信号無視の事故の過失割合は10対0とは限らない?違反点数や反則金は?
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信号無視は、交通事故の損害賠償額に大きく影響する過失割合を増加させる要因となります。
そのため、信号無視によって事故に遭われた被害者の方は、自身の過失割合が適切に算定されるよう、主張することが重要です。
ただし、加害者側が信号無視を行ったとしても、被害者側の過失がゼロになるとは限りません。
本記事では、信号無視の事故における過失割合をケースごとに紹介しています。過失割合が10対0になるとは限らない理由や信号無視による違反点数と反則金、信号無視の事故の過失割合で加害者側ともめた場合の対処法などもわかるので、ぜひご確認ください。
目次
信号無視による事故の過失割合
過失割合とは、交通事故が起きた責任が加害者側と被害者側それぞれにどれくらいあるかを割合で示したもので、事故発生時の状況をもとに算定されます。
信号無視の場合、信号無視した側に100%の過失があると思われがちですが、実は必ずしもそうとは限りません。
まずは、「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に記載されている情報をベースに、信号無視による事故の基本的な過失割合を紹介していきます。
過失割合の算定方法については『交通事故の過失割合とは?パターン別に何%か調べる方法と決め方の手順』をご覧ください。
注意
ここで紹介する過失割合には信号無視以外の修正要素は反映されていません。
修正要素とは、「徐行なしなら+◯%」「被害者が子供だったなら-◯%」など、事故の細かい状況から過失割合を加算・減算して、より適切な過失割合を決定するためのものです。
厳密な過失割合は過去の判例や類似事例などを参考に柔軟に算定するため、詳しくは弁護士に確認することをおすすめします。
信号無視の過失割合(1)自動車同士の事故
自動車同士の事故で信号無視があった場合の過失割合は、次の通りです。

交差点の出会い頭での直進車同士の事故
信号 | 直進車A | 直進車B |
|---|---|---|
| 直進車A青:直進車B赤 | 0 | 100 |
| 直進車A黄:直進車B赤 | 20 | 80 |
| 直進車A赤:直進車B赤 | 50 | 50 |
なお、直進車Aが青信号で交差点に入ったあと、信号が赤に変わっていた場合(直進車Bは赤信号)は、「直進車A:直進車B=30:70」となります。
交差点の右折車と対向車線の直進車の衝突事故
| 信号 | 直進車 | 右折車 |
|---|---|---|
| 直進車赤:右折車青 | 100 | 0 |
| 直進車黄:右折車青 | 70 | 30 |
| 直進車黄:右折車黄 | 40 | 60 |
| 直進車赤:右折車赤 | 50 | 50 |
なお、右折車が青信号で交差点に進入後、赤信号に変わったのち右折した場合(直進車は赤信号)は「右折車:直進車=10:90」となります。
また、右折車が黄信号で交差点に進入後、赤信号に変わったのち右折した場合(直進車は赤信号)は、「右折車:直進車=30:70」となります。
信号無視の過失割合(2)バイクと自動車の事故
バイクと自動車の事故で信号無視があった場合の過失割合は、次の通りです。

交差点での直進同士の事故
| 信号 | バイク | 自動車 |
|---|---|---|
| バイク青:自動車赤 | 0 | 100 |
| バイク赤:自動車青 | 100 | 0 |
| バイク黄:自動車赤 | 10 | 90 |
| バイク赤:自動車黄 | 70 | 30 |
| バイク赤:自動車赤 | 40 | 60 |
なお、バイクが黄信号で交差点に進入した直後、赤信号に変わった場合(自動車は黄信号)は、「バイク:自動車=60:40」となります。
バイクと自動車の事故における過失割合についてより詳しく知りたい方は『バイクと車の事故の過失割合!どっちが悪い?直進・右折等ケース別に解説』の記事をご覧ください。
信号無視の過失割合(3)自転車と自動車の事故
自転車と自動車の事故で信号無視があった場合の過失割合は、次の通りです。

交差点での直進車同士の事故
| 信号 | 自転車 | 自動車 |
|---|---|---|
| 自転車青:自動車赤 | 0 | 100 |
| 自転車赤:自動車青 | 80 | 20 |
| 自転車黄:自動車赤 | 10 | 90 |
| 自転車赤:自動車赤 | 30 | 70 |
