歩行者が悪い交通事故の過失割合は?飛び出し事故や横断歩道でないところの乱横断

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歩行者が悪い時事故の過失割合は?

歩行者が飛び出しをしたり、横断歩道でないところを渡ったりして事故が起きた場合は、「歩行者が悪い」と言われがちです。

こうした場合、確かに歩行者にも過失はありますが、歩行者側の過失割合は相手方より小さくなることも珍しくありません。

本記事では、その理由について解説しています。また、「飛び出し事故の過失割合」「横断歩道ではないところを渡る乱横断の過失割合」も具体的に紹介し、過失割合を決める際の注意点にも触れていきます。

なお、この記事で紹介する過失割合は「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に記載されている情報をベースとしています。

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飛び出しや乱横断の事故は歩行者が悪い?

歩行者による飛び出しや乱横断(横断歩道外の横断)で事故が起きた場合、「歩行者が悪い」と言われがちです。

では、「交通事故における責任の割合を示した過失割合」はどのようになるのでしょうか。基本的な考え方と、歩行者が悪いと言われがちなケースについて解説します。

基本的に歩行者の過失割合は車や自転車より小さい

歩行者と自動車、あるいは自転車が交通事故を起こした場合、基本的には歩行者側の過失割合のほうが小さくなることが多いです。

これは、歩行者側の方が立場が弱く、交通事故において大きな被害を受けやすいことに由来します。

弱い立場である歩行者を守るため、自動車や自転車側にはより一層、安全運転に気をつける責任があるとされるのです。

よって、一見歩行者が悪いように見える交通事故でも、過失割合は歩行者のほうが小さいというケースは珍しくありません。

歩行者側の過失割合がさらに小さくなるケース(1)

歩行者が児童・高齢者・幼児・身体障害者のとき、過失割合は5%~10%もしくは10%~20%ほど小さくなります

児童や高齢者、幼児、身体障害者などは、一般的な歩行者よりも注意力や判断能力が低かったり、事故を避けるために臨機応変な行動がしにくかったりするためです。

ここで言う児童とは6歳以上13歳未満の者を指し、幼児は6歳未満を指します。高齢者はおおむね65歳以上の者のことです。

身体障害者等とは、以下のように定義されています。

  • 身体障害者用の車いすを通行させている者
  • つえを携え、または盲導犬を連れている目が見えない者
  • つえを携えている耳が聞こえない者
  • 道路の通行に著しい支障がある程度の肢体不自由、視覚障害、聴覚障害または平衡機能障害のある者でつえを携えている者

なお、こうした定義に当てはまらない場合でも、その能力に応じて同様に扱うものとされています。

歩行者側の過失割合がさらに小さくなるケース(2)

車両側に著しい過失または重過失があると、車両側の過失割合は10%から20%ほど高くなり、そのぶん歩行者側の過失割合が減ります。

著しい過失の一般例としては、脇見運転等の著しい前方不注視、著しく不適切なハンドル・ブレーキ操作、ながらスマホによる運転、時速15km以上30km未満の速度違反などがあります。

重過失の例として挙げられるのは、酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、時速30km以上の速度違反、過労や病気・薬物の影響などで正常な運転ができない恐れがある場合などです。

飛び出しや乱横断では歩行者の過失割合が増える

先述の通り、交通事故では被害者側の過失割合が小さくなる傾向にあります。しかし、被害者側に事故の要因があり「被害者が悪い」と言えるような場合は、被害者側の過失割合が増えます。

具体的なケースを見てみましょう。

車の直前直後横断、急な飛び出しやふらつき

歩行者は、車の直前・直後に道路を横断してはいけないとされています。また、事故発生予見を難しくさせる急な飛び出しや大きなふらつきについても、歩行者側の落ち度とされるでしょう。

