交通事故の慰謝料は示談金内訳のひとつ!示談金の内訳と慰謝料の増額方法
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交通事故で怪我や車の故障などの損害を受けると、相手方から示談金が支払われることになります。
示談金は示談書にサインをして示談が成立した後に支払われます。
ポイントをおさえ、誰でも出来る適切な手段をとることで、この示談金は2倍、3倍になる可能性があります。
この記事では、示談金や慰謝料を増額したい方・示談金の内訳についてお知りになりたい方・示談金や慰謝料の相場の計算方法をお知りになりたい方に向けて書かれています。
目次
交通事故の示談金内訳|慰謝料はもらえる?
交通事故が起こったとき、相手方から支払われる金銭については慰謝料、示談金、損害賠償金など様々な呼び方があります。その違いを整理しておきましょう。
- 慰謝料…交通事故にあった時の精神的苦痛に対して支払われる金銭
- 損害賠償金…慰謝料などを含め、被害者が受けた損害を回復するために支払われる金銭
- 示談金…慰謝料などを含めた損害賠償金をもとに、被害者と加害者が示談するために実際に支払われる金銭
慰謝料は、損害賠償金・示談金の中に含まれる費目のひとつです。
損害を賠償するという金銭の性質に着目したときは損害賠償金、示談という金銭の目的に着目したときには示談金と表されます。
それでは、慰謝料を含む示談金の内訳について、交通事故の態様ごとに見てみましょう。
(1)物損事故の示談金の内訳
物損事故とは、車に傷はついたものの怪我人はおらず、物についてのみ損害が生じた交通事故です。
物損事故で支払われる示談金の内訳は以下のようになっています。
- 修理費
- 買い替え差額
- 評価損
- 代車使用料
- 休車損
- 登録手続き関係費
修理費
車を修理するのに必要かつ相当な修理費用です。
実際に修理をしなくとも、車が損害を受けている以上、修理費を受け取ることができます。
なお、車の損傷が著しく修理が不可能で、新しく購入した方が安い場合は、修理費の代わりに買い替え差額が認められるでしょう。
買い替え差額
車両の修理が出来ない場合、事故前の車の売却価格と事故後の車の売却価格の差が損害として認められます。
つまり、交通事故によって車の価値が落ちたぶんが損害となります。
多くの場合、事故車の市場価値は0円になるため、買い替え差額は交通事故前の車の市場価格を示すことが多いです。
評価損
修理をしたとしても、車に欠陥が残存したり、事故歴により市場価値が下落することがあります。
そのような交通事故によって生じた、自動車の価値の下落を評価損といいますが、実際に支払いが認められるかは裁判例も分かれています。
自動車が高級車であったり、初年度登録から間が空いていなかったり、走行距離が少ないと評価損が認められやすい傾向があります。評価損についてさらに詳しくは『評価損(格落ち)の請求方法は?評価損は保険会社に拒否されやすい?』の記事をご確認ください。
代車使用料
被害車両を日常生活で利用しており、交通事故によりやむを得ずレンタカーなどを借りたときはそのレンタカー代が損害となるため、代車使用料として請求可能です。
なお、修理が終わるまでの相当な期間・事故車と同じグレードの車をレンタルする限りで損害が認められます。代車使用料についてさらに詳しくは『交通事故で代車費用は請求できる?修理期間中に代車を借りたい』の記事をご確認ください。
休車損
自動車などを営業用に利用していた場合、交通事故によって仕事が出来なくなることがあります。
自動車が使用できていれば得られていただろう利益を休車損といいます。
登録手続き関係費
自動車の買い替えに伴う登録費用や納車手数料などの諸々の諸費用も損害として請求できます。
なお、自動車税や交通事故により保険料が増額したぶんの差額などは損害として認められません。
物損事故で慰謝料は支払われないのか?
