歩行者が悪い交通事故の過失割合は?飛び出し事故や横断歩道でないところの乱横断

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歩行者が悪い時事故の過失割合は?

交通事故において、大きな被害を受けやすい歩行者は「交通弱者」として、手厚く保護されています。

そのため、交通ルール(道路交通法など)を守っていれば、交通事故で歩行者が悪い(過失がある)と判断されることは基本的にありません

一方、飛び出しをしたり、横断歩道でないところを渡ったりなど、歩行者が交通ルールを違反した場合には、歩行者にも事故発生の原因があるとして、歩行者が悪いと判断される可能性があります

もっとも、当事者双方に過失があると判断される場合でも、歩行者が「交通弱者」である点に変わりはないため、歩行者側の過失割合が相手方より小さくなることも珍しくありません。

本記事では、その理由について解説しています。また、「飛び出し事故の過失割合」「横断歩道ではないところを渡る乱横断の過失割合」も具体的に紹介し、過失割合を決める際の注意点にも触れていきます。

なお、この記事で紹介する過失割合は「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に記載されている情報をベースとしています。

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飛び出しや乱横断の事故は歩行者が悪い?

歩行者による飛び出し事故(自動車・バイク・自転車の前にいきなり歩行者が飛び出してきて接触事故を起こしてしまう事故態様)や乱横断(横断歩道外の横断)で事故が起きた場合、「歩行者が悪い」と言われがちです。

自動車の直前で飛び出して横断する事故や渋滞している車両や駐停車車両の陰から飛び出して横断する事故、自動車が高速で走行している様な幹線道路などでの乱横断による事故では、歩行者の発見が容易ではないため、特に「歩行者が悪い」と考えがちです。

では、「交通事故における責任の割合を示した過失割合」はどのようになるのでしょうか。基本的な考え方と、歩行者が悪いと言われがちなケースについて解説します。

基本的に歩行者の過失割合は車や自転車より小さい

歩行者と自動車、あるいは自転車が交通事故を起こした場合、基本的には歩行者側の過失割合のほうが小さくなることが多いです。

これは、歩行者側の方が、交通事故において死亡や後遺障害など大きな被害を受けやすい「交通弱者」であることに由来します。

弱い立場である歩行者を守るため、自動車や自転車側にはより一層、安全運転に気をつける責任があるとされるのです。

よって、一見歩行者が悪いように見える交通事故でも、過失割合は歩行者のほうが小さいというケースは珍しくありません。

歩行者側の過失割合がさらに小さくなるケース(1)

歩行者が児童・高齢者・幼児・身体障害者のとき、過失割合は5%~10%もしくは10%~20%ほど小さくなります

児童や高齢者、幼児、身体障害者等は、一般的な歩行者よりも注意力や判断能力が低かったり、事故を避けるために臨機応変な行動がしにくかったりするためです。

ここで言う児童とは6歳以上13歳未満の者を指し、幼児は6歳未満を指します。高齢者はおおむね65歳以上の者のことです。

歩行者側の過失割合がさらに小さくなるケース(2)

車両側に著しい過失または重過失があると、車両側の過失割合は10%から20%ほど高くなり、そのぶん歩行者側の過失割合が減ります。

著しい過失の一般例としては、脇見運転等の著しい前方不注視、著しく不適切なハンドル・ブレーキ操作、ながらスマホによる運転、時速15km以上30km未満の速度違反などがあります。

重過失の例として挙げられるのは、酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、時速30km以上の速度違反、過労や病気・薬物の影響などで正常な運転ができない恐れがある場合などです。

飛び出しや乱横断では歩行者の過失割合が増える

先述の通り、交通事故では被害者側の過失割合が小さくなる傾向にあります。しかし、被害者側に事故の要因があり「被害者が悪い」と言えるような場合は、被害者側の過失割合が増えます。

具体的なケースを見てみましょう。

車の直前直後横断、急な飛び出しやふらつき

歩行者は、車の直前・直後に道路を横断してはいけないとされています。また、事故発生予見を難しくさせる急な飛び出しや大きなふらつきについても、歩行者側の落ち度とされるでしょう。

よって歩行者の過失割合は5%から10%ほど高くなる見込みです。

横断禁止の規制あり

道路標識で横断が禁止されている場合、歩行者は道路を横断してはいけません。

または、ガードレールやフェンスなどが設置されている場合なども、横断禁止であることが認識できるものとされており、歩行者側の過失割合が5%から10%ほど高くなる見込みです。

