示談金と慰謝料の違いとは?交通事故の被害者が知っておくべき損害賠償の内訳

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交通事故の慰謝料は示談金の一部!

交通事故に遭ってしまい、保険会社と示談交渉を進めていく中で、「示談金」と「慰謝料」という言葉の違いに戸惑う方は少なくありません。

「慰謝料は示談金と別にもらえるの?」「示談金に慰謝料が入っているって本当?」など、疑問が出てくるのも当然です。

どちらも金銭の支払いに関係する用語ですが、その意味や性質は異なります。簡単に違いをまとめると以下の通りです。

違いまとめ

  • 示談金:損害賠償として支払われるお金の総称。慰謝料も含まれる。
  • 慰謝料:精神的苦痛に対する損害賠償の一つ。

この記事では他にも、示談金と慰謝料は両方請求できるのかや、示談金の内訳妥当な示談金を判断するための計算方法などを交通事故の被害者の立場からわかりやすく解説します。

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示談金と慰謝料の違いとは?

言葉の意味を正しく理解しておくことで、示談交渉の際に不利益を被るリスクを避けることができます。ここでは、示談金と慰謝料の違いについて詳しく解説します。

示談金とは損害賠償金の総称

示談金とは、交通事故の加害者側(加害者本人またはその任意保険)から被害者に支払われるすべての損害賠償金の総額を示す言葉です。

大まかにいうと「示談金 = 治療費 + 慰謝料 + その他の損害(休業損害・逸失利益・修理費など)」になります。

つまり、交通事故で支払われる慰謝料は示談金の一部にすぎず、示談金は損害賠償全体の総称ということになります。

交通事故の慰謝料

慰謝料とは精神的苦痛に対する賠償金

慰謝料とは、事故によって被害者が受けた精神的な苦しみに対して支払われる損害賠償のことです。

たとえば、肉体的な痛みは当然、事故後の通院や日常生活への支障、後遺症が残るかもしれない不安などによる心身のストレスといった、金銭では直接評価しにくい「心の損害」が慰謝料の対象となります。

慰謝料は3つの種類があり、特に以下のようなケースで請求されることが一般的です。

  • 入通院慰謝料:人身事故でケガをした、通院が長期間に及んだ
  • 後遺障害慰謝料:後遺障害が残った
  • 死亡慰謝料:死亡事故となった
交通事故の慰謝料
交通事故の慰謝料

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慰謝料は、加害者側の保険会社との交渉によって増額が見込める部分でもあり、弁護士に依頼することで賠償金額が大きく変わることがあります。

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コラム|示談金と慰謝料は両方請求できる?

結論から言えば、「慰謝料と示談金の両方を請求する」という表現は正確ではありません。前述した通り、「示談金の中に慰謝料が含まれている」という理解が正しいからです。

つまり、慰謝料だけを個別に請求するのではなく、慰謝料を含めた治療費・休業損害・逸失利益といったさまざまな損害すべてについて合意するのが「示談」で、その合意で支払われる金額が「示談金」です。

正確には、以下のような関係になります。

交通事故示談金の内訳

注意点としては、示談成立後は原則として追加の請求ができなくなるため、慰謝料の金額を含めた損害賠償の全体像をしっかり把握しておくことが重要です。示談書に署名・押印する前に、金額の妥当性を確認し、不明な点があれば弁護士に相談することをおすすめします。

示談金の内訳に関する詳細は後述します。

交通事故の示談金内訳|どの事故態様でも慰謝料はもらえる?

