自転車事故での死亡を防ぐには?賠償金相場や自転車事故の統計も詳しく解説
ここ数年、自転車事故の死亡者数は交通事故による死亡者数全体の35%前後を推移しています。
具体的にどのような時間帯・年齢で自転車事故の死亡者数が多いのか、自転車事故による死亡者は事故時にどのような法令違反をしていたのか知ると、事故防止の心がけにつながるでしょう。
この記事では、警察庁交通局による「道路の交通に関する統計 交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」(2023年5月2日)の内容をもとに、自転車事故の死亡者に関する統計を紹介します。
統計から自転車事故による死亡を防ぐ方法も見ていきましょう。自転車事故で死亡した場合の賠償金の相場も解説するので、もしものときのためにご確認ください。
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自転車事故の件数や死亡率、原因は?
自転車事故の死亡者数の推移
自転車乗用中の死亡者数は、2022年で339人です。2019年、2020年に比べると減少していますが、全体に占める割合としては36.6%と概ね横ばいとなっています。
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
---|---|---|---|---|
自動車乗車中 | 1,083人 | 882人 | 860人 | 870人 |
自動二輪車乗車中 | 361人 | 385人 | 332人 | 343人 |
原付乗車中 | 149人 | 141人 | 131人 | 92人 |
二輪車乗車中 | 510人 | 526人 | 463人 | 435人 |
自転車乗用中 | 433人 | 419人 | 361人 | 339人 |
自転車乗用中構成比率 | 36.6% | 35.3% | 35.7% | 36.6% |
自転車事故による死亡が多い年齢
自転車乗用中の死亡者数を年齢別に見てみると、2019年~2022年まで全体として多いのは15~24歳、45歳以上です。
特に65歳以上の死亡者数が多く、2022年であれば75~79歳が61人で最多となっています。
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
---|---|---|---|---|
4歳以下 | 1 | 0 | 1 | 1 |
5~9歳 | 3 | 4 | 0 | 2 |
10~14歳 | 3 | 4 | 7 | 2 |
15~19歳 | 8 | 10 | 12 | 9 |
20~24歳 | 14 | 9 | 7 | 14 |
25~29歳 | 5 | 6 | 3 | 5 |
30~34歳 | 4 | 6 | 3 | 5 |
35~39歳 | 7 | 8 | 8 | 13 |
40~44歳 | 8 | 6 | 5 | 6 |
45~49歳 | 12 | 12 | 18 | 11 |
50~54歳 | 26 | 13 | 16 | 19 |
55~59歳 | 21 | 19 | 18 | 15 |
60~64歳 | 22 | 28 | 14 | 17 |
65~69歳 | 42 | 42 | 30 | 22 |
70~74歳 | 65 | 57 | 60 | 46 |
75~79歳 | 59 | 64 | 44 | 61 |
80~84歳 | 67 | 63 | 60 | 44 |
85歳以上 | 66 | 68 | 55 | 47 |
単位:人
自転車事故による死亡が多い時間帯
続いて、2022年の自転車乗用中の死亡者数を事故の時間帯別に見ると、昼間が61.9%、夜間が38.1%でした。
昼間 | 夜間 | |
---|---|---|
自転車乗用中 | 210人(61.9%) | 129人(38.1%) |
自転車事故死亡者に多い法令違反
続いて、自転車乗用中の死亡者に多い法令違反を見てみましょう。
2022年の統計によると、65歳以上で多いのが信号無視、横断・回転等、一時不停止、前方不注意でした。
65歳以上、65歳未満ともに多かったのは、交差点安全進行、ハンドル操作、安全不確認です。
65歳以上・未満どちらも、違反ありのケースが違反なしのケースを大幅に上回っていることがわかります。
違反内容 | 65歳以上 | 65歳未満 |
---|---|---|
信号無視 | 15 | 6 |
通行区分 | 4 | 3 |
横断・転回等 | 14 | 5 |
環状交差点 | 0 | 0 |
優先通行妨害 | 5 | 3 |
交差点安全進行 | 19 | 12 |
徐行場所 | 1 | 0 |
一時不停止 | 18 | 7 |
自転車通行方法 | 1 | 0 |
ハンドル操作 | 33 | 15 |
ブレーキ操作 | 1 | 3 |
前方不注意 | 11 | 6 |
動静不注視 | 2 | 2 |
安全不確認 | 30 | 13 |
安全速度 | 1 | 0 |
その他 | 6 | 0 |
違反不明 | 9 | 5 |
違反あり計 | 177 | 85 |
違反なし計 | 43 | 31 |
単位:人
自転車事故による死亡を防ぐには
自転車乗用中の死亡者の約半数は主に頭部を損傷
2022年における自転車乗用中の死亡者の「主な損傷部位」を見てみると、頭部が約53%を占めていました。
人数 | 割合 | |
---|---|---|
全損 | 20 | 5.9 |
頭部 | 179 | 52.8 |
顔部 | 2 | 0.6 |
頸部 | 33 | 9.7 |
胸部 | 38 | 11.2 |
腹部 | 11 | 3.2 |
背部 | 1 | 0.3 |
腰部 | 19 | 5.6 |
腕部 | 1 | 0.3 |
脚部 | 2 | 0.6 |
その他 | 33 | 9.7 |
計 | 339 | 100 |
単位:人
