赤い本の損害額算定基準で慰謝料を確認!青い本との違いもわかる

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赤い本にある損害額算定基準とは

「赤い本」は交通事故の慰謝料算定に欠かせない弁護士・裁判所必携の書籍の愛称で、赤本とも呼ばれます。

交通事故の慰謝料は、自賠責基準・任意保険基準・裁判基準の3つの計算方法があり、慰謝料は最も高額になるのは弁護士基準(裁判基準)で計算したときです。

弁護士基準における損害額算定方法や、損害額に関する判例などは赤い本に記載されています。

赤い本に記載された慰謝料額や実務での慰謝料計算方法、赤い本の内容を確認する方法を見ていきましょう。

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交通事故では3つの損害額算定基準がある

交通事故の損害賠償金を計算する際に用いられる損害額算定基準は、3種類あります。同じ費目であってもどの基準を用いるかによって金額は全く違ってくるのです。

3つの損害額算定基準は、以下のとおりです。

3つの損害額算定基準

  • 自賠責基準
    国が定めた最低限の損害額算定基準。
  • 任意保険基準
    各任意保険会社が独自に定めている損害額算定基準。非公開だが、自賠責基準に近いことが多い。
  • 弁護士基準/裁判基準
    過去の判例に基づく、法的正当性の高い損害額算定基準。弁護士や裁判官も用いる「赤い本」に記載されている。
慰謝料金額相場の3基準

交通事故の損害賠償金は基本的に示談交渉で決まりますが、この際、加害者側の任意保険会社は自賠責基準や任意保険基準の金額を提示してきます。

しかし、これは過去の判例と照らし合わせると大幅に低額であることが多いです。

「示談交渉で加害者側は低い金額を提示してくる」というのはよく言われることですが、これは、「加害者側はそもそも賠償金が低額になる算定基準を使っている」ということも一因なのです。

被害者ご自身で損害賠償金額を確認する場合は、弁護士基準を用いるようにしましょう。

法的正当性の高い損害額算定基準は赤い本に載っている

法的正当性の高い弁護士基準については、「赤い本」と呼ばれる書籍に詳細が載っています。

赤い本はどこで見れるのか、どのような内容が書かれているのかを解説しますが、より手っ取り早く弁護士基準について知りたい方は本記事内「赤い本の損害額算定基準に沿った算定方法は?」をご確認ください。

赤い本とは?内容は?

赤い本は、「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」を正式名称とする書籍です。

赤い本とは?

  • 発行元は公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部
  • 表紙が赤いことから「赤い本」と呼ばれる
  • 弁護士や裁判官必携の書籍

赤い本には東京地裁における裁判実務にもとづいて、個別の損害賠償額の算定方法や過去の裁判例が掲載されています。

具体的には、主に以下の損害賠償金に関する記載があります。

赤い本の掲載内容(損害賠償請求別)

項目主な内容
積極損害治療関係費、付添費用、将来介護費、通院交通費・宿泊費、装具・器具等購入費、家屋・自動車などの改造費、葬儀関係費用
消極損害休業損害、逸失利益(後遺障害および死亡)
精神的損害慰謝料(入通院・後遺障害・死亡)
物的損害修理費、買替差額、評価損、家屋・設備・店舗の損害、ペット・動物に関する損害

※民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(赤い本)2021上巻より抜粋・参考

また、損害賠償請求にあたっては、被害者・加害者の間でさまざまな争点が生じがちです。そうした争点に関する考え方・判例も赤い本に載っています。

赤い本の掲載内容(状況別の対応)

争点主な内容
損益相殺・損害の補てん社会保険・労災保険・各種私的保険などと損害賠償金の関係
同乗事故同乗者がいた場合の慰謝料の請求事例
素因減額被害者の元来の性質や体質が損害賠償請求に与える影響
慰謝料の増額事由ひき逃げ・飲酒運転など悪質な運転、加害者の悪質な態度

※民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(赤い本)2021上巻より抜粋・参考

ご自身と近い裁判結果を知ることで、おおよその金額目安や見通しがつかめる可能性があるでしょう。

赤い本を入手・閲覧するには?

