自転車事故で弁護士が必要な理由|示談交渉、弁護士費用まで解説

この記事でわかること
自転車事故に遭ったら、弁護士に相談・依頼することがおすすめです。
自転車事故の性質上、示談や示談に至るまでの過程で自動車事故とは違う難しさ・大変さが出てくることが多いからです。
なぜ自転車事故は弁護士に依頼したほうが良いのか、依頼するとどのようなメリットがあるのか、自転車事故の示談の流れや示談金も確認しながら見ていきましょう。
弁護士費用の内訳や費用負担を抑える方法についても解説しているので、費用が不安で弁護士依頼を躊躇している方もぜひご確認ください。

自転車事故の示談の流れと示談金
自転車事故の示談交渉では、事故発生から示談成立までに6つのステップがあります。示談金は治療費、休業損害、慰謝料など複数の項目で構成されます。
自転車事故の示談成立までの流れ
自転車事故の発生から示談成立までの流れは、以下のとおりです。
- 事故発生、警察への連絡
- 保険会社への連絡
- 治療
- 後遺障害認定(後遺症が残った場合)
- 示談交渉
- 示談成立、示談金支払い
それぞれのステップについて、詳しく説明します。
事故発生、警察への連絡
自転車事故が発生した場合は、怪我人がいれば救護をし、すぐに警察に連絡してください。交通事故を警察に届け出ることは道路交通法上の義務であり、怠ると罰則を受けることがあります。さらに、交通事故証明書が発行されなくなり、その後の損害賠償請求が難しくなる可能性もあります。
事故直後に警察に連絡していない場合は、今からでも良いので事故を警察に報告しましょう。
人身事故として処理してもらうためには、診断書を警察に提出する必要もあります。
自転車事故を警察に報告すると、警察による事故現場の実況見分(※)や聞き取り捜査が行われます。捜査の内容をまとめた調書(実況見分調書や供述調書など)は示談交渉で重要な証拠となるため、必ず作成してもらってください。
※実況見分は人身事故の場合のみ
自転車事故を警察に届け出ないリスクや、届ける際の注意点は『自転車事故も警察に報告!軽い接触事故も人身事故で届け出よう』をお読みください。
保険会社への連絡
次に、加害者や被害者が保険に加入している任意保険会社に連絡してください。
加害者側の保険会社とは今後示談成立までさまざまなやり取りをすることになります。
直近の問題としては、今後の治療費を被害者側で一旦立て替えておくのか、加害者側の保険会社が病院に直接支払ってくれるのか確認する必要があるでしょう。早めに連絡してください。
なお、保険会社は被保険者に対し、事故に遭った際には一報入れるよう求めていることが多いです。自分の加入している保険にも速やかに連絡を入れましょう。
治療
怪我をしている場合は、治療を始めます。痛みや痺れのある部分は医師に全て申告しましょう。
加害者側の保険会社に治療費を直接支払ってもらうには、「同意書」という書類を保険会社宛に提出する必要があります。
治療中、医師の指示に従わず過剰な頻度、あるいは低すぎる頻度で通院していると、のちの示談交渉時に治療費の補償や慰謝料が一部減額されるおそれがあります。
必ず医師の指示通りに通院してください。
また、整骨院や接骨院に通いたい場合は、事前に病院の医師の許可を取り、病院での治療と並行しながら通うようにしましょう。
後遺障害認定(後遺症が残った場合)
治療終了後に後遺症が残っている場合には、主治医に後遺障害診断書を作成してもらい、後遺障害認定の申請をします。
後遺障害残存に対する補償(後遺障害慰謝料・逸失利益)は、後遺障害認定機関の審査を通過し、後遺障害等級を獲得することが前提となります。
ただし、自転車事故の場合、後遺障害等級認定の受け方が自動車事故の場合とは異なります。詳しくは後ほど解説するので、ご確認ください。
示談交渉
ケガが完治したら、あるいは後遺障害認定の審査が終わったら、相手方と示談交渉を行います。
加害者が示談代行サービス付きの任意保険に加入していた場合には、保険会社と示談交渉をします。
基本的には加害者側から示談金額や過失割合などを提示してきます。提示を受けたら内容を確認し、訂正すべき項目があれば交渉しましょう。
待っていても提示が来ない場合は、被害者側から加害者側に問い合わせてください。
示談交渉は基本的に電話やFAXなどを通して遠隔で行われます。
示談成立
