バイクと車の事故の過失割合は?直進・右折などケース別に解説
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バイクと車の事故に巻き込まれたとき、気になるのは「自分の過失はどれくらいになるのか?」という点ではないでしょうか。
過失割合とは、事故の当事者それぞれにどれだけ責任があるかを数値で示したもので、損害賠償額にも直接影響します。
民法722条により、当事者に過失がある場合は、その割合に応じて賠償金が減額される仕組みです。
とくにバイクは交通弱者として扱われることが多く、車よりも過失割合が小さくなる傾向があります。ただし、事故の状況によって過失の割合は変わるため、個別の判断が欠かせません。
本記事では事故パターン別の基本的な過失割合や、割合が修正されるケース・争い方のポイントを解説しています。
ぜひ参考にしてください。
本記事では「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に記載されている情報をベースとしています。

バイクと車の事故における「基本の過失割合」
バイクと車が関係する交通事故では、状況に応じてさまざまな過失割合が適用されます。
本章では、代表的な事故パターンごとに基本となる過失割合をご紹介します。
なお、ここで紹介する割合はあくまで「基本的な目安」であり、実際には信号の有無や道路状況、交通ルールの違反などによって修正されるケースもあります。
詳細な判断には個別の事情をふまえる必要があります。
ともに直進のバイクと車が交差点で衝突した場合
直進してきたバイクと自動車が衝突したとき、道幅が同じ交差点であれば、基本の過失割合は50:50もしくは70:30となります。
当事者から見て左から来る側(左方車)は原則優先されるので、どちらが左方車なのかがポイントです。
バイクと左方車の事故の過失割合
直進するバイクが左方車と衝突した場合の過失割合は50:50です。
左方車優先という点では、自動車側の方が過失は小さくなると考える人もいるでしょう。しかし、バイクの方が事故の危険性が高い点が考慮され、結果として双方の過失は同じと考えられています。
この事故が車同士やバイク同士であれば、左方車側の過失が小さくなるでしょう。
バイクと右方車の事故の過失割合
直進するバイクが右側からの自動車と衝突した場合、過失割合はバイク30:自動車70です。
バイクが左方車で優先されること、自動車よりバイクの過失は小さくなる傾向にあることから、バイク側の過失は30%になります。
バイクが右折・車が直進:バイク側が高めの過失
右折するバイクと直進車が衝突したとき、道幅が同じ交差点であれば、基本の過失割合はバイク70:自動車30です。
右折側は直進側よりもさらなる注意が求められるのです。
バイクが直進・車が右折:車側の過失が高くなる
右折する自動車と直進するバイクが衝突したとき、道幅が同じ交差点であれば、基本の過失割合はバイク15:自動車85です。
直進が優先されること、自動車はバイクより過失が高くなる傾向にあることから、バイクの過失は15%とされるのです。
右直事故の過失割合は、信号機の有無や色によっても変わります。関連記事『右直事故の過失割合は?交差点での早回り右折・速度超過など修正要素も解説』では、右直事故の過失割合を様々なパターンで解説しているので参考にしてください。
バイクと車の追突事故:急ブレーキ・停車中で割合が変わる
急ブレーキをかけた自動車にバイクが追突した場合、バイクと自動車の基本の過失割合はバイク60:自動車40です。
逆に、急ブレーキをかけたバイクに自動車が追突した場合、バイクと自動車の基本の過失割合はバイク20:自動車80です。
自動車よりもバイクの方が被害が大きくなりやすい交通弱者であるということから、自動車の方の過失が多めになるのです。
なお、停車中のバイクや自動車に追突した場合は、追突された側の過失はゼロになることが基本といえます。追突された側がバイクでも自動車でも、基本的な過失割合の違いはありません。
急ブレーキをかけたことが過失割合にどう影響するのか、追突事故の過失割合については関連記事『追突事故の過失割合は被害者の過失なしが原則|急ブレーキで過失はつく?』でも詳しく解説しています。
バイクのすり抜け中の事故
すり抜け事故とは、バイクが自動車の間をすり抜けて進もうとしたところ、自動車と衝突してしまうという事故をいいます。