赤い本は図書館で閲覧したり、被害者ご自身で購入したりできます。

ただし、実際には赤い本に記載されている内容を総合的に判断して柔軟に損害額を算定することが多いです。

赤い本を見てその通りに損害額を判断すれば良いというものではないのです。よって、慰謝料や休業損害などの損害額を知りたい場合は、専門家である弁護士に問い合わせることをおすすめします。

アトム法律事務所のように無料相談を受け付けている事務所を選べば、相談に費用はかかりません。

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赤い本の損害額算定基準に沿った算定方法は?

交通事故に遭った場合は、赤い本に掲載されている損害額算定基準(弁護士基準)に従い賠償金相場を確認することが重要です。

ここでは、慰謝料・休業損害・逸失利益について赤い本の損害算定基準に沿った算定方法を紹介します。

入院や通院をした場合の慰謝料

交通事故により被害者が怪我を負ったのであれば、治療のために入院や通院を行うことになります。この場合、被害者は入院期間や通院期間に負った精神的苦痛に対する損害賠償として、入通院慰謝料の請求が可能です。

むちうち症や軽傷の場合における入通院慰謝料の算出方法

赤い本の入通院慰謝料の金額は、2種類の別表により算出されます。

むちうち症で他覚所見がない、または、挫創や打撲といった軽傷の場合と、骨折などの重傷の場合では、使用する表が違います。
まずはむちうち症で他覚所見がない、または、軽症の場合に使用する別表をみてみましょう。

軽症・むちうちの慰謝料算定表
軽症・むちうちの慰謝料算定表

数字の単位は万円で、縦軸が通院日数、横軸が入院日数に対応した入通院慰謝料の金額です。
例えば、1か月を30日として計算し、入院2か月通院6か月だった場合は、それぞれのマスが交差している133万円が入通院慰謝料の金額となります。

入院・通院月数に端数がある場合については後ほど解説します。

ただし、むちうち症であっても通院が長期にわたる場合にはこの表の通りとはなりません。症状や治療内容、通院頻度をふまえ、実通院日数の3倍程度を通院期間の目安とすることがあります。

むちうち症や軽傷以外の場合における入通院慰謝料の算出方法

被害者が負った怪我がむちうち症や軽傷以外の場合には、以下の重傷時の算定表で計算しましょう。軽傷時の算定表と比べると、同じ入院期間・通院期間でも、重傷時の方が慰謝料は高額です。

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

慰謝料算定表の見方については、軽傷時と同じです。端数が生じていない場合には、それぞれのマスが交差する金額で算定ができます。

通院・入院月数に端数がある場合はどうする?

重傷で通院のみ1ヶ月15日間おこなった場合を例に計算してみましょう。

この場合、まず通院のみ1か月と、通院のみ2か月の慰謝料額を確認します。

重傷時の入通院慰謝料

通院期間慰謝料
通院のみ1か月28万円
通院のみ2ヶ月52万円

通院のみ2か月の慰謝料52万円から1か月めの慰謝料を引き算すると、2か月めの30日間の慰謝料がわかります。

52万円ー28万円=24万円

この2か月めの24万円を日割りで計算しましょう。
1か月は30日で計算されるので、24万円÷30日=8000円となります。

ここでの端数は15日間なので、8000円×15=12万円が端数処理で計算された慰謝料となります。

よって、通院のみ1か月15日の場合、28万円+12万円=40万円が重症の場合における赤い本基準の慰謝料請求額となります。

治療で休業した場合の減収の補償

交通事故による通院や入院のため休業し、減収が生じた場合は、休業損害も請求できます。

休業損害は、被害者が事故にあう前の収入から算定した日額に、休業した日数をかけて算定します。

日額の具体的な算定方法は職業によっても異なり、実際には収入のない主婦でも休業損害の請求は可能です。

ただし、休業理由によっては休業損害が認められなかったり、加害者側が日額を低く見積もってきたりすることがあります。

赤い本にはこうした争いの判例も載っているので、参考にしてみると良いでしょう。

なお、休業損害の詳しい計算方法や休業日数の数え方は関連記事『交通事故の休業損害は職業別に計算方法がある』で詳しく解説しています。

後遺障害が生じた場合の慰謝料額

交通事故により後遺症が残り、「後遺障害等級」が認定されたら、後遺障害慰謝料を請求できます。

赤い本の基準による後遺障害慰謝料の相場を、自賠責基準との比較もあわせて見てみましょう。

後遺障害慰謝料の相場比較(自賠責基準と赤い本の基準)