夜間に起こった事故

夜間とは日没から日の出までの時間をいいます。

車は夜間に灯火の義務があり、歩行者からは車を発見しやすいと考えられますが、逆に車側からは歩行者を発見しづらくなるのです。

そのため夜間に起こった事故で、かつ車両側が適切に灯火していた場合、歩行者の過失割合は5%ほど高くなるでしょう。

歩行者の過失が10割と判断された裁判例

なお、新潟地裁長岡支部平成29年12月27日判決では、歩行者の過失が10割と判断され、車のドライバーには、自賠法上も民法上も損害賠償義務がないと判断されました。

上記は、歩行者が、片側3車線で道路幅が30メートルある国道の中央分離帯から飛び出した際に発生した交通事故であるところ、裁判所は、そもそも片側3車線の広い幹線道路の中央分離帯に横断しようとする歩行者がいると予測することは困難であると判断しました。

そして、夜間であったことや照明灯がなく、対向車線のガソリンスタンドのライトで逆光となり見通しが非常に悪かったことなども考慮して、ドライバーが歩行者を車道上で発見後、衝突を回避することは不可能であったと結論付けました。

このように、事故現場の状況により、完全に歩行者が悪い(歩行者の過失が100%)と判断される可能性もあるので注意が必要です。

横断歩道上の飛び出し事故の過失割合

横断歩道上の飛び出し事故の過失割合は、信号機が設置されているかどうかや信号機が何色だったか、自動車が直進車だったか右左折車だったかなどによって変わってきます。

ここからはケース別に過失割合を解説していきます。

信号機のある横断歩道上での歩行者と直進車との飛び出し事故

信号機のある横断歩道上で、歩行者が飛び出した際に直進車と衝突した場合、信号機の色で過失割合が変化します。

具体的には以下の表のとおりです。

信号機のある横断歩道上での歩行者と直進車との飛び出し事故の過失割合

信号機の色歩行者直進車

歩行者:青信号
直進車:赤信号
0%100%

歩行者:黄信号※
直進車:赤信号
10%90%

歩行者:赤信号
直進車:赤信号
20%80%

歩行者:赤信号
直進車:黄信号
50%50%

歩行者:赤信号
直進車:青信号
70%30%

※「歩行者:黄信号」は歩行者専用信号機の青点滅を含む

道路交通法7条は「道路を通行する歩行者等又は車両等は、信号機の表示する信号…に従わなければならない」と規定しています。

また、道路交通法13条は「歩行者等は、車両等の直前又は直後で道路を横断してはならない。ただし…信号機の表示する信号…に従つて道路を横断するときは、この限りでない」とも規定しています。

そのため、歩行者側が青信号のケースでは歩行者に交通ルール(道路交通法)違反がないので、たとえ飛び出し事故でも歩行者が悪いということにはならず、「歩行者:自動車=0:100」の過失割合です。

一方で、歩行者が信号無視(赤信号や黄信号で横断)をして飛び出し事故が発生したケースでは歩行者に交通ルール(道路交通法)違反があるので、歩行者が悪い(過失がある)ということになります。

特に、歩行者側が赤信号、直進車側が青信号のケースでは、基本的には「歩行者:自動車=70:30」の過失割合となり、歩行者の方が悪いということになります。

ただし、歩行者側が青信号(上記①)以外のケースでは、歩行者の属性や事故状況によって過失割合が修正される可能性があります。

具体的な修正要素は以下の表のとおりです。

信号機のある横断歩道上での歩行者と直進車との飛び出し事故の修正要素

修正要素歩行者
夜間
(上記④のケースのみ)
+5
幹線道路
(上記③・④のケースのみ)
+5
直前直後横断、侘立、後退
(上記③・④のケースのみ)
+5
住宅街・商店街
(上記③~⑤のケースのみ)
-10
歩行者が児童や高齢者-5~-10
歩行者が幼児や身体障害者等-10~-20
集団横断-5~-10
自動車側の著しい過失-5~-20
自動車の重過失-10~-30
歩車道の区別なし
(上記③~⑤のケースのみ)
-5~-10

