バイク事故の慰謝料相場と計算方法!いくらもらったか請求事例も解説

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バイク事故の慰謝料

バイク事故で被害を負ってしまったが、慰謝料はいくらもらえるのか。

バイク事故の慰謝料の相場額は、入通院慰謝料で数万円~数百万円、後遺障害慰謝料で110万円~2800万円、死亡慰謝料で2000万円~2800万円となっています。

特にバイク事故は、人体に重大な損傷を与える可能性が高い交通事故です。
ケガの程度が大きいほど慰謝料の金額も高額になりやすいので、相場額をしっかりと確認する必要があるでしょう。

本記事を読めば、相手方の保険会社が提案する慰謝料やそのほかに請求できる損害が十分な金額なのかどうかを判断するポイントがつかめます。

また、損をすることのない金額での解決を目指すためにも、弁護士への依頼も検討してみてください。

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バイク事故の慰謝料計算と相場

バイク事故の被害者が慰謝料について知るべき2つのこと

バイク事故を含む交通事故の慰謝料請求において、被害者が絶対に知っておくべき2つの基礎知識があります。それは、「慰謝料の種類」と「慰謝料の決まり方」です。

慰謝料の種類|3種類あり

交通事故の慰謝料とは、被害者が受けた精神的苦痛を和らげるために支払われる金銭のことです。

交通事故被害者への慰謝料は3種類あります。交通事故で受けた損害の程度や内容によって、請求すべき慰謝料が異なるのです。

交通事故の慰謝料3種類

慰謝料対象
入通院慰謝料ケガの治療のために入院・通院した人
後遺障害慰謝料ケガが治らず後遺障害が残った人
死亡慰謝料事故で死亡してしまった人

バイク事故の慰謝料の決まり方

バイク事故の被害者の方に知っておいてほしいことは、バイク事故であっても自動車事故と慰謝料額に変わりはないこと、誰が慰謝料を算定するのかにより慰謝料額が全く異なるということです。

慰謝料は、交通事故被害者の精神的苦痛を和らげるために支払われますが、精神的苦痛は目には見えないもので、感じ方も人それぞれです。

そこで、一定のルールに従って算定されています。慰謝料算定のルールは、次の3つがあります。

  1. 自賠責保険の基準(自賠責基準)
  2. 任意保険の基準(任意保険基準)
  3. 弁護士基準・裁判基準

自賠責基準とは

自賠責保険の基準とは、相手方の自賠責保険会社が慰謝料を算定する時に用いる計算基準のことです。

自動車の運転手には、自賠責保険への加入が義務付けられています。事故の相手方が自動車の運転手であれば、相手が法律違反(自賠責保険に未加入)でないかぎり、自賠責基準に基づいた補償は必ず受けられます。

そのため、自賠責基準に基づいて最低限の補償が受けられるといえるのです。

任意保険の基準とは

任意保険の基準とは、相手方の任意保険会社が慰謝料を算定する時に用いる基準のことです。

算定方法は任意保険会社独自のルールにより、詳細は公にされていませんが、自賠責基準の金額と同程度であることが多いでしょう。

任意保険は自由加入の保険のため、事故の相手方の加入有無をできるだけ早く確認しましょう。

弁護士基準とは

弁護士基準とは、被害者から依頼を受けた弁護士が、慰謝料の金額を算定する際に用いる基準をいいます。

大切なことは、弁護士基準で算定する時、慰謝料が最も高額になることです。

弁護士基準は、裁判基準ともいわれています。
事故の加害者を相手取った民事裁判を起こした場合に、裁判所で使われる算定方法と同じであるためこのようにいわれ、裁判により認められる金額であることから、相場の金額が算定されるのです。