すり抜けたバイク側の過失割合は10%から30%程度で、衝突時の状況によって様々です。
すり抜け事故におけるケースごとの基本的な過失割合は以下のようになるでしょう。
- 自動車が左折しようとしたところ、後ろからすり抜けようとしたバイクと衝突→左折車80:バイク20
- 自動車が右折しようとしたところ、対向車のかげからすり抜けてきたバイクと衝突→右折車70:バイク30
- 自動車がドアを開けたところ、すり抜けようとしたバイクがドアに衝突→自動車90:バイク10
すり抜け事故に関して、過失割合も含めてより詳しく知りたい方は『バイクのすり抜け事故|過失割合や損害賠償請求の流れ、違反になるケースもわかる』の記事をご覧ください。
車の巻き込み事故
巻き込み事故とは、自動車が交差点を右左折しようとする際に、後方からの直進バイクと接触するという事故をいいます。
巻き込まれたバイク側の過失割合は10%から20%程度で、巻き込まれた時の状況次第です。
- 左折車が後続のバイクを巻き込んだ→自動車80:バイク20
- 自動車がバイクを追い越して左折する際にバイクを巻き込んだ→自動車90:バイク10
巻き込み事故に関してより詳しく知りたい方は『巻き込み事故は内輪差が原因?事故の過失割合は?巻き込み事故の弁護士解説』の記事をご覧ください。
過失割合が変わる!バイクと車の事故の「修正要素」
事故の過失割合は、パターンごとの基本割合があるものの、実際には事故ごとの具体的な事情によって修正されることがあります。
こうした事情を「修正要素」といい、場合によっては数%〜20%以上、過失割合が増減することもあります。
ここでは、バイクと車の事故でよく見られる代表的な修正要素を紹介します。
交通ルール違反(信号・一時停止・右折合図など)
交通ルールの遵守は、過失割合を決める重要な要素です。
道路交通法で定められている交通ルール違反をした場合、過失割合が高くなる可能性があります。
修正要素となりうる交通ルール違反としては、以下のようなものが考えられるでしょう。
- 信号無視
- 一時停止無視
- 右左折の際に事前の合図なし
- 早回り右折
- 大回り右折
- 直近右折
なお、日頃から事故防止のために適切な対策をしていたかも、過失割合に影響することがあります。
例えばバイクの場合に、事故防止のためにしておくべきことは『バイク事故で多い5つの原因と対策|死亡率・重傷率や事故時の対処法も』で解説しているので、ご確認ください。
事故現場の状況(夜間・狭い道・幹線道路など)
事故の状況も、過失割合を決める重要な要素です。
以下のような事故状況の場合には、過失割合が変わる可能性があります。
- 夜間など視界の悪い場所における事故
- 住宅街や商店街における事故
- 幹線道路における事故
例えば、停車中の自動車にバイクが追突した場合、夜間の事故ならバイク側の視界が悪かったことも原因であるとして、バイク側の過失割合が低くなる可能性があります。
著しい過失・重過失(わき見運転、前方不注意など)
通常想定される事故態様よりも悪質といえる過失行為があった場合には、過失の程度に応じて過失割合が修正されます。
著しい過失であるなら5%から10%、重過失であるなら10%から20%程度、過失割合が大きくなるでしょう。
著しい過失といえる事故態様は以下の通りです。
- 脇見運転
- 前方不注意
- 酒気帯び運転
- 時速15kmを超える速度違反
重過失といえる事故態様は以下のようなものとなります。
- 酒酔い運転
- 居眠り運転
- 時速30kmを超える速度違反
- 高速道路におけるバイクのヘルメット無着用
もっとも、事故状況によっては過失が認められないケースもあり、適切な主張を行うことが重要です。
たとえば、以下の判例では、バイク側の転倒を予見することは困難だったと判断し、相手方の過失が否認されています。
大阪高等裁判所 令和4年5月25日 令和3年(ネ)第2584号
追越車線を走行中の自動二輪車が先行車の減速に対応できず転倒、並走の大型貨物車に轢かれた事故
判決
ドライブレコーダー映像等から、大型貨物車運転手が自動二輪車の転倒を予見することは困難であったとし、過失を否認した。
年齢、性別
19歳、男性
このように、事故状況によって過失割合は変わり、それに応じて賠償金額も増減する可能性があります。相手方が過失をすぐに認めるとは限らず、交渉は長期化する可能性もあるでしょう。
