交通事故裁判の和解とは?和解率や流れ、メリット・デメリットも解説
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交通事故の裁判は、判決よりも、裁判所から提示される「和解案」を受け入れて解決する「訴訟上の和解」で終わる割合が高いです。
最新の統計では、令和6年に結審した交通損害賠償の民事裁判の和解率は76.3%です。
交通事故の和解は、当事者間で事故による損害賠償額などの条件に合意し、紛争を終局的に解決する手続きです。
和解は、判決に比べて、早期解決や結果の見通しが立てやすい等のメリットがある一方、被害者であっても一定の譲歩が必要になります。
和解が成立した後は原則、内容を争えません。メリット・デメリットを把握したうえで、慎重に和解案の受け入れを検討しましょう。

本記事では、交通事故裁判の和解について、意味、和解率、和解の流れ、メリット・デメリット、和解案の判断のポイントを解説します。
目次
交通事故の民事裁判における和解とは?
判決前に提示される和解案を受け入れること
交通事故の民事裁判における和解とは、判決が出る前に裁判所から提示される和解案を受け入れ、問題を解決させることを指します。
交通事故の損害賠償問題について民事裁判を起こした場合、問題は判決によって解決されると思われがちです。
しかし、裁判を通じて被害者側と加害者側双方の言い分を聞いた裁判所が、和解案を提示してくることもあるのです。
和解が成立しなければ、その後も裁判を続け、判決を受けることになります。和解を受け入れた場合には、その時点で裁判は終了です。
交通事故の「裁判上の和解」は2種類ある
交通事故の裁判上の和解には2種類あります。「訴訟上の和解」と「訴え提起前の和解」(即決和解)です。
裁判上の和解
- 訴訟上の和解
裁判の進行中に、裁判官の提案で、和解協議を行い成立する和解 - 訴え提起前の和解
和解したい当事者が、裁判所に和解の申立てを行い成立する和解
交通事故の裁判上の和解(1)訴訟上の和解の流れ
訴訟上の和解とは、民事裁判(民事訴訟)の進行中に、裁判所から提示される「和解案」に当事者双方が合意することで成立する和解のことです。
本記事内「交通事故の民事裁判における和解率」で述べるように、裁判をおこしたケースでも、この訴訟上の和解で裁判が終わるケースが76.3%と非常に高くなっています。
訴訟上の和解の流れ・和解案の提示はいつ?
交通事故の民事裁判で和解案が提示されるのは、基本的に「第一回口頭弁論」が行われ、「争点整理・証拠の提出」が何度か実施されたあとです。
和解案をもとに和解協議が行われ、双方が合意すると和解成立です。
争点整理・証拠の提出が何度行われるかはケースによります。

訴訟上の和解が成立しなかった場合
和解協議をしても、裁判上の和解が成立しなかった場合は、そのまま裁判が継続されます。
尋問ののち判決が下され、判決に不服がある場合は控訴状の提出、控訴・上告などを経て判決が確定します。
交通事故の裁判の流れについて、もっと詳しく知りたい方は『交通事故の裁判の流れや費用は?民事裁判になるケースや出廷の必要性も解説』の記事をご覧ください。
交通事故の裁判上の和解(2)訴え提起前の和解
訴え提起前の和解とは、判決を求める訴訟を起こす前に、簡易裁判所に「和解の申立て」をするものです(民事訴訟法275条1項)。
当事者間ですでに和解の話がまとまっており、当事者間で和解調書を作成しておきたい場合に利用されることが多いです。
訴え提起前の和解の流れ・和解案の提示はいつ?