慰謝料を含む示談金の内訳について、交通事故の態様ごとに見てみましょう。

注目ポイントとしては、物損事故では通常、慰謝料を請求できないという点です。

(1)物損事故の示談金の内訳

物損事故とは、車に傷はついたものの怪我人はおらず、物についてのみ損害が生じた交通事故です。

物損事故で支払われる示談金の内訳は以下のようになっています。

  • 修理費 
  • 買い替え差額 
  • 評価損 
  • 代車使用料 
  • 休車損 
  • 登録手続き関係費

修理費

車を修理するのに必要かつ相当な修理費用です。

実際に修理をしなくとも、車が損害を受けている以上、修理費を受け取ることができます。

なお、車の損傷が著しく修理が不可能で、新しく購入した方が安い場合は、修理費の代わりに買い替え差額が認められるでしょう。

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買い替え差額

車両の修理が出来ない場合、事故前の車の売却価格と事故後の車の売却価格の差が損害として認められます。

つまり、交通事故によって車の価値が落ちたぶんが損害となります。

多くの場合、事故車の市場価値は0円になるため、買い替え差額は交通事故前の車の市場価格を示すことが多いです。

評価損

修理をしたとしても、車に欠陥が残存したり、事故歴により市場価値が下落することがあります。

そのような交通事故によって生じた、自動車の価値の下落を評価損といいますが、実際に支払いが認められるかは裁判例も分かれています。

自動車が高級車であったり、初年度登録から間が空いていなかったり、走行距離が少ないと評価損が認められやすい傾向があります。

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代車使用料

被害車両を日常生活で利用しており、交通事故によりやむを得ずレンタカーなどを借りたときはそのレンタカー代が損害となるため、代車使用料として請求可能です。

なお、修理が終わるまでの相当な期間・事故車と同じグレードの車をレンタルする限りで損害が認められます。

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休車損

自動車などを営業用に利用していた場合、交通事故によって仕事が出来なくなることがあります。

自動車が使用できていれば得られていただろう利益を休車損といいます。

登録手続き関係費

自動車の買い替えに伴う登録費用や納車手数料などの諸々の諸費用も損害として請求できます。

なお、自動車税や交通事故により保険料が増額したぶんの差額などは損害として認められません。

物損事故で慰謝料は支払われないのか?

物損事故の示談金の内訳には、よく聞く慰謝料が入っていません。

原則として、物損事故では慰謝料は支払われません。

慰謝料は精神的苦痛に対して支払われる賠償金ですので、車が壊れた時はその修理費が支払われれば、精神的苦痛も同時に回復すると考えられているためです。

例外的に、修理費など財産的な補償だけでは補いきれない苦痛があると認められた場合は、慰謝料が支払われることもあります。

具体的には、損害物が、被害者そして社会的に見ても特別な価値を有する場合や加害行為が著しく悪辣である場合などです。

たとえば、法律上では物扱いになるペットですが、実際に交通事故で大切なペットに後遺障害が残った事例で、40万円の慰謝料が支払われたことがあります。

また選挙立候補者が物損事故にあい、衝撃によりその後の選挙活動がうまくいかなかったという事例で50万円の慰謝料が認められました。

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(2)人身事故の示談金の内訳

人身事故とは、実際に怪我人が出るなど、身体や精神に損害が生じた交通事故です。まずは後遺障害などが残らなかった人身事故を想定して支払われる示談金の内訳をみていきましょう。なお、物損部分の損害は除いています。

