後遺障害等級は誰が決める?認定機関は?自賠責保険の後遺障害認定の流れも解説
交通事故の損害賠償では、自賠責保険(共済)による後遺障害の等級基準を当てはまる症状について、等級に応じた賠償金が支払われます。
後遺障害等級を決めるのは、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所という認定機関です。ただし、認定機関の判定に納得いかないときには自賠責保険・共済紛争処理機構、賠償問題が話し合いでまとまらないときには裁判所のように、自賠責損害調査事務所以外に判断をあおぐこともあります。
この記事では、後遺障害等級は誰がどのように決めるのか、認定機関の審査を受けるにはどうすればよいのかなどを解説します。
後遺障害等級の認定を受けるコツも紹介しているので、ご確認ください。
目次
50件以上の
お問合せ
後遺障害等級は誰が決める?
後遺障害等級を決める認定機関がある
後遺障害等級を決めるのは、損害保険料率算出機構の「自賠責損害調査事務所」という認定機関です。
自賠責損害調査事務所は、申請書類を審査しつつ、事務所の顧問医の意見などを参考に申請者の後遺障害等級を判定するのです。
自賠責損害調査事務所の認定結果に納得いかない場合は、異議申立てができます。この場合に再審査を行うのは、自賠責審査会です。
後遺障害等級の認定機関
- 全国各地にある自賠責損害調査事務所
- 自賠責審査会(異議申立てした場合)
認定機関以外に判断をあおぐこともある
後遺障害等級については、自賠責損害調査事務所以外の機関に判断をあおぐこともあります。
例えば、自賠責損害調査事務所の認定結果に納得がいかない場合には、もう一度審査を求める異議申立てや、自賠責保険・共済紛争処理機構に審査を求める方法があげられるでしょう。
あるいは民事裁判によって、後遺障害等級とそれに見合った後遺障害慰謝料の支払いを認めてもらうことも可能です。
後遺障害等級はどのように決まる?
基本的には書類審査で決まる
後遺障害等級は、基本的に書類のみで審査されます。書類のなかでも、後遺障害診断書や各種検査結果、担当医の意見書などが特に重視されるでしょう。
ただし、顔の傷のような「外貌醜状」と呼ばれる後遺症が残っている場合や、異議申し立てで再審査を受ける場合は、面接が実施されることもあります。
審査を意識した後遺障害診断書のコツは?:後遺障害診断書のもらい方と書き方は?自覚症状の伝え方と記載内容は要確認
後遺障害等級の認定基準は?
後遺障害等級は、「交通事故と後遺症に関連性はあるか」「症状に継続性・一貫性はあるか」「後遺障害等級の認定基準を満たしているか」といった点から判断されます。
後遺障害等級の認定基準は、労災保険が定めたものに準じています。
例えばむちうちによる痺れや痛みは、後遺障害12級13号または14級9号に認定される可能性があります。各等級の認定基準は以下の通りです。
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの ※「後遺障害の存在や程度を、医学的・客観的に証明できる」という意味 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの ※「後遺障害の存在や程度を、医学的・客観的に推定できる」という意味 |
後遺障害等級の認定基準は曖昧な表現で定められていることも多く、理解しにくい傾向にあります。
後遺障害14級9号や12級13号といった神経症状での等級認定を目指す方は、関連記事『後遺障害14級9号とは?12級13号との違い、認定されないときの対処』も参考にしてください。
後遺障害等級の認定基準については『【後遺障害等級表】症状別の等級や認定基準を解説!自賠責保険金もわかる』で噛みくだいて解説しています。
認定機関で後遺障害等級認定の審査を受ける方法
認定機関に審査の申請をする2つの方法
認定機関である自賠責損害調査事務所に後遺障害等級の審査をしてもらうためには、必要書類を提出しなければなりません。
このとき「加害者側の自賠責保険会社」または「加害者側の任意保険会社」のどちらかへ申請することになります。
加害者側の自賠責保険会社に後遺障害認定申請する方法
加害者側の自賠責保険会社に等級認定の書類を提出して審査を受ける「被害者請求」という方法があります。
加害者側の自賠責保険会社に提出する方法
「被害者請求」と呼ばれる方法。必要書類を申請者がすべて集め、加害者側の自賠責保険会社に提出すると、認定機関である損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所にて審査が行われる。
申請者が書類を収集するので、内容の精査や、症状がより伝わるように資料を添付するといった審査対策がしやすい。
自賠責損害調査事務所の認定結果は自賠責保険会社へと報告され、被害者にハガキで通知される流れです。そして、自賠責保険の後遺障害の等級基準に応じた賠償金額が振り込まれます。
等級認定結果に納得がいったら、相手の任意保険会社に認定結果を伝えて示談交渉を始めていきましょう。
加害者側の任意保険会社に後遺障害認定申請する方法
加害者側の任意保険会社に後遺障害診断書を提出して、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所で審査を受ける「事前認定」という方法があります。
加害者側の任意保険会社に提出する方法
「事前認定」と呼ばれる方法。申請者が主治医に書いてもらった後遺障害診断書を加害者側の任意保険会社に提出すると、残りの書類はすべて任意保険会社が用意し、認定機関に送ってくれる。
被害者請求のような審査対策はしにくいが、書類集めの手間がかからない点はメリット。
自賠責損害調査事務所にて審査された内容は、損害保険料率算出機構から任意保険会社へと報告されます。被害者には相手の示談担当者から電話連絡がきたり、ハガキで結果が通知されたりする流れです。
自賠責保険の支払基準にそった賠償金は、相手方との示談成立後に「示談金」としてまとめて支払われます。
審査結果に納得がいく場合は、示談交渉を始める旨を相手の保険会社に伝えましょう。
被害者請求と事前認定で認定に有利なのは?
