自転車事故の慰謝料・示談金の相場はいくら?実際の高額賠償事例も紹介

更新日:

自転車事故の慰謝料いくらもらえる?

自転車事故で被害者が請求できる慰謝料相場は、自動車事故と基本的には同じです。

被害者の状況慰謝料相場
打撲、捻挫で通院1ヶ月~6ヶ月19万円~89万円
骨折で通院1ヶ月~6ヶ月28万円~116万円
後遺障害が認定+110万円~2800万円
被害者が死亡2000万円~

この記事では、自転車事故被害者の方に向けて、具体的な慰謝料額の算出方法を紹介していきます。

ご自身や大切な家族が自転車事故に巻き込まれてしまった場合の対応も解説しますので、ご本人やご家族の方もぜひご参照ください。

自転車事故の賠償金は、個別事情により結果が異なります。

自転車事故は死亡や重傷を負う被害者も多いことが特徴で、自転車と歩行者による事故で1億円近い高額な賠償事例もあります。

自転車事故による賠償金については、弁護士に直接相談されることをおすすめします。

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自転車事故の被害者が知っておきたい慰謝料の基本

自転車事故の慰謝料は3種類ある

交通事故における慰謝料とは、被害者の負った精神的苦痛を緩和するための金銭です。

自転車事故における慰謝料には、入通院慰謝料(傷害慰謝料)、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3つがあります。

交通事故の慰謝料

事故で入通院した場合は入通院慰謝料が、症状が後遺障害に認定されたら後遺障害慰謝料が、被害者が死亡したら死亡慰謝料をそれぞれ請求できます。

慰謝料と示談金の違い

慰謝料と示談金の違いを簡単にまとめると以下の通りです。

交通事故の慰謝料
  • 慰謝料は損害賠償金の一部(精神的苦痛に対する補償)
  • 示談金は損害賠償として支払われる最終的な金額

示談金は加害者と被害者の間で「今後この件について争わない」と合意する際に支払われる最終的な金額を指します。

よって示談金の中には慰謝料のほか、治療費・休業損害・通院交通費・後遺障害逸失利益など、事故によって発生したさまざまな損害が含まれています。

交通事故の慰謝料は「弁護士基準」で請求

下表は、自転車事故にかぎらず、交通事故で用いられる慰謝料の3つの算定基準です。

交通事故の慰謝料の3基準

基準名概要
自賠責基準国が定める最低限の算定基準
(車・バイクが絡む事故)
任意保険基準各任意保険会社独自の基準
自賠責基準と同程度
弁護士基準過去の判例に基づく算定基準
裁判所も用いる最も高額な基準

※任意保険基準は現在非公開

慰謝料は、「弁護士基準」で計算しないかぎり、不当に低い金額で終わってしまう危険性があります。

自転車事故の被害者が弁護士基準の慰謝料を手にするために必要なことは、弁護士が慰謝料の請求と交渉をおこなうことです。

増額交渉(弁護士あり)

弁護士が交渉の場に立つことで、この後の裁判も辞さないという意思を伝えることができ、「いずれ裁判で受け入れる金額なら、示談で認めよう」と、保険会社の態度が和らぐ可能性が高まるからです。

自転車事故の被害者が慰謝料を獲得するための対応

自転車事故の被害者が、慰謝料を獲得するためにすべき対応は以下のとおりです。

自転車事故の被害者がすべき対応

  1. 警察に事故発生を報告
  2. 病院で治療を受ける
  3. 人身事故として警察に届け出る
  4. 完治したら示談交渉を開始
    後遺症が残っているときは後遺障害申請
示談金の受け取りまでの流れ