  • 治療費
  • 入通院慰謝料
  • 付添看護費
  • 入院雑費
  • 通院交通費
  • 文書料
  • 診断書発行費
  • 休業損害

人身事故は、物損事故と違って慰謝料を請求できます。人身事故で請求できる慰謝料については、『人身事故の慰謝料を多くもらうための計算方法』で詳しく解説しています。

それでは、人身事故の示談金の内訳について見ていきましょう。

治療費

被害者が医療機関に支払った費用です。

診察料、検査料、治療費、入院料、投薬料などは必要・相当な範囲で実費全額が認められます。

病院が相手方の保険会社に治療費を直接請求することが多いですが、一時的に被害者が立て替え、後から相手方の保険会社に支払ってもらうこともよくあります。

原則は被害者が支払った金額が損害額となりますが、必要のない過剰な診療や高額な診療の治療費は損害として認められません。

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入通院慰謝料

医療機関に通院・入院するとその精神的苦痛に応じて入通院慰謝料が支払われます。

入通院慰謝料の金額はその日数や頻度、怪我の症状によって決定されます。

付添看護費

怪我の症状によっては、被害者本人だけではなく近親者や職業付添人などが入院・通院に付き添う必要があります。

その場合、1日あたり一定額の付添看護費が損害となります。

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入院雑費

もしも入院した場合、療養するにあたり通信費や雑貨代などの雑費が必要となります。こういった入院雑費については、1日あたり1500円で損害として請求できます。

なお、具体的な証拠がある場合は増額・入院が長期の場合は減額されることもあります。

通院交通費

交通事故で怪我を負い、通院する際にかかった交通費です。

電車・バス代など公共交通機関の運賃を原則とし、必要・相当と認められる範囲でタクシー代や自家用車のガソリン代などの請求も認められます。

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文書料

交通事故の損害を算出するにあたり、必要な書類を発行・交付してもらう際にかかる費用です。

たとえば、交通事故証明書だと、交付手数料が600円、支払い方法によっては払込手数料が追加でかかります。

診断書発行費

診断書などの発行手数料です。

病院や症状によって、数千円~1万円程度の幅があります。

休業損害

怪我の治療で会社を休んだことなどで、本来得られたはずが得られなくなってしまった収入の減少ぶんの補償です。

過去の収入から1日あたりの収入を計算し、それに休業した日数をかけて算出します。

自営業や収入のない主婦などでも、収入を証明する書類や平均賃金などのデータをもとに補償されます。

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(3)後遺障害が残る人身事故の示談金の内訳

人身事故のうち後遺障害が残った場合、「(1)物損事故の示談金の内訳」と「(2)人身事故の示談金の内訳」にさらに以下の費目が加わります。

  • 後遺障害慰謝料
  • 後遺障害逸失利益
  • 将来介護費
  • 装具・器具購入費
  • 家屋・自動車等改造費

後遺障害慰謝料

後遺障害が残存してしまったという精神的苦痛に応じて後遺障害慰謝料が支払われます。

後遺障害慰謝料の金額は、その症状の重さを表す後遺障害等級によって決定される仕組みです。

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後遺障害逸失利益

後遺障害が残ったことでその後の仕事に支障が出る場合、後遺障害が無ければ得られたはずの将来の収入が損害として認められます。

後遺障害の重さにより、収入の●%が失われると仮定し、事故時点の残りの労働可能年数をもとに計算可能です。

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将来介護費

重い後遺障害が残ったとき、その先長くにわたり付添の介護が必要となることがあります。

その場合、1日あたりの介護費用を余命の日数で計算した将来介護費も損害となります。

介護費用について、職業付添人の場合は実費全額、近親者の場合も一定額の支給が認められます。

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装具・器具購入費

後遺障害の症状によっては、義手や義足、車椅子や松葉杖といった器具による支えが必要になることがありますが、それらの購入費も損害として認められます。

一回限りではなく、今後何度買い替える必要があるかという計算のもとに、全額が損害額となるでしょう。

家屋・自動車等改造費

後遺障害により、家屋をバリアフリーにするなどの改造が必要になることもあります。

それらの費用も、必要な範囲で後遺障害による損害として認められる可能性が高いです。

(4)死亡事故の示談金の内訳

以下は、人身事故のうち被害者が死亡してしまった場合の示談金の内訳です。

  • 死亡慰謝料
  • 死亡逸失利益
  • 葬儀費用

物損がある場合は「(1)物損事故の示談金の内訳」、死亡までの間に入通院期間があった場合は「(2)人身事故の示談金の内訳」にさらに加わる形で請求することができます。

死亡慰謝料

被害者本人の死亡したことへの精神的苦痛、被害者遺族の近親者が亡くなったことへの精神的苦痛、それぞれに対して慰謝料が支払われます。

慰謝料の金額は被害者の一家内での立場や収入、家族構成などによって変わります。

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死亡逸失利益

被害者が死亡したことにより、得られなくなった将来の収入です。

現在の収入と、交通事故当時の年齢から残りの就労可能年数をもとに計算します。なお、死亡すると生活費もかからなくなることから、収入全体から3~5割が控除される計算です。