物損事故の示談金の内訳には、よく聞く慰謝料が入っていません。
原則として、物損事故では慰謝料は支払われません。
慰謝料は精神的苦痛に対して支払われる賠償金ですので、車が壊れた時はその修理費が支払われれば、精神的苦痛も同時に回復すると考えられているためです。
例外的に、修理費など財産的な補償だけでは補いきれない苦痛があると認められた場合は、慰謝料が支払われることもあります。
具体的には、損害物が、被害者そして社会的に見ても特別な価値を有する場合や加害行為が著しく悪辣である場合などです。
例えば、法律上では物扱いになるペットですが、実際に交通事故で大切なペットに後遺障害が残った事例で、40万円の慰謝料が支払われたことがあります。
また選挙立候補者が物損事故にあい、衝撃によりその後の選挙活動がうまくいかなかったという事例で50万円の慰謝料が認められました。
(2)人身事故の示談金の内訳
人身事故とは、実際に怪我人が出るなど、身体や精神に損害が生じた交通事故です。まずは後遺障害などが残らなかった人身事故を想定して支払われる示談金の内訳をみていきましょう。なお、物損部分の損害は除いています。
- 治療費
- 入通院慰謝料
- 付添看護費
- 入院雑費
- 通院交通費
- 文書料
- 診断書発行費
- 休業損害
人身事故は、物損事故と違って慰謝料を請求できます。人身事故で請求できる慰謝料については、『人身事故の慰謝料を多くもらうための計算方法』で詳しく解説しています。
それでは、人身事故の示談金の内訳について見ていきましょう。
治療費
被害者が医療機関に支払った費用です。
診察料、検査料、治療費、入院料、投薬料などは必要・相当な範囲で実費全額が認められます。
病院が相手方の保険会社に治療費を直接請求することが多いですが、一時的に被害者が立て替え、後から相手方の保険会社に支払ってもらうこともよくあります。
原則は被害者が支払った金額が損害額となりますが、必要のない過剰な診療や高額な診療の治療費は損害として認められません。
入通院慰謝料
医療機関に通院・入院するとその精神的苦痛に応じて入通院慰謝料が支払われます。
入通院慰謝料の金額はその日数や頻度、怪我の症状によって決定されます。
付添看護費
怪我の症状によっては、被害者本人だけではなく近親者や職業付添人などが入院・通院に付き添う必要があります。
その場合、1日あたり一定額の付添看護費が損害となります。
付添費用に関して詳しく知りたい方は『交通事故の付添費|付き添いに認められる範囲と相場は?慰謝料との違いも解説』の記事をご覧ください。
入院雑費
もしも入院した場合、療養するにあたり通信費や雑貨代などの雑費が必要となります。こういった入院雑費については、1日あたり1500円で損害として請求できます。
なお、具体的な証拠がある場合は増額・入院が長期の場合は減額されることもあります。
通院交通費
交通事故で怪我を負い、通院する際にかかった交通費です。
電車・バス代など公共交通機関の運賃を原則とし、必要・相当と認められる範囲でタクシー代や自家用車のガソリン代などの請求も認められます。
文書料
交通事故の損害を算出するにあたり、必要な書類を発行・交付してもらう際にかかる費用です。
例えば交通事故証明書ですと、交付手数料が600円・支払い方法によっては払込手数料が追加でかかります。
診断書発行費
診断書などの発行手数料です。
病院や症状によって、数千円~1万円程度の幅があります。
休業損害
怪我の治療で会社を休んだことなどで、本来得られたはずが得られなくなってしまった収入の減少ぶんの補償です。
過去の収入から1日あたりの収入を計算し、それに休業した日数をかけて算出します。
自営業や収入のない主婦などでも、収入を証明する書類や平均賃金などのデータをもとに補償されます。
(3)後遺障害が残る人身事故の示談金の内訳
