車にはねられた…歩行者の過失はどうなる?過失割合を横断歩道や信号の色ごとに紹介
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歩行者が車にはねられた事故では、基本的に自動車側に多くの過失割合がつきますが、歩行者側にも一定の過失割合がつくことは珍しくありません。
また、示談交渉では加害者側は低めの慰謝料・示談金を提示してくるため、車にはねられた歩行者であってもしっかり交渉しなければ、十分な金額は得られない傾向にあります。
この記事を通して、車にはねられた歩行者の慰謝料相場・過失割合、適切な内容で示談するためのポイントを確認していきましょう。
なお、この記事で紹介する過失割合は「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に記載されている情報をベースとしています。
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歩行者が車にはねられた時の慰謝料相場・計算方法は?
歩行者が車にはねられてケガした場合、請求できる慰謝料には以下があります。
- 入通院慰謝料:ケガの痛みや通院治療したことへの精神的苦痛に対する補償
- 後遺障害慰謝料:交通事故で後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する補償
- 死亡慰謝料:交通事故が原因で死亡したことへの精神的苦痛に対する補償
これらの慰謝料について、裁判所も用いる「弁護士基準」という金額基準に基づいた相場を紹介していきます。
入通院慰謝料|治療期間から相場を算定
入通院慰謝料は、入院期間・通院期間をもとに算定表から慰謝料を確認します。
算定表は2種類あるので、むちうちや打撲などの場合は軽傷用、その他の場合は重傷用の表をご覧ください。
慰謝料算定表の見方は、横列の入院月数と縦列の通院月数の交わる部分をみるだけです。
たとえば入院1ヶ月・通院6ヶ月の場合の慰謝料相場は113万円となります。入院していないケースや通院期間が短い場合には相場は低くなるでしょう。
軽傷時の慰謝料については、以下の関連記事でも詳しく解説しています。
軽傷時の慰謝料関連記事
重傷時の慰謝料についてもっと詳しく知りたい方は、下記の関連記事もお読みください。懸念される後遺症についても解説しています。
後遺障害慰謝料|後遺障害等級から相場を算定
後遺障害慰謝料は、認定された「後遺障害等級」に応じて相場が決まっています。
等級 | 弁護士基準 |
---|---|
1級・要介護 | 2,800万円 |
2級・要介護 | 2,370万円 |
1級 | 2,800万円 |
2級 | 2,370万円 |
3級 | 1,990万円 |
4級 | 1,670万円 |
5級 | 1,400万円 |
6級 | 1,180万円 |
7級 | 1,000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
たとえば車にはねられた際に頭を打ち付けてしまい、高次脳機能障害が残ってしまった場合、症状の程度や種類にもよりますが、後遺障害1級や2級に認定されることがあります。
あるいは骨折により肩・腕・手首のいずれかの関節に可動域制限が生じた場合は、6級・8級・10級・12級に認定される可能性があります。
むちうちで後遺障害が残った場合の等級は、12級または14級です。
ご自身の後遺症がどういった「後遺障害」に認定されうるのかを知りたい方は、関連記事も参考にしてみてください。
死亡慰謝料|亡くなった人の立場から相場を算定
交通死亡事故では、死亡に至らしめられた被害者はもちろん、遺族は大変な精神的苦痛を負います。死亡慰謝料とは、こうした被害者や遺族の精神的苦痛を補償するための金銭です。
死亡慰謝料の相場は以下のとおりです。
被害者の立場 | 金額 |
---|---|
一家の支柱 | 2,800万円 |
母親・配偶者 | 2,500万円 |
その他の場合 | 2,000万円~2,500万円 |
一家の支柱とは家計を主に支えていた人物をさします。そうした大黒柱の死亡は遺族の生活に与える影響も大きいことから、死亡慰謝料の相場が高額になります。
被害者の死亡事故の場合、被害者に代わって遺族が慰謝料請求をしなければなりません。
どのように対応すれば良いのかは、関連記事『死亡事故の被害者遺族がすべき賠償請求やお葬式の流れ|過失割合も要確認』にてご確認ください。
詳しいことは弁護士にご質問いただくことも可能です。
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車にはねられても無傷なら慰謝料請求はできない