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葬儀費用

被害者の葬儀や法要、お墓の建立に関してかかった費用をさします。

原則150万円までとされていますが、特段の事情があれば別です。場合によっては150万円以上の額が認められる可能性もあります。

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交通事故の慰謝料の計算基準|高額にする計算方法

示談金の中の大きな部分を占める慰謝料の金額はどのように計算されるのでしょうか。

【3つの計算基準】自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準それぞれの意味

慰謝料、すなわち精神的な苦痛を数字で表すのは困難です。そのため、自賠責保険会社・任意保険会社・裁判所はそれぞれ独自に慰謝料を計算するための基準をもっています。

これらをそれぞれ自賠責基準・任意保険基準・裁判基準(弁護士基準)といいます。

裁判所の基準は弁護士が用いる基準でもあるため、弁護士基準ともいわれる基準です。示談交渉に弁護士が入ることで、裁判を起こさずとも裁判と同水準の金額に近づく可能性が高まります。

自賠責基準

自賠責保険会社が慰謝料を算定する際の基準。

交通事故の被害者に対して最低限の補償を行うことを目的としており、3つの基準のなかでは最低額の基準です。

自動車の保有者は自賠責保険への加入が義務づけられているため、原則としてまずはこの保険から損害賠償金が支払われます。

任意保険会社基準

任意保険会社が慰謝料を算定する際の基準。

自動車の保有者が自賠責保険会社に加えて任意に加入している保険会社から、自賠責保険で足りないぶんを補う形で支払われます。

かつてあった統一基準を踏襲しつつ、各保険会社が任意に設定しており、自賠責基準よりもやや高額であることが多いです。

弁護士基準

過去の裁判例をもとに、弁護士会が毎年発表している慰謝料の算定基準。

実際に裁判を起こせばこのくらいの金額になるだろう、という基準です。

3つの基準のなかでは最も高額であり、弁護士に依頼すると弁護士はこの基準での慰謝料獲得を目指し活動します。

どの基準で請求するのが交通事故の慰謝料が最も高くなるのか?

3つの基準の中では、弁護士基準で計算した慰謝料額が最も高額です。

慰謝料金額相場の3基準比較

慰謝料の種類や怪我の症状などにもよりますが、一般的には自賠責基準・任意保険基準の1.5倍~3倍以上の慰謝料を受け取れる可能性が十分あります。

この弁護士基準での支払いを目指すには、弁護士に依頼することが最も容易です。

もちろん、弁護士基準に関する正しい知識をつけて、ご自身でその金額を主張することも考えられます。

しかし、弁護士が実際に交渉の場にたたなければ、保険会社にも真剣に検討してもらえないのが現状です。

弁護士に依頼することで、保険会社が費用・手間の面から恐れる裁判の可能性をちらつかせ、譲歩を引き出すことができます。

それでは、実際にはいくらの慰謝料が受け取れるようになるのでしょうか。

交通事故により入通院をした・後遺障害を負った・被害者が死亡した、という3つのパターンを考えてみましょう。

入通院慰謝料の計算方法|むちうちで通院3ヶ月の場合

交通事故で負った怪我により病院に入院・通院した場合、入通院慰謝料を相手方に請求することができます。

入通院慰謝料は、3つの計算基準で以下の計算方法で算定されます。

  • 自賠責基準の計算方法:日額4,300円 × 対象日数
    • 対象日数は「通院期間」と「実通院日数の2倍」のいずれか少ない方を採用
    • 2020年3月31日以前の交通事故は4,200円
  • 任意保険基準の計算方法:各保険会社が独自で持つ算定基準で計算
  • 弁護士基準の計算方法:弁護士基準専用の算定表で計算

これらの計算方法を用いて、むちうちで3ヶ月通院した場合の入通院慰謝料を比較すると、以下のようになります。

むちうちで3ヶ月間通院した場合の入通院慰謝料(実通院日数30日)