人身事故のうち後遺障害が残った場合、(1)の物損事故の内訳と(2)の人身事故の内訳にさらに以下の費目が加わります。
- 後遺障害慰謝料
- 後遺障害逸失利益
- 将来介護費
- 装具・器具購入費
- 家屋・自動車等改造費
後遺障害慰謝料
後遺障害が残存してしまったという精神的苦痛に応じて後遺障害慰謝料が支払われます。
後遺障害慰謝料の金額は、その症状の重さを表す後遺障害等級によって決定される仕組みです。
後遺障害逸失利益
後遺障害が残ったことでその後の仕事に支障が出る場合、後遺障害が無ければ得られたはずの将来の収入が損害として認められます。
後遺障害の重さにより、収入の●%が失われると仮定し、事故時点の残りの労働可能年数をもとに計算可能です。
将来介護費
重い後遺障害が残ったとき、その先長くにわたり付添の介護が必要となることがあります。
その場合、1日あたりの介護費用を余命の日数で計算した将来介護費も損害となります。
介護費用について、職業付添人の場合は実費全額、近親者の場合も一定額の支給が認められます。
関連記事
交通事故で介護費用が請求できる2ケース|計算方法と裁判例から金額もわかる
装具・器具購入費
後遺障害の症状によっては、義手や義足、車椅子や松葉杖といった器具による支えが必要になることがありますが、それらの購入費も損害として認められます。
一回限りではなく、今後何度買い替える必要があるかという計算のもとに、全額が損害額となるでしょう。
家屋・自動車等改造費
後遺障害により、家屋をバリアフリーにするなどの改造が必要になることもあります。
それらの費用も、必要な範囲で後遺障害による損害として認められる可能性が高いです。
関連記事
後遺障害慰謝料の相場はいくら?等級認定で支払われる金額と賠償金の種類
(4)死亡事故の示談金の内訳
以下は、人身事故のうち被害者が死亡してしまった場合の示談金の内訳です。
- 死亡慰謝料
- 死亡逸失利益
- 葬儀費用
物損がある場合は(1)の物損事故の内訳、死亡までの間に入通院期間があった場合は(2)の人身事故の内訳にさらに加わる形で請求することができます。
死亡慰謝料
被害者本人の死亡したことへの精神的苦痛、被害者遺族の近親者が亡くなったことへの精神的苦痛、それぞれに対して慰謝料が支払われます。
慰謝料の金額は被害者の一家内での立場や収入、家族構成などによって変わります。
死亡逸失利益
被害者が死亡したことにより、得られなくなった将来の収入です。
現在の収入と、交通事故当時の年齢から残りの就労可能年数をもとに計算します。なお、死亡すると生活費もかからなくなることから、収入全体から3~5割が控除される計算です。
葬儀費用
被害者の葬儀や法要、お墓の建立に関してかかった費用をさします。
原則150万円までとされていますが、特段の事情があれば別です。場合によっては150万円以上の額が認められる可能性もあります。
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示談金のうち慰謝料内訳は何%?
交通事故の慰謝料は、原則として人身事故の場合のみ、示談金の内訳に含まれます。慰謝料を適正に受けとることが、示談金全体の金額適正化につながるのです。
慰謝料の内訳は示談金全体の41%
実際のところ、ここまでに紹介した示談金の内訳は、それぞれ何%程度になるのでしょう。
自賠責保険会社のデータですが、実際に支払われた保険金のうち、治療費ならびに治療関係費が半数を占め、約4割が慰謝料であるというデータがあります。(損害保険料率算出機構「2023年度 自動車保険の概況」 図17 傷害による損害額の費目別構成比<2022年度>より)
なお自賠責保険には支払い上限があり、任意保険会社が支払ったぶんの保険金を含んでいないため、このデータは正確な数値ではありません。
ですが、示談金のなかで慰謝料は治療費と並ぶほどに大きな費目であることは事実です。
交通事故の慰謝料に税金はかかる?
