交通事故の弁護士費用は相手(加害者)に請求できる?費用を減らす方法

交通事故の被害者は、裁判で勝訴した場合、弁護士費用の一部を加害者に請求できる可能性があります。
しかし、示談交渉の段階では、相手に弁護士費用を請求することはできません。
交通事故の弁護士費用(加害者・被害者 共通)は、相談料、着手金、成功報酬、日当、実費など、いくつかの項目に分かれます。
弁護士の無料相談を利用したり、弁護士費用特約を使って弁護士に依頼したりすれば、経済的負担を減らせます。
この記事では、交通事故の弁護士費用について、相手に請求できるケース、費用負担をおさえる方法などを解説します。
目次


交通事故の弁護士費用は相手(加害者)に請求できる?
交通事故の被害に遭い、弁護士へ依頼したいと考えている場合、弁護士費用を加害者側に請求できるかどうかが気になるところです。ここでは、交通事故の弁護士費用の内訳、弁護士費用を請求できるケースとできないケースを解説します。
交通事故の弁護士費用(加害者・被害者 共通)
交通事故の解決を弁護士に相談・依頼する場合、以下のような弁護士費用がかかります。
項目 | 内容 |
---|---|
相談料 | 弁護士に相談したときにかかる費用。 |
着手金 | 弁護士に依頼するときに支払う費用。 |
成功報酬 | 弁護活動の成果に応じて支払う費用。 |
日当 | 弁護士の出張日当。 |
実費 | 事件処理のために支出した実費。 |
弁護士費用の相場(1)相談料
相談料の相場は、初回無料、30分~1時間数万円程度です。
弁護士費用の相場(2)着手金
着手金の相場は、無料、最低限度額10万円~20万円(+税)程度です。
示談交渉からADR、ADRから訴訟へと次の段階に進む際、追加で着手金がかかる場合もあります。
なお、着手金は、通常、弁護活動の結果にかかわらず、返金されません。業務に「着手すること」への対価だからです。
弁護士費用の相場(3)成功報酬
成功報酬は、経済的利益に応じて変動し、「利益の◯%」といった形で設定されることが多いです。
弁護士費用の相場(4)日当
日当は、移動距離や拘束時間に応じて金額が決まります。
弁護士費用の相場(5)実費
実費としては、弁護士が業務をおこなうえで実際に支出した費用になりますが、郵送代・収入印紙代・コピー代など、数千円程度が見込まれます。
このほか、交通事故では、刑事記録や医療記録の取得費用として、数千円〜1万円程度かかることもあります。
相手に請求できるのは民事裁判(勝訴)の場合
交通事故の弁護士費用は、民事裁判で勝訴した場合、相手(加害者)への請求が認められる可能性があります。
日本では、弁護士がいなくても民事裁判をおこすことができるため、原則的に、弁護士費用は相手に請求できません。
しかし、例外的に、不法行為(例:交通事故)にもとづく損害賠償請求では、裁判で、弁護士費用の相手への請求が認められる可能性があります。
不法行為にもとづく損害賠償請求権が問題になる民事裁判で、勝訴するための十分な訴訟追行をするには、弁護士をつける必要性が高いからです(最判昭和44年2月27日・判時548号19頁)。
なお、相手に弁護士費用を請求する場合には、訴状にその旨を記載する必要があります。
不法行為の賠償請求訴訟と裁判の弁護士費用
最高裁昭44・2・27判決(昭和41年(オ)280号)
登記の抹消漏れを悪用され、不動産競売を申し立てられるという「不法行為」を受けた所有者が、競売手続き阻止のため提訴を余儀なくされた事案。提訴のための弁護士費用の賠償についても問題になった。
裁判所の判断
「…弁護士費用は、事案の難易・請求額・認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきである」
最高裁昭 昭44.2.27
- 不法行為についての賠償請求訴訟はますます専門化・技術化が進んでおり、一般人が単独で十分な訴訟活動を行うことは困難
- 相手方の故意・過失により権利を侵害され、やむを得ず損害賠償を求める訴訟を提起した場合、その弁護士費用は、一定の条件下で損害として認められる
弁護士費用
請求認容
相手に請求できる弁護士費用は賠償金の約10%
交通事故の民事裁判で、弁護士費用を相手に請求できる場合でも、それは実際にかかった弁護士費用の金額ではないことには注意が必要です。
相手に請求できる弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を考慮して「相当と認められる額の範囲内」に限られ、実務上は、弁護士費用以外の認容額の約10%程度が目安とされています。
弁護士の必要性が特に高い事案では、弁護士費用以外の賠償金の10%を超えるケースもあります。
民事裁判の弁護士費用の例
- 東京地判平12.7.28交民33-4-1270
弁護士費用:60万円
他の費用の認容額:355万円
※被害者側が日本語を理解しがたく、弁護士の訴訟追行の必要性が高かった事案 - 東京地判平20.11.27交民41-6-1502
弁護士費用:1941万円余
他の費用の認容額:1億9410万円余 - 横浜地判平25.4.25自保ジ1901-134
弁護士費用:60万円
他の費用の認容額:165万円余
※加害者の主張が刑事裁判と民事裁判で異なる等して、弁護士が交通事故訴訟を追行する必要性が高かった事案
※公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 上巻(基準編) 2025(令和7年)」より抜粋の上、紹介。
Q.和解と判決で、弁護士費用の相手への請求に違いはある?