飛び出し事故は歩行者が子供のケースが多いですが、その場合子供の年齢が13歳未満のときは、年齢に応じて5%~20%程度歩行者の過失割合が減らされるでしょう。

子供の飛び出しについては関連記事『こどもの飛び出し事故対策と過失割合は?示談で不利にならない方法』で慰謝料についても解説していますので、参考にしてみてください。

信号機のある横断歩道上での歩行者と右左折車との飛び出し事故

信号機のある横断歩道上で、歩行者が飛び出した際に右左折車と衝突した場合、信号機の色で過失割合が変化します。

具体的には以下の表のとおりです。

信号機のある横断歩道上での歩行者と右左折車との飛び出し事故の過失割合

信号機の状況歩行者右左折車

歩行者:青信号
右左折車:赤信号
0%100%

歩行者:青信号
右左折車:青信号
0%100%

歩行者:黄信号※
右左折車:赤信号
10%90%

歩行者:黄信号※
右左折車:黄信号
20%80%

歩行者:赤信号
右左折車:赤信号
20%80%

歩行者:黄信号※
右左折車:青信号
30%70%

歩行者:赤信号
右左折車:黄信号
30%70%

歩行者:赤信号
右左折車:青信号
50%50%

※「歩行者:黄信号」は歩行者専用信号機の青点滅を含む

自動車を含む車両は、道路交通法34条で、右左折するときの徐行が義務付けられています。

上記交通ルールに従っていれば、右左折車は徐行しているはずなのだから、運転者は歩行者が信号無視をして飛び出してきても歩行者を認識して、衝突を避けやすいと考えられるため、同じ信号機の色でも直進車より右左折車の過失割合が重くなっています

ただし、歩行者側が青信号、自動車側が赤信号(上記①)以外のケースでは、歩行者の属性や事故状況によって過失割合が修正される可能性があります。

具体的な修正要素は以下の表のとおりです。

信号機のある横断歩道上での歩行者と右左折車との飛び出し事故の修正要素

修正要素歩行者
夜間
(上記④~⑧のケースのみ)
+5
幹線道路
(上記④~⑧のケースのみ)
+5
直前直後横断、侘立、後退+5
住宅街・商店街
(上記④~⑧のケースのみ)
-5~-10
歩行者が児童や高齢者-5~-10
歩行者が幼児や身体障害者等-5~-20
集団横断
(上記④~⑧のケースのみ)
-5~-10
自動車側の著しい過失-5~-10
自動車の重過失-10~-20
歩車道の区別なし
(上記④~⑧のケースのみ)
-5~-10

信号機のない横断歩道上での歩行者と自動車との飛び出し事故

信号機のない横断歩道上で、歩行者が飛び出した際に自動車と衝突した場合の過失割合は、「歩行者:自動車=0:100」と基本的になります。

道路交通法38条は「車両等は…横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない」と、横断歩道は歩行者優先という交通ルールが定められているからです。

そのため、たとえ飛び出し事故でも、信号機のない横断歩道上で起こった場合には、基本的に歩行者が悪い(過失がある)ということにはなりません。

ただし、自動車の運転手が歩行者を発見するのが困難なほど直前に歩行者が飛び出したケースでは、「歩行者:自動車=5:95」の過失割合になる可能性があります。

また、歩行者の属性や事故状況によって過失割合が修正される可能性もあります。

具体的な修正要素は以下の表のとおりです。

信号機のない横断歩道上での歩行者と自動車との飛び出し事故の修正要素

修正要素歩行者
夜間+5
住宅街・商店街-5
歩行者が児童や高齢者-5
歩行者が幼児や身体障害者等-10
集団横断-5
自動車側の著しい過失-5
自動車の重過失-10
歩車道の区別なし-5

乱横断(横断歩道でないところ)の飛び出し事故の過失割合

乱横断とは、横断歩道でないところを横断する行為のことです。近道をするために横断歩道ではないところを渡ることや、道路の斜め横断などがあげられます。

とくに高齢者や子どもは、自動車との距離を正しく認識できなかったり自分が思っているよりも横断に時間がかかったりして、交通事故にあってしまう可能性があります。

乱横断による飛び出し事故の場合の過失割合をケース別にみていきましょう。

信号機のある横断歩道の直近を乱横断した歩行者と直進車のケース

信号機のある横断歩道の直近で、歩行者が飛び出した際に直進車と衝突した場合、信号機の色で過失割合が変化します。

横断歩道の直近とは、交通量が多く、車が高速で走行している道路では横断歩道から15m~20m以内の場所、それ以外の道路では横断歩道から10m~15m以内の場所と考えられています。