| 自転車赤:自動車黄 | 60 | 40 |
上記のとおり、自転車側が信号無視をし、自動車側が青信号であっても、過失割合は10対0にはならず、自動車側に20%の過失が認められます。
自転車と自動車の事故における過失割合に関しては『車と自転車の事故|過失割合と慰謝料相場は?』の記事でより詳しく知ることが可能です。
信号無視の過失割合(4)歩行者と自動車の事故
歩行者と自動車の事故で信号無視があった場合の過失割合は、次の通りです。

横断歩道を渡る歩行者と直進車の事故
| 信号 | 歩行者 | 直進車 |
|---|---|---|
| 歩行者青:直進車赤 | 0 | 100 |
| 歩行者赤:直進車赤 | 20 | 80 |
| 歩行者赤:直進車青 | 70 | 30 |
なお、歩行者が青信号で横断歩道に進入後、赤信号に変わっていた場合(直進車は青信号)、過失割合は「歩行者:直進車=20:80」となります。
横断歩道の歩行者と右左折車の事故
| 信号 | 歩行者 | 右左折車 |
|---|---|---|
| 歩行者青:右左折車赤 | 0 | 100 |
| 歩行者黄:右左折車青 | 30 | 70 |
| 歩行者赤:右左折車青 | 50 | 50 |
| 歩行者黄:右左折車黄 | 20 | 80 |
| 歩行者赤:右左折車黄 | 30 | 70 |
| 歩行者赤:右左折車赤 | 20 | 80 |
歩行者と自動車の事故における過失割合や、その他の問題点については『車にはねられた…歩行者の事故対応と交通ルール。過失割合はどうなる?』の記事で確認可能です。
信号無視の過失割合(5)自転車と歩行者の事故
自転車と歩行者の事故で信号無視があった場合の過失割合は、次の通りです。

交差点での直進同士の事故
| 信号 | 自転車 | 歩行者 |
|---|---|---|
| 自転車赤:歩行者青 | 100 | 0 |
| 自転車赤:歩行者黄 | 85 | 15 |
| 自転車赤:歩行者赤 | 75 | 25 |
| 自転車黄:歩行者赤 | 40 | 60 |
| 自転車青:歩行者赤 | 20 | 80 |
なお、事故の相手方が自転車の場合は、自転車保険の性質上、自動車相手の事故とは異なる注意点が出てきます。
とくに、自転車事故では損害賠償金の支払われ方や後遺障害認定に関してトラブルや疑問が生じやすいので、関連記事『自転車事故の慰謝料・示談金の相場はいくら?賠償金の内訳と高額事例も紹介』も合わせて読んでみてください。
過失割合に影響する「信号無視」の法的定義
過失割合を決定するうえで、信号の色が何色だったかは重要な要素であることがお分かりいただけたでしょう。
多くのドライバーは「黄色なら行ける」「赤に変わった直後ならセーフ」と考えがちですが、法律上の定義は厳格です。こういった認識のずれが、事故後の示談交渉で「自分は悪くないはずだ」ともめる原因になり得ます。
法的に正しい信号の意味を理解しておきましょう。
車両や歩行者は信号機の信号に従う義務がある
信号無視は、道路交通法違反となります。
法律上、道路を通行するすべての歩行者や車両は、信号機の表示に従う法的義務を負っているからです。
(信号機の信号等に従う義務)
道路交通法第七条
道路を通行する歩行者等又は車両等は、信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等(略)に従わなければならない。
したがって、信号無視をして事故を起こした場合、単なる不注意ではなく「法律上の義務に違反した」とみなされます。
その結果、民事上の過失割合が不利になるだけでなく、刑事罰や行政処分の対象にもなるのです。信号無視が与える具体的な影響については、本記事内「信号無視で生じる責任とペナルティ」で解説しています。
赤信号・黄色信号・青信号の法的な意味
信号機の色には、道路交通法施行令によって定められた厳密な定義があります。特に「黄色」と「青」の解釈には注意してください。
| 色 | 意味 | 補足 |
|---|---|---|
| 青 | 進むことができる | 「進め(命令)」ではなく「許可」。混雑して交差点内で止まりそうな時は、青でも進入してはいけない。 |
| 黄 | 原則:止まれ | 急ブレーキが必要で安全に止まれない場合に限り、そのまま進むことが許される。 |
| 赤 | 停止位置を越えてはならない | 停止線の手前で止まる義務がある。 ※すでに交差点内にいる場合(右折待ちなど)は、速やかに交差点から出なければならない。 |