示談交渉の話し合いがまとまれば、示談書に署名します。示談書は、示談の合意内容を明確にするために作成される文書です。示談書に署名したら、示談成立となります。
基本的には加害者側から示談書(免責証書)が送られてくるので、内容をよく確認した上で署名・捺印をし、返送してください。
返送後2週間程度で、示談金が振り込まれるでしょう。
自転車事故の示談金の内訳と相場
自転車事故の示談金の主な内訳は、以下のとおりです。
- 治療関係費
- 休業損害
- 慰謝料
- 逸失利益
- 物損に関する賠償金
それぞれ見ていきましょう。
治療関係費
基本的には怪我の完治または症状固定までに発生した治療関係費全額が示談金の対象です。治療関係費には入院費、手術費、外来費、薬代、リハビリ費、通院交通費、装具購入費用など、全て含まれます。
ただし、過剰な治療・出費があったと判断された場合は、その分が減額されます。
休業損害
事故の治療で仕事を休んだ場合、その間の収入の損失が示談金の対象となります。基本的には事故前3ヶ月間の収入から1日あたりの収入を算出し、休業日数をかけた金額になります。
慰謝料
自転車事故によって受けた精神的苦痛に対する損害が慰謝料であり、以下の3つがあります。
- 入通院慰謝料:交通事故による入通院で生じる精神的苦痛に対する補償
- 後遺障害慰謝料:後遺障害が残ることで生じる精神的苦痛に対する補償
- 死亡慰謝料:交通事故で死亡した被害者とその遺族の精神的苦痛に対する補償
慰謝料の相場は、過去の判例に沿った法的正当性の高い算定基準(弁護士基準)を用いて計算することが重要になってきます。被害者が本来得るべき相場は弁護士基準のものだからです。
ここからは弁護士基準の具体的な慰謝料相場を表にして紹介します。
(1-1)入通院慰謝料 軽傷の場合(具体例:打撲・捻挫)

(1-2)入通院慰謝料 重傷の場合(具体例:骨折・高次脳機能障害)

(2)後遺障害慰謝料
等級 | 万円 |
---|---|
1級・要介護 | 2,800 |
2級・要介護 | 2,370 |
1級 | 2,800 |
2級 | 2,370 |
3級 | 1,990 |
4級 | 1,670 |
5級 | 1,400 |
6級 | 1,180 |
7級 | 1,000 |
8級 | 830 |
9級 | 690 |
10級 | 550 |
11級 | 420 |
12級 | 290 |
13級 | 180 |
14級 | 110 |
(3)死亡慰謝料
被害者の立場 | 金額 |
---|---|
一家の支柱 | 2,800万円 |
母親・配偶者 | 2,500万円 |
その他の場合 | 2,000万円~2,500万円 |
自転車事故の慰謝料相場の詳細や、被害者が知っておきたい事故対応、高額な賠償事例などについては、関連記事でくわしく解説していますので参考にしてください。
逸失利益
自転車事故によって死亡した場合、または後遺障害が残った場合、将来の収入が減少する可能性があります。その減少した収入が逸失利益です。
逸失利益は、死亡または後遺障害の程度、年齢、職業、収入などによって算出されます。
計算方法は複雑なので、以下の計算機から相場をご確認ください。
物損に関する賠償金
自転車事故によって自分が乗っていた自転車や積載物、持ち物などが損傷した場合は、その修理費や弁償代も加害者側に請求できます。
自転車事故に遭ったら弁護士が必要な理由
自転車事故では、下記の理由から十分な補償を受けられないリスクが高く、弁護士に依頼する必要性が高いといえます。
自転車事故は過失割合の算定が難しくもめやすい
過失割合とは、交通事故が起きた責任が当事者双方(加害者側と被害者側)にどれくらいあるかを割合で示したものです。
自身についた過失割合分、受け取れる示談金が減額(過失相殺)されます。
過失割合が10%違うだけで受け取れる示談金が大きく変わることもあるため、適正(有利)な過失割合で示談することは非常に大切です。
しかし、自転車事故の場合には、以下のような点から過失割合の算定が難しかったり、加害者側と争いになりやすかったりします。
- 互いに自転車、あるいは自転車と歩行者の事故の場合、通常過失割合の算定で参考にする書籍「別冊判例タイムズ38」に記載がない
- 自転車事故の過失割合については、参考にできる判例も少ない
- 自動車と自転車の事故の場合、立場が弱い分自転車側(被害者)の過失割合が小さくなるため、自動車側(加害者)がよりシビアな態度で交渉してくる
