自転車事故は警察に届け出るべき!軽い接触事故でよくある注意点も解説
交通事故の中でも自転車事故は、軽い接触事故程度で終わることも多いので、警察に連絡すべきかどうか迷う人も多いでしょう。
結論からお伝えすると、たとえ自転車による軽い接触事故であっても、警察には連絡を入れるべきです。
警察への連絡を怠ると、道路交通法違反になるだけでなく、その後の損害賠償請求などにも悪影響が出ます。
自転車事故でも警察に連絡すべき理由や、自転車による軽い接触事故でよくある疑問についてお答えしていきます。
自転車事故でも警察に連絡するべき?
自転車事故でも警察への報告義務がある
自転車は道路交通法上の「軽車両」に該当するため、自転車事故が発生した場合は、加害者・被害者ともに警察への報告義務があります。
自動車と自転車の事故の場合、自動車側のみに報告義務が生じると思われがちですが、自転車側にも警察への報告義務があるので注意が必要です。
警察への報告義務を怠ると、道路交通法違反となり、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金が科される可能性があります。
警察への報告義務は、事故の大小や、ケガの有無に関係なく発生します。たとえ、自転車同士の軽い接触事故でケガがなかったとしても、警察への報告が必要です。
(交通事故の場合の措置)第七十二条
道路交通法 | e-Gov 法令検索
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は
(略)
警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置(第七十五条の二十三第一項及び第三項において「交通事故発生日時等」という。)を報告しなければならない。
自転車事故を警察に連絡しないリスク
自転車事故を警察に通報しなかった場合、道路交通法違反として罰則を受ける可能性があることは、すでに解説したとおりです。
他にも、自転車事故を警察に連絡しないリスクとしては、以下の4点が挙げられます。
- 交通事故証明書が発行されない
- 自転車事故に関する捜査・書類作成が行われない
- 保険の適用を受けられない可能性がある
- 受け取れる損害賠償金に悪影響が及ぶ可能性がある
それぞれについて解説します。
(1)交通事故証明書が発行されない
自転車事故を警察に連絡しなかった場合、交通事故証明書が発行されません。
交通事故証明書とは、交通事故の発生を公的に証明するための書類です。被害者と加害者の氏名や連絡先、自賠責保険の情報などが記載されています。
交通事故証明書が発行できなければ、損害賠償請求の際に加害者側から「そのような事故は発生していない」と言われたときに反論しにくくなります。
また、加害者側の保険会社がわからない場合は、交通事故証明書で保険会社を確認して賠償請求などの手続きをすることがあります。
そのため、交通事故証明書が発行されず、加害者が自身の加入している保険会社を教えてくれなかった場合には、損害賠償請求で手間取る可能性が高くなってしまいます。
(2)自転車事故に関する捜査・書類作成が行われない
警察に通報しなかった場合、警察による捜査と捜査内容をまとめた書類の作成はされません。
そのため、事故発生状況をめぐって争いが発生した場合、証拠が不足して不利な状況に立たされる可能性があります。
(3)保険の適用を受けられない可能性がある
加害者側の保険会社に損害賠償請求をしたり、自身が加入する保険会社に保険金請求をしたりする場合、交通事故証明書の提出を求められることが多いです。
自転車事故を警察に報告せず交通事故証明書が発行されなければ、保険会社への請求も難しくなる可能性があります。
(4)受け取れる損害賠償金に悪影響が及ぶことがある
自転車事故を警察に報告せず、交通事故証明書や警察による捜査資料などが作成されなかった場合、示談交渉で不利になる可能性があります。
被害者側に生じた損害が本当にその自転車事故によるものなのか、交通事故の発生に関して被害者側と加害者側それぞれにどれくらいの責任があるのかについて適切な証明ができず、受け取れる損害賠償金が低額になってしまう可能性があるのです。
自転車での軽い接触事故の注意点
軽い接触事故でもケガがあれば人身扱いにする
自転車事故の場合、相手と軽く接触しただけという場合もあります。
軽い接触事故で擦り傷など軽傷しか負っていない場合でも、物損事故として届け出てしまうと、治療費や慰謝料を請求できないことがあります。
交通事故で加害者側に治療費や慰謝料を請求するためには、基本的には人身事故としての届け出と、医師による診断書が必要です。
たとえ警察や加害者側から物損事故として届け出るようすすめられたとしても、人身事故として届け出て治療を受けましょう。
軽い接触事故でもその場で示談しない
自転車による軽い接触事故では、その場でお互いに謝り合って示談してしまうことがあります。
しかし、示談は口頭であっても一度成立してしまうと、原則として撤回や再交渉はできません。
後から思っていたよりも大きなケガをしていたことが発覚したり、新たな損害が見つかったりしても、追加の賠償請求は難しいのです。
示談交渉はすべての損害が確定してから行うのが原則です。
一般的に、ケガをした場合は完治または後遺障害認定されたタイミング、物損のみの場合は自転車の修理費や身に着けていたものの損害が確定したタイミングでしょう。
たとえ事故現場で示談を持ちかけられたとしても、口頭であっても合意しないよう注意してください。
自転車事故でよくある疑問にお答え
警察への連絡は後日でも良い?連絡方法は?
