交通事故で代車費用は請求できる?修理期間中に代車を借りたい
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交通事故で車両を修理することになり、代車を借りようか検討していますか?
代車費用は、代車が必要な範囲内で相手方に請求可能です。
しかし、代車利用の必要性、金額の相当性など、代車費用の請求にはいくつかの要件があります。要件を満たさなければ、請求が認められなかったり、本来請求できる金額よりも低い金額しか認められない場合もあるでしょう。
そこで今回は、交通事故における代車費用請求について解説します。代車費用でもめないために、事前に知っておきたいポイントも紹介します。
目次
交通事故で代車を借りたい。代車費用は請求できる?
過失割合に応じて代車費用は請求可能
車の修理中に代車を借りた場合はもちろん、買い替えた新車の納期までの間に代車を借りた場合でも、代車費用は請求できます。
ただし、請求できる金額については、過失割合が影響するので注意してください。交通事故は、事故の相手方だけに100%の過失がつくケースばかりではなく、相手方と被害者の双方に過失がつく交通事故も多いからです。過失割合の基本的な考え方については『交通事故の過失割合とは?決め方の具体的な手順とパターン別の過失割合』の記事が参考になりますので、ご確認ください。
被害者にも過失がつく交通事故であった場合、相手方の過失分しか代車費用を請求できません。
つまり、過失割合に応じて代車費用は減額されるので、全額請求できないことになるのです。
たとえば、代車費用が1日5,000円の代車を1週間借りたとしましょう。
代車費用の合計は35,000円となりますが、被害者に過失が10%ついた場合は31,500円しか相手方に請求できません。
残りの3,500円は被害者の自己負担となります。
なお、代車費用が請求できるのは、有償で代車を借りていることが前提です。
レンタカーを借りる場合は、レンタカー料を代車費用として請求できるでしょう。一方、自動車修理工場からは無償で車が借りられることもよくあるのですが、無償だと代車費用は発生しないので、損害賠償金として代車費用を請求できません。
代車費用が認められるための要件
有償で代車を借りたすべてのケースで、代車費用が損害として認められ、支払ってもらえるとは限りません。
代車費用は「代車の必要性があること」「代車の使用期間に相当性があること」「代車のグレード(利用料)に相当性があること」のすべての要件を満たす場合、損害として認められることになります。
要件を一つずつみていきましょう。
代車の必要性があること
交通事故によって車両が使えなくなったとしても、代車を使用する必要性がなければ、代車費用は請求できません。
代車の必要性は、以下のような点で判断されます。
- 事故車両以外に車を保有していない
- 代車がなければスーパーや商業施設などに行けず、日常生活を送ることがむずかしい
- 代車の代わりになる公共交通機関がない
生活必需品として車が欠かせないような場合、代車費用は損害賠償として認められやすいでしょう。一方、車を利用する目的がレジャーや趣味だけのような場合、代車費用は認められにくいです。
代車の使用期間に相当性があること
代車の使用期間に相当性がなければ、代車費用は請求できません。
具体的には、壊れた車両の修理するために相当と考えられる期間、車を買い替えるために相当と考えられる期間となります。
もっとも、実際に要した期間ではなく、一般的に相当だとされる期間が対象になっているので注意してください。
たとえば、1週間で車両の修理が完了するのに、「この際だから新車に買い替えよう」と思って新車納入までに1ヶ月かかったとしましょう。この場合、新車に買い替えるのは被害者側の都合でしかないので、代車費用は1週間分のみが損害賠償金としての支払い対象となるでしょう。
代車のグレード(利用料)に相当性があること
代車のグレード(利用料)に相当性がなければ、代車費用は請求できません。代車は、交通手段を代替えするために必要だと判断された場合に認められるものだからです。
そのため、事故車両とグレードがかけ離れた高級車を代車として楽しむような使い方は認められていません。基本的に、事故車両と同等のグレードの代車なら代車費用が認められるでしょう。
とはいえ、事故車両が高級車であった場合、すべてのケースで高級車が代車として認められるかはむずかしいと言わざるを得ません。高級車が事故車両と同等グレードであっても、代車として認められるかは相手方との交渉次第になるでしょう。
代車費用でもめやすいケース
代車費用は示談の際、金額や請求可否をめぐって相手方と争いになりやすいです。特に、代車の必要性や、代車の金額の相当性についてもめやすいので、それぞれどのようにもめるのか具体的にみていきましょう。
代車の必要性がなかった
代車の必要性については、たとえば以下のようなケースにおいて「代車を借りる必要があったとは言えない」として代車費用が認められない可能性が高いです。
- 複数台の車を所有しており、利用することができた場合
- 週末しか車を使わないなど、車の使用頻度が低い場合
(代車が必要になった日数分の費用しか請求できないこともある) - タクシーや電車などで対応でき、必ずしも代車が必要だといえない場合
また、代車が修理工場やディーラーから無償で提供されていた場合、代車費用は請求できません。
一方、業務で車を使用している場合、代車の必要性は認められやすいです。日常生活で車を使用している場合は、車を使用する頻度や必要性に応じて判断が分かれるでしょう。
代車の金額の相当性がなかった
代車費用は、原則として必要な分しか認められません。
たとえば、修理に出した車よりもグレードの高い高級車を借りた場合、「代車がそこまで高級である必要はない」として代車費用の一部が補償されない可能性が高いです。
基本的には修理に出した車と同程度のグレードの代車を借りてください。
ただし、修理に出した車が高級車の場合は、同程度ではなく下のグレードの代車を借りるべきでしょう。
代車費用は交通手段を代替的に提供するための補償なので、代車まで高級車である必要はないと考えられるからです。
代車費用でもめないための対策
過度に高級な代車を借りない
示談の際に代車費用でもめることを避けるには、過度に高級な代車を借りないことがポイントです。
不安であれば修理費の見積もりを相手方に提示する際に、どの程度の代車費用であれば良いのか確認しておくと良いでしょう。
自分の車両保険の利用も検討する
代車費用を立て替える際は、車両保険(代車特約)を使っておくこともおすすめです。
車両保険を使っておけば、もし代車費用の一部が補償されなくても自己負担金が軽減されます。
ただし、保険の利用により翌年からの保険料が上がる場合もあるので、その点も踏まえて保険を使うかどうか検討してみましょう。
まとめ
交通事故で代車を利用した場合、必要な範囲で代車費用の請求が認められます。
ただし、代車費用をはじめ、交通事故で生じた損害賠償金の支払いに関しては、相手方と争いになることもあるでしょう。
もし、代車費用請求について相手方と争いになったり、その他に不安な点や疑問点があれば、弁護士に相談するのがおすすめです。 弁護士は、個々の状況を踏まえて最適なアドバイスをしてくれるでしょう。
もっとも、物損事故の場合、弁護士に依頼することで、かえって費用倒れが生じるといったリスクも懸念されます。費用倒れが起きてしまっては、弁護士に依頼する意味が薄くなってしまいます。
弁護士費用特約が利用できれば、基本的に費用倒れの心配はありません。弁護士費用特約が利用できるかまずは確認し、利用できる場合は積極的に弁護士に相談してみましょう。
また、物損事故と違って、交通事故でお怪我をされている場合は慰謝料増額の余地があります。慰謝料増額の可能性については、アトム法律事務所の無料相談を通して聞いてみてください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了