また、多額の交通事故慰謝料を受け取ると、税金がかかるかが気になってくるかと存じます。
交通事故の慰謝料に関しては、原則として税金はかかりません。
慰謝料は、被害者の受けた精神的苦痛に対して支払われる補償という性質をもち、被害者の受けた不当な損害を回復するためのお金といえます。
そのため、慰謝料を受け取ったことによって被害者が新たに財産を得たとは言えず、税金はかからないということになります。
なお、過度に高額な示談金を受け取った場合には、例外的に課税対象となる場合があります。慰謝料が課税対象になるケースや、課税対象となりうる保険金については、関連記事『交通事故の慰謝料に税金がかかるケース|いくらまで非課税?税金別に解説』を参考にしてください。
交通事故の示談金はいつ支払われるのか
慰謝料は、交通事故のケガが完治または症状固定を迎えたタイミングで請求します。
症状固定
これ以上治療を受けても症状の改善が見込めない状態のこと
身体にしびれ・痛み・欠損などの症状が残った場合は、後遺障害等級認定を受けることで、後遺障害慰謝料も請求できるようになります。
相手方の保険会社に金銭を請求し、双方ともに納得のいく結論になるまで話し合いを行います。話し合いの内容がまとまれば示談成立となり、その後、相手方保険会社から示談金を振り込んでもらいます。一般的に、示談金は示談成立後2週間程度で振り込まれるでしょう。
なお、示談がまとまらなかった場合には、裁判やADRといった第三者の介入により解決を目指す方法があります。
交通事故の慰謝料の計算基準|慰謝料を高額にするには?
示談金の中の大きな部分を占める慰謝料の金額はどのように計算されるのでしょうか。
慰謝料、すなわち精神的な苦痛を数字で表すのは困難です。
そのため、自賠責保険会社・任意保険会社・裁判所はそれぞれ独自に慰謝料を計算するための基準をもっています。
これらをそれぞれ自賠責基準・任意保険基準・裁判基準といいます。裁判所の基準は弁護士が用いる基準でもあるため、弁護士基準ともいわれる基準です。示談交渉に弁護士が入ることで、裁判を起こさずとも裁判と同水準の金額に近づく可能性が高まります。
自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準それぞれの意味
自賠責基準とは
自賠責基準
自賠責保険会社が慰謝料を算定する際の基準。
交通事故の被害者に対して最低限の補償を行うことを目的としており、3つの基準のなかでは最低額の基準です。
自動車の保有者は自賠責保険への加入が義務づけられているため、原則としてまずはこの保険から損害賠償金が支払われます。
任意保険会社基準とは
任意保険会社基準
任意保険会社が慰謝料を算定する際の基準。
自動車の保有者が自賠責保険会社に加えて任意に加入している保険会社から、自賠責保険で足りないぶんを補う形で支払われます。
かつてあった統一基準を踏襲しつつ、各保険会社が任意に設定しており、自賠責基準よりもやや高額であることが多いです。
弁護士基準とは
弁護士基準
過去の裁判例をもとに、弁護士会が毎年発表している慰謝料の算定基準。
実際に裁判を起こせばこのくらいの金額になるだろう、という基準です。
3つの基準のなかでは最も高額であり、弁護士に依頼すると弁護士はこの基準での慰謝料獲得を目指し活動します。
どの基準で請求するのが交通事故の慰謝料が最も高くなるのか?