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被害者向けのアドバイス

事故現場で示談してしまうことはとても危険です。

事故直後は軽傷だと思っていても次第に痛みが強くなり、骨が折れていた、頭を打っていたということもありえます。

また、事故相手が「後から必ず連絡を入れる」という言葉もうのみにすべきではありません。

家族が自転車事故にあったときのサポート

自転車との事故は身近なもので、お子さんからお年寄りまで、日常生活の中で被害者となってしまう恐れがあります。

たとえば、子どもが被害者であれば、事故当時の状況をゆっくり思い出させて聞き取ってあげる、大人と同じように痛みを訴えることができない恐れがあるので病院でもしっかり検査を受けさせるといった対応が重要です。

とくに死亡事故意思表示ができないほどの重体事故の場合、あるいは未成年の子が被害者となったときは、家族としてできることをまとめた以下の記事をお役立てください。

関連記事

家族が事故にあったら?被害者家族や遺族がすべき法的手続きと対応の基本

自転車事故の慰謝料相場

自転車事故の入通院慰謝料の相場|慰謝料計算機も紹介

自転車事故の慰謝料相場を知るためには、事故日~最後の通院日(または症状固定日)の期間を算出したうえで、以下の慰謝料算定表を使います。

打撲や切り傷、むちうちなどの場合は別表Ⅱ、それ以外の場合は別表Ⅰを使用します。

別表Ⅱ(軽い打撲、擦り傷、むちうちなどの軽傷)

軽症・むちうちの慰謝料算定表
軽症・むちうちの慰謝料算定表

1月を30日として、端数が生じた場合には日割り計算を行います。

例えば、むちうちで事故日から最後の通院日まで100日間だったとすると、治療期間は「3ヶ月と10日」となります。

3ヶ月分の慰謝料は53万円、10日分の慰謝料は(67万円-53万円)÷30日×10日≒4万6667円となるので、最終的な入通院慰謝料の目安は53万円+4万6667円=57万6667円となります。

別表Ⅰ(別表Ⅱ以外の場合)

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

もしもこの表からかけ離れた金額であったり、1日あたり4,300円といった金額提示を受けている場合は、自賠責基準や相手の任意保険基準による金額で、まだ増額の余地が残されている可能性が高いです。

入通院慰謝料の計算については以下の慰謝料計算機を使えば簡単に算定可能です。過失割合を考慮しない目安額になりますが、参考程度にご活用ください。

自転車事故の後遺障害慰謝料の相場

後遺障害慰謝料は、第1級から第14級まで区分された等級に応じて金額が決定されます。

障害の程度が最も重い第1級の2800万円から、障害の程度が最も軽い第14級の110万円までとなっています。

後遺障害慰謝料の相場

等級 弁護士基準の慰謝料
1級・要介護2800万円
2級・要介護2370万円
1級2800万円
2級2370万円
3級1990万円
4級1670万円
5級1400万円
6級1180万円
7級1000万円
8級830万円
9級690万円
10級550万円
11級420万円
12級290万円
13級180万円
14級110万円

最も低い14級であっても、後遺障害慰謝料の相場は110万円と高額です。ケガが完治せず、後遺症が残った場合には、適切な後遺障害等級の認定を受けることが非常に重要です。

ご自身が自転車に乗っていて自動車とぶつかったという方は、後遺障害等級認定の手続きに関する『後遺障害等級が認定されるには?|認定の仕組みと認定率の上げ方を解説』の記事をご覧ください。