訴え提起前の和解では、申立てから和解期日まで平均1か月半~2か月程度を要します。
和解案は、通常、申立ての前に、当事者で作成しておきます。そして、和解申立書に添付して、裁判所に提出します。
その後、期日において、裁判官が「当事者間の合意を相当である」と認めた場合に、訴え提起前の和解は成立します。

当事者が期日に出頭しない場合は、続行期日が指定されるか、和解不成立とみなされ手続きは終了します(民事訴訟法275条3項)。
また、通常、訴え提起前の和解では、当事者同士で合意済みの和解案を持ち込むため和解成立で終了しますが、万一、和解期日で合意が覆されるなど不成立となった場合は、和解期日に出席した当事者双方の申立てがあれば通常訴訟へ移行します(民事訴訟法275条2項)。
関連情報
裁判所ホームページ「訴え提起前和解」
裁判上の和解は「判決」と同じ効力を持つ
民事訴訟法第267条は、「和解が調書に記載されたときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する」と規定しています。
したがって、交通事故の裁判でも、裁判上の和解が成立すると「和解調書」が作成され、その内容は確定判決と同様の効力を持つのです。
裁判上の和解について、具体的な効力は以下の通りです。
- 訴訟の終了効
訴訟上の和解が成立すると、訴訟は終了します。 - 執行力
和解調書に給付条項が盛り込まれていれば、その和解には執行力が認められます。加害者が和解内容を守らない場合は、相手の財産を差し押さえられます。 - 確定効
訴訟上の和解が成立すると、その内容は確定します。それ以降は原則として、和解内容を争うことはできません。
交通事故の民事裁判における和解率は76.3%
最高裁判所事務総局が公表している統計(令和6年に結審した事件)を見てみると、交通損害賠償の民事裁判における和解率は76.3%です。
和解率と判決率などの比較
交通事故の民事裁判では、4分の3以上が和解によって解決されていることがわかります。
令和6年 交通事故賠償の解決
| 終局事由 | 割合 |
|---|---|
| 判決率 | 18.5% |
| 和解率 | 76.3% |
| 取り下げ率 | 3.6% |
| それ以外 | 1.5% |
参照:裁判の迅速化に係る検証に関する報告書 【資料2-1-2】P.3(最高裁判所事務総局)
※令和6年終局事件
交通事故と交通事故以外の裁判での和解率の比較
他の事件と比べた場合、交通事故の賠償訴訟の和解率は、もっとも高い割合となっています。
令和6年 民事事件第一審の和解率(一例)
| 事件の種類 | 和解率 |
|---|---|
| 交通損害賠償 | 76.3% |
| 労働金銭 | 65.9% |
| 医療損害賠償 | 51.5% |
| 労働(※金銭以外) | 51.8% |
| 公害損害賠償 | 38.8% |
参照:裁判の迅速化に係る検証に関する報告書 【資料2-1-2】P.3~4(最高裁判所事務総局)
※令和6年終局事件
交通事故の民事裁判で和解するメリット
和解は「時間と費用を抑えられる」
交通事故の民事裁判で和解するメリットには、時間と費用を抑えられる点があります。
交通事故訴訟は争点が多く、複雑な案件が多いため、長期化する傾向があります。
また、裁判にかかる費用も訴状の作成費用や裁判所への納付金、弁護士費用など、高額になる可能性があります。
しかし、判決が出る前に訴訟上の和解を成立させれば、その分時間が短縮できますし裁判にかかる費用を抑えることもできるのです。
実際、令和6年の統計によると、交通損害賠償の裁判が判決で終わる場合の平均審理期間は15.5か月です。一方、和解で終わる場合の平均審理期間は12.0か月となり、約3.5か月ほど短くなっています(裁判の迅速化に係る検証に関する報告書 【資料2-2-1】P.6)。和解で解決した方が、判決まで争うよりも早期に問題を解決できる傾向にあるといえるでしょう。
和解は「判決で敗訴するリスクを避けられる」
交通事故の民事裁判で和解するメリットには、判決で敗訴するリスクを避けられる点があります。
裁判所から提示された和解案を受け入れず判決まで進んだ場合、和解案よりも被害者側に有利な判決が出る可能性がある一方、和解案よりも不利な判決が出る可能性もあります。
場合によっては敗訴するリスクもゼロではありません。
よって、判決まで粘るよりも和解案を受け入れたほうが良いケースもあります。
和解は「合意に基づく解決になるため納得感がある」
交通事故の民事裁判で和解するメリットとして、「合意に基づく解決になるため納得感がある」という点もあげられます。
裁判所の判決には、被害者側や加害者側の合意は必要ありません。
一方、訴訟上の和解は互いに譲歩して、合意したうえで成立するものです。そのため、双方に納得感があり、後々トラブルになる可能性も低くなります。
交通事故の民事裁判で和解するデメリット
和解は「被害者側に一定の譲歩が求められる」
和解のデメリットは、被害者側にも一定の譲歩が求められる点です。
交通事故の民事裁判における和解案は、多くの場合、被害者側の主張を100%汲み取ったものにはなりません。
「和解」は、被害者側と加害者側双方の合意で成り立つものです。そのため、和解案の内容は、被害者側にも一定の譲歩を求めるものとなっています。