金額
自賠責基準*25万8000円
旧任意保険基準37万8000円
弁護士基準53万円

*2020年4月1日以降の交通事故の場合

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後遺障害慰謝料の計算方法

交通事故で怪我を負ってしまい、治療を十分行っても後遺障害(後遺症)が残ってしまう場合があります。そのような後遺障害が残るという精神的苦痛に対しては、後遺障害慰謝料の請求が可能です。

後遺障害慰謝料の金額については、申請の手続きを経て後遺障害の重さを14段階に分けた後遺障害等級が何級かによって決定されます。

各基準での後遺障害慰謝料の金額は、以下のように定められています。

等級 自賠責*任意保険**弁護士
1級1,150
(1,100)
1,3002,800
2級998 (958)1,1202,370
3級861 (829)9501,990
4級737 (712)8001,670
5級618 (599)7001,400
6級512 (498)6001,180
7級419 (409)5001,000
8級331 (324)400830
9級249 (245)300690
10級190 (187)200550
11級136 (135)150420
12級94 (93)100290
13級57 (57)60180
14級32 (32)40110

*()内は2020年3月31日以前の交通事故に適用
**金額は旧任意保険基準をもとにした推定のもの

後遺障害等級について、もっとも認定される件数が多いのは14級となっています。

14級の自賠責基準と弁護士基準を比較すると、弁護士基準の後遺障害慰謝料の金額は自賠責基準の約3倍となっていることがわかります。

また、後遺障害が残る場合は一定期間の入通院をしているのが通常であるため、その期間に基づいた入通院慰謝料も請求することが可能です。

死亡慰謝料の計算方法

交通事故で被害者が死亡した場合、被害者本人の精神的苦痛・遺族の精神的苦痛に対して死亡慰謝料が支払われます。

死亡慰謝料の金額は被害者本人の家族のなかでの立ち位置・残された遺族の人数などによって決定します。

各基準での死亡慰謝料の金額は、以下の通りです(任意保険基準は自賠責基準に少し上乗せした程度になるので、ここでは説明を割愛します)。

被害者自賠責弁護士
一家の支柱400
(350)
2,800
母親
配偶者
400
(350)
2,500
独身の男女400
(350)
2,000~2,500
子ども400
(350)
2,000~2,500
幼児400
(350)
2,000~2,500
遺族1名※+ 550
遺族2名※+ 650
遺族3名以上※+ 750
被扶養者有※+ 200

慰謝料の単位:万円
遺族:被害者の配偶者、子、両親(認知した子、義父母などを含む)
( )内の金額は2020年3月31日以前に発生した交通事故に適用
※該当する場合のみ

自賠責基準において、被害者本人の死亡慰謝料は400万円(350万円)と定められており、遺族の人数に応じて近親者固有の慰謝料が加算される仕組みです。

一方、弁護士基準は被害者の家庭内の立場により、2000万円~2800万円の死亡慰謝料が設定されています。

それでは、自賠責基準と弁護士基準で死亡慰謝料がどれくらい異なってくるのか比較してみましょう。

被害者が一家の父、収入のない配偶者と18歳未満の子供が1人いる場合で考えてみると、支払われる死亡慰謝料は以下の通りです。

一家の父が亡くなった場合の死亡慰謝料(扶養者の遺族2名)

金額
自賠責基準1250万円
弁護士基準2800万円

自賠責基準と弁護士基準の死亡慰謝料は、差額が1550万円です。

死亡慰謝料など、慰謝料の金額が大きくなると弁護士基準で請求する際の差額も非常に大きくなることがわかります。

コラム|慰謝料が増額・減額することもある

これまで入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の金額について述べてきましたが、いずれの慰謝料もこの満額受け取れるというわけではありません。

慰謝料や損害賠償金は様々な事由によって、増額または減額することがあります。

その理由にはどのようなものがあるのでしょうか。

交通事故の慰謝料が増額される理由

交通事故において慰謝料が増額する理由としては、以下のような事情が挙げられます。

  • 加害者に故意または重過失がある(無免許、ひき逃げ、酒酔い運転など)
  • 事故後の態度が不誠実(損害の調査に非協力的、まったく謝罪しないなど)
  • 被害者やその親族が精神疾患に罹患する
  • 被害者の私生活への悪影響(交通事故により事業が頓挫、中絶、離婚に至るなど)