具体的な過失割合は以下の表のとおりです。

信号機のある横断歩道の直近での歩行者と直進車との飛び出し事故の過失割合

信号機の色歩行者直進車

歩行者:青信号
直進車:赤信号
5%~10%90%~95%

歩行者:黄信号※
直進車:赤信号
15%~20%80%~85%

歩行者:赤信号
直進車:赤信号
25%~30%70%~75%

歩行者:赤信号
直進車:黄信号
50%50%

歩行者:赤信号
直進車:青信号
70%30%

※「歩行者:黄信号」は歩行者専用信号機の青点滅を含む

道路交通法7条は「道路を通行する歩行者等又は車両等は、信号機の表示する信号…に従わなければならない」と規定しています。

また、道路交通法12条1項は「歩行者等は、道路を横断しようとするときは、横断歩道がある場所の付近においては、その横断歩道によつて道路を横断しなければならない」とも規定しています。

そのため、基本的には信号機のある横断歩道上での歩行者と直進車との飛び出し事故の過失割合と同じようにはなりますが、歩行者が横断歩道の付近では横断歩道を横断するという交通ルール(道路交通法12条1項)に違反しているため、その分歩行者が悪い(過失がある)ということになります。

また、歩行者の属性や事故状況によって過失割合が修正される可能性もあります。

具体的な修正要素は以下の表のとおりです。

信号機のある横断歩道の直近での歩行者と直進車との飛び出し事故の修正要素

修正要素歩行者
夜間
(上記①~④のケースのみ)
+5
幹線道路
(上記①~④のケースのみ)
+10
直前直後横断、侘立、後退
(上記①~④のケースのみ)
+10
住宅街・商店街-5~-10
歩行者が児童や高齢者-5~-10
歩行者が幼児や身体障害者等-10~-20
集団横断-5~-10
自動車側の著しい過失-10~-20
自動車の重過失-10~-30
歩車道の区別なし-5~-10

信号機のある横断歩道直近を乱横断した歩行者と右左折車のケース

信号機のある横断歩道直近で、歩行者が飛び出した際に右左折車と衝突した場合、信号機の色で過失割合が変化します。

具体的には以下の表のとおりです。

信号機のある横断歩道直近での歩行者と右左折車との飛び出し事故の過失割合

信号機の状況歩行者右左折車

歩行者:青信号
右左折車:赤信号
5%95%

歩行者:青信号
右左折車:青信号
10%90%

歩行者:黄信号※
右左折車:赤信号
15%85%

歩行者:赤信号
右左折車:赤信号
25%75%

歩行者:黄信号※
右左折車:黄信号
30%70%

歩行者:黄信号※
右左折車:青信号
40%60%

歩行者:赤信号
右左折車:黄信号
40%60%

歩行者:赤信号
右左折車:青信号
60%40%

※「歩行者:黄信号」は歩行者専用信号機の青点滅を含む

先ほどの直進車とのケース同様、基本的には横断歩道上の場合の過失割合と同じようにはなりますが、歩行者が横断歩道の付近では横断歩道を横断するという交通ルール(道路交通法12条1項)に違反している分、横断歩道上の場合より歩行者の過失割合が5%~10%高くなっています

ただし、歩行者の属性や事故状況によって過失割合が修正される可能性があります。

具体的な修正要素は以下の表のとおりです。

信号機のある横断歩道付近での歩行者と右左折車との飛び出し事故の修正要素

修正要素歩行者
夜間+5
幹線道路+5~+10
直前直後横断、侘立、後退+5~+10
住宅街・商店街-5~-10
歩行者が児童や高齢者-5~-10
歩行者が幼児や身体障害者等-10~-20
集団横断-5~-10
自動車側の著しい過失-10
自動車の重過失-20
歩車道の区別なし-5~-10

信号機のない横断歩道付近を乱横断した歩行者と自動車のケース

先ほど解説したとおり、道路交通法12条1項によって、歩行者は横断歩道がある場所の付近においては、その横断歩道によって道路を横断することが定められています。

そのため、信号機のない横断歩道付近にかかわらず、横断歩道以外を横断して衝突された場合、歩行者にも交通ルール(道路交通法12条1項)違反があるので、「歩行者:自動車=30:70」という過失割合がつくのです。

横断歩道付近とは、交通量が多く、車が高速で走行している道路では横断歩道の端からおよそ40mから50m以内の場所、それ以外では20mないし30m以内の場所と考えられます。

ただし、歩行者の属性や事故状況によって過失割合が修正される可能性があります。

具体的な修正要素は以下の表のとおりです。

信号機のない横断歩道付近における飛び出し事故の修正要素

修正要素歩行者
夜間+5
幹線道路+10
横断禁止の規制あり+10
直前直後横断、侘立、後退+10
住宅街・商店街-5
歩行者が児童や高齢者-10
歩行者が幼児や身体障害者等-20
集団横断-10
車側の著しい過失-10
車の重過失-20
歩車道の区別なし-5