そのため、損をしないためには、弁護士基準で算定される慰謝料額を請求することが必要といえます。

慰謝料金額相場の3基準
慰謝料金額相場の3基準

弁護士に示談を任せて増額交渉

交通事故における慰謝料を含めた損害賠償金の金額は、基本的に示談交渉により決まります。

示談交渉では、まず相手の保険会社から慰謝料を含む示談金の提示を受けます。提示額は自賠責基準や任意保険基準に基づいたもので、増額の余地があるでしょう。

しかし、被害者が増額交渉を行っても、法的根拠が不十分であったり、増額を断っても裁判まで発展する可能性が低いことから、保険会社側は増額に応じないことが大半です。

そこで、示談交渉を専門家である弁護士に依頼すると、増額に応じない場合には裁判になる可能性が高いことから、増額交渉に応じてくれるようになります。

弁護士に依頼することで、示談交渉の段階において納得のいく慰謝料を取得することが可能となるでしょう。

適切な金額の獲得を目指すなら、交通事故の慰謝料について基礎的なことから解説した記事『交通事故の慰謝料|相場や計算方法など疑問の総まとめ』もおすすめです。

入通院慰謝料の計算・相場

入通院慰謝料は、バイク事故によって受けたケガを治療するために、病院に入院したり、通院した方を対象としています。

入通院慰謝料の金額は、入院期間・通院期間の長さで決まり、原則として、入院期間や通院期間が長いほど慰謝料の金額も高額になります。

バイク事故による腕の骨折などを負った場合を例に、入通院慰謝料を計算してみましょう。

  • ケガの内容:腕の骨折など
  • 総治療期間:210日
  • 入院日数:30日
  • 通院日数:180日
  • 実際の通院日数:60日

自賠責基準

自賠責基準では、日額4,300円が入通院慰謝料となります。
以下の2つの式で、金額の少ない方を採用します。

自賠責基準の入通院慰謝料

  1. [入院日数 + (実通院日数の2倍)]× 4,300円(※)
  2. [治療期間]× 4,300円(※)
    ※2020年3月31日までに発生した事故の場合:4,200円
    ※慰謝料の対象となる日数は、被害者の傷害の態様、実治療日数その他を勘案して決まります。

例示したケースの場合は自賠責基準の入通院慰謝料がいくらになるのか計算をしてみましょう。

腕の骨折などで、治療は210日かかりました。
入院日数は30日間、通院日数は180日間でした。
そのうち、実際に病院で治療を受けたのは60日間でした。

自賠責基準の入通院慰謝料計算式に当てはめると、次の通りです。
(2020年4月以降に発生した交通事故の場合)

  1. [30 +(60 × 2)]× 4,300円 = 64万5,000円
  2. [210]× 4,300円 = 90万3,000円

2つの計算式を比較して、金額の少ない方を入通院慰謝料として採用します。
自賠責基準で計算した入通院慰謝料は、64万5,000円となります。

任意保険基準

任意保険基準は、各保険会社で独自に定められている計算基準です。
以前はすべての任意保険会社で共通した算定基準を持っていました。

現在でも、かつての旧統一基準を踏襲していたり、近い基準を設定している任意保険会社が多いので、参考程度に旧統一基準をご紹介します。

任意保険基準(旧統一基準)

旧任意保険支払基準による入通院慰謝料
旧任意保険支払基準による入通院慰謝料

旧統一基準では、入院・通院の日数の交わる部分を慰謝料としています。
「月」は30日の意味ですので、「1ヶ月」と混同しないようにしてください。

先ほど紹介した例は、腕の骨折などで、治療は210日かかりました。
入院日数は30日間、通院日数は180日間でした。
そのうち、実際に病院で治療を受けたのは60日間です。

入院1月・通院6月の交わるところが、入通院慰謝料額になります。
任意保険会社の旧統一基準に基づいた入通院慰謝料は、83万2,000円です。

自賠責基準で計算した入通院慰謝料64万5,000円と比べると、金額は上がります。

弁護士基準

弁護士基準で入通院慰謝料を計算するときは、慰謝料算定表を使います。
算定表には「重傷」「軽傷」の2つがあり、ケガの程度による使い分けが必要です。

基本的には「重傷」の表を使いますが、打撲・擦り傷・むちうちなど比較的軽い怪我の時には「軽傷」の表を使ってください。

重傷の入通院慰謝料算定表(弁護士基準)

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

つづいて、軽傷時に使う弁護士基準の慰謝料算定表です。

軽傷の入通院慰謝料算定表(弁護士基準)

軽症・むちうちの慰謝料算定表
軽症・むちうちの慰謝料算定表

先ほど紹介した例は、腕の骨折などのケガのため、重傷の算定表を使います。
入院日数は30日間、通院日数は180日間だったので、入院1月・通院6月の交わるところを見ます。