上記のような事情がある場合、何も言わずとも相手方が被害者側の精神的苦痛を汲んでくれることはまずありません。

弁護士などを通じ、しっかりと慰謝料の増額事由となる旨を相手方に主張していくことが必要です。

交通事故の慰謝料が減額される理由

一方で、実際に受け取る慰謝料は基準のものよりも減額されている可能性があります。

それらには、以下のような事情が挙げられます。

  • 被害者側にも過失があったため、過失相殺された
  • 被害者にはもとから持病(既往症)などがあり、交通事故によって持病が悪化した
  • 運転手の運転を邪魔する、スピード違反を煽るなど
  • 運転手の無免許などの事情を知りながら同乗していた
  • 交通事故により一部の年金や手当、過度の見舞金を受け取っている

以上のような事情があると、被害者もまた損害の発生に寄与した・または交通事故により利益を獲得していると考えられるため、損害賠償額が低額になることがあります。

交通事故の示談金・慰謝料でよくある疑問

Q.示談金のうち慰謝料内訳は何%?

自賠責保険会社のデータですが、実際に支払われた保険金のうち、治療費ならびに治療関係費が半数を占め、示談金全体の41%が慰謝料であるというデータがあります(損害保険料率算出機構「2024年度 自動車保険の概況」 図17 傷害による損害額の費目別構成比<2023年度>より)。

なお、自賠責保険には支払い上限があり、任意保険会社が支払ったぶんの保険金を含んでいないため、このデータは正確な数値ではありません。

しかし、示談金のなかで慰謝料は治療費と並ぶほどに大きな費目であることは事実です。

Q.交通事故の慰謝料に税金はかかる?

多額の交通事故慰謝料を受け取ると、税金がかかるかが気になってくるかと存じます。

交通事故の慰謝料に関しては、原則として税金はかかりません。

慰謝料は、被害者の受けた精神的苦痛に対して支払われる補償という性質をもち、被害者の受けた不当な損害を回復するためのお金といえます。

そのため、慰謝料を受け取ったことによって被害者が新たに財産を得たとは言えず、税金はかからないということになります。

なお、過度に高額な示談金を受け取った場合には、例外的に課税対象となる場合があります。慰謝料が課税対象になるケースや、課税対象となりうる保険金については、関連記事『交通事故の慰謝料に税金がかかるケース|いくらまで非課税?税金別に解説』を参考にしてください。

Q.交通事故の示談金はいつ支払われるのか

相手方の保険会社に金銭を請求し、双方ともに納得のいく結論になるまで話し合いを行い、話し合いの内容がまとまれば示談成立となり、その後、相手方保険会社から示談金を振り込んでもらいます。一般的に、示談金は示談成立後2週間程度で振り込まれるでしょう。

ちなみに慰謝料は、交通事故のケガが完治または症状固定(これ以上治療を受けても症状の改善が見込めない状態のこと)を迎えたタイミングで請求します。

身体にしびれ・痛み・欠損などの症状が残った場合は、後遺障害等級認定を受けることで、後遺障害慰謝料も請求できるようになります。

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示談がまとまらなかったらどうする?

示談がまとまらなかった場合には、裁判やADRといった第三者の介入により解決を目指す方法があります。

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保険会社の示談金提示額は本当に妥当?

