自転車事故の被害者がもらえる賠償金はいくら?

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自転車事故の賠償金

新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

警視庁のデータによれば、令和元年の交通事故データのうち、自転車が交通事故に関与した割合は全体の約4割を占めるという結果が出ています。

自転車を運転する方のなかには、自動車免許を取得したことがなく、交通ルールを十分に知らない方も少なくありません。そのため、ご自身や大切な家族が自転車事故に巻き込まれてしまった場合、自動車事故とは異なった様々な問題に対処する必要があります。

当記事では、自転車事故の被害者の方に向けて、おもに損害賠償の観点から解説しています。
自転車事故の被害にあってしまった方は、ご自身のケースに当てはめてみてください。

自転車事故の賠償金においては、あくまで個別事情により結果は異なります。

個別の自転車事故による賠償金については、弁護士に直接相談されることをおすすめします。

自転車事故で請求できる賠償金とは?

自転車事故で請求できる賠償金の費目を解説

自転車事故の賠償金の範囲や金額は、事故類型や乗り物別に区別されているわけではありません。したがって、自転車事故の被害者は、自動車事故の場合と同じように、加害者に対して賠償金を請求することができます。

「賠償金」とは、交通事故における全体の「損害金」をいい、その内訳は慰謝料や休業損害など多岐に渡ります。
自転車事故で、被害者が請求しうる代表的な賠償金は以下のとおりです。

治療費・入院費通院や入院に要した費用
通院交通費通院に要した交通費(公共の運賃や自家用車のガソリン代)
入通院慰謝料入院や通院に対する慰謝料(傷害慰謝料ともいう)
後遺障害慰謝料後遺障害等級に該当する後遺症が残ったことへの慰謝料
死亡慰謝料死亡に対する慰謝料
休業損害事故による休業で請求できる減収分の損害
被害者の状況などにより請求できる項目は異なります

自転車事故の賠償金のうち慰謝料を「弁護士基準」で解説

自転車事故で被害者が加害者に請求できる慰謝料は、基本的に自動車事故と同じです。
以下の表は、慰謝料計算がもっとも高額になる「弁護士基準」を用いています。

慰謝料金額(弁護士基準による)
入通院慰謝料入通院期間を基礎として別表Ⅰ・Ⅱを使用する。別表は「損害賠償額算定基準」(通称:赤い本)に掲載されており、重傷と、むちうちなどの軽傷により使用する表が異なる。傷害慰謝料ともいわれる。
後遺障害慰謝料第1級から第14級まで区分されている。第1級がもっとも重く、「両眼の失明」、「咀嚼及び言語の機能を廃したもの」などがあげられる。慰謝料額の幅は、第1級2800万円から第14級の110万円までとなっている。
死亡慰謝料死亡した被害者が一家の支柱であれば2800万円、母親、配偶者であれば2500万円、その他2000万円から2500万円となっている。本人分だけでなく、遺族の慰謝料も認められる。

さきほどの表に記載の「入通院慰謝料」より、別表を参考にのせてみます。
以下は「重傷」(骨折など)だった場合の表になります。

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

慰謝料は、自動車事故であっても自転車事故であっても、以下の3つの算定基準があります。

  1. 自賠責基準
  2. 任意保険基準
  3. 弁護士基準

上記3つの基準では、自賠責基準が最も低額で、弁護士基準の算定が最も高額です。慰謝料計算の3つの基準や計算方法については、『交通事故の慰謝料計算機|示談前に確認できる簡単計算ツールをご紹介』もあわせてお読みください。

自転車事故における賠償金の最高額は?気になる事例を紹介

自転車事故であっても、自動車同様、損害が大きいケースでは賠償金の額も多額になります。
過去に、約9500万円の高額賠償を認めた事例もありました。

ここで、過去最高額の賠償金の支払いを命じた判決を筆頭に、高額賠償金が認められた事例をご紹介します。

自転車事故の高額賠償事例

事例番号事故概要賠償金の額
1男子小学生(小5)が運転する自転車(マウンテンバイク)が、歩行中の女性と衝突した事故。裁判所は、男子小学生が安全を図るべき基本的注意義務を怠り、走行スピードも20~30キロだったことなどから、監督義務違反者にあたる母親に対して賠償金を認めた。当時60代だった被害女性は、意識不明の重体となった。
(神戸地裁 平成25年7月4日判決)
9521万円
2男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂を自転車で走行。男性はスピードを落とすことなく交差点に進入、横断歩道を横断中の女性と衝突した。女性は脳挫傷などにより、3日後に死亡した。
(東京地裁 平成15年9月30日判決)
6779万円
3当時77歳男性が、歩行中に前方不注視の自転車と衝突。男性は事故により、著しい判断力の低下や情緒の不安定をともない、日常生活は自宅内と限定される生活を強いられた。後遺障害2級3号に認定。
(大阪地裁 平成23年7月26日判決)
6223万
4当時37歳の男性が、信号表示を無視して自転車で走行。横断歩道を横断中の女性と衝突した。加害者男性は、高速度でスピードを落とすことなく走行。被害女性は11日後に死亡した。
(東京地裁 平成19年4月11日判決)
5438万円
5当時15歳の男子中学生が、無灯火で歩道を走行中、歩行中の当時62歳の男性と衝突した。男性は頭部を強く打ち、その後死亡。
男子中学生は、ふだんから危険な運転をしていたなどの事故歴はなく、親権者に監督責任は問われなかった。被害者が保険に加入していたため、保険会社が男子中学生に求償し訴訟を提起した。
(東京地裁 平成19年7月10日判決)
3000万円
6自転車同士の正面衝突。
被害者は、当時36歳の介護士男性。
後遺症により左肩が上がらなくなったことなどから、本来の介護職に従事することができなくなり、年収は約50万円ほどおちこんだ。
介護の会社を辞職し、家事援助などをおこなう会社への転職を余儀なくされた。