横断歩道付近にもかかわらず横断歩道以外を横断した場合、歩行者30%、自動車70%の過失割合が原則です。

ただし走行する自動車の直前に飛び出した場合、「直前直後横断」の修正要素が適用されれば、歩行者側の過失が10%加算され、歩行者40%、自動車60%の過失割合になる可能性があります。

一方で、自動車側がながらスマホなどで前方注意義務を怠っていた場合には、歩行者側の過失が小さくなる可能性もあるでしょう。

歩行者側の態様しだいで事故の過失割合は同等である50:50になる可能性もあります。関連記事『事故の過失割合が5対5とは?有効な賠償請求と過失割合の変更方法』では、こうしたケースでの賠償金計算の方法や少しでも過失を減らす方法について説明していますので、あわせてお読みください。

横断歩道のない交差点直近を乱横断した歩行者と自動車のケース

横断歩道のない交差点直近の飛び出し事故の過失割合は、交差点の道路の状況(幹線道路かや広狭差があるか)によって変わってきます。

幹線道路や広狭差のある道路における乱横断の過失割合

幹線道路や広狭差のある道路では、歩行者が交差道路のどちらを乱横断したか、自動車が直進車だったか右左折車だったかなどによって変わってきます。

具体的には以下の表のとおりです。

幹線道路や広狭差のある道路の交差点での乱横断の過失割合

発生状況歩行者自動車

歩行者:広い道を乱横断
自動車:広い道を直進
20%80%

歩行者:広い道を乱横断
自動車:広い道へ右左折
10%90%

歩行者:狭い道を乱横断
自動車:狭い道に進入
10%90%

自動車が広い道を直進しているときは高速で走行するのが通常のため、歩行者の過失割合が高くなっています。

ただし、歩行者の属性や事故状況によって過失割合が修正される可能性があります。

幹線道路や広狭差のある道路の交差点での乱横断の修正要素

修正要素歩行者
夜間+5
横断禁止の規制あり※+5~10
直前直後横断、侘立、後退+10
住宅・商店街
(上記③のケースのみ)
-5
歩行者が児童や高齢者-5
歩行者が幼児や身体障害者等-10
集団横断-5
車側の著しい過失-10
車の重過失-20
歩車道の区別なし-5

※ガードレールやフェンスを乗り越えての乱横断はさらに10%加算修正

道幅が同じで優先関係のない道路における乱横断の過失割合

優先関係のない道路の交差点において、歩行者が乱横断して車両と衝突した場合「歩行者:自動車=15:85」の過失割合です。

ただし、歩行者の属性や事故状況によって過失割合が修正される可能性もあります。

具体的な修正要素は以下の表のとおりです。

優先関係のない交差点での乱横断の修正要素

修正要素歩行者
夜間+5
横断禁止の規制あり※+5~10
直前直後横断、侘立、後退+10
住宅街・商店街-5
歩行者が児童や高齢者-5
歩行者が幼児や身体障害者等-10
集団横断-5
車側の著しい過失-10
車の重過失-20
歩車道の区別なし-5

※ガードレールやフェンスを乗り越えての乱横断はさらに10%加算修正

横断歩道付近や交差点以外での乱横断のケース

横断歩道や交差点の近くでもない場所で乱横断した場合、基本的には「歩行者:自動車=20:80」の過失割合です。

事故状況図

ただし、歩行者の属性や事故状況によって過失割合が修正される可能性もあります。

具体的な修正要素は以下の表のとおりです。

横断歩道付近や交差点以外での乱横断の修正要素

修正要素歩行者
夜間+5
幹線道路+10
横断禁止の規制あり※+5~10
直前直後横断、侘立、後退+10
住宅街・商店街-5
歩行者が児童や高齢者-5
歩行者が幼児や身体障害者等-10
集団横断-10
車側の著しい過失-10
車の重過失-20
歩車道の区別なし-5

横断歩道や交差点もない道路を乱横断するとき、それが幹線道路であれば、歩行者側の過失は10%高くなります。したがって過失割合は30:70となるでしょう。

しかし、その横断者が高齢者であった場合には5%過失割合は下がるため、最終的には25:75の過失割合が見込まれます。

バックする車両の直後に道路へ飛び出した場合の過失割合

車両をバックさせる際には、車両側は後方に十分注意しなくてはなりません。一方で、その車両の直後を歩行者が横断することは、車両側からすると歩行者の飛び出しといえ、事故を回避することが難しくなってしまいます。

