優先道路での事故|優先なのに過失割合がつく?優先道路の定義と見分け方

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優先道路で事故

優先道路で起きた事故では、優先道路を走行していた側にも10%の過失がつくのが原則です。

これは交通事故の過失割合を判断する際の実務的な基準に基づくもので、優先側にも道路交通法上の安全運転義務があるためです。

ただし、相手の一時停止違反などの特段の事情があれば、優先側の過失がゼロと判断された裁判例もあります。

この記事では、優先道路の事故で押さえるべき過失割合・修正要素・代表的な裁判例・優先道路の判断基準をわかりやすく解説します。

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優先道路で起きた事故の過失割合

交通事故の過失割合は、事故類型ごとに決められた「基本の過失割合」に対して、事故個別の状況を反映するための「修正要素」を加えて決められます。
優先道路で起きた事故の基本の過失割合と修正要素をみていきましょう。

本記事で紹介する過失割合や修正要素は、「別冊判例タイムズ39」(菊池憲久・堂薗幹一郎・伊東智和編)に記載されている情報をベースにしています。

交通事故の過失割合に関する基本的な情報を先に知りたい方は、関連記事『交通事故の過失割合とは?パターン別に何%か調べる方法と決め方の手順』をご確認ください。

過失割合(1)四輪車同士の事故

一方が優先道路である交差点で、「優先道路を走行する優先車(A)」と「非優先道路を走行する劣後車(B)」が衝突した四輪車同士の事故における基本の過失割合は優先車A:劣後車B=10:90です。

事故状況図

基本の過失割合は優先車A:劣後車B=10:90ですが、例えば優先車側に著しい過失があったり、B車(劣後車)が明らかに先に優先道路に進入していたりといった事情があれば、優先車側の過失が増える見込みです。

主な修正要素をまとめたものが以下の表になります。

AB
基本の過失割合1090
Bの明らかな先入+10-10
Aの著しい過失+15-15
Aの重過失+25-25
Bの著しい過失-10+10
Bの重過失-15+15

参照:判例タイムズ【105】

優先道路を走行する側に徐行義務はありませんが、道路交通法36条4項により安全な速度と方法で進行する義務が課されています。

優先車にも前方不注視や速度超過など何らかの過失があったために衝突に至ったと考えられることから、基本値として10%の過失がつくのが原則です。

過失割合(2)四輪車とバイクの事故

四輪車とバイクの事故では、バイクが優先道路の場合と四輪車が優先道路の場合に分けて過失割合を確認していきます。

バイクが優先道路の場合

一方が優先道路である交差点で、「優先道路を走行するバイク」と「非優先道路を走行する四輪車」が衝突した四輪車とバイクの事故における基本の過失割合は優先バイク:非優先の四輪車=10:90です。

信号機なしの交差点で、優先道路を走行してきたバイクと劣後道路を走行してきた車の事故

非優先道路を走行する四輪車の過失割合の方が基本的に大きくなります。

バイク四輪車
基本の過失割合1090
バイクの著しい過失+10-10
バイクの重過失+20-20
四輪車の明らかな先入+10-10
四輪車の著しい過失-5+5
四輪車の重過失-10+10

参照:判例タイムズ【171】

もっとも、バイクにも前方不注視や速度超過など何らかの過失があったために事故が生じたと考えられることから、基本値として10%の過失がつくのが原則です。

四輪車が優先道路の場合

一方が優先道路である交差点で、「優先道路を走行する四輪車」と「非優先道路を走行するバイク」が衝突した四輪車とバイクの事故における基本の過失割合は非優先バイク:優先の四輪車=70:30です。

信号機なしの交差点で、直進するバイクと優先道路を走行してきた車の事故

非優先道路を走行するバイクの過失割合の方が基本的に大きくなります。

バイク四輪車
基本の過失割合7030
バイクの著しい過失+10-10
バイクの重過失+20-20
バイクの明らかな先入-20+20
四輪車の著しい過失-10-20
四輪車の重過失-20+20

参照:判例タイムズ【172】

もっとも、四輪車同士の事故とは違って、四輪車に30%の過失割合がつきます。

道路上では四輪車よりバイクの方が保護されるべき立場とされているので、非優先道路を走行するバイクでも過失割合は70%に止まるのです。

過失割合(3)四輪車と自転車の事故

四輪車と自転車の事故では、自転車が優先道路の場合と四輪車が優先道路の場合に分けて過失割合を確認していきます。

自転車が優先道路の場合

一方が優先道路である交差点で、「優先道路を走行する自転車」と「非優先道路を走行する四輪車」が衝突した四輪車と自転車の事故における基本の過失割合は優先自転車:非優先の四輪車=10:90です。

