バイク事故の原因は?死亡事故の統計も踏まえて対策や賠償金を解説
バイク事故で死亡したケースを、ニュースなどで目にする方も多いのではないでしょうか。
内閣府の統計によると、2020年度のバイク事故における死亡率は1.3%でした。
また、2022年の統計を見ると、交通事故死者数のうちバイク事故による死者数が占める割合はおよそ17%でした。
バイク事故による死傷者数は決して少なくありません。バイクは小回りが利くことが魅力の便利な乗り物ですが、車体などの特性上、事故にあったときは死亡や重傷といった重大な被害を受けやすいのです。
この記事では、バイク事故における死亡率や、バイク事故で死亡が多くなる原因と対策を紹介します。あわせて、バイク事故で被害者が死亡した場合の対応や損害賠償金も解説しているので、ぜひご一読ください。
目次
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バイク事故は死亡につながりやすい?統計から解説
バイク事故の死亡率と重傷率
「令和3年度版交通安全白書」(内閣府)によると、2020年のバイク事故における死亡率は1.3%です。この数値は、自動車事故のおよそ3倍、自転車事故のおよそ2倍になります。
死亡率と重傷率を、自動車や自転車などと比べてみましょう。
- 死亡率
- バイク:バイク事故全体のうち1.3%
- 自動車:自動車事故全体のうち0.4%
- 自転車:自転車事故全体のうち0.6%
- 歩行者:歩行中の事故全体のうち2.6%
- 重傷率
- バイク:バイク事故全体のうち17.5%
- 自動車:自動車事故全体のうち3.1%
- 自転車:自転車事故全体のうち9.8%
- 歩行者:歩行中の事故全体のうち18.0%
上記の統計から、バイクに乗車していて交通事故にあった場合、自動車または自転車に乗車していた場合よりも、死亡または重傷となる確率が高いことがわかります。
バイク事故で死亡率や重傷率が高い理由
バイクは自動車と異なり、運転者の身体が外に露出しています。
自動車と違い運転者の身体がボディやエアバッグによって保護されないため、事故によって頭部や胸部といった重要な部位を強打しやすく、死亡・重傷につながりやすいのです。
また、バイクは自動車と比べてバランスがとりにくく、転倒してしまう可能性が高いです。少しの操作ミスで転倒し、大事故につながってしまうこともあるでしょう。
自動車を運転していた場合は比較的軽いケガで済むような衝撃でも、バイクを運転していたなら死亡したり重傷を負ったりするような大事故につながってしまうのです。
バイク事故の主な原因は?
(1)危険なすり抜けや追い越しが多い
赤信号や渋滞で他車の間をすり抜けて走行する、いわゆる「すり抜け」は、バイクによる事故原因となりやすいです。
自動車の死角に入った状態ですり抜けたり、無理のある状況ですり抜けたりすると、他車と接触して事故を起こす可能性が高くなってしまいます。
また、他車を追い越す際は、その車両の右側を走行するのが法律で定められた交通ルールです。
しかし、バイクは車体が小さいため、左側からすり抜けることができてしまいます。
こうした交通ルールを破った危険なすり抜けも、バイク事故の一因です。
すり抜け事故については、関連記事『バイクのすり抜け事故|過失割合や損害賠償請求の流れ、違反になるケースもわかる』を読むとさらに理解が深まります。
(2)ヘルメットや前傾姿勢により視野が狭くなる
バイクを運転する際は、ヘルメットを着用することが義務付けられています。
ヘルメットを着用すると、頭部が守られる反面、何もかぶっていない場合よりも視界が狭くなってしまいます。
よって、自動車からはバイクの存在を目視できていても、バイクが自動車の存在に気付いておらず、事故につながることがあるのです。
また、スポーツタイプのバイクを運転する際は、前傾姿勢になることにより視野が狭くなることもあります。この場合、前の車の急ブレーキなどに気づかず事故を起こしてしまうことがあるため、注意しておきましょう。
(3)車体が小さいため自動車の死角に入ってしまう
バイクは車体が小さいため、自動車の死角に入ってしまうことが多いです。たとえば、以下のような形で死角に入ることがあるでしょう。
- 対向車の陰に隠れる
- 窓柱の後ろに車体が入る
- 自動車のサイドミラーやバックミラーに映らない
- トラックなどの大型車の側面や後方に隠れる