よって歩行者の過失割合は5%から10%ほど高くなる見込みです。

横断禁止の規制あり

道路標識で横断が禁止されている場合、歩行者は道路を横断してはいけません。

または、ガードレールやフェンスなどが設置されている場合なども、横断禁止であることが認識できるものとされており、歩行者側の過失割合が5%から10%ほど高くなる見込みです。

夜間に起こった事故

夜間とは日没から日の出までの時間をいいます。

車は夜間に灯火の義務があり、歩行者からは車を発見しやすいと考えられますが、逆に車側からは歩行者を発見しづらくなるのです。

そのため夜間に起こった事故で、かつ車両側が適切に灯火していた場合、歩行者の過失割合は5%ほど高くなるでしょう。

飛び出しの過失割合|車両の直前直後横断も歩行者の過失

歩行者による飛び出し事故とは、自動車・バイク・自転車の前にいきなり歩行者が飛び出してきて接触事故を起こしてしまう事故態様です。

とくに、自動車の直前で飛び出して横断する事故や渋滞している車両や駐停車車両の陰から横断する事故、自動車が高速で走行している様な幹線道路などでは、歩行者の発見が容易ではありません。

そのため、自動車側にも重い注意義務がありつつも、歩行者にも一定の過失があると判断される可能性があります。具体的なケースに分けて見ていきましょう。

赤信号を無視して飛び出した過失割合

信号による交通整理が行われいるケースで、歩行者側の対面信号が赤であり、一方の車両が青であれば、基本的には「歩行者:自動車=70:30」の過失割合です。

歩行者が赤信号を無視して飛び出した過失割合

歩行者の過失割合70
夜間
幹線道路
直前直後横断、侘立、後退
住宅街・商店街-10
歩行者が児童や高齢者-10
歩行者が幼児や身体障害者等-20
集団横断-10
車側の著しい過失-10
車の重過失-20
歩車道の区別なし-10

ただし、歩行者が13歳未満の場合や65歳以上の高齢者のときは、年齢に応じて10%から20%程度過失割合が小さくなるでしょう。

自動車側は信号を守っているだけなのですが、横断歩道がある以上は歩行者の飛び出しも予見すべきと考えられているのです。

子供の飛び出しについては関連記事『こどもの飛び出し事故対策と過失割合は?示談で不利にならない方法』で慰謝料についても解説していますので、参考にしてみてください。

横断歩道付近における飛び出し事故の過失割合

歩行者は横断歩道がある場所の付近においては、その横断歩道によって道路を横断することが定められています。

そのため、横断歩道付近にも関わらず横断歩道以外を横断して衝突された場合には、「歩行者:自動車=30:70」として一定の過失がつくのです。

横断歩道付近とは、交通量が多く、車が高速で走行している道路では横断歩道の端からおよそ40mから50m以内の場所、それ以外では20mないし30m以内の場所と考えられます。

横断歩道付近における飛び出し事故の過失割合

歩行者の過失割合30
夜間+5
幹線道路+10
横断禁止の規制あり+10
直前直後横断、侘立、後退+10
住宅街・商店街-5
歩行者が児童や高齢者-10
歩行者が幼児や身体障害者等-20
集団横断-10
車側の著しい過失-10
車の重過失-20
歩車道の区別なし-5

横断歩道付近にもかかわらず横断歩道以外を横断した場合、自動車70:歩行者30の過失割合が原則です。

ただし走行する自動車の直前に飛び出した場合、「直前直後横断」の修正要素が適用されれば、歩行者側の過失が10%加算され、自動車60:歩行者40の過失割合になる可能性があります。

一方で、自動車側がながらスマホなどで前方注意義務を怠っていた場合には、歩行者側の過失が小さくなる可能性もあるでしょう。

バックする車両の直後に道路へ飛び出した場合の過失割合

車両をバックさせる際には、車両側は後方に十分注意しなくてはなりません。一方で、その車両の直後を歩行者が横断することは、車両側からすると歩行者の飛び出しといえ、事故を回避することが難しくなってしまいます。