死亡者の主な損傷部位が頭部である割合は、自動車乗車中で約24%、二輪車乗車中で約38%、歩行中で約51%となっています。
自転車乗用中の場合は他のケースに比べて特に、頭部の損傷による死亡者の割合が多いことがわかります。
ヘルメットの有無による死亡率の違い
自転車乗用中の死亡者に多い頭部損傷を防ぐには、ヘルメットをかぶることが重要です。
実際、2022年に自転車乗用中に死亡した人数のデータを見てみると、ヘルメットを着用していた人は14人、着用していなかった人は325人で着用していなかった人のほうが圧倒的に多くなっています。
その他の年を見ても、死亡者の95%前後はヘルメットをかぶっていませんでした。
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
---|---|---|---|---|
着用 | 18人 | 14人 | 24人 | 14人 |
非着用 | 414人 | 404人 | 336人 | 325人 |
不明 | 1人 | 1人 | 1人 | 0人 |
合計 | 433人 | 419人 | 361人 | 339人 |
非着用死者構成率 | 95.6% | 96.4% | 93.1% | 95.9% |
このことからも、自転車事故による死亡を防ぐにはヘルメットの着用が効果的だといえるでしょう。
現在ヘルメットの着用は努力義務
自転車乗用時のヘルメット着用は、現在道路交通法によって努力義務とされています。
第六十三条の十一 自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。
2 自転車の運転者は、他人を当該自転車に乗車させるときは、当該他人に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。
3 児童又は幼児を保護する責任のある者は、児童又は幼児が自転車を運転するときは、当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。
道路交通法第六十三条の十一
あくまでも努力義務なのでヘルメットを着用していなくても罰則はありません。
しかし、先に紹介したデータを見てもわかる通り、ヘルメットは自転車事故による死亡を防ぐために効果的だといえます。
自転車に乗る際にはヘルメットをかぶるようにしましょう。
どのようなヘルメットをかぶれば良い?
ヘルメットをかぶる場合は、安全性を示す以下のようなマークが付いたものを選ぶことがおすすめです。
- SGマーク(日本)
- JCF公認マーク・JCF推奨マーク(日本)
- JISマーク(日本)
- CEマーク(EN1078) (EU加盟国等)
- CPSCマーク(1203) (アメリカ)
- GSマーク (ドイツ)
また、着用時にはあご紐をしめるなど正しい着用方法を心がけることも重要です。
自転車事故で死亡した場合の賠償金は高額
自転車事故で死亡した場合の賠償金の内訳
自転車事故で死亡した場合、加害者に対して請求する主な賠償金は死亡慰謝料、死亡逸失利益、葬祭関係費です。
- 死亡慰謝料:交通事故で死亡した被害者とその遺族の精神的苦痛に対する補償
- 死亡逸失利益:交通事故で死亡しなければその後得ていたと考えられる生涯収入
- 葬祭関係費:葬儀や位牌などの費用
死亡までの間に治療期間があった場合は、治療関係費や入通院慰謝料なども請求できます。
死亡事故の賠償金相場|慰謝料だけでも2,000万円以上
死亡慰謝料の金額は、基本的に被害者が生前家族内でどのような立場であったかによって決まります。過去の判例に沿った相場は、遺族分の金額も含めて次のとおりです。
被害者の立場 | 金額 |
---|---|
一家の支柱 | 2,800万円 |
母親・配偶者 | 2,500万円 |
その他の場合 | 2,000万円~2,500万円 |
死亡逸失利益は、被害者の年齢や事故前の収入などから計算されます。被害者が子どもや学生の場合は基本的に高卒で働くケースを想定して金額が計算されますが、大学進学の蓋然性が高い場合は大卒を想定した金額となります。
死亡逸失利益の相場は以下の計算機から確認できるので、ご利用ください。
※失業中の方、大学生の方の逸失利益は以下の計算機では算出できません。弁護士にまでお問い合わせください。
自転車事故で家族が死亡してしまったら
賠償金請求の示談交渉はもめる可能性が高い
自転車事故で被害者が死亡した場合、損害賠償請求は家族が代わりに行います。具体的には、加害者側と示談交渉することになります。
ただし、この場合は以下の点でもめる可能性が高いです。
- 家族は事故の当事者ではないので、加害者側が事故状況について虚偽の主張をしてきても反論が難しい
- 自転車の死亡事故は損害賠償金が高額になる傾向にあるため、加害者側は厳しい態度で示談交渉に臨んでくる
例えば慰謝料の場合、加害者側は過去の判例に沿った相場の2分の1~3分の1程度の金額を提示してくることがあります。
被害者が一家の大黒柱だった場合、過去の判例に沿った死亡慰謝料額は2,800万円です。しかし、加害者側は1,400万円以下を提示してくることもあるのです。
加害者側の交渉人は、多くの場合示談交渉に慣れている保険担当者です。会社としての業績もかけて交渉してくるため、被害者の家族が賠償金の増額を求めても、十分に応じることはほぼないでしょう。
十分な金額を得るためにも弁護士にご相談ください
自転車事故で家族を亡くされた場合は、一度弁護士にご相談ください。
専門知識と交渉力のある弁護士なら、難しい死亡事故の示談交渉でも十分な損害賠償金獲得が見込めます。
被害者が亡くなった場合は被害者分の損害賠償金を遺族間で分割することになりますが、その点についてもご相談いただけます。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了