バイクが自動車の死角に入った場合、自動車側はバイクの存在を認識していないので、スピードを落とすことなくバイクに衝突してきます。
そのため、事故により生じる衝撃が強く、死亡や重傷につながりやすいのです。
とくに夜間は、バイクが自動車から見落とされやすい傾向にあります。夜間にバイクを運転する際は、周囲の交通状況にとくに気を配った方がよいでしょう。
バイクが死角に入った場合に起こりやすい巻き込み事故については、『巻き込み事故とは?過失割合を被害車両の種類別・事故要因別に詳しく解説』をご覧ください。
(4)短い距離で停止するため後続車のブレーキが間に合わない
バイクの特徴として、自動車よりも短い距離で停止できることがあげられます。
バイクはブレーキが前輪と後輪が独立して作用するうえ、車体が自動車に比べて軽量であるため、制動距離が短くなるのです。
制動距離が短いこと自体はデメリットではありませんが、バイクが急ブレーキをかけた場合、後続の自動車によるブレーキが間に合わず追突してしまうことがあるのです。
また、バイクは自動車側に「バイクなら簡単に停止できるだろう」と捉えられがちなため、不適切な車間距離を取られてしまい、事故につながることもあります。
バイク側でも十分にそのことを認識し、車間距離やスピード、急ブレーキなどに気を付けましょう。
(5)あおり運転の標的となってしまうことがある
バイクがあおり運転の標的となってしまうケースも存在します。あおり運転を受けて急ブレーキをかけた場合、重大な事故につながるおそれがあります。
あおり運転をされていると感じたら道を譲るなどして距離を取る、あおり運転の標的にならないよう安全運転を心がけるなど、あおり運転による事故も避けられるような工夫をするとよいでしょう。
バイク事故や事故による死亡を防ぐための対策は?
(1)ヘルメットや胸部プロテクターで身体を守る
『二輪車の交通死亡事故統計(2021年中)』(警視庁)では、2021年中の東京都のバイク死亡事故について、以下のような報告がされています。
- 致命傷部位
- 頭部:62.9%
- 胸部:17.1%
- 腹部:5.7%
- その他:14.3%
バイク事故で被害者の方が死亡した場合、損傷部位として多いのが頭部・胸部・腹部です。
そのため、万が一バイク事故にあったときに死亡や重傷を避けるためには、ヘルメットやプロテクターで致命傷となりやすい部位を守ることが重要になります。
とくにヘルメットは、バイク運転時に装着することが道路交通法で義務付けられています。
第七十一条の四 大型自動二輪車又は普通自動二輪車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶらないで大型自動二輪車若しくは普通自動二輪車を運転し、又は乗車用ヘルメットをかぶらない者を乗車させて大型自動二輪車若しくは普通自動二輪車を運転してはならない。
2 原動機付自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶらないで原動機付自転車を運転してはならない。
道路交通法第七十一条の四
ヘルメットを着用するときは、あご紐をしっかりと締めることが大切です。あご紐を締めていなかった場合、事故の衝撃でヘルメットが外れてしまうこともあります。
実際に、バイク事故による死亡者は、事故時にヘルメットが脱着してしまっていたことが多いのです。
胸部プロテクターの着用は任意ではありますが、胸部や腹部への衝撃は致命傷につながることが多いため、身を守るために着用する必要性は高いと言えるでしょう。
また、近年はバイク用のエアバッグも多く販売されています。
(2)すり抜けは危険が多いと認識する
バイクによるすり抜けには、以下のような危険があります。
- 交差点ですり抜けをしたところ、右折してきた車と衝突する
- すり抜け時に周囲の車が急に車線変更してくる
- 停車している車のドアが突然開く など
バイクによるすり抜けには危険が多く、事故が起こりやすいことをしっかり認識し、すり抜けをする場合は慎重になることが大切です。安全確認の意識が、事故防止につながります。
バイクによるすり抜け(追越し・追い抜き)は、ケースによっては違反となることもあります。
事故を起こした場合の過失割合で不利になることもあるでしょう。
詳しくは、『バイクのすり抜け事故|過失割合や損害賠償請求の流れ、違反になるケースもわかる』の記事をご覧ください。
(3)スピードの出しすぎや急ブレーキを避ける