弁護士基準での入通院慰謝料は、1,490,000円(149万円)です。

  • ケガの内容:腕の骨折など
  • 総治療期間:210日
  • 入院日数:30日
  • 通院日数:180日
  • 実際の通院日数:60日

この交通事故の場合、入通院慰謝料は次のようになります。

入通院慰謝料の3基準比較

自賠責任意弁護士
64万5,000円83万2,000円149万円

※任意保険基準は旧統一基準による
※2020年4月以降に起こった交通事故の場合に適用

交通事故の入通院慰謝料は、弁護士基準で算定する時に最も高くなることがよく分かります。

後遺障害慰謝料の計算・相場

後遺障害慰謝料とは、交通事故で負ったケガが完治せず、後遺症が残り、後遺症の症状が後遺障害に該当するという認定を受けた場合に請求できる慰謝料です。

後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害の程度に応じて決められる後遺障害等級ごとに異なります。

後遺障害等級が1つ違うだけで慰謝料の金額が変わりますので、適切な後遺障害等級認定を受けることが大切です。

後遺障害慰謝料の算定についても、入通院慰謝料と同様に、慰謝料の3基準を用います。

任意保険基準については現在非公開とされているため、自賠責基準と弁護士基準の後遺障害慰謝料の目安を示します。

後遺障害慰謝料(自賠責基準と弁護士基準)

等級 自賠責*弁護士
1級・要介護1,650万円
(1,600万円)
2,800万円
2級・要介護1,203万円
(1,163万円)
2,370万円
1級1,150万円
(1,100万円)
2,800万円
2級998万円
(958万円)
2,370万円
3級861万円
(829万円)
1,990万円
4級737万円
(712万円)
1,670万円
5級618万円
(599万円)
1,400万円
6級512万円
(498万円)
1,180万円
7級419万円
(409万円)
1,000万円
8級331万円
(324万円)
830万円
9級249万円
(245万円)
690万円
10級190万円
(187万円)
550万円
11級136万円
(135万円)
420万円
12級94万円
(93万円)
290万円
13級57万円
(57万円)
180万円
14級32万円
(32万円)
110万円

※()内は2020年3月31日までに発生した交通事故に適用

後遺障害慰謝料は、自賠責基準と弁護士基準の相場に大きな差額があります。その差額は2倍から3倍近くにもなるのです。

後遺障害の等級認定を受けたら、入通院慰謝料とは別に、後遺障害慰謝料を請求しましょう。
さらに、後遺障害逸失利益についても算定すべきです。

症状別の慰謝料相場金額についてくわしく知りたい方は『症状別の交通事故慰謝料相場』もご覧ください。

また、バイク事故による後遺障害については以下の関連記事にて詳しく解説しています。バイク事故で想定される後遺症や、脳挫傷を負った後のご家族の対応・症状がわかります。

死亡慰謝料の計算・相場

バイク事故により命を落とされた場合、死亡慰謝料の請求を行いましょう。

死亡慰謝料は、亡くなられた被害者本人とその近親者に支払われます。
被害者本人の慰謝料については、請求権を引き継いだ遺族・近親者などが請求を行うこととなるのです。

死亡慰謝料も、入通院慰謝料と同様に、慰謝料算定の3基準によって金額が変わります。
任意保険基準は非公開とされていますので、自賠責基準と弁護士基準を比べてみましょう。

死亡慰謝料(自賠責基準と弁護士基準)

被害者自賠責弁護士
一家の支柱400万円
(350万円)
2,800万円
母親・配偶者400万円
(350万円)
2,500万円
独身の男女400万円
(350万円)
2,000万円~2,500万円
子ども400万円
(350万円)
2,000万円~2,500万円
幼児400万円
(350万円)
2,000万円~2,500万円
以下は該当する場合のみ
+ 遺族1名550万円
+ 遺族2名650万円
+ 遺族3名以上750万円
+ 被扶養者あり200万円

※遺族:被害者の配偶者、子、両親(認知した子、義父母などを含む)
※※( )内の金額は2020年3月31日以前に発生した交通事故に適用

自賠責基準は、被害者1名につき400万円の死亡慰謝料が認められます。
そして、被害者の遺族の人数と扶養者の有無に応じて金額が加算されるのです。

加算分は、近親者固有の慰謝料ともいわれ、死亡慰謝料と区別されています。

弁護士基準では、死亡慰謝料の算定時に、被害者の社会的立場を考慮して金額を算定します。弁護士基準の死亡慰謝料には、既に自賠責基準上の近親者固有の慰謝料が含まれている点に注意しましょう。