とりわけ、黄色信号は裁判実務において「止まろうと思えば止まれたはず」だと判断され、信号無視が認定されるケースが非常に多いため、原則通り「止まる」ことが重要です。
信号無視でも「10:0」にならないケース
信号無視の事故の過失割合が必ずしも10:0になるとは限らない理由として多いのは、以下の5つです。
- 信号を守っていた側に衝突回避の余地があった
- 信号無視をしたのが歩行者や自転車である
- 信号を守っていた側に別の過失があった
- 信号が途中で変わり信号無視になった
- 「実は信号無視にはならない」ケースに該当した
詳しくみていきましょう。
信号を守っていた側に衝突回避の余地があった
一方が赤信号、一方が青信号であっても、青信号側に衝突回避の余地があったと判断されれば過失がつく可能性があります。
例えば早い段階で相手車両が信号無視をしていることが把握できており、衝突を避けることも可能であったにも関わらず事故が発生したとしましょう。
この場合、青信号側は信号無視はしていないものの、周囲の安全確認を怠っていたと考えられます。
よって、青信号側にも過失がつき、過失割合10:0ではなくなることがあるのです。
信号無視をしたのが歩行者や自転車だった
信号無視をしたのが歩行者や自転車だった場合は、交通事故における「立場の弱さ」を理由に過失割合10:0にならないことがあります。
交通事故では、歩行者は車や自転車よりも弱い存在、自転車は車よりも弱い存在(「交通弱者」)であるという考え方がされます。
立場が弱いほうは交通事故によって大きな損害を負いやすいため、立場が強いほうがより一層安全に注意する責任があるとされているのです。
よって、歩行者や自転車は、信号無視をしても過失割合が10にならず、自動車側にも一定の過失割合がつく可能性があるでしょう。
ここでは、実際に歩行者や自転車が信号無視した場合の過失割合を一部紹介します。
| 赤信号無視 (過失割合) | 青信号 (過失割合) | |
|---|---|---|
| 横断歩道の事故 | 歩行者 (70) | 直進車 (30) |
| 横断歩道の事故 | 歩行者 (50) | 右左折車 (50) |
| 交差点の事故(直進同士) | 歩行者 (80) | 自転車 (20) |
| 交差点の事故(直進同士) | 自転車 (80) | 車 (20) |
さらに、信号無視をした歩行者や自転車の運転手が子どもや老人だった場合には、自動車側の過失割合がより高く修正されます。
信号を守っていた側に別の過失があった
信号無視していない側に別の過失がある場合は、その点が考慮され、過失割合が10:0にならないことがあります。
例えばA車とB車の事故において、A車が信号無視をしていたとします。一方B車が信号は守っていたが、速度違反をしていたり、夜間なのにライトをつけず無灯火で運転していたりしていたらどうでしょう。
事故が起きた原因は100%A車にあるとは言えません。よって、過失割合は10:0にはならないのです。
どの修正要素を適用し、どれくらい過失割合を修正するかは判断が難しく、加害者側ともめやすいポイントでもあります。
ご自身の過失割合を厳密に知りたい、過失割合の交渉で不利になりたくないという場合は、一度弁護士にご相談ください。
アトム法律事務所では、無料で電話・LINE相談をおこなっています。
信号機の色が途中で変わった
たとえ青信号で進行していても、途中で信号機の色が変わった場合は信号無視として扱われます。
「青信号で交差点や横断歩道に進入したが、途中で赤信号になった」という場合、青信号側であっても過失割合が付くのです。
例えば直進車A(青信号)と直進車B(赤信号)の事故では、過失割合は0:10になります。
しかし、直進車Aの信号が途中で赤信号に変わっていた場合、過失割合は「直進車A:直進車B=30:70」となるのです。
以下に、交差点の信号が途中で変わった場合の過失割合の例を挙げておきます。
| 青→赤信号 | 赤信号 | 過失割合 |
|---|---|---|
| 直進車A | 直進車B | 30:70 |
| 右折車 | 直進車 | 10:90 |
「実は信号無視にはならない」ケースに該当した
実は、赤信号や黄色信号でも信号無視にならないことがあります。
事故相手が信号無視したように思えても実際のところ信号無視にならない場合、「信号無視をしたから相手に100%の過失がある」とは言えず、過失割合10:0にならないのです。
