後遺障害等級は誰が決める?認定の流れや基準、審査対策も解説

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後遺障害等級

後遺障害等級を決めるのは、損害保険料率算出機構の「自賠責損害調査事務所」という認定機関です。

自賠責損害調査事務所が調査を行い、後遺障害の有無や等級の認定がなされます。

この記事では、後遺障害等級は誰がどのように決めるのか、認定機関の審査を受けるにはどうすればよいのかなどを解説します。

後遺障害等級の認定を受けるコツも紹介しているので、ご確認ください。

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後遺障害等級は誰が決める?

後遺障害等級を決めるのは、損害保険料率算出機構の「自賠責損害調査事務所」という機関です。

では、自賠責損害調査事務所とはどのような機関なのか詳しく見ていきましょう。

後遺障害等級の認定機関は「自賠責損害調査事務所」

後遺障害等級を決めるのは、損害保険料率算出機構内に設置されている「自賠責損害調査事務所」です。

自賠責損害調査事務所が申請書類を審査しつつ、事務所の顧問医の意見などを参考に、申請者の後遺障害等級を判定しています。

なお、申請者が直接自賠責損害調査事務所とやり取りをすることはありません。加害者側の自賠責保険会社や任意保険会社を介して必要書類を提出し、審査を受けます。

異議申し立ての審査機関は「自賠責審査会」

損害保険料率算出機構の認定結果に納得いかない場合は、異議申立てが可能です。この場合に再審査を行うのは、自賠責審査会です。

後遺障害等級の認定機関まとめ

  • 全国各地にある損害保険料率算出機構
  • 自賠責審査会(異議申立てした場合)

自賠責損害調査事務所は自賠責保険とは別物

自賠責損害調査事務所は、自賠責保険に対して保険金の請求があった場合に、損害の内容や程度を調査する事務所です。

交通事故の加害者が加入している自賠責保険とは別物で、中立・公平な調査を行います。

したがって、「加害者側の自賠責保険会社や任意保険会社を介して自賠責損害調査事務所に必要書類を提出する」からといって、被害者にとって不利な調査・認定がなされることはありません。

認定機関が見る後遺障害等級の認定基準

後遺障害等級認定の際、認定機関である自賠責損害調査事務所は3つの点を重視します。認定を受けるコツも合わせて、確認していきましょう。

後遺障害等級の3つの認定基準

後遺障害等級は、「交通事故と後遺症に関連性はあるか」「症状に継続性・一貫性はあるか」「後遺障害等級の認定基準を満たしているか」の3点から判断されます。

それぞれについて解説します。

交通事故と後遺症に関連性はあるか

交通事故の後遺障害等級認定では、事故と後遺症との関連性が重視されます。

後遺障害等級が認定されると、被害者は加害者に、後遺障害に関連する慰謝料・賠償金を請求できます。
交通事故とは無関係な後遺症を後遺障害として認定してしまうと、公平な賠償請求にはなりません。

よって、後遺障害等級認定では事故と後遺症との関連性の証明が重要です。

例えば以下の場合は、交通事故と後遺症との関連性が認められないことがあります。

  • 交通事故の規模に対して重すぎる後遺症が残っている
  • 事故前から同様の症状があった
  • 交通事故ではなく、老化などほかの要因による症状だと考えられる
  • 交通事故から初診までに時間が空いており、交通事故による症状だと判断できない

症状に継続性・一貫性はあるか

症状の継続性・一貫性も、後遺障害等級認定で認定機関が見るポイントです。

例えば「雨の日だけ痛む」「特定の動きをすると症状が現れる」など、断続的に続く後遺症は、「後遺障害等級に認定するほどではない」と判断される可能性があります。

また、「事故直後は痛みがあったが、途中からしびれを感じるようになった」など一貫性のない後遺症は、「今の症状は交通事故以外の要因によるものではないか」と疑われるおそれがあります。

後遺障害等級の認定基準を満たしているか

後遺障害等級には1級〜14級があり、それぞれに認定基準が定められています。認定基準は労災保険が定めたものに準じたものです。

例えばむちうちによる痺れや痛みは、後遺障害12級13号または14級9号に認定される可能性があります。各等級の認定基準は以下の通りです。

12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
※「後遺障害の存在や程度を、医学的・客観的に証明できる」という意味
14級9号局部に神経症状を残すもの
※「後遺障害の存在や程度を、医学的・客観的に推定できる」という意味

後遺障害等級の認定基準は曖昧な表現で定められていることも多く、理解しにくい傾向にあります。

後遺障害14級9号や12級13号といった神経症状での等級認定を目指す方は、関連記事『後遺障害14級9号の認定基準と慰謝料・逸失利益|認定されない理由と対処法』も参考にしてください。