先述のとおり、バイクは自動車と比べてバランスを取りづらく、転倒のリスクが高い乗り物です。
スピードを出していると、周囲の状況をつかむのが遅れて急な操作をしてしまったり、少しの操作ミスが転倒につながりやすくなったりするため、大変危険です。
スピードを出しすぎた状態で転倒すると、死亡や重傷といった重大な被害につながりやすくなります。バイクを運転するときは、必ず法定速度を守り、安全運転を心がけましょう。
また、バイク乗車中の急ブレーキも非常に危ない行為です。先述のとおり、バイクは制動距離が短いため追突される可能性があります。
また、スピードを出しているときに急ブレーキをかけると、タイヤがロックされて転倒につながってしまう恐れもあるでしょう。
バイクは実際よりゆっくり走っているように見えることも
なお、バイクは車体が小さいため、周囲の自動車にスピードや距離感を正しく認識されないことも多いです。実際よりゆっくり走っているように捉えられてしまい、事故が起こることもあるので、周囲の交通状況や車間距離に気を配ることも重要です。
免許を取ったばかりの頃は安全性に気を付けて運転していても、慣れてくると自己流の運転になってしまいがちです。今一度、スピードの出しすぎや急ブレーキに意識を配るようにしましょう。
(4)日常的にバイクの点検やメンテナンスを行う
バイクのメンテナンスが不足していたため、車体に何らかのトラブルが発生して事故につながってしまう可能性もあります。
バイクには12ヶ月点検、24ヶ月点検といった法定点検が義務付けられています。
また、排気量が250ccを超えるバイクには車検も義務付けられているため、必ず実施するようにしてください。
12ヶ月点検や24ヶ月点検以外にも、日常的なバイクの点検・メンテナンスを行うことは大切です。走行前に燃料・オイルやタイヤ、ライト、バックミラーなどを点検し、問題が発生していないか確認するようにしましょう。
バイク事故が多い朝や夕方は特に気をつける
警視庁の統計によると、交通事故が多いのは曜日別では金曜日、時間帯別では8時~10時、16時~18時となっています。
週末である金曜日は仕事の疲れで集中力が落ちやすいことや、通勤・退勤の時間帯は交通量が多く、急いでいるため運転が荒くなりやすい、渋滞を避けるために抜けが多くなるといった状況になりやすいことが原因です。
よって、通勤・退勤時はとくに時間と心に余裕を持った運転をすることが重要です。出勤時は早めに家を出るように心がける、退勤時は暗くて見通しが悪いこともあり法定速度を遵守するといった対策が有効になるでしょう。
【重要】事故対策の有無は損害賠償金にも影響する
バイク事故対策が不十分だと、過失相殺で賠償金が減ることがある
ここまで挙げた対策は、バイク事故防止のためだけでなく、事故に遭った場合の損害賠償金の減額を防ぐためにも重要です。
バイク事故の被害者になった場合でも、事故直前にバイク側が急ブレーキをかけていたり、違法なすり抜けをしていたり、ヘルメットを着用していなかったりすると、過失割合が加算されて損害賠償金が減額されてしまう可能性があります。
過失割合とは
交通事故が起きた責任が加害者側と被害者側にどれくらいあるかを示した割合のこと。被害者側に過失割合が付くと、その割合分、受け取れる損害賠償金が減額される(過失相殺)。
たとえば、追突事故の過失割合は基本的に「追突された側:追突した側=0:10」になります。
しかし、追突された側の急停止によって追突事故が発生した場合は、追突された側に1~2割の過失割合が加算され、受け取れる損害賠償金が減額されてしまうのです。
バイク事故にあった際、過失割合で悔しい思いをしないためにも、日ごろから事故対策を徹底しておきましょう。
任意保険に加入しておくことも大切
万が一事故にあったときに備えて、任意保険に加入しておくことも大切です。
任意保険に加入していれば、事故による損害を保険金によってカバーできるからです。
バイク事故に遭った場合、損害賠償金は加害者側に請求できます。しかし、以下のような点で加害者側からの賠償金だけでは不十分さ・不便さを感じることがあります。
- 過失相殺が適用された結果、加害者側からの賠償金だけでは損害をカバーしきれない
- 損害賠償金を全額受け取るには示談の成立を待たなければならない
しかし、任意保険に入っていれば、過失相殺で減額された分の金額を保険金でカバーできたり、早期にまとまったお金を得たりできることがあるのです。
バイク事故で家族が死亡してしまったら?