歩行者が後退車両の直後を横断したことで接触事故が起こってしまった場合には、「歩行者:自動車=20:80」の過失割合が原則です。

バックする車両の直後横断の場合

歩行者の過失割合20
夜間+5
歩車道の区別のある道路の車道上+5
警告あり+10
住宅街・商店街-5
歩行者が児童や高齢者-5
歩行者が幼児や身体障害者等-10
後退開始前に後方にいた場合
車側の著しい過失-10
車の重過失-20

「警告あり」とは、バックブザーを鳴らすなどして後退する旨を歩行者に知らせることをいい、後退することをあらかじめ歩行者が認識していたことも含まれます。

車両側がこうした対応をとっていると、歩行者側の過失は10%高くなる見込みです。

一方で歩行者側が13歳未満や65歳以上であったときには、過失割合が小さくなります。

乱横断の過失割合|横断歩道でないところを渡ると歩行者の過失

乱横断とは、横断歩道のない道路を横断する行為のことです。近道をするために横断歩道ではないところを渡ることや、道路の斜め横断などがあげられます。

とくに高齢者や子どもは、自動車との距離を正しく認識できなかったり自分が思っているよりも横断に時間がかかったりして、交通事故にあってしまう可能性があります。

乱横断による事故の場合の過失割合をみていきましょう。

幹線道路や広い道路における乱横断の過失割合

幹線道路などの広い道と狭い道のある交差点において、歩行者が広い道を乱横断し、広い道の直進車と衝突した場合「歩行者:自動車=20:80」の過失割合です。

あるいは、広い道路を乱横断したところで狭い道から右左折してきた車両と衝突した場合「歩行者:自動車=10:90」の過失割合となります。

幹線道路または広路における乱横断の過失割合

歩行者の過失割合直進車のとき20/右左折車のとき10
夜間+5
横断禁止の規制あり※+5~10
直前直後横断、侘立、後退+10
歩行者が児童や高齢者-5
歩行者が幼児や身体障害者等-10
集団横断-5
車側の著しい過失-10
車の重過失-20
歩車道の区別なし-5

※ガードレールやフェンスを乗り越えての乱横断はさらに10%加算修正

乱横断をしてしまったのが65歳以上の高齢者や13歳未満の児童あるいは幼児であるなど、歩行者の年齢によっては過失割合が下がる可能性があります。

一方で、横断禁止の場所を乱横断してしまうとさらに歩行者側の過失が5%から10%ほど高くなる見込みです。

道幅が狭いとき

狭い道路における乱横断の過失割合の場合は、歩行者側の過失は10%程度にとどまります。

おおむね幹線道路や広い道路の場合と修正要素はほぼ同じですが、住宅街や商店街で起こった事故の場合は、歩行者側の過失が5%程度小さくなる見込みです。

道幅が同じで優先関係のない道路における乱横断の過失割合

優先関係のない道路の交差点において、歩行者が乱横断して車両と衝突した場合「歩行者:自動車=15:85」の過失割合です。

優先関係のない交差点における乱横断の過失割合

歩行者の過失割合15
夜間+5
横断禁止の規制あり※+5~10
直前直後横断、侘立、後退+10
住宅街・商店街-5
歩行者が児童や高齢者-5
歩行者が幼児や身体障害者等-10
集団横断-5
車側の著しい過失-10
車の重過失-20
歩車道の区別なし-5

横断歩道付近や交差点以外での乱横断の過失割合

横断歩道や交差点の近くでもない場所で乱横断した場合、基本的には「歩行者:自動車=20:80」の過失割合です。

事故状況図

横断歩道付近や交差点以外での乱横断の過失割合

歩行者の過失割合20
夜間+5
幹線道路+10
横断禁止の規制あり※+5~10
直前直後横断、侘立、後退+10
住宅街・商店街-5
歩行者が児童や高齢者-5
歩行者が幼児や身体障害者等-10
集団横断-10
車側の著しい過失-10
車の重過失-20
歩車道の区別なし-5