交通事故の解決に力を入れている弁護士に方針を相談したり、ときには弁護士に対応を依頼することも検討するべきです。
アトム法律事務所は交通事故でケガをした方からの無料相談を受け付けています。無料相談のご利用には予約が必要なので、まずは下記バナーより予約をお取りください。

バイクと車の事故による過失割合の交渉方法と注意点
事故における過失割合は、保険金や損害賠償額に直結するため、当事者間で意見が対立することも珍しくありません。
特に、加害者側の保険会社が被害者の過失を大きく主張してくるケースでは、争いが長期化することもあります。
ここでは、過失割合に納得できない場合の対処法や、注意すべきポイントを解説します。
基本は加害者側との示談交渉で決まる|不当な提示に注意
事故における過失割合は、基本的に交通事故の当事者間で決めます。
実際には、加害者側との示談交渉において決めることが多いでしょう。
示談交渉の相手は、加害者が任意保険に加入している場合、任意保険の担当者となります。
保険会社との交渉では、過失割合を争うことも珍しくありません。保険会社は、少しでも支払う金額を避けるため、被害者の過失を多めに主張してくることがあるでしょう。
加害者側の保険会社の主張でよくあるパターン
- 加害者からのみ事故状況をヒアリングして、過失割合を算定している
→加害者側に有利な証言のみから過失割合が判断される - 修正要素が正しく反映されていない
→被害者側の過失割合が不当に加算されていたり、加害者側の過失割合が低く見積もられたりする
そのため、保険会社との交渉では、事故の状況を明らかにする証拠を準備して、過失割合の軽減を主張することが重要です。
バイク事故の慰謝料の相場や過失割合が賠償金算定に与える影響は、関連記事を参考にしてください。
過失割合と慰謝料の関連記事
示談がまとまらない場合は裁判を検討|自力での対処は難しい
保険会社との示談交渉で納得のいく結果が得られない場合、裁判で過失割合を争うことができます。
ただし、裁判では、客観的な証拠をもとに立証する必要があります。自力で対応しようとすると、立証が不十分で、裁判であっても納得のいく過失割合の認定を受けられない可能性があります。
裁判では、弁護士に依頼して過失割合を争うことがおすすめです。
弁護士は交通事故の専門知識と経験を活かして、被害者の過失割合を軽減するために尽力します。
関連記事
交通事故の過失割合が納得いかない!おかしいと感じたらゴネ得を許さず対処
過失割合の交渉は弁護士に相談・依頼がおすすめ|メリットは?
過失割合について争いがある場合に弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットを受けることが可能です。
- 適切な過失割合で示談できる
- 相場の損害賠償額で示談できる
法律の専門家である弁護士なら、事故の態様から正確な過失割合を算出し、適切な証拠をもとに過失割合の主張を行ってくれます。
そのため、納得のいく過失割合で示談できる可能性が高くなるでしょう。
また、交通事故により生じた損害や慰謝料についても、適切に計算を行ったうえで加害者に主張を行ってくれます。
任意保険会社は相場額より低額な金額で示談するよう交渉してきますが、弁護士から主張すると、裁判の発展を恐れて弁護士の主張に応じることが多いので、相場の金額で示談しやすくなるのです。

弁護士に依頼するメリットは、過失割合に関する点以外も存在します。詳しくは『バイク事故は弁護士に相談!メリットや費用を解説【無料相談あり】』の記事で確認可能です。
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弁護士に相談・依頼することで生じるメリットを受けるためにも、まずは弁護士への相談を行いましょう。
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仮に弁護士費用特約を利用できなくても、アトム法律事務所では着手金が原則無料となっているため、ご依頼時の負担軽減が可能です。
まずは法律相談の受付に連絡し、弁護士との相談について予約をお取りください。予約受付は24時間対応となっているので、いつでもご連絡可能です。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了