後遺障害等級の認定基準については『【後遺障害等級表】認定される後遺症・症状の一覧と等級認定の仕組み』の記事で一覧表形式にて解説しています。

審査対策は書類の質を上げること|書類審査が基本

後遺障害等級の認定率を上げるコツは、「提出書類の質を高めること」です。

後遺障害等級は、基本的に書類のみで審査されます。一部のケースを除き、直接審査員に会って症状の詳細を伝えることはできないため、書類でいかに明確かつ具体的に、症状の存在や程度を示せるかが鍵になります。

書類のなかでも特に重視されるのは、後遺障害診断書や各種検査結果、担当医の意見書などです。以下の点を意識して、書類をブラッシュアップしましょう。

  • 後遺障害診断書の自覚症状欄には、自覚症状による生活や仕事への影響も書く
  • 後遺障害等級の審査対策に適した検査を受け、結果を認定機関に提出する
  • レントゲン写真やMRI画像などに写った異常が見えにくい場合は、印をつけるなどの工夫をする
  • 必要に応じて医師の意見書や日常生活報告書なども添付する

加えて、提出書類について弁護士からアドバイスを受けることもおすすめです。

例えば治療の過程で受ける検査は、「今後の治療方針や治療の効果を確認するため」のものです。

後遺障害等級の審査で重要となる、「後遺障害の存在や程度を証明するための検査」とは必ずしも一致しません。

また、後遺障害診断書に関しても注意点がありますが、すべての医師が後遺障害等級認定に精通しているとは限らず、審査に不利な書き方になってしまうこともあります。

したがって、後遺障害等級認定のために受けるべき検査や後遺障害診断書の内容については、弁護士にもご相談ください。

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後遺障害等級の認定を受ける方法

後遺障害等級の認定を受けるには、適切なタイミングで認定機関に書類を提出する必要があります。

また、書類の提出方法は2つあります。これらについて確認していきましょう。

後遺障害等級認定の流れ

交通事故発生から、後遺障害等級認定を受けるまでの手続きの流れは以下の通りです。

  1. 症状固定となり治療終了
  2. 後遺障害診断書など必要書類の作成
  3. 認定機関(自賠責損害調査事務所)へ必要書類を提出
  4. 審査結果の通知

それぞれのフェースにおけるポイントを解説します。

(1)症状固定となり治療終了

症状固定とは、「これ以上治療を続けても、大幅な改善は見込めない」と判断されることです。

症状固定のタイミングは、医師の判断が尊重されます。適切なタイミングより早く症状固定になったり、症状固定前に治療をやめたりすると、後遺障害等級認定に悪影響が出がちです。

もし加害者側から治療を終えるよう催促されても、従わないようにしましょう。

(2)後遺障害診断書など必要書類の作成

治療が終了したら、後遺障害慰謝料などの必要書類を用意します。

ただし、用意すべき書類は、「加害者側の自賠責保険会社を介して認定の申請をするか」「加害者側の任意保険会社を介して認定の申請をするか」により異なります。

(3)認定機関(自賠責損害調査事務所)へ必要書類を提出

先述の通り、必要書類は加害者側の自賠責保険会社または任意保険会社を仲介して、自賠責損害調査事務所に渡ります。

加害者側の自賠責保険会社を介する方法を「事前認定」、加害者側の任意保険会社を介する方法を「被害者請求」と言います。

それぞれの特徴や必要書類は後ほど詳しく解説します。

(4)審査結果の通知

審査が終わったら、結果が通知されます。

審査結果は1ヶ月以内に出ることも多いですが、症状によっては数ヶ月〜数年かかることもあります。

後遺障害等級認定の申請方法(1)被害者請求

自賠責損害調査事務所に必要書類を提出する際、加害者側の自賠責保険会社を仲介する方法を「被害者請求」といいます。

被害者請求の流れ

被害者請求の場合は、申請者が必要書類をすべて揃えます。

手間はかかりますが、すべての書類に関与できるのでブラッシュアップしやすい点、追加書類を添付しやすい点はメリットです。

また、こうした書類の準備は弁護士に任せることも可能です。

自賠責損害調査事務所の認定結果は自賠責保険会社へと報告され、被害者にハガキで通知されます。
そして、通知とほぼ同じタイミングで、後遺障害等級に応じた賠償金額が一部振り込まれるのです。残りの金額は、示談交渉に支払われます。