被害者が気をつけたいこととして、保険会社から提示された示談金が「本来受け取れるはずの金額より低い可能性がある」という点があります。

保険会社は、自賠責保険基準や独自の社内基準(任意保険基準)で計算して提示してくることがありますが、これらは裁判で認められる水準(弁護士基準)よりも低めに設定されています。

適正な金額を知るためには、以下のような対応が必要です。

  • 慰謝料など個々の項目の内訳を確認する
  • 弁護士に無料相談することで、自分の受け取れる金額の目安を知る

加害者側の保険会社から提示される示談金の金額は一見、十分に見えるかもしれませんが、被害者にとって本当に妥当な金額とは限りません。

「保険会社の言いなりで示談に応じる=本来受け取れる賠償額よりも低い金額で手を打ってしまう」リスクがあるのです。

「10対0」の事故では特に注意

10対0の事故、いわゆる「もらい事故」では、被害者側の保険会社が示談交渉を代行することができないため、被害者本人が加害者側(加害者本人またはその任意保険)と直接交渉しなければなりません。

その結果、以下のようなリスクが生じます。

  • 被害者自身が保険会社と交渉しなければならず負担が大きい
  • 加害者側の任意保険とのやり取りで不利な条件を提示されやすい
  • 示談交渉の内容や法的な判断に不安を感じやすい

こうした状況においては、交通事故に強い弁護士に交渉を依頼することで、法的に適正な金額で示談をまとめられる可能性が高まります。「交渉相手が保険会社」という手強い相手でも、弁護士であれば対等な立場で対応することができます。

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もらい事故では保険会社に示談交渉を頼めない!注意点や使える自分の保険は?

慰謝料・示談金の注意点

慰謝料や示談金に関しては、以下のような点に注意が必要です。

  • 保険会社の提示額が弁護士基準よりも低いことが多い
  • 一度示談が成立すると、原則として追加請求はできない
  • 後遺障害が残る可能性がある場合は、安易に示談をまとめてはいけない
  • 適正な金額かどうかを判断するには、弁護士基準と比較する必要がある

特に慰謝料については、保険会社が独自に設定する低い基準での提示がされることが多いため、正当な権利を守るには弁護士など専門家のチェックが不可欠です。

交通事故の慰謝料相場を簡単に知る方法はある?

慰謝料相場は、「慰謝料の算定表」か「慰謝料計算機」を使うことで簡単に知ることが可能です。

慰謝料の算定表

慰謝料の算定表を使うとおおよその相場が簡単につかめます。

関連記事『交通事故慰謝料の早見表|計算方法・相場より増減するケース』では、慰謝料の算定表をつかった相場の見方や、算定表よりも慰謝料が増額されたり、減額される事例を紹介しています。

慰謝料計算機

慰謝料の計算に必要な最低限の項目を入力するだけで直ちに計算可能です。目安を知っておけば、相手方から提案された金額に対してスムーズに判断できます。

慰謝料計算がどのような仕組みで計算しているのか知りたい方は、関連記事『交通事故の慰謝料の計算方法|正しい賠償金額がわかる』をお役立ててください。

示談金の中に慰謝料は含まれる!違いを理解して損しない示談交渉にしよう

交通事故の損害賠償でよく使われる「慰謝料」と「示談金」は、混同しやすい言葉です。しかし、それぞれ意味が異なるため、正確に理解することが重要です。

用語意味
示談金損害賠償金の総称。複数の損害項目を含む。
慰謝料精神的苦痛に対して支払われる一部の賠償金。

被害者として適正な賠償を受けるためにも、言葉の違いをしっかり理解しておくことが大切です。

チェックポイント

  • 示談金の中には慰謝料が含まれている
  • 保険会社の提示額が適正かどうかをチェックしよう
  • 不安がある場合は、弁護士に相談するのも重要な選択肢

交通事故にあい、相手方から示談金を提示されたときは慰謝料の金額は妥当なのか・その内訳に不足しているものはないのか、不安になることもあるかと存じます。

そのようなご不安がございましたら、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士であれば、これまでの交通事故の解決実績や裁判例をふまえて、被害者の示談金内訳が適切か、慰謝料の金額が妥当かを判断できます。

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特に慰謝料については、弁護士に交渉を依頼することで大幅な増額が見込めるものとして有名です。

いくら増額するのかという見積もりをなさりたい方・実際に依頼をお考えの方・弁護士に依頼すると費用倒れにならないかご不安の方、皆様のご相談に無料でお答えいたします。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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