関連記事

死亡事故の慰謝料相場と賠償金の計算は?示談の流れと注意点

バイク事故で請求できる慰謝料以外のお金

損害賠償金の内訳|慰謝料は損害賠償金の一部

バイク事故で損害賠償請求できる費目は、慰謝料だけではありません。

慰謝料とは、事故により生じた精神的苦痛を金銭により補償するものであり、損害賠償金の一部に過ぎないのです。

実際には、慰謝料を含めた損害賠償金の金額を示談交渉で決定し、示談金として支払うこととなります。

バイク事故では、慰謝料だけでなく、以下のような損害について請求が可能となっています。

なお、学生で休学・留年した場合は、余分に必要になった学費や下宿代なども示談金に含めて請求できる可能性があります。
詳しくは『学生(大学生・中高生)の交通事故慰謝料』をご覧ください。

慰謝料計算機で示談前の金額チェック(電卓不要)

慰謝料をはじめとして、示談金は、相手方の保険会社から提案を受けて、被害者が内容を検討することになります。

「この金額で納得していいのか?」
「妥当なのか判断できない」
「本当に相場通りもらえているの?」
はじめて交通事故の被害者となった人は、金額を見てもピンと来ないでしょう。

下記の「慰謝料計算機」という自動計算ツールなら、示談金に含まれる多くの項目が簡単に・自動でシミュレーションできます。

必要な数字を入力するだけのため、複雑な計算式で電卓をたたく必要はありません。

バイク事故の慰謝料の具体的事例

バイク事故によるケガ|死亡・重傷割合が高い

警察庁発表の「令和5年中の交通事故の発生状況」によると、バイク事故の特徴として、重症事案の割合が高いことが分かります。

発表資料(表2-4-2:損害主部位別・状態別死傷者数)によると、バイク(二輪車)による交通事故の被害状況は次の通りです。

死者重傷者軽傷者
人数5086,63032,511
割合1.3%16.7%82%

※警察庁「令和5年中の交通事故の発生状況」 表2-4-2より作成

バイク事故によるケガのうち、約18%が死亡または重傷となっています。

同様に、自動車・自転車・歩行中の情報を元に、死者・重傷者の割合を算定してみます。

自動車自転車歩行中
死者837346973
重傷者7,0746,7167,171
軽傷者209,18163,23932,474
割合3.6%10%20%

※警察庁「令和5年中の交通事故の発生状況」 表2-4-2より作成
※割合は全体に占める死者と重傷者

バイク事故は歩行者と同じくらい、死亡事故、重傷事故になる傾向があるのです。
つまり、バイク事故のケガや後遺症は重いものになる可能性があり、そのぶん損害賠償請求額も高額化します。

裁判例|遷延性意識障害など|3億9,095万円

事故の概要:神戸地判平29.3.30

事故時32歳の男性がバイクに乗車中、右折してきた対向乗用車に衝突された。
びまん性軸索損傷、くも膜下出血などの傷害を負い、後遺障害 別表1の1級1号と認定された。寝たきりの状態となってしまい、将来の介護費も請求の対象となった。

認められた損害内容の一部を抜粋します。

  • 症状固定までの治療費:3,474万4,039円
  • 症状固定後の治療費:792万1,945円
  • 休業損害:658万9,824円
  • 逸失利益:8,370万3,211円
  • 入通院慰謝料:450万円
  • 後遺障害慰謝料:2,800万円
  • 住宅改造費:1,628万2,230円
  • 将来の介護費:1億3,157万6,660円

非常に重い後遺障害が残り、生命の維持のための24時間介護が必要と認定されました。被害者は32歳と若く、67歳までの就労可能年数も35年ありました。

介護をするための居宅リフォーム費用に加えて、介護の担い手である親族が高齢になった際の職業人介護の必要性も認められました。

裁判例|事故後のPTSD認定|2,445万5,283円

事故の概要:京都地判平23.4.15

バイクに乗車中の被害者と、センターラインを越えて走行してきた軽自動車の衝突事故が起こった。左下腿の挫創、腰椎捻挫、頭部・側面に外傷を負い、入院・通院を続けた。2年10ヵ月後、後遺障害等級認定は自賠責保険非該当とされた。被害者はPTSDにより9級10号に後遺障害を負ったことを主張した。

