基準とするのは、後遺障害認定時に請求できるもう一つの後遺障害慰謝料という項目でも同じです。

裁判での遅延損害金の請求方法は?

遅延損害金の計算方法がわかったところで、実際に裁判でどのように請求すればいいかについてご説明したいと思います。

弁護士費用の起算日も分ける必要なし

交通事故の損害賠償請求を裁判という方法で行うには、裁判所に訴状という書類を提出する必要があります。

具体的にイメージしやすいよう、下記のケースで裁判をする際に、遅延損害金を請求するための訴状の記載方法をご説明したいと思います。

  • 事故日:2020年(令和2年)4月1日
  • 損害額:1000万円
  • 支払済みの損害金なし

上記のケースで遅延損害金を請求するには、訴状に記載すべき内容の一つである「請求の趣旨」に下記のように記載します。

被告は,原告に対し,金1100万円及びこれに対する令和2年4月1日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え

裁判した場合には、被告(主に加害者)に対し、弁護士費用を請求でき、金額は支払済みの損害金控除後の請求額の10%が一般的です。

そのため、上記のケースでは、弁護士費用として1000万円の10%である100万円を請求できます。

そして、弁護士費用だけ、他の損害賠償項目と遅延損害金の起算日をわけて請求する必要はありません。

つまり、損害賠償請求する全額に対し、交通事故発生当日から遅延損害金が発生しているものとして請求することになります。

自賠責から賠償金を受領した場合は?

裁判で遅延損害金を請求する場合の原則的な記載内容は上記のとおりです。

もっとも、適切な金額の遅延損害金を請求するためには、記載内容に注意すべきケースが存在します。

交通事故では、被害者請求という請求方法により、裁判や示談に先行して自賠責保険から損害賠償金の一部を受領することができます。

自賠責保険から損害賠償金を受領した場合、それを受領時点までの遅延損害金や元本にどう充当するかで、請求金額や遅延損害金請求の起算点が変わります。

具体的にイメージしやすいよう、下記のケースを例にしてご説明していきます。

  • 死亡事故
  • 事故日:2020年(令和2年)4月1日
  • 損害額(弁護士費用を除く):1億円
  • 事故日の1年後(令和3年3月31日)に自賠責保険から3000万円を受領

上記のケースで、仮に、自賠責保険からの受領額を全額損害額の元本に充当してしまうと、請求できる金額(請求の趣旨の記載内容)は下記のようになります。

被告は,原告に対し,金7700万円※及びこれに対する令和2年4月1日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え

※1億円-3000万円+700万円(弁護士費用として控除後の金額7000万円の10%)

しかし、法律上は、自賠責保険からの損害賠償金受領日までの間に遅延損害金が発生しています。

そのため、自賠責保険からの受領額を受領日までの遅延損害金に充当した方が、被害者にとっては有利といえます。

上記のケースでは、自賠責保険からの損害賠償金受領日までの間に遅延損害金が300万円発生(計算式:1億円×年率3%×1年)しています。

そこで、自賠責保険から受領した3000万円をまずはこの300万円に充当し、残額を損害額元本に充当すると、裁判で請求できる元本は7300万円になります。

裁判で請求できる弁護士費用は支払済みの損害金控除後の請求額の10%なので、上記のケースでは730万円になり、請求できる元本は8030万円に増額します。

元本のうち、裁判で請求する7300万円の遅延損害金の起算日は自賠責保険からの損害賠償金受領日の翌日となります。

自賠責保険からの損害賠償金受領日までの損害額に対する遅延損害金は、上記のとおり受領(充当)済みだからです。

もっとも、充当された損害額に弁護士費用分は含まれていないため、弁護士費用分の遅延損害金の起算日は交通事故発生日となります。

そのため、自賠責保険からの受領額を受領日までの遅延損害金に充当したケースでの請求できる金額(請求の趣旨の記載内容)は下記のようになります。

被告は,原告に対し,金8030万円及びうち金7300万円に対する令和3年4月1日から,うち金730万円に対する令和2年4月1日から,いずれも支払済みまで年3%の割合による金員を支払え

上記のとおり、裁判で適切な金額の遅延損害金を請求するためには、複雑な計算が必要になるので、裁判の専門家である弁護士に相談するのが確実です。

アトム法律事務所では、交通事故案件の知識と経験豊富な弁護士による無料相談を24時間365日予約受付しております。

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弁護士費用特約が使えるケースでは、弁護士費用を保険会社に負担してもらえるので、相談前に被害者側の保険の内容をよく確認されることをおすすめします。

【参考】保険会社による治療費支払い

なお、交通事故の損害賠償金のうち、裁判や示談の前に支払われるものとして、自賠責保険金以外に任意保険会社による治療費支払い(一括対応)があります。

そうすると、自賠責保険のケース同様、保険会社から治療費が支払われるまでの間に、遅延損害金が法律上は発生していることになります。

しかし、このケースでは自賠責保険のように支払日までの遅延損害金に充当することを認めた最高裁判例はありません。

むしろ、このケースでは、保険会社が治療費として支払った金額は、元本に充当するという黙示の合意があると認定する裁判例の方が多いです。

そのため、このケースでは、原告の方が請求時に、治療費の既払い金として元本から控除するなど、実務上遅延損害金への充当を争わないことが多いです。

まとめ

  • 交通事故の実務上、裁判は遅延損害金の支払いを受けるための唯一の方法
  • 交通事故の遅延損害金は、事故発生日を起算日に年率3%で計算する
  • 年率3%で計算するのは、2020年4月1日以降に発生した交通事故のケース

代表弁護士岡野武志

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。

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