裁判には、「和解」で終わるケースと、「判決」まで進むケースがあります。
和解と判決では、弁護士費用の請求について扱いが異なるため、注意してください。
- 和解の場合:弁護士費用という名目ではなく、「調整金」として上乗せされることが多い
- 判決の場合:裁判所が認めた損害賠償金額の10%程度が弁護士費用として認められることが一般的
和解するか判決まで進むかは、事故の内容や相手方との交渉状況などを総合的に判断します。
ただし、和解による解決の方が時間的にも費用的にも効率的なケースが多いため、実務上は和解での解決を目指すことが一般的です。
イメージ|賠償金1200万円だった場合の弁護士費用
具体的に、どのくらいの弁護士費用を請求できるのか、賠償金を設定してイメージしてみましょう。
たとえば、賠償金が1200万円だった場合、弁護士費用の合計と相手に請求できる弁護士費用は下記の通りです。
イメージ
費目 | 金額 |
---|---|
賠償金 | 1200万円 |
弁護士費用の合計 | 212万円※ |
相手に請求できる弁護士費用 | 120万円(賠償金1200万円×10%) |
※ 着手金が経済的利益の5%+9万円、成功報酬が経済的利益の10%+18万円、実費等を5万円として計算
裁判に勝訴すれば、相手に請求できる弁護士費用は、実際にかかる弁護士費用のだいたい半分程度になるでしょう。
示談段階では弁護士費用を相手に請求できない
示談交渉の段階では弁護士費用を加害者側に請求することはできません。
その理由は、示談交渉における弁護士への依頼が「被害者の任意の選択」だと考えられているからです。
交通事故による損害のうち、治療費や休業損害、慰謝料などは、事故と因果関係のある損害として加害者側に請求できます。
しかし、示談交渉を弁護士に依頼するかどうかは被害者の自由な判断に委ねられており、必ずしも弁護士に依頼する必要はないとされているため、弁護士費用を加害者側に請求することはできないのです。
示談でも損にはならない?!弁護士費用がかかっても「示談」を選ぶメリットとは…
「弁護士費用を相手に請求できるなら、裁判をした方が得なのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、示談での解決が損するという意味ではありません。
むしろ、示談には以下のようなメリットがあります。これらのメリットは、裁判では得られないものです。
- 解決が早い
裁判になると、判決が出るまで少なくとも6月から1年程度かかる。示談なら交渉次第で数週間~数カ月で解決する。 - 負担が少ない・手続きが簡単
裁判では証拠の準備や出廷の負担が発生し、手続きの進行もむずかしい。示談なら簡便に行える。 - 裁判費用のリスクがない
裁判で負けると弁護士費用や訴訟費用を自己負担する必要がある。示談はそもそも費用がかからない。
また、示談交渉でも、弁護士基準(裁判基準)に近い賠償額を得られる可能性があります。弁護士に示談交渉を依頼することで、保険会社の提示額から弁護士基準による適正な示談金に引き上げられるようになります。まずは示談交渉からはじめてみるのが現実的な方法といえるでしょう。
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交通事故の示談とは?示談交渉の流れや示談をうまく進めるための注意点
交通事故の弁護士費用を相手(加害者)に請求する方法
示談での解決がむずかしく、裁判に進む場合、弁護士費用を相手に請求するためには、正しい手続きを踏む必要があります。裁判で弁護士費用を請求する方法を理解し、適切に進めていきましょう。
弁護士費用を請求するには訴状に明記が必要
裁判で弁護士費用を相手に請求するためには、訴状に「弁護士費用も損害の一部として請求する」旨を明記する必要があります。訴状とは、裁判を起こすため裁判所に提出する書類のことです。
訴状の内容のうち、弁護士費用の請求に関して具体的に示すと、請求の原因(損害の詳細)として以下のように記載するのが一般的です。
例:請求の原因(損害の詳細)
弁護士費用は、損害賠償請求訴訟の遂行に必要な支出であり、賠償請求額の10%相当額を請求する