交通事故で歩行者が車にはねられても、特にケガがなければ原則として慰謝料請求はできません。
交通事故における慰謝料は、基本的に「被害者の身体的被害から生じる精神的苦痛」を補償するものだからです。
「本当はケガをしているけれど、軽傷だから物損事故として届け出た」「物損事故として届け出たあとから痛みが出てきた」などの場合は、人身事故への切り替え手続きをしておきましょう。
詳しい手続き方法は『物損から人身への切り替え方法と手続き期限!』で解説しています。
慰謝料以外にも請求すべき損害賠償の一覧
交通事故の損害賠償請求は慰謝料だけではなく、治療関係費、休業損害、逸失利益、将来の介護費用など多岐にわたります。
それぞれの費目について概要をまとめると以下の通りです。
費目 | 概要 |
---|---|
治療関係費 | 治療費、入院諸費用、通院交通費など。 |
休業損害 | 治療により仕事を休んだ場合の収入減の補償。 |
慰謝料 | 事故で負った精神的苦痛を緩和する金銭。 (入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料) |
逸失利益 | 後遺障害認定を受けた方や死亡事故被害者が対象。 交通事故による生涯収入の減少を補てん。 |
その他・修理費 | 将来介護費、破れた衣服や壊れた私物の修理費など。 |
治療関係費はおおむね実費請求が認められやすいのですが、休業損害、慰謝料、逸失利益、将来介護費は非常に揉めやすいポイントです。
関連記事『交通事故の損害賠償請求とは?賠償金の費目範囲や相場・計算方法』もよくお読みになり、交通事故の賠償金の全体像を把握することをおすすめします。
歩行者が車にはねられた交通事故の過失割合
過失割合は、「交通事故が起きた責任が加害者側と被害者側のそれぞれにどれくらいあるか」を割合で示したものです。
自身に過失割合がつけば、受け取れる慰謝料・示談金はその割合分減額されます。
歩行者が車にはねられた事故の場合、歩行者は交通弱者とされているので、過失割合が小さくなる傾向にあります。しかし、被害者側に過失がつくこと自体は珍しくありません。
事故類型別に過失割合を見ていきましょう。
なお、過失割合は事故の細かい状況に応じて柔軟に算定されます。必ずしもここで解説する通りの過失割合になるとは限らないため、目安程度にお考えください。
関連記事
- 歩行者にも落ち度があると言われやすい事故の過失割合:歩行者が悪い交通事故の過失割合は?飛び出し事故や横断歩道でないところの乱横断
- 交通事故の過失割合の決まり方:交通事故の過失割合とは?決め方の具体的な手順
横断歩道を歩行中の事故の過失割合
横断歩道では歩行者が優先されるため、信号機の有無に関係なく、基本的には歩行者に過失はつきません。
しかし、歩行者側にも過失がつく場合もあるので紹介します。
信号のない横断歩道での交通事故
横断歩道ないの事故では、事故時の状況によっては歩行者側にも過失割合がつきます。具体的には以下のとおりです。
- 夜間だった:歩行者に5%の過失
- 道路が幹線道路だった:歩行者に5%の過失
- 渋滞車列の間や駐停車車両の陰から横断した:歩行者に5%~15%の過失
上記のケースでは、車両側から歩行者を視認しづらい、交通量が多く歩行者側ももっと注意すべきだったなどの理由で、歩行者側にも過失割合がつくのです。
歩行者側が信号無視をしていた場合
歩行者の対面信号が青ではなく、黄色や赤色のときには、歩行者側にも一定の過失がついてしまいます。
歩行者と直進車における基本の過失割合をいくつか例示します。
基本の過失割合(一部抜粋)
歩行者信号 | 車両信号 | 歩行者の過失 |
---|---|---|
黄 | 赤 | 10% |
赤 | 赤 | 20% |
赤 | 青 | 70% |
青→赤 | 青 | 20% |
歩行者側の過失の程度は、横断開始時の信号の色、横断途中での信号の変化、車両側の信号の色など様々な要因で変わります。
歩行者と自動車側で認識している信号の色に食い違いがある場合は、交渉が難航する恐れがあるため、専門家である弁護士にアドバイスをもらうと良いでしょう。
横断歩道での事故については、関連記事『横断歩道の事故の過失割合と慰謝料|歩行者と車の状況別に過失を解説』が参考になります。
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横断歩道外での事故の過失割合
横断歩道外を横断して事故にあった場合には、たとえ横断歩道上の信号が青信号であっても、基本の過失割合は5:95となり、歩行者側に5%の過失がつきます。
さらに黄信号であれば15%、赤信号であれば25%と歩行者側の過失が高くなるでしょう。
横断歩道外とは?