信号機なしの交差点で、優先道路を直進する自転車と交差する道路を直進する車の事故

非優先道路を走行する四輪車の過失割合の方が基本的に大きくなります。

自転車四輪車
基本の過失割合1090
自転車が右側通行・左方から進入+5-5
自転車の著しい過失+10-10
自転車の重過失+15-15
自転車が児童等・高齢者-10+10
自転車の自転車横断帯通行-5+5
四輪車の著しい過失-5+5
四輪車の重過失-10+10

参照:判例タイムズ【245】

もっとも、優先道路を走行する自転車に徐行義務はないものの、安全に走行する義務は求められます。自転車にも前方不注視や若干の速度違反など何らかの過失があったために事故が生じたと考えられることから、自転車であろうと基本の過失割合として10%つくことになるのです。

四輪車が優先道路の場合

一方が優先道路である交差点で、「優先道路を走行する四輪車」と「非優先道路を走行する自転車」が衝突した四輪車と自転車の事故における基本の過失割合は優先の四輪車:非優先自転車=50:50です。

四輪車自転車
基本の過失割合5050
夜間-5+5
自転車が右側通行・左方から進入-5+5
自転車の著しい過失-10+10
自転車の重過失-15+15
自転車が児童等・高齢者+10-10
自転車の自転車横断帯通行+10-10
自転車の横断歩道通行+5-5
四輪車の著しい過失+10-10
四輪車の重過失+20-20

参照:判例タイムズ【246】

四輪車が優先道路の場合、非優先道路を走行する自転車の過失割合は50%になります。

道路上では四輪車より自転車の方が保護されるべき立場とされているので、非優先道路を走行する自転車でも過失割合は50%に止まります。

優先道路で発生した事故の判例

判例タイムズの基本過失割合はあくまで類型化された目安です。実際の裁判では、個別の事故状況に応じて優先道路側の過失がゼロと判断された判例や、逆に「優先道路として扱わない」と判断された判例もあります。代表的な裁判例を確認しておきましょう。

優先道路側の過失をゼロとした判例

非優先道路から一時停止規制を見落として進入してきた相手車との衝突事故について、優先道路側の過失をゼロと判断した代表的な裁判例があります。

この判例では、非優先道路側は優先道路の進行を妨害してはならない(道路交通法36条2項)ことを前提に、「優先道路を進行している車は、急制動の措置を講ずることなく停止できる場所において非優先道路から進入してくる車を発見したなど特段の事情がない限り、非優先道路の車が一時停止せずに交差点へ進入してくることを予測して前方注視をする義務はない」と判示されました。

保険会社が「動いていたから過失がある」と説明してくるケースでは、この判例が優先道路側の過失ゼロを主張する根拠として用いられることがあります(名古屋高判平成22・3・31)。

センターラインが消失していたため優先道路と認められなかった判例

センターラインが引かれていても、自然損耗で消えかかっていたために優先道路として扱われなかった裁判例があります。信号機のない丁字路交差点において直進する車両と右折車両が衝突した事案で、直進道路の中央線が事故現場付近でほぼ消失し、確認が困難な状況にありました。

原告(直進車両側)は「優先道路かどうかは公安委員会の指定で一義的に決まるものであり、標示が自然損耗で認識されにくくなっていても道路の優先関係に影響しない」と主張しました。

これに対し裁判所は、「現場の中央線がほぼ消失して確認困難な状況にある以上、当該道路を中央線が設置された優先道路として扱うことは相当ではない」として、優先道路としての扱いを認めませんでした。結果として過失割合20:80が認定された事案です。

この判例は、見た目の道路状況が優先道路の認定に影響を及ぼすことを示すものです。事故時の道路標示が不明瞭だった場合、優先道路の主張が認められない可能性があります(さいたま地判平成30・11・26)。

そもそも優先道路とは?どうやって判断する?

優先道路は道路交通法に明文で定義されています。条文上の文言は次のとおりです。

道路標識等により優先道路として指定されているもの及び当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている道路

道路交通法36条2項より抜粋

優先道路を判断する細かいポイントをみていきましょう。

道路標識やセンターラインで判断する

優先道路に関する条文をわかりやすく説明すると、以下のいずれかの道路を優先道路といいます。

優先道路の定義

  • 「優先道路」、「前方優先道路」といった道路標識が設置されている道路
  • センターライン(破線・白色・黄色いずれも)が交差点を突き抜けている道路

多くの場合、交差点内まで連続して引かれたセンターラインの有無で判断できます。

センターラインが消えている場合の扱い

センターラインが摩耗で消えていたり、積雪などで見えなかったりする場合、優先道路として認識することは困難です。

前述のとおり、裁判例でもこうした場合に優先道路として扱わないと判断したものがあります。事故時にセンターラインがほぼ消えていたケースでは、優先道路としての扱いを受けられない可能性があります。