死亡慰謝料の相場

弁護士基準を用いた死亡慰謝料相場は、亡くなった被害者の家庭内の立場に応じて2000万円から2800万円となります。

死亡慰謝料の相場

被害者の立場弁護士基準の慰謝料
一家の支柱2800万円
母親・配偶者2500万円
その他の場合2000万円~2500万円

弁護士基準による死亡慰謝料は、被害者本人に対する金額だけでなく、ご遺族が請求できる固有の金額も含めたものになります。

慰謝料の計算は慣れないと複雑に感じたり、注意すべきポイントが多かったりするので、わからないことがあれば弁護士に相談してみましょう。

死亡事故の慰謝料請求や家族がすべき対応については、くわしい関連記事をお役立てください。

自転車事故の賠償金・示談金の内訳

自転車事故で請求できる主な賠償金・示談金の一覧は、以下のとおりです。

賠償金・示談金の費目一覧

費目概要
治療費通院や入院に要した費用
通院交通費公共の運賃や自家用車のガソリン代など
入通院慰謝料入院や通院で生じる精神的苦痛に対する補償
後遺障害慰謝料後遺障害による精神的苦痛に対する補償
死亡慰謝料死亡した本人や遺族の精神的苦痛に対する補償
休業損害事故による休業で失った減収分の損害
逸失利益労働能力低下による将来的な減収分の損害

※ 被害者の状況などにより請求できる項目は異なる

治療費・入院費や通院交通費は、原則として実費が認められます。

ただし、休業損害や逸失利益は分かりにくく、知識の有無で結果が大きく変わる可能性もあるため、交渉時には注意が必要です。

休業損害とは?

休業損害は事故による休業で収入が失われた場合に請求できる費目ですが、金銭収入を得ていない主婦であっても請求が可能になります。

「主婦に休業損害は出せない」と言ってくる保険会社も考えられますが、主婦であることを理由に休業損害の請求が却下されることは適切ではありません。

関連記事

交通事故の休業損害|計算方法や休業日の数え方・いつもらえるか弁護士解説

逸失利益とは?

逸失利益については、被害者の将来にわたる収入の補償となるため、着実に受け取っておかないと生活に支障が出てしまいます。

逸失利益とは

逸失利益は事故発生時に働いていない年少者であっても請求できますが、金額の妥当性について争いになる可能性は十分あります。

交通事故で相手から受け取るべき損害は慰謝料だけではありません。損害賠償全体を着実に請求していくことで、被害者が泣き寝入りしないようにしましょう。

関連記事

交通事故の逸失利益とは?職業別の計算方法!早見表・計算機で相場も確認

自転車事故の示談・賠償請求でもめやすい理由

自転車事故は、自動車事故に比べて損害賠償金を決める示談交渉がもめやすいと言われています。

自転車事故でもめやすい理由

  • 加害者が保険に加入していないことがある
  • 賠償金が加害者の保険上限額を超えることがある
  • ドライブレコーダーが無いので過失割合が争いになりやすい
  • 後遺障害等級の認定機関がない
  • 加害者が未成年である場合が多い

いずれも自転車事故特有の注意点なので、確認していきましょう。

加害者が保険に加入していないことがある

加害者が自転車の場合、無保険で以下のようなトラブルが生じる可能性があります。

  • 損害賠償金を支払いたくない加害者が、示談交渉に応じない
  • 加害者が損害賠償金を支払わない、あるいは支払えない

交通事故の損害賠償金は、基本的には加害者が加入している保険から支払われます。損害賠償金が高額になってもきちんと支払いを受けられるのは、このためです。

しかし、自転車の場合は自動車における自賠責保険のように、全国共通で強制加入とされる保険がありません。一部地域では自転車保険の加入が義務化されていますが、そうではない地域もあるのです。

こうした事情から、加害者本人が示談交渉や損害賠償金の支払いに対応することになり、上記のようなトラブルが生じる恐れがあります。

加害者が示談に応じない場合は、内容証明郵便で示談を申し入れるなどの対策が必要です。加害者から賠償金が適切に支払われない場合は、自身の保険を使うことも検討してみましょう。

加害者が賠償金を支払えない場合の対処法については、後ほど詳しく解説します。

加害者に自己破産されたらどうなる?