精神神経科医の診察結果もあり、PTSDが認定されました。後遺障害等級については、被害者の主張通りとはならず、自賠責後遺障害11級相当との結論づけられました。

認められた損害内容の一部を紹介します。

  • 治療費:571万3,045円
  • 薬局代:87万3,775円
  • 休業損害:392万5,479円
  • 後遺障害逸失利益:530万947円
  • 入通院慰謝料:200万円
  • 後遺障害慰謝料:400万円

後遺障害等級については、被害者の主張通りの等級とはなりませんでした。しかし、精神科医の診断結果などをもとにPTSDの認定がなされた結果です。

バイク事故の慰謝料請求において知っておくべきポイント

バイク事故における慰謝料支払いまでの流れ

バイク事故が発生してから、示談による慰謝料などの損害賠償金を支払う流れは、次のようになります。

事故発生から示談までの流れ

  1. 警察へ連絡・負傷者の救護
  2. 病院で治療
  3. 完治または症状固定の診断を受ける
  4. (症状固定の場合)後遺障害等級認定の申請を行う
  5. (症状固定の場合)後遺障害等級認定の結果通知を受ける
  6. 示談交渉を開始する
  7. 確定した示談内容に従って示談金を受けとる
  8. (示談不成立の場合)民事裁判またはADRを検討する

示談までの流れには、いくつか分岐点があります。

症状固定となった場合

一つ目は、後遺障害等級認定の申請をするかという点です。
ケガが完治しなかった場合は、症状固定の診断を受ける時が来ます。
症状固定の判断は、医師の見解が尊重されます。

症状固定

医学上、一般的に承認された治療による効果が期待できない状態、これ以上治療をしても症状の改善が見込めない状態に達したこと

示談以外の解決手段が必要になる場合

二つ目の分岐点は、示談がまとまらない時です。

示談交渉が難航してしまい、双方ともに納得できる内容が定まらない場合は、次のような選択肢が考えられます。

  • ADRを活用する
  • 民事裁判を起こす

ADRとは、裁判外紛争解決手続きといわれるもので、あっ旋・調停など、裁判以外の方法で、解決を目指します。
いずれも第三者に間に入ってもらう方法で、裁判と比べて比較的手続きが簡易であり、費用が低額におさえられるメリットがあります。

民事裁判は、相手方との示談交渉がうまくいかず、話し合いによる解決が難しいと判断される場合の手段ともいえます。交通事故の解決では、刑事裁判と混同されやすいので注意しましょう。

民事裁判とは、損害賠償請求に関する争いを解決する手段であり、懲役・禁固刑などの刑事罰の裁定をする裁判ではありません。

適正な過失割合を目指す

過失割合とは

過失割合とは、交通事故における当事者それぞれの過失の程度を示したものです。

被害者に過失割合が認められる場合は、その割合に応じて請求できる金額が減額されます。
このような過失割合に基づいた減額を過失相殺というのです。

バイクと自動車の事故では、バイクを運転した側の方が過失割合が小さくなることが多いでしょう。

バイク事故による過失割合を決める流れ

交通事故の過失割合は、まず、相手方の保険会社から提示を受けることが多いです。

過失割合は、「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に記載されている情報をベースに基本の過失割合を算出し、そこに個別の事故状況などを加味して決められます。

たとえば、次の事例を考えてみましょう。
事故状況図は、四輪車が進路変更をしたことでバイクとの交通事故が起きたケースを示しています。

基本の過失割合は、A(バイク):B(自動車)=20:80です。

事故状況図

損害のシミュレーション

  • 被害者には100万円の損害が発生した
  • 加害者には20万円の損害が発生した
  • 基本の過失割合は20:80である

過失割合が20:80でまとまった場合、被害者は、相手に生じた損害の20%を支払う必要があります。相手に対して4万円(損害20万円の2割)を支払うことになるのです。