弁護士費用を請求し忘れると、裁判で勝訴しても弁護士費用を相手に請求できなくなる可能性があるため、訴状作成の段階で必ず弁護士に確認することが重要です。
訴状に記載する詳しい内容や、交通事故の裁判の流れについては以下の関連記事をお読みください。
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裁判になれば遅延損害金も請求できる
裁判では、遅延損害金も請求します。
本来であれば交通事故の加害者は、事故発生日から被害者へ損害賠償する責任を負っています。しかし、実際に損害賠償金を支払うのは事故発生日よりも後になってしまうため、この「遅れ」に対して遅延損害金が支払われます。
法定利率 | |
---|---|
2020年4月1日より前 | 年5% |
2020年4月1日以降 | 年3% |
なお、遅延損害金が支払われるのは勝訴した場合のみです。
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交通事故の弁護士費用を相手(加害者)に請求できない場合│対処法は?
「示談成立で早く解決したいけれど、弁護士費用を相手に請求できないなら弁護士への依頼をためらってしまう…」という方は多いと思います。
ここでは、被害者の費用負担を抑えて、弁護士に示談交渉を依頼できる方法をご紹介します。ケースによっては被害者が1円も払わずに弁護士に依頼できることもあります。
弁護士費用特約を利用する
交通事故の弁護士費用をおさえるには、まずは弁護士費用特約を利用して弁護士に依頼する方法が考えられます。
弁護士費用特約とは、弁護士への法律相談料と弁護士費用を、ご自身やご家族が加入している保険会社が負担してくれる特約です。

一般的に、法律相談料は10万円まで、弁護士費用は300万円まで、保険会社が負担してくれます。
死亡事故や重度の後遺症でない限り、基本的には弁護士費用が、弁護士費用特約の補償範囲内でおさまると考えて問題ないでしょう。弁護士費用特約があれば、費用倒れを気にせず弁護士に依頼できます。
費用倒れについて詳しくは、本記事内「弁護士費用の費用倒れ|注意すべきケースは?」をお読みください。
弁護士費用特約は自分と家族の保険をチェック
弁護士費用特約は、ご自身が任意で加入している自動車保険や医療保険などに付帯されていることが多いです。また、火災保険や地震保険、クレジットカードの保険に付いていることもあります。
弁護士費用特約は付帯されていること自体を忘れがちなので、まずは契約しているあらゆる保険を確認してみましょう。
なお、弁護士費用特約は契約者本人だけでなく、その家族も利用できることがあります。

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弁護士特約は家族も使える!補償範囲や確認方法、重複加入の必要性も解説
特約を使っても保険等級や保険料に影響しない
一般的に自動車保険を使用すると、保険等級も下がり、翌年以降の保険料が上がってしまいます。
しかし、弁護士費用特約のみを利用する場合は、等級の低下や、保険料の上昇がありません。
なお、対物賠償保険や対人賠償保険を一緒に使う場合は、等級が下がる可能性があるので注意してください。
相談料無料・着手金無料で弁護士依頼する
交通事故の弁護士費用をおさえるには、無料相談を実施していて、着手金無料で依頼できる弁護士を探す方法もあります。
まず、多くの法律事務所で、交通事故の初回相談は無料で受け付けています。
また、着手金無料で依頼できる法律事務所も増えてきました。着手金無料の場合、依頼時の費用負担がなく、解決後に実際に増額できた金額に応じて報酬を支払う成功報酬制となります。
つまり、依頼者の手元に残る賠償金が増えた場合にのみ、その増額分から報酬を支払うシステムです。
アトム法律事務所でも、交通事故の慰謝料請求に関して「相談料無料・着手金無料」でお受けできるケースがあります。
まずは電話・LINE・メールの無料相談をご利用ください。
▼下記からのご連絡に関しては、弁護士費用特約の有無や相談内容にかかわらず「無料」でご利用いただけます。


交通事故の弁護士費用の費用倒れ│注意すべきケースは?