自転車事故は事故発生直後に警察に連絡することが望ましいですが、事故直後に連絡できなかった場合は、後日になっても構いません。
ただし、事故から日が経ちすぎると事故現場の状況が変わってしまったり、生じた損害が本当にその自転車事故によるものなのかが判断しにくくなったりします。
場合によっては届け出を受け付けてもらえない可能性もあるので、できる限り早く届出をしましょう。
後日警察に連絡する方法
自転車事故について後日警察に連絡する場合、110番通報は使用できません。事故現場付近の警察署に赴いて事故を報告しましょう。
事故現場が遠い場合は、先に該当する警察署に電話して指示を受けてください。
事故相手が逃げた場合はどうする?
自転車事故の相手が逃げた場合でも、まずは警察に連絡をしてください。
交通事故証明書や警察による捜査資料などを作ってもらっておけば、加害者が見つかった時の示談交渉に役立ちます。
後から加害者が出頭してきた場合にスムーズに連絡がもらえるという意味でも、警察に連絡しておくことは重要です。
加害者が見つかるまでの間は、自身の保険を利用して治療を受けたり壊れた自転車の修理をしたりしてください。
その場で示談してしまった場合はどうする?
すでにその場で示談してしまった場合、示談の撤回や再交渉は難しい可能性があります。
しかし、脅迫によって示談させられた場合や詐欺によって示談させられた場合などは、一度成立した示談を撤回できることがあります。
もし事故現場で示談してしまいお困りの場合は、弁護士に対応を相談しましょう。まずは無料相談で「示談を撤回できる可能性はあるのか、どのくらいの示談金が見込めるのか」確認しましょう。
自転車事故発生からの流れ
自転車事故が起きてからの流れとすべきことを時系列で解説します。現在、自転車事故に遭っている人は参考にしてください。
(1)自転車事故直後にすべき対応|連絡の仕方
事故が起きたら、まず自分と相手の安全確保が最優先です。車道上での事故であれば、すぐに歩道や路肩など安全な場所に移動しましょう。ケガがあるかを確認し、必要があれば119番で救急車を呼びます。
自分と相手の安全が確保できたら110番で警察に連絡します。110番通報する際は、以下の点を落ち着いて伝えましょう。
自転車事故で警察に伝えること
- いつ、どこで事故が起きたか
- 事故でケガした人はいるか
- 事故で壊れたものはあるか
- 現場の状況(道路が塞がれているか)など
基本的には警察からこれらの質問を受けることになるので、伝えるべき項目をすべて覚えておく必要はありません。
警察が到着するまでにやるべきこと
警察に自転車事故を報告したら、到着するまでに事故相手との情報交換と事故現場の撮影を済ませておくと良いです。
まず、事故相手には以下のことを教えてもらいましょう。
事故相手に聞くこと
- 氏名
- 住所
- 電話番号
- 勤務先
- 車両番号
- 保険会社の名称と証明書番号
運転免許証や名刺、保険証などを見せてもらうとスムーズに進みます。
また、携帯電話やスマートフォンを持っている場合は、事故現場や自転車の破損状況を撮影しておきましょう。事故状況を証明する大きな証拠になります。
自転車だけではなく着衣や所持品が破損した場合は、それらも撮影しましょう。あとから加害者に損害賠償請求できます。
(2)警察が到着した後の対応
自転車事故を警察に連絡した後は、警察による実況見分捜査や聞き取り捜査に協力します。
- 実況見分捜査:事故当事者の立ち会いのもと、事故現場を実際に調べ、事故発生時の状況を捜査すること。基本的には人身事故の場合のみ行われる。
- 聞き取り捜査:自転車事故の当事者や目撃者に、事故当時の状況や加害者に対する処罰感情などを聞き取る捜査。
警察の捜査への協力は任意です。しかし、協力を拒否すると警察には加害者側の言い分のみが伝わってしまいます。
加害者側に都合の良い捜査資料が作成されてしまい、のちの示談交渉などで被害者側に不利に働く可能性があるので、できる限り協力しましょう。
なお、前述したように自転車事故でケガをした場合には、「人身事故」で届け出ることを忘れないよう注意してください。
(3)ケガの治療・後遺障害認定|示談交渉
自転車事故のあと、ケガをしているのであれば治療をします。
通院頻度が不適切だったり、無理やり治療を延ばしたりしていると治療費の補償額や慰謝料が減額されることがあります。あくまでも医師の指示に従って治療を受けてください。
なお、治療のために仕事を休んだ場合は休業損害を請求できます。
休業損害は毎月その月分を請求することもできるので、必要に応じて請求しましょう。
自転車事故によって後遺症が残った場合は、後遺障害認定を受けます。後遺障害等級が認定されれば、後遺障害に関連する賠償金も請求できるようになります。
治療が終了したら示談交渉
自転車事故によるケガが完治したら、あるいは後遺障害認定の結果が出たら、損害賠償請求のための示談交渉を始めます。
加害者側は不適切な示談金額・過失割合を提示してくることが多いので、被害者側でも適切な内容を事前に確認しておき、加害者側の提示内容に問題があれば交渉しましょう。
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自転車事故を警察に届け出たら弁護士にご相談ください
自転車事故の損害賠償請求は特有の注意点が多い
自転車事故を警察に届け出たら、その後は損害賠償請求などについて一度弁護士に相談することをおすすめします。
例えば自転車同士の事故であったり、自転車と歩行者の事故であったりした場合は、後遺障害認定の受け方や損害賠償請求における注意点が、自動車事故とは異なることがあります。
適切な損害賠償金や過失割合の算定も相談できるので、委任契約を結ぶか否かにかかわらず、一度弁護士に相談することもご検討ください。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了