(大阪地裁 平成28年9月16日判決)
2253万円

高額な賠償金が認められた事例1のケースで、その内訳の大部分を占めているのは「将来の介護費」です。

この事故の被害者は専業主婦でした。

事故にあわなければ家事に従事できたことから、平均寿命の半分の期間基礎収入が得られなかったものとして、「逸失利益」が認められています。

主婦の逸失利益については、『交通事故の慰謝料計算|主婦(主夫)が正当な慰謝料相場を受け取る方法』をあわせて参考にしてください。

その他、慰謝料の基本的な情報については、『交通事故の慰謝料|相場や計算方法など疑問の総まとめ』も参考にしてみてください。

自転車保険について解説

自転車保険の種類と補償範囲

自転車保険は、おもに損害保険会社が取り扱っており、以下のような種類があります。

自転車事故に特化した保険

保険商品により補償範囲が異なります。家族の補償も受けられる場合があり、示談交渉サービスもついています。

個人賠償責任保険

自転車事故だけでなく、日常リスクまで広く対応する保険です。具体的には、店の商品を損壊してしまった場合の損害金、自転車乗車中の事故(対人)、友人宅の家電製品を壊してしまった際の補償など、補償の範囲が広いです。

傷害補償保険

自分自身のケガに対する補償のみで、相手の治療費などの補償はすべて対象外となります。

保険による補償の有無

保険相手のケガ相手のモノ自分のケガ
自転車事故に特化
個人賠償責任保険×
傷害補償保険××

TSマーク自転車保険と補償範囲

また、「普通自転車」に付帯されるTSマークという自転車保険もあります。
「普通自転車」とは、 道路交通法令に定められた基準を満たす自転車をいいます。
車体の大きさが、長さ190cm、幅60cm以下であり、車輪が2輪または3輪であることを条件としています。

TSマークとは

「TSマーク付帯保険」とは、自転車安全整備士が点検をした自転車に貼付されるもの。青色マーク(第一種)と赤色マーク(第二種)があり、それぞれ賠償内容が異なる。

賠償責任補償 (相手への補償)

マーク種別死亡もしくは後遺障害(1級~7級)
青色1,000万円
赤色1億円

傷害補償 (自分自身に対しての補償)

マーク種別死亡もしくは後遺障害(1級~4級)15日以上の入院
青色30万円1万円
赤色100万円10万円

TSマーク付帯保険の特徴としては、まず補償の範囲が重度の後遺障害等級に限定されていることがわかります。
また、補償の額は一律になっており、損害が大きいほど充分な補償が受けられない可能性があります。

加害者が自転車保険に加入しているとしても、保険会社の提示する賠償金が本来受け取ることのできる賠償金であるとは限りません。
加害者側が提示する賠償金は、被害者にとって適正価格でないことが少なくないのです。

賠償金の金額については、示談前に弁護士にご相談ください。
弊所アトム法律事務所においては、交通事故被害者からのご相談は無料でお受けしております。
ご相談の際には、実際被害者様のお手元にある示談書(示談書がすでに加害者側から送られてきている場合)をご持参ください。

自転車事故の賠償金請求で特有の問題

賠償金の請求先は?自動車保険が使えない?

自動車事故であれば、通常、事故の加害者が加入する任意保険が交渉の窓口となります。

しかし加害者が運転していたのが自転車である自転車事故の場合、自動車保険が使えません。また、自動車の運転者に加入が義務付けられている自賠責保険も自転車事故には使えません。これは自転車が自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」。)の「自動車」にあたらないからです。

そのため被害者は、加害者が自転車保険に加入していないかぎり、加害者本人に対して損害賠償請求をおこなっていくことになります。

加害者が自転車保険に加入しているとは限らない

加害者が自転車保険に加入していなければ、保険会社が賠償金を負担してくれないため、加害者から賠償金の支払いを得ることが難しくなります。自転車保険は一部の自治体でしか加入が義務付けられていないため、加害者が加入していない恐れがあります。