和解は、被害者側の主張がすべて認められるわけではないので、注意が必要です。
和解は「和解して良かったのか疑問が残りがち」
裁判を続けた結果、和解案よりも有利な判決が出るかはケースによります。
一定の譲歩により裁判所からの和解案を受け入れても、「あのとき和解案を受け入れずに判決まで進んでいれば、もっと良い条件で問題を解決できたかもしれない。本当に和解して良かったのだろうか。」という疑問が残り続ける可能性があります。
交通事故の裁判で和解と判決、どちらを選ぶべきか
「和解案を受け入れるべきか、それとも判決まで争うべきか」は、交通事故の被害者にとって悩ましい問題です。判断の軸を整理してみましょう。
交通事故の裁判で「判決」を選んだ方が良いケース
和解は被害者にも一定の譲歩を求めるものなので、以下のような場合は、判決を選んだ方が良いといえます。
- 譲歩をしたくない
- 全面的に争いたい
- 被害者側の主張が全面的に認められる見込みが高い
交通事故の裁判で「和解」を選んだ方が良いケース
現実的に、確実な損害回復という視点からすれば、見通しの立ちやすい和解を締結するというのも、合理的な選択といえます。以下のような場合は、和解の方が良いといえます。
- 早期に解決して日常に戻りたい
- 判決で敗訴するリスクを避けたい
- 裁判官が提示した和解案が妥当だと感じる
交通事故の裁判で和解した事例(アトムの解決事例)
こちらでは、過去にアトム法律事務所の弁護士が担当した交通事故の裁判のうち、訴訟上の和解で解決した事例をご紹介します。
死亡事故で裁判上の和解│約1.5倍増額
信号無視の大型トラックに衝突され女性が即死した死亡事故
専業主婦の女性(55歳)が軽自動車を運転中、信号無視の大型トラックに右側面から衝突され即死した死亡事故。
十分な賠償を求めて裁判をおこしたケース。死亡慰謝料の額や旅行キャンセル代の取り扱いが争点となった。
弁護活動の成果
裁判上の和解限りということで、旅行キャンセル代が認められた。死亡慰謝料は赤本の水準(裁判基準)で認容。
最終的に、3,200万円で訴訟上の和解が成立(保険会社の提示額の約2,122万円から約1.5倍増額)。
年齢、職業
40~50代、主婦・主夫
傷病名
死亡
こちらの交通事故では、判決まで進んでいたら、旅行キャンセル代は証拠不十分として認められなかった可能性があります。
しかし、裁判上の和解という選択により、主張を通すことができました。
和解は単なる「妥協」ではなく、判決では認められない損害項目を柔軟に取り込める手段でもあります。
また、当事者の示談交渉による和解では、赤本基準(裁判基準・弁護士基準)の80~90%の水準での支払いが一般的です。
しかし、今回は裁判上の和解ということで、基準どおり満額回収することができました。
裁判上の和解で後遺障害14級相当│約279万回収
助手席乗車中の衝突で肋骨骨折し変形が残った事例
海外在住の依頼者が日本滞在中、車の助手席に乗車中に相手方車両が衝突して肋骨骨折を負った事故(過失割合7:3)。
後遺障害認定の手続きでは「レントゲンでは肋骨の変形が写らず」非該当となったため、症状固定日と後遺障害の有無を裁判で争ったケース。
弁護活動の成果
当初から訴訟予定として弁護士が起案し訴訟提起。依頼者からの手紙やメールでの反論を準備書面に付け加え、丁寧な立証を行った結果、裁判官が14級相当を認定。
結果、訴訟上の和解により約279万円の支払いを受けた。
年齢、職業
60~70代、その他
傷病名
肋骨骨折
後遺障害等級
14級相当(裁判所が認定)
自賠責の後遺障害認定では「非該当」とされた症状でも、訴訟を経て裁判所が等級相当と認める例があります。
こちらの交通事故では、レントゲンには映らなかった肋骨の変形が、裁判で14級相当と認定され、訴訟上の和解で約279万円を獲得しました。
なお、アトム法律事務所では、他にも多数の交通事故の解決事例がございます。
もっと多くの解決事例をご覧になりたい方は、以下の解決事例のページをご確認ください。
交通事故の裁判で和解案が提示されたら
交通事故の和解案の内容を弁護士に相談しよう
交通事故の裁判で和解案が提示されたら、まずは、弁護士に相談してみましょう。
弁護士を立てずに民事裁判に臨んでおり、裁判所から和解案の提示を受けた場合は、1人で和解案を受け入れるかどうかを判断せず、専門家である弁護士に一度ご相談いただくのがおすすめです。
和解案の内容や裁判の状況などから、和解案を受け入れた方が良いか、判決を待った方が良いかなどについてアドバイスを受けられます。
「判決まで待てばより良い条件で問題を解決できたはずなのに、和解してしまった」「和解を受け入れなかった結果、和解案よりも不利な判決を受けてしまった」といったことを防ぎやすくなります。
交通事故の無料相談(電話・LINE)24時間予約受付中
アトム法律事務所では、電話・LINEにて、交通事故の無料相談を行っています。
スマホさえあればその場から相談ができます。相談内容が外部に漏れることはありませんので、和解案を提示され、どうすれば良いかわからない時にはぜひお気軽にご相談ください。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律税務グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