道路交通法施行令2条から、以下のケースに該当する場合は、一見信号無視の事故に見えても信号無視ではないと判断されます。
信号無視にならないケース
- 赤信号
通常は停止しなければならないが、車両が交差点ですでに左折・右折している場合は、他の車両を妨害しなければ進行できる - 黄信号
原則として停止しなければならないが、黄信号に変わったタイミングで停止線に近接しており、安全に停止できない場合は進行できる
また、黄点滅信号や赤点滅信号も、「進行してはいけない」という意味ではないため信号無視にはならないことがあります。合わせて確認しておきましょう。
信号の色の意味
- 黄点滅信号
ほかの車両や歩行者などに注意しつつ、一時停止をせず進行できる - 赤点滅信号
停止位置で必ず一時停止をしたうえで進行できる
『点滅信号での事故の過失割合は?車、自転車、歩行者のケース』では、点滅信号で交通事故が起きた場合について詳しく解説しています。該当する方はこちらもご確認ください。
信号無視で生じる責任とペナルティ
信号無視をして事故を起こしてしまった場合、単に相手に賠償金を払えば終わりではありません。
交通事故の加害者には、「行政処分」「刑事処分」「民事責任」という3つの異なる責任が同時に発生します。これらはすべて別々の手続きで処理されるため、それぞれの仕組みを正しく理解しておく必要があります。
行政責任|違反点数と免許停止・取消
運転者が信号無視をした場合、過失割合が加算されるだけでなく、運転免許の違反点数が加算されます。
行政責任とは、行政機関からの処分を受けることです。交通事故でいうと、公安委員会による免許の点数制度を指します。
具体的な違反点数は次のとおりです。
信号無視の違反点数
| 違反点数 | |
|---|---|
| 赤信号 | 2点 |
| 点滅信号無視 | 2点 |
単なる信号無視なら「違反点数のみの2点」となりますが、事故を起こして人を死傷させた場合はさらに、負傷具合に応じて「2点~20点の付加点数」が加算されます。
結果として、一発で免許停止や取消処分になる可能性が高まります。
刑事責任|拘禁刑・罰金と反則金の違い
信号無視は本来、道路交通法違反という犯罪であり、刑事罰の対象です。
ただし、比較的軽微な交通違反行為については、特例として「反則金」を納めれば刑事手続き(刑事裁判や刑事罰)を免れる仕組みになっています。これを交通反則通告制度といいます。
したがって、運転者が信号無視をした場合、過失割合が加算されるだけでなく、反則金が科されます。
具体的な反則金は次のとおりです。
信号無視の反則金
| 反則金 | |
|---|---|
| 赤信号無視 | 大型車:12000円 普通車:9000円 二輪車:7000円 小型特殊車:6000円 原付:6000円 |
| 点滅信号無視 | 大型車:9000円 普通車:7000円 二輪車:6000円 小型特殊車:5000円 原付:5000円 |
反則金は、基本的に交通反則告知書(青切符)が交付されるので、合わせて受け取る納付書を用いて7日以内に納付しましょう。
納期までに反則金を納付できなかった場合は、都道府県の交通反則告知センターに出頭して納付書を再発行してもらい、10日以内に反則金を納付してください。
人身事故の場合は反則金だけでは済まない
信号無視で人を死傷させた人身事故の場合は反則金(行政処分)では済まず、「前科」がつく可能性のある刑事罰(赤切符)の対象になります。
たとえば、前方不注意による信号無視が原因で人を死傷させた場合は反則金の対象とならず、「過失運転致傷罪」に問われる可能性があります。
さらに、赤信号を故意に無視し、重大な交通の危険を生じさせる速度で運転して人を負傷・死亡させた場合は、「危険運転致死傷罪」に問われる可能性があります。
- 過失運転致死傷罪:7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
- 危険運転致死傷罪:人の負傷で15年以下の拘禁刑、人の死亡で1年以上の有期拘禁刑
反則金は、あくまで軽微な違反を行政手続きで終わらせるための特例制度です。信号無視で人を死傷させた人身事故の場合、反則金制度は適用されません。
民事責任|損害賠償と自分の保険がおりないリスク
運転者が信号無視をした場合、過失割合が加算され、事故相手への賠償金に影響を与えます。
民事責任とは、被害者が被った損害を賠償金で償うことです。賠償金は、治療費や慰謝料など事故で生じた損害額と、事故の過失割合を反映して最終的な金額が決まります。