バイク事故で死亡した被害者の家族がすべき対応
バイク事故で被害者が死亡した場合、家族がすべき対応は以下のとおりです。
- 交通事故の発生
- 通夜や葬儀を終えたあと、加害者側の任意保険会社との示談交渉
- 示談が成立すれば、約2週間後に損害賠償金が支払われる
- 示談が不成立となれば、民事裁判などで解決を目指す
解決までの各段階においては、以下の点に気を付けるとよいでしょう。
通夜や葬儀における注意点
通夜や葬儀においては、加害者側から香典や参列の申し出があることが想定されます。どのように対応するかについては、事前に遺族の間で決めておくとよいでしょう。精神的に負担になるようであれば、断っても問題ありません。
なお、香典を受け取った場合、あとから「損害賠償金の前払いとして支払った」と主張されてトラブルになることがあります。香典を受け取るときは、香典と損害賠償金は別物であることを確認しておくとよいでしょう。
加害者側との示談交渉前後の注意点
加害者側との示談交渉は、遺族の中から選ばれた相続人が行います。
示談交渉においては、加害者側の任意保険会社は相場より低い金額を提示してくることがほとんどである点に注意してください。
死亡事故の損害賠償金は高額になりがちなため、一見すると十分な金額に思えますが、法律の専門家から見ると大幅に不足していることが少なくありません。提示された金額が妥当かどうかは、弁護士に相談して確認するとよいでしょう。
受け取った損害賠償金のうち、被害者本人分については、遺族の中で分配することになります。遺産分割については、『交通事故の慰謝料|遺産分割できる相続人は?相続分はどれくらい?』の記事で解説しているので、ご参考ください。
バイク事故で死亡した場合の損害賠償金
バイク事故で被害者が死亡した場合、加害者側に請求できる損害賠償金の費目は以下のとおりです。
死亡慰謝料 | 交通事故で亡くなった精神的苦痛の補償 |
死亡逸失利益 | 交通事故で亡くなったため得られなくなった生涯収入の補償 |
葬祭費 | 葬儀、法要、墓碑や仏壇の購入に要した費用 |
なお、事故の発生から亡くなるまでに病院で一定期間の入通院治療を行っていれば、治療関係費や入通院慰謝料なども請求できます。
損害賠償金のうち、死亡慰謝料や死亡逸失利益の相場については、以下の計算機で確認できます。加害者側から提示された金額が妥当か判断する際にご利用ください。
死亡事故では弁護士への相談・依頼もご検討ください
弁護士に相談・依頼すべき理由
バイク事故で被害者が亡くなった場合、以下ような問題が生じることがあります。
- 損害賠償金が高額になる分、加害者側がシビアな態度で交渉に臨んでくる
- 加害者が事故状況を偽って被害者の過失を主張してきた場合、被害者本人が亡くなっているため反論が難しい
- 誰が相続人であり、誰がどのような割合で損害賠償金を得られるのかがよくわからなくなる
死亡事故で得られる損害賠償金額は高額になりやすいため、上記のような問題に適切に対応できないと、得られる金額が数百万円以上変わってしまう恐れがあります。
弁護士に相談・依頼することで、弁護士が代わりに請求を行い、適切な損害賠償金額を得ることが可能です。
また、相続や分配に関する法的アドバイスといったサポートを受けられます。
相場の金額を得られないと大きな損失となりうる可能性があるため、死亡事故では、弁護士に相談・依頼をする必要性は強いといえるでしょう。
弁護士費用が気になる場合の対処法
弁護士に相談・依頼をするとなると、弁護士費用が気になる方は多いでしょう。
すでに説明したように、死亡事故においては弁護士に依頼することで、得られる金額が大幅に増額することが多いです。
そのため、弁護士費用を差し引いても、得となる結果になりやすいので、弁護士費用を支払ってでも相談や依頼を行うべきでしょう。
それでも弁護士費用が不安な場合は、以下の方法で負担の軽減を図れます。
- 弁護士費用特約を利用する
(保険会社に一定金額まで弁護士費用を負担してもらえる) - 相談料・着手金無料の事務所を利用する
(初期費用がかからないため、すぐに大きなお金を用意できなくても依頼可能)
弁護士費用特約について詳しく知りたい方は『交通事故の弁護士費用特約を解説|使い方は?メリットや使ってみた感想も紹介』の記事をご覧ください。
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アトム法律事務所は交通事故の被害者の方に対して無料の法律相談を行っております。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了