交通事故裁判の和解とは?和解率や流れ、メリット・デメリットも解説
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交通事故の損害賠償問題が示談交渉で解決しなかった場合、民事裁判に発展することがあります。
実は民事裁判は、一般的に思われるような判決によって終了するものばかりではありません。裁判所からの和解案を受け入れて問題を解決させる「訴訟上の和解」もあるのです。
実際、交通事故における民事裁判は半数以上が訴訟上の和解によって終了しています。
訴訟上の和解にはメリットもあれば、デメリットもあります。訴訟上の和解とは何なのか、詳しく見ていきましょう。
目次
交通事故の民事裁判における和解とは?
判決前に提示される和解案を受け入れること
交通事故の民事裁判における和解とは、裁判の途中で裁判所から提示される和解案を受け入れ、問題を解決させることを指します。訴訟の流れの中で成立する和解であることから、「訴訟上の和解」と呼ばれます。
交通事故の損害賠償問題について民事裁判を起こした場合、問題は判決によって解決されると思われがちです。
しかし、裁判を通じて被害者側と加害者側双方の言い分を聞いた裁判所が、和解案を提示してくることもあるのです。
和解が成立しなければ、その後も裁判を続け、判決を受けることになります。和解を受け入れた場合には、その時点で裁判は終了です。
交通事故の裁判での和解の流れは?いつ提示される?
交通事故の民事裁判で和解案が提示されるのは、基本的に「第一回口頭弁論」が行われ、「争点整理・証拠の提出」が何度か実施されたあとです。和解をもとに和解協議が行われ、双方が合意すると和解成立です。
争点整理・証拠の提出が何度行われるかはケースによります。
和解協議をしても和解が成立しなかった場合は、そのまま裁判が継続されます。
尋問ののち判決が下され、判決に不服がある場合は控訴状の提出、控訴・上告などを経て判決が確定します。
和解は判決と同じ効力を持つ
民事訴訟法第267条は、「和解が調書に記載されたときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する」と規定しています。
訴訟上の和解が成立すると和解調書が作成されるのですが、その内容は確定判決と同様の効力を持つのです。
具体的な効力は以下の通りです。
- 訴訟の終了効
訴訟上の和解が成立すると、訴訟は終了します。 - 執行力
和解調書に給付条項が盛り込まれていれば、その和解には執行力が認められます。加害者が和解内容を守らない場合は、相手の財産を差し押さえられます。 - 確定効
訴訟上の和解が成立すると、その内容は確定します。それ以降は原則として、和解内容を争うことはできません。
交通事故の民事裁判における和解率
最高裁判所事務総局が公表している統計(令和4年に結審した事件)を見てみると、交通損害賠償の民事裁判における和解率は約65%です。
交通事故の民事裁判では、半数以上のケースで和解によって問題が解決されていることがわかります。
和解率 | 65.3% |
取り下げ率 | 14.0% |
それ以外 | 1.5% |
参照:裁判の迅速化に係る検証に関する報告書【資料2-1-2】(最高裁判所事務総局)
※令和4年終局事件
交通事故の民事裁判で和解するメリット
時間と費用を抑えられる
交通事故訴訟は争点が多く、複雑な案件が多いため、長期化する傾向があります。
また、裁判にかかる費用も訴状の作成費用や裁判所への納付金、弁護士費用など、高額になる可能性があります。
しかし、判決が出る前に訴訟上の和解を成立させれば、その分時間が短縮できますし裁判にかかる費用を抑えることもできるのです。
判決で敗訴するリスクを避けられる
裁判所から提示された和解案を受け入れず判決まで進んだ場合、和解案よりも被害者側に有利な判決が出る可能性がある一方、和解案よりも不利な判決が出る可能性もあります。
場合によっては敗訴するリスクもゼロではありません。
よって、判決まで粘るよりも和解案を受け入れたほうが良いケースもあります。
合意に基づく和解なので納得感がある
裁判所の判決には、被害者側や加害者側の合意は必要ありません。
一方、訴訟上の和解は互いに譲歩して、合意したうえで成立するものです。そのため、双方に納得感があり、後々トラブルになる可能性も低くなります。
交通事故の民事裁判で和解するデメリット
被害者側に一定の譲歩が求められる
交通事故の民事裁判における和解案は、多くの場合、被害者側の主張を100%を汲み取ったものにはなりません。
和解は被害者側と加害者側双方の合意で成り立つものなので、和解案の内容は、被害者側にも一定の譲歩を求めるものとなっています。
裁判を継続すれば、解決案よりも不利な判決が出るリスクがある一方、被害者側の主張が全面的に認められる判決が出る可能性もあります。
よって、場合によっては和解案を受け入れず判決を受けたほうが良いこともあるのです。
和解して良かったのか疑問が残りがち
裁判を続けた結果、和解案よりも有利な判決が出るかはケースによります。
一定の譲歩により裁判所からの和解案を受け入れても、「あのとき和解案を受け入れずに判決まで進んでいれば、もっと良い条件で問題を解決できたかもしれない。本当に和解して良かったのだろうか。」という疑問が残り続ける可能性があります。
交通事故の裁判で和解案が提示されたら
和解案の内容を弁護士に相談しよう
弁護士を立てずに民事裁判に臨んでおり、裁判所から和解案の提示を受けた場合は、1人で受け入れるかどうかを判断せず、一度弁護士にご相談ください。
和解案の内容や裁判の状況などから、和解案を受け入れた方が良いか、判決を待った方が良いかなどについてアドバイスを受けられます。
「判決まで待てばより良い条件で問題を解決できたはずなのに、和解してしまった」「和解を受け入れなかった結果、和解案よりも不利な判決を受けてしまった」といったことを防ぎやすくなります。
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アトム法律事務所では。電話・LINEにて無料相談を行っています。
スマホさえあればその場から相談ができます。相談内容が外部に漏れることはありませんので、和解案を提示され、どうすれば良いかわからない時にはぜひお気軽にご相談ください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了