被害者請求をもっと詳しく知りたい方は、関連記事『自賠責保険への被害者請求とは?やり方やデメリット、すべきケースを解説』も参考にしてください。

後遺障害等級認定の申請方法(2)事前認定

自賠責損害調査事務所に必要書類を提出する際、加害者側の任意保険会社を仲介する方法を「事前認定」といいます。

事前認定の流れ

事前認定の場合、被害者が用意する書類は後遺障害診断書のみです。
その他の書類は、加害者側の任意保険会社が揃えてくれます。

手間がかからないのはメリットですが、後遺障害診断書以外のブラッシュアップができない点、追加書類の添付が難しい点はデメリットです。

自賠責損害調査事務所にて審査された内容は、損害保険料率算出機構から任意保険会社へと報告されます。被害者には相手の示談担当者から電話連絡がきたり、ハガキで結果が通知されたりする流れです。

なお、被害者請求の場合とは違い、事前認定では後遺障害関連の賠償金は、示談交渉成立後に支払われます。

後遺障害認定の通知が届くのにかかる期間については、『後遺障害認定の通知書はいつ届く?非該当への対応や等級認定後の流れ』をお読みください。

審査方法はどちらにすべき?

どちらの方法でも認定機関である損害保険料率算出機構にて審査される点は同じです。
もっとも、被害者請求の方が書類の内容を見直すことができたりと工夫の余地があるといえます。

また、相手の任意保険会社に一任すると申請の経過が不透明になりがちですが、自分でおこなう被害者請求ならば認定結果に納得しやすいでしょう。

被害者請求では書類集めの手間がかかりますが、弁護士に依頼すると書類集めを任せられます。専門知識や過去の認定事例を踏まえた審査対策もできるので、弁護士への依頼もご検討ください。

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後遺障害等級の認定に関するよくある疑問にお答え

最後に、後遺障害等級の認定に関する以下の質問にお答えします。

  • 後遺障害等級を決めるのは医師ではないのですか?
  • 治療期間は後遺障害等級の審査に影響しますか?
  • 後遺障害認定を受けられなかったらどうなるの?

後遺障害等級を決めるのは医師ではないのですか?

ご自身の担当医が後遺障害等級を決めることはありません。

「後遺障害が残った」「これは後遺障害◯級に該当する」などと言われることもあるかもしれませんが、それはあくまでも担当医の個人的意見です。

然るべき機関で認められた後遺障害等級でないと、後遺障害慰謝料などを請求する根拠にはなりません。必ず認定機関による審査を受けましょう。

治療期間は後遺障害等級の審査に影響しますか?

治療期間は後遺障害等級の審査に影響することがあります。

基本的には治療期間6ヶ月以上で症状固定になっていないと、後遺障害等級の獲得は難しいでしょう。

しかし、治療期間が6ヶ月以上でも、治療頻度が不適切だったり、無理に治療期間を引き伸ばしたような形跡があったりすると、審査に不利になります。

治療期間6ヶ月未満で症状固定になりそうな場合や適切な治療頻度がわからない場合は、弁護士にご相談ください。

弁護士は後遺障害認定のサポートも行っており、専門知識や過去の認定事例に精通しています。

後遺障害認定を受けられなかったらどうなるの?

後遺障害認定を受けられない場合には、後遺症に関する賠償は原則請求できません。

具体的には、後遺障害慰謝料、逸失利益などの請求が認められないため、後遺障害認定を受けられた場合よりも示談金が下がるでしょう

後遺障害認定を受けられなかった場合には、もう一度審査を求める異議申立てや、自賠責保険・共済紛争処理機構に審査を求めるという方法が考えられます。

審査結果の通知内に記載されている非該当の理由から、適切な対処を考えていきましょう。

あるいは民事裁判によって、後遺障害等級の認定とそれに見合った後遺障害慰謝料の支払いを認めてもらうことも可能です。

後遺障害認定の結果に不服がある場合の対処法について

後遺障害認定の審査対策は弁護士に相談しよう!

後遺障害等級の認定を受けるにあたり、「どのように対策したらよいのかわからない」「被害者請求で認定確率を高めたいけれど、書類の準備に手間をかけられない」などといった悩みを抱える方は多いです。

弁護士にご依頼いただけば、審査対策も書類の準備も任せられるだけでなく、後遺障害認定後の示談交渉においても適正な示談金獲得を目指せます。

アトム法律事務所では、電話・LINEにて無料相談を実施中です。

法律相談予約は24時間体制で受け付けているので、手が空いたタイミングで気軽にご連絡ください。

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法律相談のみの利用も歓迎しており、無理に正式な契約を迫ることはありません。

正式な依頼まで進んだ場合でも、弁護士費用特約を使うことができれば、保険会社に弁護士費用を負担してもらえます。弁護士費用特約が使えない方は、基本的に着手金が無料です。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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