もともと過失割合は各事故固有の細かい要素まで考慮して柔軟に算定されるものであり、算定者の裁量によるところも大きいです。
過失割合について参考にすべき判例などが乏しい自転車事故の場合、その傾向はより一層強くなります。
被害者が自力で適切な過失割合を算定するのは難しいため、弁護士を立てなければ交渉で不利になってしまうでしょう。
自転車事故の後遺障害認定は自動車事故より複雑
後遺症が残った場合、自動車事故であれば「損害保険料率算出機構」という審査機関に書類を提出し、後遺障害認定の審査を受けます。
しかし、自転車事故で加害者も自転車だった場合、この機関に後遺障害認定の審査をしてもらうことはできません。
以下のいずれかの方法で後遺障害認定を受けることになるため、手続きや審査対策に手間がかかるのです。
- 加害者が自転車保険に入っているなら、加害者側の自転車保険会社が審査をしてくれることがある
- 被害者自身が人身傷害保険に入っている場合は、その保険が審査をしてくれることがある
- 加害者・被害者ともに無保険の場合は、訴訟を起こし裁判所に後遺障害等級を判断してもらう
(1)や(2)の方法を取る場合、後遺障害認定の審査をするのは加害者または被害者の保険会社です。中立的な機関ではないことから、審査結果について加害者側と揉めてしまうおそれがあります。
(3)の方法なら裁判所という中立的な機関に後遺障害等級を判断してもらえますが、結果が出るまでに多くの手間と時間がかかりがちです。
どの方法を取るにせよイレギュラーな形であり対応が難しいため、弁護士を立てることがおすすめです。
自転車事故は示談金を踏み倒されるリスクが高い
交通事故では、基本的に被害者に対する示談金は、加害者が加入する保険から支払われます。示談金が高額になっても滞りなく一括で支払いが行われるのはこのためです。
しかし、加害者が自転車の場合、無保険の可能性が高くなります。
自動車には最低限自賠責保険への加入が義務付けられているのに対し、自転車に対しては保険は加入が義務付けられていない自治体もあるためです。
また、加入が義務付けられている自治体でも、実際に加入しているとは限りません。
東京都の「令和5年度 自転車等の安全利用(保険加入ほか)に関する調査 報告書」によると、令和2年4月に自転車利用中の対人賠償事故に備える保険等への加入が義務となった東京都でも、自転車損害賠償保険等への加入率は63.2%にとどまっています。
加害者が無保険の場合、示談金は全額加害者本人に支払ってもらわなければなりません。資力(支払い能力)によっては支払いを踏み倒されるリスクがあります。
弁護士を立てれば、加害者側に心理的圧力をかけられるためきちんと示談金の支払いがなされる可能性が高まります。
示談金支払いの踏み倒しを想定した事前対策もできますし、踏み倒された場合にも迅速な対応ができるため弁護士に依頼していたほうが安心でしょう。
自転車事故で弁護士に依頼して得られるメリット
経験・スキルを生かした早期示談成立
自転車事故の示談交渉を被害者自身でしようとすると、示談成立までに時間がかかりがちです。
先述の通り自転車事故では過失割合について揉めやすいうえ、加害者側は本記事で紹介した弁護士基準の金額と比較して低額な金額を提示してくるからです。
加害者が保険に入っていた場合は保険担当者と交渉することになりますが、相手は知識も経験の豊富なので、どうしても被害者側は不利になります。粘って交渉を長引かせても納得いく結果にならないことが多いのです。
加害者が無保険の場合は加害者本人と交渉します。お互いに知識・経験が少ない状態では適切な内容で示談できませんし、当事者同士で交渉することにより思わぬトラブルが発生するおそれがあります。
専門知識や交渉スキル・経験のある弁護士を立てて示談交渉すれば、交渉相手が保険会社でも加害者本人でも、スムーズに納得のいく結果で合意を取り付けやすくなります。
弁護士だから主張できる裁判基準の慰謝料獲得
本記事でも紹介した弁護士基準の慰謝料額は、過去の判例に基づく法的正当性の高い金額です。
しかし、本来なら裁判を起こして認められる金額であるため、示談交渉時点で被害者が主張しても認められることはほぼありません。
しかし、専門家である弁護士なら示談交渉でも弁護士基準に近い金額の獲得が見込めます。
増額の余地を残さない示談交渉ができるでしょう。
加害者の提示額はどれくらい低い?