等級 自賠責*赤い本
1級・要介護1,650万円
(1,600万円)
2,800万円
2級・要介護1,203万円
(1,163万円)
2,370万円
1級1,150万円
(1,100万円)
2,800万円
2級998万円
(958万円)
2,370万円
3級861万円
(829万円)
1,990万円
4級737万円
(712万円)
1,670万円
5級618万円
(599万円)
1,400万円
6級512万円
(498万円)
1,180万円
7級419万円
(409万円)
1,000万円
8級331万円
(324万円)
830万円
9級249万円
(245万円)
690万円
10級190万円
(187万円)
550万円
11級136万円
(135万円)
420万円
12級94万円
(93万円)
290万円
13級57万円
(57万円)
180万円
14級32万円
(32万円)
110万円

※(  )の金額は2020年3月31日以前に起きた事故に適用します

上記を見てもわかる通り、後遺障害等級によって慰謝料額は大きく違ってきます。

適切な後遺障害等級に認定されることは重要ですが、そのためには専門機関による審査を受ける必要があります。

審査対策では専門知識や過去の認定事例に関する知識が必要なので、後遺障害認定に精通した弁護士までお問い合わせください。すでに等級が認定されているものの納得がいかない場合は、異議申立てにより再審査を受けることも可能です。

後遺障害認定の申請方法や、適切な後遺障害等級を獲得するための重要書類「後遺障害診断書」の書き方など、関連記事では詳しく解説しています。

後遺障害・死亡で減る生涯収入への補償

交通事故により後遺障害が残ったり、被害者が死亡したりすると、生涯収入が減少します。こうした損害を補償するのが、「後遺障害逸失利益」「死亡逸失利益」です。

それぞれは以下のように算定されます。

  • 1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
  • 1年あたりの基礎収入×(1-生活費控除率)×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

計算で用いる各要素については、『【逸失利益の計算】職業別の計算例や早見表・計算機つき』で解説していますが、以下の計算機もご活用いただけます。

逸失利益に関する判例も、赤い本に掲載されています。加害者側との示談交渉で争点となった場合には、参考にしてみることがおすすめです。

被害者が死亡した場合の慰謝料額

交通事故が原因で被害者が死亡した場合には、死亡したことで生じる精神的苦痛に対して死亡慰謝料を請求することが可能です。
死亡慰謝料は、死亡した本人に対する慰謝料と、親族などが請求できる近親者固有の慰謝料があります。
赤い本で掲載されている裁判基準によると、死亡慰謝料の相場は以下の通りです。

赤い本に掲載されている死亡慰謝料の相場

被害者の立場金額
一家の支柱2800万円
母親・配偶者2500万円
その他の場合2000万円~2500万円

※赤い本に掲載されている金額は死亡した本人への慰謝料と近親者固有の慰謝料の合計額

死亡慰謝料は、死亡した本人の立場によって基準額が異なります。一家を経済的に支えていた方が死亡した場合の死亡慰謝料相場は2800万円と最も高額です。そして、母親や配偶者が死亡したときの慰謝料相場は2500万円、子どもや高齢者などのその他属性の方が死亡した場合の相場は2000万円~2500万円となります。

なぜ金額に差異があるのかというと、赤い本に掲載されている金額は「死亡した本人への慰謝料」と「近親者固有の慰謝料」を反映しているためです。家計を支えていた方が亡くなるということは、遺族に与える影響もより大きくなるだろうと想定されるため、遺族分の苦痛が金額に反映されていると考えてください。

近親者への慰謝料を裁判例で確かめる

近親者固有の慰謝料に関しては、明確に相場が設定されているわけではありません。
ここでは、参考になる裁判例をご紹介しましょう。

【被害者が一家の支柱】
1つの事故で両親が死亡した事案において,遺族2人(9歳と6歳)に各2800万円を認めた

(事故日平3.8.24 東京地判平7.6.20 交民28・3・902)