左方優先と優先道路の違い

「交差点ではいつも左方が優先」と理解している方もいますが、道路標識やセンターラインがある場合は左方優先のルールは適用されません。道路標識やセンターラインがない交差点では、以下のように優先関係が判断されます。

  • 道路標識などがなく道幅が同じときは左方が優先
  • 道幅が異なるときは狭路より広路が優先

これらは法律上の「優先道路」とは区別され、「優先性のある道路」と呼ばれます。なお、信号機のある交差点では、優先道路であっても信号機の表示に従って通行する必要があります。

交差点事故の過失割合全般については、『交差点事故の過失割合|決め方や信号のない場合・ある場合を解説』もご確認ください。

優先道路の事故で過失割合に疑問があるときの対処法

多くのケースで、過失割合は相手方の任意保険会社から提示されます。提示された割合に疑問を持ったときに知っておきたい対処法を整理します。

保険会社の提示を鵜呑みにしない

保険会社は支払額を抑える観点から、被害者側の過失を多めに見積もって提示してくるケースがあります。基本過失割合の確認だけでなく、修正要素として加味すべき事情(相手の一時停止違反、明らかな先入、著しい過失など)が反映されているかを確認しましょう。

提示内容に疑問を感じたら、『交通事故の過失割合が納得いかない!おかしいと感じたら弁護士を通じて交渉を』も参考にしながら、弁護士への相談を検討してみてください。

慰謝料の算定基準にも注意する

過失割合と並んで重要なのが、慰謝料の算定基準です。交通事故の慰謝料には、自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判基準)の3つの基準があり、弁護士基準で算定すると一般的に最も高額になります。

保険会社が提示してくる金額は自賠責基準または任意保険基準で算定されたものが多く、弁護士基準と比べて低額になる傾向があります。

慰謝料の金額に納得できないときの対処については、『交通事故の慰謝料に納得いかない時の原因と対処法|なぜ低額になる?』もご覧ください。

非接触事故・三者間事故は特に複雑

優先道路を走行中に、脇道から飛び出してきた車を避けるために急停止して、後続車に追突されたケースのように、複数の車両が関与する事故では、過失割合の検討が三者間に及びます。

追突事故では基本的に追突された側の過失はないものの、急停止したという事情は修正要素として扱われ、脇道車の動きや後続車の車間距離なども総合的に考慮されます。

こうした複雑なケースほど、判例タイムズの類型に単純に当てはめることが難しくなります。事故状況の正確な特定と過失割合の評価には専門知識が必要となるため、弁護士への相談を検討する場面といえます。

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優先道路に関するよくある質問

Q.道幅が広い方が優先道路ではないの?

道幅が明らかに異なる道路は、広い道幅を走行する側に優先性があるといえます。しかし、優先道路と優先性のある道路は異なるのです。

優先道路は道路交通法という法律で明確に定義された道路になります。先述した通り、「優先道路、前方優先道路といった道路標識が設置されている道路」または「センターラインが交差点を突き抜けている道路」が優先道路です。

一方、優先道路以外にも状況に応じて優先される道路があるのですが、法律で定義された優先道路と使い分けるために、このような道路を「優先性のある道路」といいます。

優先性のある道路とは、道路標識やセンターラインがない交差点で「道幅が同じときは左方が優先」、「道幅が異なるときは狭路より広路が優先」となります。

Q.優先道路走行中に脇道から来た車を避けるために急停止して追突されたら?

たとえば、脇道から来たA車を避けるために、優先道路を走行中のB車が急停止して、後ろからC車に追突されたケースを考えてみます。このようなA車とB車の非接触事故と、B車とC車の追突事故がからむケースの場合、三者間で過失割合が検討されることになるでしょう。

追突事故では基本的に追突された側に過失はつきませんが、B車が急停車したことは修正要素として扱われます。また、脇道から来たA車の動きや、後ろから来たC車の車間距離の取り方なども修正要素として扱われることになります。

このようなケースにおける過失割合の算定は特に複雑になるので、交通事故分野に注力する弁護士に相談した方がいいでしょう。

まとめ|優先道路走行中の事故の過失割合でお悩みの方へ

本記事では、優先道路で起きた事故の過失割合と判例について解説しました。優先道路を走行していても基本過失割合は10%つくのが原則ですが、相手側に一時停止違反などの特段の事情がある場合、優先道路側の過失をゼロと判断した判例もあります。

一方、センターラインが消えかかっていたために優先道路として扱われなかった判例もあり、事故時の道路状況や個別事情が結論を大きく左右します。

保険会社から提示される過失割合や慰謝料額に疑問を感じた場合、判例タイムズの基本値と修正要素を確認したうえで、弁護士への相談を検討する選択肢があります。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律税務グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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