横断歩道や交差点もない道路を乱横断するとき、それが夜間であれば、歩行者側の過失は10%高くなります。したがって過失割合は30:70となるでしょう。

しかし、その横断者が高齢者であった場合には5%過失割合は下がるため、最終的には25:85の過失割合が見込まれます。

歩行者の事故の過失割合で注意すべきこと

歩行者と自動車、あるいは自転車の事故の過失割合については、以下の点に注意しましょう。

  • 過失割合は交渉で決まる
  • 被害者が死亡した場合、交渉は特に難しい
  • 過失割合は慰謝料・損害賠償額に影響する

それぞれについて解説します。

過失割合は交渉で決まる

ここまで歩行者が関係する事故の過失割合を紹介してきましたが、最終的に過失割合がいくらになるかは示談交渉で決められます。

すでに解説した通り、飛び出しや乱横断などで歩行者が悪いと思われがちな交通事故でも、過失割合で見れば歩行者側のほうが小さくなることは多いです。

しかし、交渉がうまくいかなければ歩行者側の過失割合が不当に大きくなることも十分に考えられます。

交通事故の際、加害者側は任意保険の担当者を代理人として立ててくることが多いです。示談交渉経験も知識も豊富な保険担当者が相手では、交渉を有利に進めるのは難しいと言わざるを得ません。

「歩行者の方が過失割合が小さくなることが多い」と安心せずに、万全の対策をしたうえで示談交渉に臨みましょう。

関連記事

被害者が死亡した場合、交渉は特に難しい

飛び出しなどで被害者が死亡してしまった場合、過失割合の交渉は難航する可能性が高くなります。

過失割合は事故発生時の状況をもとに決められるのですが、被害者である歩行者が死亡している場合、被害者側に事故状況を知る人がいなくなってしまうからです。

加害者側が事故状況を偽り「歩行者が悪い」と主張してきても、反論が難しく不当に大きな過失割合になりかねません。

弁護士ならこうした状況での示談交渉にも慣れているため、被害者が死亡している場合は特に、示談交渉で弁護士を立てることをおすすめします。

過失割合は慰謝料・損害賠償額に影響する

交通事故で過失割合が決まると、慰謝料・賠償金に「過失相殺」が適用されます。自身についた過失割合分、慰謝料が減額されるのです。

例えば、歩行者:自動車で20:80という過失割合が決まったとします。この場合、被害者側のもともとの慰謝料・賠償金が500万円だったとしても、実際に受け取れるのは20%引いた400万円になってしまうのです。

さらに、自動車側から損害賠償請求されている場合は、請求されている金額の20%を支払わなければなりません。

このように過失割合は慰謝料・損害賠償金への影響が非常に大きいです。

それ故に示談交渉時に揉めやすい項目でもあるので、弁護士を立てることも視野に入れながら対策をしていきましょう。

過失相殺は、慰謝料だけでなく賠償金全体にかかります。過失相殺の仕組みを詳しく知りたい方は関連記事『過失相殺とは?具体例つきで計算方法や減額をカバーする方法』も参考にしてください。

なお、損害賠償金の中でも慰謝料や逸失利益の相場については、以下の計算機から大まかに確認可能です。

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交通事故の原因が自分にもあるかもしれないと思うと、相手方に疑問や不満を言いづらいものです。

しかし、弁護士に依頼することで示談交渉を弁護士に任せてしまえば、「言いたいことをいえない」ストレスが軽減されます。

また、小さいお子さんやご高齢の方は、事故状況についてうまく説明できない可能性もあるでしょう。事故の当事者ではないご家族は、相手の強気な態度にどう対応すべきかと悩んでしまうものです。

しかし、歩行者に悪い部分があっても、不当な過失割合を押し付けられることは避けましょう。

弁護士依頼を検討している方は、弁護士依頼のメリットや弁護士費用特約の有無を確認してみましょう。弁護費用特約が使える場合には、弁護士費用の大幅な節約になります。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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