歩行者が後退車両の直後を横断したことで接触事故が起こってしまった場合には、「歩行者:自動車=20:80」の過失割合が原則です。

ただし、歩行者の属性や事故状況によって過失割合が修正される可能性もあります。

具体的な修正要素は以下の表のとおりです。

バックする車両の直後横断の修正要素

修正要素歩行者
夜間+5
歩車道の区別のある道路の車道上+5
警告あり+10
住宅街・商店街-5
歩行者が児童や高齢者-5
歩行者が幼児や身体障害者等-10
車側の著しい過失-10
車の重過失-20

「警告あり」とは、バックブザーを鳴らすなどして後退する旨を歩行者に知らせることをいい、後退することをあらかじめ歩行者が認識していたことも含まれます。

車両側がこうした対応をとっていると、歩行者側の過失は10%高くなる見込みです。

一方で歩行者側が13歳未満や65歳以上であったときには、過失割合が小さくなります。

歩行者の事故の過失割合で注意すべきこと

歩行者と自動車、あるいは自転車の事故の過失割合については、以下の点に注意しましょう。

  • 過失割合は交渉で決まる
  • 被害者が死亡した場合、交渉は特に難しい
  • 過失割合は慰謝料・損害賠償額に影響する

それぞれについて解説します。

過失割合は交渉で決まる

ここまで歩行者が関係する事故の過失割合を紹介してきましたが、最終的に過失割合がいくらになるかは示談交渉で決められます。

すでに解説した通り、飛び出しや乱横断などで歩行者が悪いと思われがちな交通事故でも、過失割合で見れば歩行者側のほうが小さくなることは多いです。

しかし、交渉がうまくいかなければ歩行者側の過失割合が不当に大きくなることも十分に考えられます。

交通事故の際、加害者側は、加入している任意保険会社の担当者を代理人として立ててくることが多いです。示談交渉経験も知識も豊富な保険担当者が相手では、交渉を有利に進めるのは難しいと言わざるを得ません。

「歩行者の方が過失割合が小さくなることが多い」と安心せずに、万全の対策をしたうえで示談交渉に臨みましょう。

関連記事

被害者が死亡した場合、交渉は特に難しい

飛び出しなどで被害者が死亡してしまった場合、過失割合の交渉は難航する可能性が高くなります。

過失割合は事故発生時の状況をもとに決められるのですが、被害者である歩行者が死亡している場合、被害者側である遺族に事故状況を知る人がいないことが多いからです。

加害者側が事故状況を偽り「歩行者が悪い」と主張してきても、反論が難しく不当に大きな過失割合になりかねません。

弁護士ならこうした状況での示談交渉にも慣れているため、被害者が死亡している場合は特に、示談交渉で弁護士を立てて解決を図ることをおすすめします。

過失割合は慰謝料・損害賠償額に影響する

交通事故で過失割合が決まると、慰謝料(精神的苦痛に対する金銭的補償)・賠償金に「過失相殺」が適用されます。自身についた過失割合分、慰謝料が減額されるのです。

例えば、歩行者:自動車で20:80という過失割合が決まったとします。この場合、被害者側のもともとの慰謝料・賠償金が500万円だったとしても、実際に受け取れるのは20%引いた400万円になってしまうのです。

さらに、自動車側から損害賠償請求されている場合は、請求されている金額の20%を支払わなければなりません。

このように過失割合は慰謝料・損害賠償金への影響が非常に大きく、慰謝料・損害賠償金をしっかりと受け取るためには、過失割合が適正に認定される必要があります。

それ故に示談交渉時に揉めやすい項目でもあるので、提示された過失割合に納得がいかない場合には、弁護士を立てることも視野に入れながら対策をしていきましょう。

過失相殺は、慰謝料だけでなく、治療費や休業損害など賠償金全体にかかります。過失相殺の仕組みを詳しく知りたい方は、関連記事『過失相殺をわかりやすく解説!計算方法や交通事故判例の具体例も紹介』も参考にしてください。

なお、損害賠償金の中でも慰謝料や逸失利益の相場については、以下の計算機から大まかに確認可能です。

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しかし、弁護士に依頼することで示談交渉を弁護士に任せてしまえば、「言いたいことをいえない」ストレスが軽減されます。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

突然生じる事故や事件に、
地元の弁護士が即座に対応することで
ご相談者と社会に安心と希望を提供したい。