費用倒れとは、弁護士への依頼によって得られた賠償金の増額分よりも、弁護士費用の方が高くなってしまう状態です。
つまり、弁護士に依頼することで依頼者が「赤字」になってしまうことをいいます。
なお、弁護士費用特約が利用できる場合は、基本的には費用倒れの心配はありません。
しかし、弁護士費用特約を使えない方は要注意です。
ここでは、費用倒れになる可能性の高いケースと、費用倒れになる可能性が低いケースを紹介します。
費用倒れになる可能性が高いケース
交通事故の被害に関する弁護士依頼で、費用倒れになる可能性が高いケースは以下の通りです。
- 物損のみの事故
- 通院期間が短い軽傷
- 被害者の過失割合が大きい
車両の修理費用・代車費用など物的損害のみの請求の場合や、数回の通院で治療が終了するような軽傷の場合は、賠償金額自体が比較的低額となります。
弁護士が介入したとしても増額できる金額幅が小さいことが多いため、費用倒れになってしまう可能性が高くなります。
また、被害者側にも大きな過失がある場合、たとえ弁護士が介入しても過失相殺により賠償額が大きく減額されます。
過失相殺
過失割合のうち被害者側の過失分、受け取れる損害賠償金が減額されること
弁護士費用特約がなく、費用倒れの可能性がある場合は、まず弁護士の無料法律相談で「弁護士が介入するとどのくらい増額が見込めるのか」を確認してから、弁護士に依頼をするかどうか決めましょう。
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交通事故で弁護士に頼むと費用倒れになる金額はいくら?弁護士の必要性診断
費用倒れになる可能性が低いケース
交通事故の被害に関する弁護士依頼で、費用倒れになる可能性が低いケースは以下の通りです。
- 長期の通院・入院が必要
- 後遺症が残った
- 被害者の過失が小さい
これらのケースでは、弁護士に依頼することで賠償金が大幅に増額される可能性が高く、費用倒れのリスクは低くなります。
また、治療期間が長期に及ぶケースや後遺障害が残るケースでは、請求できる費目や金額が増え、損害賠償金の算定が複雑になります。
正確に損害賠償金を計算して、被害に対する適切な金額を受け取るためにも弁護士に依頼することをおすすめします。
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まとめ
交通事故に遭わなければ弁護士に依頼する必要もなかったわけですから、相手に弁護士費用を請求したいと思うのは当然のことです。
しかし、残念ながら示談交渉の段階では相手に弁護士費用を請求することはできません。
相手に弁護士費用が請求できるのは、裁判を起こした場合のみです。
ただし、弁護士費用特約を使える場合には、お得に交通事故の解決を目指すことができます。
弁護士費用特約を使えない方でも、費用倒れのリスクが小さい場合は、弁護士に依頼した方が得かもしれません。
まずは、交通事故に強い弁護士に、無料相談してみてください。その際、弁護士費用が、費用倒れになるかどうかの見通しも確認しましょう。
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交通事故で以下のようなお悩みを抱えている方は、まずは弁護士の無料法律相談を利用してみましょう。
- 弁護士費用特約の補償範囲を超えないか不安
- 弁護士費用特約がないから費用倒れが心配
- 弁護士に依頼して利益があるのかわからない
交通事故で加害者側の任意保険会社が提示してくる示談金額は、相場よりも低額であることがほとんどです。
ご自身で示談金の相場を調べて、「相場まで増額してほしい」と交渉しても、加害者側が首を縦に振ることはほとんどありません。
弁護士が交渉に出て、加害者側が「示談交渉が長引けば裁判になるかもしれない」と危惧することで、はじめて示談金の増額が叶うのです。
まずは一度無料相談で、弁護士が介入することで増額できる金額の見込みや、弁護士依頼のメリットをご確認ください。
無料相談の際に、無理に契約を勧めるようなことは一切ございません。まずはお気軽にご相談ください。


交通事故の加害者の方へ
- 交通事故で起訴された。刑罰をうけるか不安
- 交通事故の件で、警察に取り調べをうけている など
このようなご不安をお持ちの方は、交通事故(加害者側)の相談予約をおとりください。
現在、初回30分無料で、弁護士相談(刑事事件)を実施中です。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了