どちらの方法でも認定機関である自賠責損害調査事務所にて審査される点は同じです。もっとも、被害者請求の方が書類の内容を見直すことができたりと工夫の余地があるといえます。
また、相手の任意保険会社に一任すると申請の経過が不透明になりがちですが、自分でおこなう被害者請求ならば認定結果に納得しやすいでしょう。
被害者請求と事前認定のどちらで申請するのかは自由に選べます。
被害者請求では書類集めの手間がかかりますが、弁護士に書類集めを一任することも可能です。専門知識や過去の認定事例を踏まえた審査対策もできるので、弁護士への依頼もご検討ください。
50件以上の
お問合せ
被害者請求をもっと詳しく知りたい方は、関連記事『交通事故の被害者請求とは?自賠責へ請求すべき?やり方やメリットもわかる』も参考にしてください。
後遺障害等級を認定してもらうコツ
適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、後遺障害の存在や程度を明確に証明できる書類を用意することが重要です。
そのためのコツは以下の通りです。
- 後遺障害等級の審査対策に適した検査を受け、結果を認定機関に提出する
- レントゲン写真やMRI画像などに写った異常が見えにくい場合は、印をつけるなどの工夫をする
- 必要に応じて医師の意見書や日常生活報告書なども添付する
後遺障害認定の申請では、治療の過程で受けた検査の結果を提出することが多いでしょう。しかし、治療の過程で受ける検査は、「今後の治療方針や治療の効果を確認するため」のものです。
後遺障害等級の審査で重要となる、「後遺障害の存在や程度を証明するための検査」とは必ずしも一致しません。
後遺障害等級の審査で必要な検査については、弁護士のアドバイスを受けることも有効です。
また、画像所見に印をつけたり医師の意見書などを添付したりすることは、事前認定では難しい場合が多いです。こうした意味でも、被害者請求の方がおすすめです。
後遺障害等級の認定に関するよくある疑問にお答え
後遺障害等級を決めるのは医師ではないのですか?
ご自身の担当医が後遺障害等級を決めることはありません。
「後遺障害が残った」「これは後遺障害◯級に該当する」などと言われることもあるかもしれませんが、それはあくまでも担当医の個人的意見です。
然るべき機関で認められた後遺障害等級でないと、後遺障害慰謝料などを請求する根拠にはなりません。必ず認定機関による審査を受けましょう。
治療期間は後遺障害等級の審査に影響しますか?
治療期間は後遺障害等級の審査に影響することがあります。
基本的には治療期間6ヶ月以上で症状固定になっていないと、後遺障害等級の獲得は難しいでしょう。
しかし、治療期間が6ヶ月以上でも、治療頻度が不適切だったり、無理に治療期間を引き伸ばしたような形跡があったりすると、審査に不利になります。
治療期間6ヶ月未満で症状固定になりそうな場合や適切な治療頻度がわからない場合は、弁護士にご相談ください。
弁護士は後遺障害認定のサポートも行っており、専門知識や過去の認定事例に精通しています。
後遺障害認定を受けられなかったらどうなるの?
後遺障害認定を受けられない場合には、後遺症に関する賠償は原則請求できません。
具体的には、後遺障害慰謝料、逸失利益などの請求が認められないため、後遺障害認定を受けられた場合よりも示談金が下がるでしょう。
後遺障害等級認定の申請手続きは何度でも可能です。ただし同じ書類を再提出するのではなく、まずは「非該当」となった理由を知ることから始めることをおすすめします。
審査結果の通知内に非該当の理由が記載されているので、関連記事『後遺障害認定されなかった時の対処法|非該当の理由から異議申し立ての対策も解説』も参考にして対処を考えていきましょう。
後遺障害認定の審査対策は弁護士に相談しよう!
アトム法律事務所では、電話・LINEにて無料相談を実施中です。
法律相談予約は24時間体制で受け付けているので、手が空いたタイミングでご一報いただけます。
50件以上の
お問合せ
法律相談のみの利用も歓迎しており、無理に正式な契約を迫ることはありません。
正式な依頼まで進んだ場合でも、弁護士費用特約を使うことができれば、保険会社に弁護士費用を負担してもらえます。弁護士費用特約が使えない方は、基本的に着手金が無料です。
後遺障害等級の認定を受けるにあたり、「どのように対策したらよいのかわからない」「被害者請求で認定確率を高めたいけれど、書類の準備に手間をかけられない」などといった悩みを抱える方は多いです。
弁護士にご依頼いただけば、審査対策も書類の準備も任せられるだけでなく、後遺障害認定後の示談交渉においても適正な示談金獲得を目指せます。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了