会社員(男・46歳)につき,本人分2800万円,妻250万円,子2人各100万円,合計3250万円を認めた

(事故日平25.6.29 千葉地松戸支判平27.7.30 自保ジ1955・99)

【被害者が母親,配偶者の場合】
専業主婦(34歳)につき,本人分2200万円,夫200万円,子2人各200万円,実父母と養父母各20万円,合計2880万円を認めた

(事故日平22.4.6 さいたま地判平24.10.26 自保ジ1886・81)

【被害者がその他の場合】
(独身の男女)
単身者(男25歳・市役所職員)につき,父母各1400万円,合計2800万円を認めた

(事故日平9.9.17 神戸地判平11.9.22 交民32・5・1446)
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赤い本以外にも参考書籍が存在する|青い本、緑本、黄色い本

青い本とは?

赤い本とセットで弁護士などが参考にする書籍に、青い本(青本)があります。赤い本同様、損害賠償額の算定基準について記載されており、赤い本よりも解説が充実していることが特徴です。

赤い本が東京地裁が管轄している首都圏を前提にしているのに対し、青い本は、全国で起きる交通事故を想定した内容になっています。
そのため、青い本に記載されている慰謝料の基準は、赤い本と異なり上限額や下限額などの記載があり、幅広い金額で設定されているのが特徴です。

また、巻末には付録もついており、高次脳機能障害についての医師の見解や症例などがわかりやすい写真付きで解説されています。

ちなみに、青い本に記載された上限額の8割程度が赤い本の基準となっています。

弁護士など基準についてよく知っている人物であれば、赤い本と青い本を比較して、妥当な金額で算定された慰謝料請求を可能にしてくれるでしょう。

緑本とは?

緑本は、交通事故損害賠償額算定のしおりという名称の書籍で、発行元は大阪弁護士会交通事故委員会です。

緑本には大阪地裁の判例にもとづいた損害賠償額の算定方法などが掲載されています。

また、大阪地裁における交通事故損害賠償の算定基準という書籍にも、緑本と同様に大阪地裁の判例にもとづいた算定方法が掲載されています。

黄色い本とは?

黄色い本は、交通事故損害賠償算定基準という名称の書籍で、発行元は日弁連交通事故相談センター愛知県支部です。

赤い本の愛知県版とも言える書籍で、名古屋地裁の判例にもとづいた損害賠償額の算定方法などが掲載されています。

赤い本と青い本の使用例

赤い本も青い本も、慰謝料算定において参考にされることは同じですが、ざっくりと、首都圏向けか地方向けかに区別することができるでしょう。

ただし、慰謝料請求時には赤い本と青い本が参考にされますが、あくまで基準として参考にされる書籍であるため、首都圏なら赤い本・地方なら青い本という明確な算定額で請求をするものではありません。

実際の慰謝料請求の場では、赤い本・青い本を参考にしたうえ、個別具体的な事情をもとに請求額を確定させていくでしょう。

ただひとつ確実なことがあるとすれば、弁護士であれ一般人であれ、赤い本などを参考に請求額の根拠を提示し、交渉がうまくまとまれば、より高額な慰謝料を手にすることができるということです。

赤い本で慰謝料請求したい方

被害者がご自身で、赤い本を参考に慰謝料請求をおこなうのは容易ではありません。
適正な慰謝料の算定と示談交渉は、ぜひアトム法律事務所の弁護士にお任せください。
アトム法律事務所では無料の法律相談の受付を24時間対応で行っています。電話だけでなくLINEでも連絡可能なため、一度気軽にご相談ください。

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まとめ

  • 赤い本基準は裁判基準であり慰謝料の高額算定が可能
  • 弁護士が示談交渉する場合は赤い本基準で慰謝料を算定・請求する
  • 弁護士は赤い本と青い本の基準を比較して慰謝料を算定する
  • 入院期間や通院期間に端数が出た場合は慰謝料を日割り計算する

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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