信号無視をした場合でも、相手方への賠償金は、加入している「対人・対物賠償保険」を使えば通常、問題ありません。
一方、信号無視をした場合、自分の怪我に関する治療費や車の修理費など(人身傷害特約や車両保険など)は利用できない可能性があります。
これは、保険会社が「免責事由」のひとつに法令違反をあげていることが多いためです。一度、ご自身の加入する保険会社に問い合わせてみてください。
相手が信号無視をした場合
自分が信号無視をされた側であれば、保険の面では大きな心配はいりません。
ただし、被害者自身に過失がまったくつかない場合、被害者の任意保険会社は相手への損害賠償義務がないので、任意保険会社に示談交渉を代行してもらえない点には注意が必要です。
保険会社に示談代行をしてもらえないと、被害者自身で相手方との交渉を迫られることになります。
一方で相手方は交渉の経験・ノウハウを持つ保険会社の担当者がついた状態です。不当な内容で示談してしまわないように、弁護士への早期依頼の検討をおすすめします。
信号無視による事故の示談交渉で揉めた時の対処法
信号無視の事故では、過失割合について以下の点で加害者側と争いになることがあります。
- 加害者側が信号無視を否定する
- 加害者側に「被害者も信号無視をしていた」と言われる
- 「被害者側に信号無視以外の過失がある」と言われる
それぞれのケースにおける対処法を解説します。
なお、『交通事故の過失割合でもめる5ケース&対処法』でも別の角度から、過失割合でもめるケースについて解説しているので、合わせてご確認ください。
(1)加害者側が信号無視を否定してきた場合
信号無視をしたはずの加害者が「信号無視はしていない」と主張してきたら、ドライブレコーダーや目撃者の証言といった確固たる証拠を揃えて反論しましょう。
事故現場周辺に設置されている防犯カメラ(監視カメラ)も証拠になる可能性があります。
ただし、防犯カメラについては管理者に見せてほしいとお願いをしても、見せてもらえるとは限らず、事故後一定期間が経過すると映像が消去されてしまうこともあります。
弁護士を通してお願いすれば見せてもらえることもあるので、お困りの場合は速やかに弁護士まで相談することが大切です。
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(2)加害者側に「被害者も信号無視をしていた」と言われた場合
加害者側に「被害者も信号無視をしていた」と言われた場合は、ドライブレコーダーや目撃者の証言、事故現場付近の防犯カメラ映像などで、信号無視をしていないことを証明しましょう。
また、本当に赤信号や黄信号で進行している映像が残っていたとしても、必ずしも信号無視にあたるとは限りません。
先述の通り、たとえ赤信号でも車両が交差点ですでに左折・右折している場合は、他の車両を妨害しなければ進行可能です。
しかし、加害者側はそのことを知らない、あるいは知っていてもあえて信号無視を主張してくることがあります。
よって、信号無視を認めてしまう前に、信号の意味についても今一度確認してみてください。
(3)「被害者側に信号無視以外の過失がある」と言われた場合
加害者側が「被害者側に信号無視以外の過失がある」と言ってきた場合は、それを否定する証拠を集めて反論しましょう。
基本的には防犯カメラ映像やドライブレコーダー映像があれば十分な客観的証拠となります。
映像では証明できない内容を主張する際のポイント
加害者側が「被害者はわき見運転をしていた」「被害者は加害者に気づいて避けることができたはずだ」と主張してきた場合、反論したくても映像ではその事実の有無を確認できないことが多いです。
こうした点については、まだ記憶の新しい事故直後の証言が「実況見分調書」や「供述調書」に記載されています。書類は警察が作成するものであり、示談交渉でも基本的に証拠能力が認められるので、活用しましょう。
示談交渉時、単に「わき見運転はしていない」「加害者に気づいたのは事故直前で避ける余裕はなかった」と主張するだけでは、事故から時間が経ち記憶も薄らいでいるため信頼できない、客観性に欠けるなどと反論される可能性があります。
よって、必ず主張の裏付けとなる証拠を用意しましょう。どのような証拠を用意すれば良いかわからない場合は、弁護士にご相談ください。
実況見分調書の取り寄せ方は『実況見分とは?交通事故での流れや注意点!呼び出し対応や過失割合への影響』の記事で解説しています。
信号無視の事故でもめたら弁護士に相談が重要
信号無視の事故で加害者側ともめた場合、もっともおすすめな対処法は弁護士に相談することです。