3つの基準の中では、弁護士基準で計算した慰謝料額が最も高額です。
慰謝料の種類や怪我の症状などにもよりますが、一般的には自賠責基準・任意保険基準の1.5倍~3倍以上の慰謝料を受け取れる可能性が十分あります。
この弁護士基準での支払いを目指すには、弁護士に依頼することが最も容易です。
もちろん、弁護士基準に関する正しい知識をつけて、ご自身でその金額を主張することも考えられます。
ですが弁護士が実際に交渉の場にたたなければ、保険会社にも真剣に検討してもらえないのが現状です。
弁護士に依頼することで、保険会社が費用・手間の面から恐れる裁判の可能性をちらつかせ、譲歩を引き出すことができます。
それでは、実際にはいくらの慰謝料が受け取れるようになるのでしょうか。
交通事故により入通院をした・後遺障害を負った・被害者が死亡した、という3つのパターンを考えてみましょう。
関連記事
交通事故の慰謝料は弁護士基準で請求!慰謝料相場と増額成功のカギ
入通院慰謝料の計算方法|むちうちで通院3ヶ月の場合
交通事故で負った怪我により病院に入院・通院した場合、入通院慰謝料を相手方に請求することができます。
自賠責基準での入通院慰謝料
最も低額な自賠責基準ですと、入通院慰謝料は入通院1日あたり4,300円と定められています。(2020年3月31日以前の交通事故の怪我では1日あたり4,200円)
日数は「通院期間」と「実通院日数の2倍」のいずれか少ない方を認定します。通院期間とは、初診から治療終了までの総日数のことです。
それでは交通事故でむちうちの怪我を負ってしまい、3ヶ月間通院し、実通院日数が30日の場合の入通院慰謝料を計算してみましょう。
3ヶ月を日数に直すと90日です。
実通院30日を2倍すると60日なので、少ない方の「60日」が日数となります。
4,300円×(30日×2)=258,000円
3ヶ月間通院し、実通院日数が30日の場合、自賠責基準での入通院慰謝料は25万8000円となります。
任意保険基準での入通院慰謝料
任意保険会社基準では、被害者の入院・通院の期間をもとに入通院慰謝料を計算します。入院・通院の期間とは、初診から治療終了までのことです。
各保険会社の任意保険基準は公開されていないため、旧任意保険会社基準での入通院慰謝料で算定してみましょう。
先ほどと同様にむちうちで通院3ヶ月となった場合、入院0月と通院3月の交わる部分をみることになるので、旧任意保険会社基準での入通院慰謝料は37万8000円と想定されます。
なお、上記の表は通院の頻度が少ないと減額される可能性があること、また、あくまで旧基準であり各任意保険会社ごとに基準を設けていることに留意しておきましょう。
弁護士基準での入通院慰謝料
弁護士基準でも、被害者の入院・通院の期間・症状の重さをもとに入通院慰謝料を計算します。
なお、通院期間が長期にわたる場合、「実通院日数×3」を通院期間と見なされる可能性がある点も注意です。あるいは、重傷時には「実通院日数×3.5」が採用されることもあります。
先ほどと同様にむちうちで通院3ヶ月となった場合、弁護士基準での入通院慰謝料は53万円となります。
共通のむちうちの事案で、3つの慰謝料の基準での算定額は以下のようになります。
自賠責基準* | 任意保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
25万8000円 | 37万8000円 | 53万円 |
通院日数が少なくても慰謝料は受け取れる?