加害者が賠償金を集められない場合、最終的に自己破産を選ぶケースもあるでしょう。
自己破産されてしまうと、事故の内容によっては加害者が賠償金を支払わなくてよくなり、適切な賠償金がもらえない可能性があります。

もっとも、故意または重過失で発生した自転車事故の場合、自己破産されたとしても支払い義務は残ります。

加害者が自己破産したからといって、必ずしも被害者が賠償金を受け取れなくなるわけではありませんが、万が一の可能性も考えて被害者自身の保険でも補償されるように準備しておいた方がいいでしょう。

賠償金が加害者の保険上限額を超えることがある

加害者が保険に入っていたとしても、損害賠償金の支払いに使われる「対人賠償保険」の補償上限額を超えた分は、加害者本人から支払ってもらうことになります。

この場合、加害者の誠意や資力の問題から、上限超過分の賠償金を受け取れない可能性があります。

のちほど実例も紹介しますが、自転車事故では損害賠償金が非常に高額になることもあります。加害者が加入する対人賠償保険が「無制限」なら問題ありませんが、補償額に上限がある場合は注意が必要です。

示談交渉時には、加害者側が損害賠償金をなんとか上限額に収めようとして話し合いが難航することも考えられます。事前に弁護士に相談しておくことがおすすめです。

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過失割合が争いになりやすい

自転車事故の場合、以下の点で過失割合の交渉でもめる可能性があります。

  • お互いに自転車だと、ドライブレコーダーの映像が残っておらず事故状況がはっきりしない
  • 自転車同士の事故に関する判例が少なく、過失割合の算定で参考にできる材料が乏しい

過失割合は「事故発生に対する責任が、加害者側と被害者側それぞれにどれくらいあるか」を割合で示したものです。事故状況や過去の判例を参考に算定されます。

自身についた過失割合分、受け取れる損害賠償金が減額される(過失相殺)ので、過失割合の交渉はもともともめやすいポイントです。

自転車事故が起こりやすい交差点での出会い頭や、自転車同士の事故の過失割合の考え方を解説しています。

なお、関連記事『交通事故の過失割合でもめる5ケース&対処法|証拠が無い時どうする?』では、過失割合でもめやすいケースとその対応を説明しています。

後遺障害等級の認定機関がない

事故により後遺症が残ってしまった場合、加害者が自動車であれば、通常は自賠責損害調査事務所という機関が後遺障害等級認定を認定します。

これに対して、自転車事故(加害者が自転車の事故)の場合は、自賠責損害調査事務所のような第三者機関が認定をおこなってくれるわけではありません。

加害者が自転車だった場合、被害者は自分自身で後遺障害があることを証明していかなければならないのです。

つまり、後遺障害が自転車事故によって発生したということの客観的証拠を自分で収集し、加害者側を納得させる必要があります。

また、後遺障害を認めてもらうためには医学的根拠も必要になるため、後遺障害の存在が伝わるような後遺障害診断書が欠かせません。

後遺障害認定につながる後遺障害診断書の内容について詳しくは『後遺障害診断書とは?もらい方と書き方、自覚症状の伝え方を解説』の記事をご覧ください。

ポイント

交通事故に精通している弁護士であれば、後遺障害診断書についても的確なアドバイスが可能です。
後遺障害等級に基づく適正な慰謝料請求のためには、弁護士に相談のうえ手続きをおこなった方が無難でしょう。

加害者が未成年である場合が多い

自転車は自動車と異なり免許が不要であるため、多くの未成年が利用しています。そのため、未成年が加害者になる可能性が自動車よりも大きくなります。

原則として、加害者が未成年であると支払い能力がないため、親への請求が現実的です。ただし、責任能力の有無によって異なる法的根拠を用いて検討せねばなりません。

加害者が未成年の場合、責任能力がない未成年責任能力がある未成年とに分けて、くわしくみていきましょう。

なお、一般的には未成年の責任能力がないと判断される年齢は11~12歳までといわれています。

未成年加害者に責任能力がない場合

未成年に責任能力が認められない場合は、法的に未成年を監督する義務を負う立場にある監督義務者が責任を負うことになります。基本的には、未成年の親へ請求を行うことになるでしょう。

ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても事故が起こっていた場合を除きます。

過去最高額の賠償金が認められたケースとして話題になった自転車事故では、加害者である小学生に責任能力は認められず、賠償金の支払い義務は小学生の親が負うことになりました。

未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。

民法 第712条

前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。

民法 第714条

未成年加害者に責任能力がある場合

未成年に責任能力が認められる場合、民法714条による請求はできません。責任能力があるのであれば、未成年者であろうと加害者本人が責任を負うことになります。

しかし、未成年者のほとんどは未就労であることから、加害者本人に請求したところで賠償金の支払いは期待できません。

そこで、監督義務者の監督が不十分であったために未成年者による自転車事故が発生し、被害者に損害が生じたとして、監督義務者である未成年者の親に損害賠償請求できることがあります。

これは、監督義務違反という不法行為によって損害が生じたとして、民法709条を根拠に請求を行うものとなります。

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法 第709条

自転車事故の加害者が賠償金を払えない時はどうする?

自転車保険に加入していない加害者との事故の場合、被害者は加害者本人に対して賠償金を請求することになります。

加害者から損害賠償金をすんなり払ってもらえるとは限りません。こうした場合の対処法を解説していきます。

被害者自身の保険が使えるか確認する

加害者から賠償金の支払いが期待できない場合、まずは被害者自身の保険が使えるか確認しましょう。

自転車保険は主に損害保険会社が取り扱っており、一般的に自転車保険、個人賠償責任保険、傷害補償保険があります。

自転車事故にかかわる保険

保険相手のケガ相手のモノ自分のケガ
自転車保険
個人賠償責任保険×
傷害補償保険××

それぞれの詳細を解説します。

自転車保険

自転車保険は、自転車事故に特化した保険です。

加入する保険商品により異なりますが、自転車保険の補償範囲は「事故相手のケガやモノに対する補償」と「自分のケガに対する補償」に大きくわけられます。

被保険者の家族の補償まで受けられる場合があり、示談交渉サービスもついていることもあります。

個人賠償責任保険

個人賠償責任保険は、自転車事故だけでなく日常リスクまで広く対応する保険です。

具体的には、店の商品を損壊してしまった場合の損害金、自転車乗車中の事故(対人)、友人宅の家電製品を壊してしまった際の補償など、補償の範囲が広いです。

傷害補償保険

傷害補償保険は、自分自身のケガに対する補償のみで、相手の治療費の補償などはすべて対象外となります。

TSマークが自転車にあるか確認する

自転車保険に加入していないと思い込んでいても、自転車にTSマークがついているか確認してください。TSマークがある自転車なら、TSマーク付帯保険を利用できるでしょう。

TSマークとは

TSマークとは、自転車安全整備士が点検をした自転車に貼付されるもの。青色マーク(第一種)と赤色マーク(第二種)、緑色マーク(第三種)があり、それぞれ賠償内容が異なる。

TSマークは「普通自転車」に付帯されています。「普通自転車」とは、 道路交通法令に定められた基準を満たす自転車をいい、車体の大きさが、長さ190cm・幅60cm以下で、車輪が2輪または3輪であることが条件です。

賠償責任補償 (相手への補償)

マーク種別補償範囲限度額
青色死亡・重度後遺障害※1,000万円
赤色死亡・重度後遺障害※1億円
緑色死亡・傷害
示談交渉サービスつき
1億円

※後遺障害等級1級~7級

傷害補償 (自分自身に対しての補償)

マーク種別死亡・重度後遺障害※15日以上の入院
青色30万円1万円
赤色100万円10万円
緑色50万円5万円

※後遺障害等級1~4級

TSマーク付帯保険の特徴としては、被害者・加害者共に重度の後遺障害を負った場合でないと補償されにくいことが挙げられます。特に被害者自身のケガについては、TSマーク付帯保険だけでは不十分なことも多いです。