横断歩道の端から1mないし2m離れた場所や、横断歩道が停止車両で閉塞されているときは、横断歩道と混同してよいとされています。そのため、ここでいう横断歩道外とはそれら以外を指すものと考えてください。
道路の端を歩いていて自動車と接触した場合の過失割合
歩道と車道の区別のない道路の端を歩いていて自動車と事故になった場合には、道路の左右どちらの端を歩行していたかで基本の過失割合が変わります。
- 道路の右端を歩いていた場合:歩行者の過失は原則なし
- 道路の左端を歩いていた場合:歩行者に5%の過失がつく可能性がある
歩行者は道路の右側を通行すると決まっているので、歩行者が道路の右側の端を歩いていて事故にあった場合、原則として被害者に過失はつきません。
一方、道路の左側を歩いていた場合は交通ルール違反となるため、歩行者側にも過失割合がつくのです。
歩道があるのに車道を歩いていた場合
歩道が設けられているのに車道の端(側道)を歩いていた場合、基本的には20:80の過失割合となり、歩行者にも20%の過失がつきます。
車道通行が許されていない場合、歩行者側の注意義務が相当重くなると考えられるためです。
もっとも歩道上に障害物がありやむを得ず道路を通行したことで事故にあった場合には、10:90が基本の過失割合となり、歩行者側の過失は10%程度になるでしょう。
バックしてきた車両にはねられた事故の場合
歩行者が、何の注意を払うこともなくバックしてくる車両のすぐ後ろを横断して事故にあった場合、基本の過失割合は歩行者:車=20:80です。
ただし、歩行者が車両のすぐ後ろではないところを横断していて、バックしてきた車両にはねられた場合の基本の過失割合は5:95程度にとどまる見込みです。
いずれも、自動車側がブザーを鳴らすなどの警告をしていたり、歩車道の区別がある車道上であればさらに歩行者側に過失がつく可能性があります。
事故の対処から慰謝料・過失割合が決まるまでの流れ
車と歩行者の事故対応〜示談成立までの流れ
交通事故にあったらどうするかの具体的な対処法として、まずは事故現場でするべき初期対応から、事故の解決までの全体像を解説します。
- 警察へ事故発生を報告
- 加害者と情報交換・証拠保全
- 治療を受ける
- 治療の結果次第でその後の対処が変わる
順番にみていきましょう。
警察へ事故発生を報告
交通事故が発生したら、必ず事故の発生を警察へ連絡しましょう。負傷者がいる場合には救急車の手配も必要です。
大前提として、警察への事故発生通報義務を怠ると道路交通法違反に該当します。
また、警察が作成する「交通事故証明書」がないと、事故の事実を証明できず、ご自身の保険利用などもできません。
警察を呼ばなかった場合の対処法や警察対応が終わった後の流れについては、関連記事『交通事故後は警察への報告義務がある|伝える内容や連絡後の流れも解説』を参考にしてみてください。
加害者と情報交換・証拠保全
警察への通報が終わったならば、加害者側との情報交換をおこないましょう。
連絡先の交換をしておかないと、以後連絡がつかなくなり、損害賠償請求が難航する恐れがあります。具体的には、氏名、住所、電話番号、メールアドレス、加入している保険会社名、保険証券番号などです。
相手との連絡先交換を迷っているという方やトラブルへの対処法を知っておきたい方は、関連記事『交通事故後は当事者同士で連絡を取る?電話の注意点やトラブル対処法も解説』をご覧ください。
治療を受ける
治療が必要な場合は、治療を受けます。
この際、治療費は自身で一旦立て替えることもあれば、加害者側の保険会社が直接病院に支払ってくれることもあります。
治療費の支払いについて詳しくは、『交通事故の治療費は誰が支払う?』にてご確認ください。
なお、交通事故によるケガの症状は、後から出てくることもあります。ケガがないように思えても念のため診察を受けることがおすすめです。
交通事故後の通院・検査をためらっている方は、関連記事『交通事故で痛くないのに通院して検査を受けてもいい?不正請求を疑われないポイント』も参考にしてみてください。
示談交渉
治療が終わったら、示談交渉で慰謝料相場や過失割合を決めていきます。
ただし、後遺症が残った場合は示談交渉より前に後遺障害認定の手続きをしましょう。詳しくは『交通事故で後遺障害を申請する』をご覧ください。
示談交渉では、加害者側の任意保険会社は相場よりも低い慰謝料を提示してきます。過失割合も、加害者側に有利な内容になっていることが多いので、鵜呑みにせず交渉するようにしましょう。
示談の流れについては『交通事故の示談とは?交渉の進め方と注意点!』で詳しく解説しています。
歩行者が正しい慰謝料・過失割合のためにすべきこと
正しい慰謝料・過失割合になるよう示談交渉するには、まずそもそも正しい慰謝料・過失割合とはどれくらいなのかを把握しておくことが重要です。
慰謝料や過失割合は事故の細かい状況まで踏まえて算定されるため、一般的な相場を知るのではなく個別的に算定しなければなりません。
過去の判例も参考にする場合があり、歩行者の方が個人で計算するのは困難です。
アトム法律事務所の無料電話・LINE相談では、慰謝料相場や過失割合の確認が可能です。お気軽にお問い合わせください。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了