なぜ弁護士に相談した方が良いのか解説するとともに、弁護士費用を抑える方法を紹介します。
信号無視の事故でもめたら弁護士に相談すべき理由
信号無視の事故で加害者側ともめた場合に弁護士に相談すべき理由は、「被害者自身では交渉力の点で不利になる可能性が高い」からです。
当事者双方に過失割合が認められる場合、過失割合は当事者双方の保険会社が協議して決定することになるのが一般的です。
しかし、過失割合が10対0の事故の場合、過失割合のない被害者側は保険会社の示談代行サービスを利用することができず、被害者は加害者側の任意保険の担当者と直接示談交渉をする必要があります。
信号無視の事故では、過失割合が10対0になることが多いため、基本的に加害者側の任意保険の担当者と直接示談交渉することが多いでしょう。
ただ、任意保険の担当者は日々仕事として示談交渉をしているため、知識も経験も豊富であり、被害者は不利と言わざるを得ません。
たとえ被害者が証拠をそろえて正しい主張をしても、加害者側の任意保険担当者は知識や経験を活かして反論し、結果的に加害者側優位で交渉が進んでしまいがちです。
交渉の結果、被害者側にも過失があると判断された場合、加害者側から受け取れる示談金は、過失割合の分だけ減額されてしまいます(これを過失相殺といいます)。
よって、被害者側が納得のいく示談をするには、知識・経験ともに豊富な弁護士に相談し、示談交渉を依頼することが重要なのです。
注意点
「示談代行サービスを使い、自分の保険担当者に示談交渉を任せる予定」という方も多いですが、そうした場合でも一度、弁護士への相談・依頼を検討することがおすすめです。
詳しくは『示談代行サービスで保険会社に任せっきりでも大丈夫?任せるメリットとデメリット』をご覧ください。
弁護士を立てれば慰謝料の大幅増額も期待できる|事例も紹介
弁護士を立てると、慰謝料の大幅増額も期待できます。
交通事故の慰謝料は、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」という3つの基準のいずれかに基づいて計算されます。
過去の判例に基づいていて最も高額なのは「弁護士基準」ですが、加害者側はそれより半分〜3分の1程度低額になる「自賠責基準」「任意保険基準」に基づく金額を提示してくることが多いでしょう。

例えば
交通事故でむちうちになり、後遺障害14級に認定された場合の後遺障害慰謝料は以下のとおり。
- 自賠責基準:32万円
- 弁護士基準:110万円
※任意保険基準は任意保険会社ごとに異なり非公開だが、自賠責基準に近いことが多い
しかし、被害者自身で加害者側が主張する金額を、弁護士基準の金額まで増額させることは非常に困難です。
弁護士基準は本来裁判を起こした場合に認められうる金額であり、裁判も起こさず、専門家でもない被害者が主張しても「説得力がない」とされてしまうからです。
ただし、弁護士を立てて示談交渉すれば、加害者側が弁護士基準に近い金額を認める可能性が高まります。
加害者側は「弁護士の主張を否定し続ければ裁判を起こされ、どのみち弁護士基準の金額を払うことになる」と考えるからです。

被害者自身による示談交渉では獲得し得ない金額を獲得できる可能性があることからも、弁護士への相談・依頼はおすすめです。
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弁護士による実際の増額事例
アトム法律事務所はいままで多くの交通事故案件を取り扱っており、相手方の信号無視による重大な事故の解決にも関わってきました。一例を示します。
交差点での信号無視
ご依頼者様がバイクで走行中、交差点で信号無視のバイクに衝突されて左肩の鎖骨骨折という重傷を負われました。弁護士が示談交渉に入って適正な基準の賠償額を請求した結果、当初の提示額の3.7倍に増額、2,300万円で示談が成立しました。(鎖骨骨折の増額事例の詳細)
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- 弁護士費用特約を使う
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- 上限額はあるが、基本的に被害者の自己負担は0円
- 詳しくはこちら:交通事故の弁護士特約とは?使い方・使ってみた感想やデメリットはあるかを解説
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