怪我の症状によっては数週間で通院が終了してしまうこともありますが、通院日数が短くても、入通院慰謝料は問題なく受けとることができます。
それでは、弁護士基準を用いて通院期間が1カ月に満たない20日間であった場合の計算方法を考えてみましょう。
まず、1カ月は30日として考えます。30日通院した場合の通院慰謝料は19万円となるので、19万円の3分の2が20日分に相当するのです。
190,000円×(20日/30日)≒126,667円
このように計算し、通院20日間の通院慰謝料は12万6667円となります。
1カ月に満たない端数も同様に計算します。
例えば通院が1カ月10日となった場合を考えてみましょう。
通院1カ月の通院慰謝料が19万円で、2ヶ月の通院慰謝料が36万円です。つまり通院が1カ月から2ヶ月になるにあたり17万円増額されるため、その増額分をもとに1日あたりにいくら増額するか、を計算します。
190,000円+(360,000円ー190,000円)×(10日/30日)≒24万6667円
このように計算し、通院1カ月10日の通院慰謝料は24万6667円となります。
慰謝料の計算方法を知っておくことで、相手方の保険会社から提示された金額が妥当なのかを判断可能です。より詳しく交通事故の慰謝料の計算について知りたい方は、関連記事『交通事故の慰謝料の計算方法|正しい賠償金額がわかる』を役立ててください。慰謝料計算の仕組み、もらえる金額の相場がわかります。
交通事故の慰謝料相場を簡単に知る方法
慰謝料の算定表
軽傷の場合以外にも、重傷を負った場合の入通院慰謝料も、慰謝料の算定表を使うとおおよその相場が簡単につかめます。
関連記事『交通事故慰謝料の相場早見表』では、慰謝料の算定表をつかった相場の見方や、算定表よりも慰謝料が増額されたり、減額される事例を紹介しています。
慰謝料計算機
交通事故の慰謝料を弁護士基準で計算したらいくらになるのか、慰謝料計算機を使って目安を確かめてみませんか。慰謝料の計算に必要な最低限の項目を入力するだけで直ちに計算可能です。目安を知っておけば、相手方から提案された金額に対してスムーズに判断できます。
交通事故の後遺障害慰謝料の計算方法
交通事故で怪我を負ってしまい、治療を十分行っても後遺障害(後遺症)が残ってしまう場合があります。
そのような後遺障害が残るという精神的苦痛に対しては、後遺障害慰謝料が支払われます。
後遺障害慰謝料の金額については、申請の手続きを経て後遺障害の重さを14段階に分けた後遺障害等級が何級かによって決定されます。
ですが、等級認定されると後遺障害慰謝料がいくら支払われるのか、という点については自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準でそれぞれ異なります。
等級ごとの具体的な症状について知りたい方は『【後遺障害等級表】認定される後遺症の内容が一覧でわかる』の記事における一覧表により確認可能です。
自賠責・任意保険・弁護士基準での後遺障害慰謝料
自賠責基準での後遺障害慰謝料の金額は、以下のように定められています。
等級 | 自賠責* | 任意保険** | 弁護士 |
---|---|---|---|
1級 | 1,150 (1,100) | 1,300 | 2,800 |
2級 | 998 (958) | 1,120 | 2,370 |
3級 | 861 (829) | 950 | 1,990 |
4級 | 737 (712) | 800 | 1,670 |
5級 | 618 (599) | 700 | 1,400 |
6級 | 512 (498) | 600 | 1,180 |
7級 | 419 (409) | 500 | 1,000 |
8級 | 331 (324) | 400 | 830 |
9級 | 249 (245) | 300 | 690 |
10級 | 190 (187) | 200 | 550 |
11級 | 136 (135) | 150 | 420 |
12級 | 94 (93) | 100 | 290 |
13級 | 57 (57) | 60 | 180 |
14級 | 32 (32) | 40 | 110 |
**金額は旧任意保険基準をもとにした推定のもの
後遺障害等級について、もっとも認定される件数が多いのは14級となっています。
14級の自賠責基準と弁護士基準を比較すると、弁護士基準の後遺障害慰謝料の金額は自賠責基準の約3倍となっていることがわかります。
また、後遺障害が残る場合は一定期間の入通院をしているのが通常であるため、その期間に基づいた入通院慰謝料も請求することが可能です。
交通事故の死亡慰謝料の計算方法