関連記事『自転車事故の保険請求の流れや補償内容|自賠責保険が使えない場合に備えよう』でも自転車保険の特徴や、保険の選び方などについて解説していますので、あわせてご確認ください。

仕事中や通勤中の自転車事故か確認する

自転車事故が仕事中や通勤中に発生したのであれば、労災保険が使える場合もあります。

自転車事故で負ったケガが業務災害や通勤災害として認定されると、療養補償給付(療養給付)・休業補償給付(休業給付)・障害補償給付(障害給付)といった補償が支給されます。

関連記事は自動車事故を想定した解説になっていますが、労災保険の基本的な情報や労災保険を利用する際の注意点については参考になるでしょう。あわせてご確認ください。

自転車事故における高額賠償事例を紹介

自動車事故と同様に、自転車事故であっても損害が大きいケースでは賠償金の額も高額になります。過去には、1億円近い高額賠償を認めた自転車事故の事例もありました。

ここからは、高額な賠償金が認められた事例を紹介します。

高額賠償事例|自転車と歩行者の事故

自転車と歩行者が衝突した事故で、高額な賠償となった事例を紹介します。

自転車対歩行者の高額賠償事例1

東京地判平19・4・11(平成18年(ワ)18455号)

青信号の横断歩道を歩行中の原告が、自転車に乗った被告と衝突し、頭蓋内損傷の傷害を負い、死亡した。


裁判所の判断

「…亡Aの慰謝料は2600万円と認めるのが相当である…」

東京地判平19・4・11(平成18年(ワ)18455号)
  • 過失割合は加害者10割
  • 葬祭費用200万円、逸失利益として2130万7841円などが認められた
損害賠償額

5437万9673円

自転車対歩行者の高額賠償事例2

大阪地判平23・7・26(平成22年(ワ)9736号)

夜間、歩道を歩行中の原告が、自転車に乗った被告と正面衝突し、脳挫傷などの傷害を負った。


裁判所の判断

「…原告に残存する後遺障害の程度に鑑みれば、後遺障害慰謝料は2400万円が相当…」

大阪地判平23・7・26(平成22年(ワ)9736号)
  • 被害者は高次脳機能障害で2級3号に認定された
  • 過失割合は加害者10割
  • 将来介護費として2316万5100円も認められた
損害賠償額

4853万3446円

自転車対歩行者の高額賠償事例3

名古屋地判令5・4・28(令和4年(ワ)1306号)

歩道を歩行中の原告が、飲酒して不十分な明るさのライトで進行していた被告自転車と正面衝突し、足首骨折の傷害を負った。


裁判所の判断

「…後遺障害の程度に鑑み、290万円を相当と認める…」

名古屋地判令5・4・28(令和4年(ワ)1306号)
  • 被害者は足関節の機能障害で12級7号に認定された
  • 過失割合は加害者10割
  • 障害慰謝料が150万円、後遺障害慰謝料が290万円認められた
損害賠償額

935万2203円

高額賠償事例|自転車同士の事故

自転車同士の事故における高額な賠償事例です。

自転車同士の高額賠償事例1

東京地判平20・6・5(平成19年(ワ)466号)

原告の自転車と、車道に進入しようとしていた被告の自転車が衝突し、原告は脳内出血・頭蓋骨骨折等の傷害を負った。


裁判所の判断

「…後遺障害慰謝料として2800万円を認めるのが相当である…」

東京地判平20・6・5(平成19年(ワ)466号)
  • 被害者は右片麻痺、高次脳機能障害など後遺障害1級相当と認められた
  • 過失割合は加害者5割被害者5割
  • 両親について近親者固有の慰謝料各150万円が認められた
  • 逸失利益について9522万1599円が認められた
損害賠償額

9266万1102円

自転車同士の高額賠償事例2

東京地判平28・9・16(平成26年(ワ)7540号)