加害者には8割の過失があるので、被害者は80万円(損害100万円の8割)の支払いを受けます。

過失割合は損害賠償額に直結します。
相手方と自身の主張が異なる場合、過失割合に納得がいかない場合は、そのままうのみにしてはいけません。

たとえば、修正要素に注目すべきです。
修正要素とは、事故ごとの事情を反映して、基本の過失割合に変更を与えうる事項です。

相手方の車両が車線変更禁止場所で車線変更をしてきたケースや、進路変更の合図をせずに車線変更をしてきたケースなら、被害者の過失割合は下がると考えられます。

こういった個別の事情を主張して適切な過失割合が認められる交渉ごとは、弁護士に任せるべきでしょう。

弁護士であれば、これまでの裁判の結果や実例を元にしたり、資料を集めることで、被害者の主張がより認められるように交渉を進めます

適正な後遺障害等級認定を受ける

後遺障害等級認定の申請は、事前認定と被害者請求の2つの方法があります。
適正な後遺障害認定を受けるためには、弁護士のサポートを受けたうえでの被害者請求をおすすめします。

事前認定と被害者請求の違い

事前認定は、相手方の任意保険会社を中心に、後遺障害等級認定の申請をする方法です。被害者は、医師に「後遺障害診断書」を作成してもらい、任意保険会社に提出するだけで作業完了です。

被害者の手間が少ないものの、自身で適切な資料や検査結果を集めて提出することができないので、納得のいく後遺障害等級の認定を受けられない可能性が高まるといえるでしょう。

一方、被害者請求は、加害者側の任意保険会社を介さず、直接、自賠責保険会社に対して後遺障害等級認定を申請する方法です。
被害者は、医師に「後遺障害診断書」を作成してもらったら、これまでの治療経過が分かるような資料・検査結果とあわせて、自賠責保険会社に提出します。

事前認定と被害者請求のメリット・デメリットは次の通りです。

事前認定と被害者請求の違い

事前認定被害者請求
被害者の手間少ない手間がかかる
申請時の工夫できないできる

納得のいく後遺障害等級の認定を受けたい場合には、被害者請求により適切な資料や検査結果を提出することをおすすめします。

被害者請求の流れ
被害者請求の流れ

被害者請求を行うなら弁護士に依頼を

被害者請求なら「後遺障害等級認定を受ける」という本来の申請目的を達するための工夫ができますが、専門知識が必要となってくるため簡単ではありません。

弁護士にご依頼すると、被害者請求に必要な資料収集や申請の手続きについてサポートを受けることができます。
申請手続きの負担を減らしつつ、適切な後遺障害等級の認定を受けられる可能性を高めることができるでしょう。

慰謝料を増額できる個別の事由がある

交通事故の慰謝料には算定基準がありますが、個別の事情を考慮して、基準より高額な慰謝料が認められる場合があるのです。
慰謝料増額が認められうる事由の一部をご紹介します。

事由具体例
加害者の過失が重大酒気帯び運転、薬物使用での運転、居眠り運転、信号無視、大幅なスピード違反、ひき逃げ
加害者の態度が悪質事実を認めず虚偽を繰返す、反省の態度が全く見えない
治療期間の短縮被害者が幼い子供の養育のために入院を早期に切り上げなくてはならなかった

加害者の運転そのものの悪質性、著しく悪質な態度は、被害者を精神的に追い詰めたと判断されます。

また、やむをえない事情で治療期間を早く切り上げなくてはならなかったことも、慰謝料で斟酌されるべき事由です。

しかし、相手方の保険会社がこれらの事情をすべて反映した慰謝料額を提示してくれるとは限りません。

これまでの裁判例と照らし合わせて、慰謝料の増額交渉をするべきです。専門性の高い知識が必要になりますので、弁護士への依頼が望ましいでしょう。

関連記事

交通事故慰謝料って増額できる?弁護士への依頼で増額した実例5選

バイク事故の弁護士相談・依頼の際に知っておくべきこと

弁護士に相談・依頼する費用の負担は減らすことができる

弁護士に相談・依頼を行う際には、弁護士に支払う費用の負担が気になる方は多いでしょう。

弁護士に支払う費用に関しては、弁護士費用特約を利用することで減らすことが可能です。

弁護士費用特約とは、弁護士に支払う相談料や依頼の際の費用について、保険会社が代わりに負担してくれるという特約をいいます。

負担額には上限が定められており、基本的に相談料は10万円、依頼の費用は300万円となっているでしょう。

相談料や依頼の費用はこの上限額以内で収まることが多いため、弁護士費用特約を利用することで、金銭的な負担なく弁護士への相談や依頼が可能となるのです。

弁護士費用特約のメリットや使い方などについて詳しく知りたい方は『交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介』の記事をご覧ください。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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