交通事故で被害者が死亡した場合、被害者本人の精神的苦痛・遺族の精神的苦痛に対して死亡慰謝料が支払われます。
その死亡慰謝料の金額は被害者本人の家族のなかでの立ち位置・残された遺族の人数などによって決定します。
それぞれの基準で、死亡慰謝料がいくらになるのか見てみましょう。
自賠責基準の死亡慰謝料
自賠責基準では、被害者本人の死亡慰謝料は以下のように定められています。
被害者本人の死亡慰謝料 | 400万円 |
また、被害者の近親者(被害者の父母・配偶者・子)特有の死亡慰謝料は以下のように定められています。
被害者の立場 | 死亡慰謝料 |
---|---|
慰謝料請求権者*が1名 | 550万円 |
慰謝料請求権者が2名 | 650万円 |
慰謝料請求権者が3名以上 | 750万円 |
被害者に被扶養者**がいるとき | さらに200万円 |
**収入のない18歳未満の子供、同居の3親等以内の親族など
なお、これら全額が支払われるというわけではありません。
自賠責保険における死亡事故の損害賠償金に関しては合計3000万円が上限となっていますので、上記の死亡慰謝料が常に全額支給されるとは限らないことに注意が必要です。
任意保険基準の死亡慰謝料
任意保険会社においても、被害者の家庭内での立場から本人・遺族の死亡慰謝料の総額が算定されます。
任意保険基準は公開されていないため、旧任意保険基準から推定したものとなります。
被害者の立場 | 金額 |
---|---|
一家の支柱 | 1500万円~2000万円程度 |
母親・配偶者 | 1500万円~2000万円程度 |
その他の場合 | 1200万円~1500万円程度 |
弁護士基準の死亡慰謝料
弁護士基準での死亡慰謝料は、被害者の家庭内の立場により以下のように設定されています。
被害者の立場 | 金額 |
---|---|
一家の支柱 | 2800万円 |
母親・配偶者 | 2500万円 |
その他の場合 | 2000万円~2500万円 |
それでは、それぞれ3つの基準で死亡慰謝料がどれくらい異なってくるのか比較してみましょう。
被害者が一家の父、収入のない配偶者と18歳未満の子供が1人いる場合で考えてみると、支払われる死亡慰謝料は以下のようになります。
自賠責基準 | 旧任意保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1250万円 | 1500万円~2000万円 | 2800万円 |
死亡慰謝料など、慰謝料の金額が大きくなると弁護士基準で請求する際の差額も非常に大きくなることがわかります。
交通事故の慰謝料が増額・減額する理由
これまで入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の金額について述べてきましたが、いずれの慰謝料もこの満額受け取れるというわけではありません。
慰謝料や損害賠償金は様々な事由によって、増額または減額することがあります。
その理由にはどのようなものがあるのでしょうか。
交通事故の慰謝料が増額される理由
交通事故において慰謝料が増額する理由としては、以下のような事情が挙げられます。
- 加害者に故意または重過失がある(無免許、ひき逃げ、酒酔い運転など)
- 事故後の態度が不誠実(損害の調査に非協力的、まったく謝罪しないなど)
- 被害者やその親族が精神疾患に罹患する
- 被害者の私生活への悪影響(交通事故により事業が頓挫、中絶、離婚に至るなど)
上記のような事情がある場合、何も言わずとも相手方が被害者側の精神的苦痛を汲んでくれることはまずありません。
弁護士などを通じ、しっかりと慰謝料の増額事由となる旨を相手方に主張していくことが必要です。
交通事故の慰謝料が減額される理由
一方で、実際に受け取る慰謝料は基準のものよりも減額されている可能性があります。
それらには、以下のような事情が挙げられます。
- 被害者側にも過失があったため、過失相殺された
- 被害者にはもとから持病(既往症)などがあり、交通事故によって持病が悪化した
- 運転手の運転を邪魔する、スピード違反を煽るなど
- 運転手の無免許などの事情を知りながら同乗していた
- 交通事故により一部の年金や手当、過度の見舞金を受け取っている
以上のような事情があると、被害者もまた損害の発生に寄与した・または交通事故により利益を獲得していると考えられるため、損害賠償額が低額になることがあります。
交通事故の慰謝料・示談金の内訳についてのお悩みは弁護士へ
交通事故にあい、相手方から示談金を提示されたときは慰謝料の金額は妥当なのか・その内訳に不足しているものはないのか、不安になることもあるかと存じます。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了