原告の自転車と、無灯火で二人のりをしていた被告自転車が正面衝突し、原告は鎖骨骨折などの傷害を負った。


裁判所の判断

「…後遺障害の内容・程度等本件に現れた一切の事情を考慮して,530万円をもって相当…」

東京地判平28・9・16(平成26年(ワ)7540号)
  • 被害者は肩の運動障害で後遺障害10級10号と認められた
  • 過失割合は加害者6割被害者4割
  • 傷害慰謝料について140万円が認められた
  • 逸失利益について1347万2352円が認められた
損害賠償額

1487万1483円

自転車同士の高額賠償事例3

東京地判平23・3・15(平成21年(ワ)47561号)

同方向に走行していた原告自転車と被告自転車が接触し、原告は親指開放骨折などの傷害を負った。


裁判所の判断

「…後遺障害慰謝料550万円…後遺障害慰謝料は、上記金額とするのが相当である。…」

東京地判平23・3・15(平成21年(ワ)47561号)
  • 被害者は親指の運動障害で後遺障害10級7号と認められた
  • 過失割合は加害者5.5割被害者4.5割
  • 傷害慰謝料について100万円が認められた
  • 逸失利益について1148万7650円が認められた
損害賠償額

1080万6113円

自転車事故だからといって、賠償金が低額で済むということはありません。

自転車事故であっても高額な賠償金が発生することがある以上、賠償金額がいくらになるのかという点については、慎重に判断すべきでしょう。

また、自転車同士の事故では被害者側にも過失が認められやすいのが特徴です。

高額な賠償金となっても、被害者側に過失割合がつくと減額されてしまいます。事故状況を正確に反映した過失割合でなければ、最終的に受け取る賠償金の金額が妥当とはいえません。

自転車事故の賠償金請求は弁護士依頼がベスト

妥当な賠償金を手にしたいなら弁護士相談からはじめよう

自転車事故においては、自動車事故以上に検討しなければならない要素が多数存在します。

加害者が保険に加入していても、保険会社が提示する慰謝料や賠償金をそのまま鵜呑みにしてはいけません。被害者が本来受け取れる妥当な金額よりも低く提示している可能性があります。

自転車事故の被害者になってしまった場合には、保険会社との示談交渉や、賠償金の額で泣き寝入りしないためにも、一度弁護士にご相談されることをおすすめします。

関連記事

自転車事故で弁護士が必要な理由|示談交渉、弁護士費用まで解説

アトム法律事務所の解決事例

アトム法律事務所の弁護士が扱った自転車事故の案件を紹介します。

左肩骨折の増額事例

自転車を押しながら歩行していた被害者が、歩道を猛スピードで走ってきた自転車に跳ね飛ばされて左肩骨折を負ったケース


弁護活動の成果

最終的な受取金額が260万円で示談が成立した。

年齢、職業

40~50代、自営業

傷病名

左肩骨折

後遺障害等級

14級9号

この他にもアトムの弁護士が扱った解決事例を確認したい場合は、「交通事故の解決事例|アトム法律事務所の実績紹介」よりご確認ください。

アトム法律事務所の無料相談案内

アトム法律事務所では、24時間365日、相談のご予約を受け付けております。
専門のオペレーターが、被害者様の状況を把握したうえで適宜ご案内をさせていただいております。
被害者の方は、安心してお電話ください。
なお、弁護士とのLINEでのご相談も承っております。

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まとめ

  • 自転車事故の賠償金は、自動車事故の賠償金と区別されているわけではない
  • 自転車事故でも高額な賠償金が認められることもある
  • 自転車事故で加害者に資力がないと賠償金を全額回収できない恐れがある
  • 自転車事故では加害者が保険に加入していない恐れがある
  • 自転車事故は過失割合でもめやすかったり後遺障害等級の認定機関がなかったりするため、個別事情を検討する要素が多くなる

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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