自転車保険への加入が義務付けられている自治体は以下の通りです。

  • 東京都
  • 大阪府
  • 宮城県
  • 埼玉県
  • 神奈川県
  • 千葉市(千葉県)
  • 群馬県
  • 長野県
  • 山形県
  • 静岡県
  • 山梨県
  • 愛知県
  • 金沢市(石川県)
  • 滋賀県
  • 京都府
  • 奈良県
  • 兵庫県
  • 三重県
  • 岡山市(岡山県)
  • 愛媛県
  • 福岡県
  • 熊本県
  • 大分県
  • 宮崎県
  • 鹿児島県

以下の自治体では自転車保険への加入は努力義務にとどまります。

  • 北海道
  • 青森県
  • 茨城県
  • 千葉県(千葉市を除く)
  • 富山県
  • 和歌山県
  • 鳥取県
  • 徳島県
  • 香川県
  • 高知県

2021年4月時点でのデータになります。

ただし、自転車保険への加入が義務付けられている自治体であっても、加入義務に違反(条例違反)した場合の罰則規定はありません。そのため、加入義務のある自治体に居住しているにもかかわらず、自転車保険に加入していない人も多く存在すると考えられます。

加害者の支払い能力が問われる

加害者が自転車保険未加入の場合

自転車保険の加入がまったくない加害者との事故の場合(加害者の保険において示談交渉サービスの付帯がない場合)、被害者は、加害者本人もしくは加害者側弁護士に対して賠償金を請求することになります。

被害者が重症だった場合でも、加害者がお金持ちであるような例外的な場合を除いて、何千万円の賠償金をすんなり支払ってもらえることは期待できません。

加害者が自転車保険に加入している場合

自転車事故の加害者が加害者保険に加入していた場合、対人賠償保険が「無制限」であれば、通常、保険金で損害をしっかり補てんしてもらえるでしょう。

一方で加害者の保険で損害のすべてに対応ができないような場合、賠償金の回収は結局加害者の資力に依存することになるのです。このような場合、一般の方が自転車事故での賠償金を適切に回収することは難しいと言わざるをえません。

もしも自転車事故にあった被害者の方が、加害者と直接賠償金の交渉をしている場合、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

加害者が未成年の場合誰に賠償金の請求をする?

つぎに、加害者が未成年だった場合について検討してみましょう。

未成年加害者に責任能力がない場合

未成年者の責任能力が認められない場合は(監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときを除いて)監督義務者が責任を負います。過去最高額の賠償金が認められたケースで話題になった自転車事故においては、加害者である小学生に責任能力は認められず、賠償金支払い義務は、小学生の親が負うことになりました。

未成年の責任能力がないと判断される年齢は、一般的に11~12歳までといわれています。

第712条

未成年は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。

https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC712%E6%9D%A1

第714条
前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。

https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC714%E6%9D%A1

未成年加害者に責任能力がある場合

未成年者に責任能力が認められる場合、民法714条による請求はできません。しかし、監督義務者の義務違反と未成年者の不法行為(自転車事故)によって生じた結果との間に相当因果関係が認められるときは、監督義務者に民法709条に基づく不法行為が成立するため、未成年者の親に損害賠償請求できることがあります。

第709条

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC709%E6%9D%A1

後遺障害等級認定機関がない

事故により後遺症が残ってしまった場合、自動車被害事故であれば、通常は自賠責損害調査事務所という機関が後遺障害等級認定を認定します。

これに対して、自転車事故(加害者が自転車の事故)の場合は、自賠責損害調査事務所のような第三者機関が認定をおこなってくれるわけではありません。

加害者が自転車だった場合、被害者は、自分自身で加害者側に対して後遺障害があるということを証明していかなければならないのです。つまり、後遺障害が自転車事故によって発生したということの客観的証拠を自分で収集し、加害者側を納得させる必要があります。

また、後遺障害を認めてもらうためには、医学的根拠も必要になるため、的を射た後遺障害診断書が欠かせません。

交通事故に精通している弁護士であれば、後遺障害診断書についても的確なアドバイスが可能です。
後遺障害等級に基づいた適正な慰謝料を請求するためには、弁護士に相談のうえ手続きをおこなった方が無難でしょう。

関連記事

交通事故における目の後遺障害について解説|等級の認定基準、慰謝料相場とは?

自転車事故の賠償金請求は弁護士依頼がベスト

自転車事故においては、自動車事故以上に検討しなければならない要素が多数存在します。

加害者の資力によって、賠償額の請求が困難になることも否定できません。

自転車事故の被害者になってしまった場合には、加害者との示談交渉や、賠償金の額で泣き寝入りしないためにも、一度弁護士にご相談されることをおすすめします。

アトム法律事務所では、24時間365日、相談のご予約を受け付けております。
専門のオペレーターが、被害者様の状況を把握したうえで適宜ご案内をさせていただいております。
被害者の方は、安心してお電話ください。
なお、弁護士とのLINEでのご相談も承っております。

まとめ

  • 自転車事故(加害者が自転車)の賠償金は、自動車事故の賠償金と区別されているわけではない
  • 自転車事故で相手方に資力がないと、損害賠償金を全額回収できないおそれがある
  • 自転車事故において自動車保険は使えない
  • 自転車事故でも高額賠償金は認められる
  • 自転車事故は、個別事情により検討する要素が多くなることがある
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