たとえば、自転車事故でむちうちを負い後遺障害12級もしくは14級に認定されたとします。この場合、加害者側が提示すると考えられる金額と弁護士基準の金額との違いは以下のとおりです。
等級 | 加害者側の提示* | 弁護士基準 |
---|---|---|
12級 | 94万円 | 290万円 |
14級 | 32万円 | 110万円 |
*加害者側の提示額は保険会社ごとに異なるため、加害者側の提示額に近いとされる自賠責基準の金額を紹介
被害者自身でも、増額交渉することは可能ですが、弁護士基準近くまでの大幅な慰謝料増額は基本的には困難でしょう。
自転車事故特有の問題にもスムーズに対処
先述の通り、自転車事故の場合は「後遺障害認定が複雑」「示談金支払いを踏み倒されるリスクがある」といった特有の問題があります。
しかし、弁護士ならこうした問題にもスムーズに対処できます。
自転車事故後の各種手続きについて、「どうすれば良いのかわからない」「うまくいかない」「手間取ってしまう」というストレスを解消できるでしょう。
自転車事故の弁護士費用はどれくらい?
自転車事故の弁護士費用
自転車事故で弁護士に依頼する場合にかかる主な費用の目安は、次のとおりです。
- 相談料:依頼前の法律相談の料金。30分5,000円~2万5,000円が相場。
- 着手金:案件を依頼した際に生じる料金。獲得が見込める示談金額に応じて決まることが多い。
- 成功報酬:案件終了後に生じる料金。実際に獲得できた示談金額や、弁護士の介入によって増えた示談金額に応じて決まることが多い。
弁護士費用の設定は、法律事務所ごとに異なります。公式ホームページで確認したり、事前の法律相談で確認したりしましょう。
なお、法律相談の時点ではまだ依頼は確定していません。法律相談のみで依頼はしないという選択もできるので、ご安心ください。
アトム法律事務所では、法律相談料が無料です。
次に紹介する弁護士費用特約が使えない方の場合は着手金も原則無料なので、費用の負担を抑えた弁護士依頼が叶います。
自転車事故でも弁護士費用特約は使える?
弁護士費用特約とは、(通常は上限額300万円の)弁護士費用を保険会社に負担してもらえる特約です。
そのため、弁護士費用特約が使用できれば、弁護士費用の自己負担というデメリットを気にせず実質0円で弁護士に依頼できるケースが多いので、泣き寝入りをして後悔せずに済む可能性が高まります。
自転車事故においては、「自転車保険の特約か自動車保険の特約か」により弁護士費用特約を使用できるケースが異なります。
- 自転車保険の弁護士費用特約なら、基本的にどのような自転車事故でも使える
- 一般的な自動車保険の弁護士費用特約の場合、事故相手か自分が自動車・二輪車(バイク・原付)のケースしか使えない
ただし、日常生活事故型など、加入しているプランによって自転車同士の事故、自転車対歩行者の事故でも自動車保険の弁護士費用特約が使えることもありますので、お手もとの保険証券や保険約款で補償内容・範囲をよく確認してください。
また、自身に100%の過失がある場合や事故発生時に弁護士費用特約に加入していなかった場合などは、どのような事故でも弁護士費用特約が使えないことが多いので注意しましょう。
自転車事故の弁護士探しは無料相談から
弁護士選びのポイントは実績・口コミ・相性
自転車事故を依頼する弁護士を探す際は、以下の点を重視しましょう。
- 交通事故事案の実績:交通事故事案を扱っているからといって実績豊富とは限らないので、必ず実績数を確認する。
- 口コミ:公式ホームページなどに口コミが載っていることが多い。
- 相性:実際に法律相談でやり取りしてみて、話しやすいか、頼りになるか、コミュニケーションに違和感はないかなどを確認する。
自転車事故を弁護士に依頼すればさまざまなメリットが期待できますが、サポートにどの程度満足できるか、結果的にどれくらいの示談金を得られるかは依頼する弁護士によって変わることもあります。
実績があり、困ったことがあれば何でも相談しやすい弁護士を選びましょう。
【無料】電話相談・LINE相談はこちらから
アトム法律事務所では、電話・LINEでの無料相談窓口を平日だけでなく土日祝日を含め24時間開設しています。
相談のみのご利用も可能であり、無理に依頼を勧めることはありません。お悩みや心配事のある方は、お気軽にご連絡ください。


高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了