事故の過失割合が5対5のときの賠償金計算と過失割合を変更する方法
交通事故で過失割合5対5と言われた人は、多くの場合、複雑な感情をもつでしょう。
- 「私ってそんなに悪いことした?」
- 自分と相手の言い分が全然違って驚いている
- 大ケガをしたのに賠償金が少ないと困る…
相手との不公平感や、自分にも相当責任があるといわれて困惑すること、そして賠償金が大幅に減ってしまうことの不安から、保険会社の判断に不満や疑問を感じることは自然なことです。
事故状況の丁寧な振り返りと交渉ノウハウがあれば、過失割合を有利に変更できる可能性があります。
この記事では過失割合5対5だと賠償金はどうなるのか、過失割合を変更するにはどうすればいいのかなど、被害者の方に知っておいてほしい情報をまとめています。
過失割合の変更のためには交通事故に詳しい弁護士に相談し、専門的なアドバイスを受けることや交渉を任せることが有効です。
なお、ここで紹介する過失割合は「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に記載されている情報をベースとしています。
目次
交通事故の過失割合5対5だと賠償金はどうなるのか
交通事故の過失割合が5対5となると、もらえる賠償金は半分になります。また、相手の損害の半分を支払う責任が生じるのです。
過失割合5対5の賠償金計算の流れと、過失相殺という考え方について説明します。
5対5の事故では損害賠償金が半分になる
交通事故の過失割合が5対5になったときには、示談金は半分に減額します。
相手の損害に対しても5割(半分)の責任を負いますので、その割合分だけ示談金が減る「過失相殺」が適用される仕組みです。
損害額600万円の事故の過失割合が5対5となると、以下のような計算式となります。
損害額 | 600万円 |
被害者側の過失割合 | 5割 |
減額 | 300万円 =600万円✕5割 |
示談金 | 300万円 =600万円-300万円 |
相手の損害の半分の賠償責任を負う
事故相手が負った損害に対して、5割の損害賠償責任を負うことになります。もしBさんの損害が600万円、Aさんには1,000万円の損害を負わせたとすると次のような計算式が成り立つのです。
Aさん | Bさん | |
---|---|---|
損害額 | 1,000万円 | 600万円 |
過失割合 | 5割 | 5割 |
過失相殺で減る金額 | 500万円 =1,000万円✕5割 | 300万円 =600万円✕5割 |
相手に請求できる金額 | 500万円 =1,000万円-500万円 | 300万円 =600万円-300万円 |
実際の受け取り示談金 | 200万円 =500万円-300万円 | 0円 |
このように、過失割合が5対5となると互いの損害額次第で、Bさんは示談金を受け取れないという結果になることもあります。
損害額が大きいということは、相手のケガが重傷だったり、後遺障害分の賠償金が必要だったりと様々なケースが考えられるでしょう。
過失割合が5対5になる事故のパターン
交通事故の過失割合が5対5になる事故のパターンをいくつか紹介します。
- 赤信号無視の四輪車同士の交差点での事故
- 左方・左折する四輪車と右方・直進する四輪車の事故
- 右折で狭路に入ろうとする四輪車と狭路を直進する単車の事故
- 赤信号で横断する歩行者と黄信号で右左折してきた自転車の事故
ここで紹介するパターンは一例です。そのほかの事故でも「過失割合は5対5」と言われることは十分あり得るので、一例としてお読みください。
赤信号無視の四輪車同士の交差点での事故
信号機で交通整理されている交差点において、赤信号同士の出会い頭の衝突事故のとき、過失割合は原則5対5になります。
双方ともに信号無視(赤信号違反)という重大な過失があるためです。ただし、どちらかが明らかに先入りしていたり、その他にも落ち度があったりすると、過失割合は5対5から変わります。
左方・左折する四輪車と右方・直進する四輪車の事故
道幅が同じ交差点において、左方から侵入して左折しようとする車両と、右方から交差点を直進する車両が事故にあったら、過失割合は原則5対5になります。
左方優先の原則はあるものの、直進する車両に道を譲ることも通常とされるためです。もっとも、双方に徐行や減速がなかったり、それぞれにその他の過失があったりすると過失割合は5対5から変わります。
右折で狭路に入ろうとする四輪車と狭路を直進する単車の事故
広い道路から狭い道路へ右折で入ろうとする車両と、その狭い道路から出てきた単車とが事故を起こしたとき、過失割合は原則5対5になります。
もっとも単車側の速度違反や、四輪車の徐行なし・早回り右折などは各々の過失となるため、事故態様にとっては過失割合は5対5から変わるのです。
赤信号で横断する歩行者と黄信号で右左折してきた自転車の事故
横断歩道を赤信号で渡る歩行者に、交差点を黄信号で右左折してきた自転車が接触事故を起こしたとき、過失割合は原則5対5になります。
ただし歩行者が児童や高齢者だったり、道路が幹線道路だったりと過失割合が変わる要素は多くあります。
過失割合5対5から変更する方法|6対4や7対3に向けた対策
過失割合5対5から変更する方法として、証拠から事故状況の詳細を確認する、保険会社との交渉、弁護士への相談・依頼をするの3つについて説明します。
過失割合を変更する方法
- 証拠から事故状況の詳細を確認する
- 保険会社との交渉
- 弁護士への相談・依頼をする
(1)証拠から事故状況の詳細を確認する
交通事故の具体的な状況を詳しく分析し、相手側の過失をより明確に示す証拠や事実を見つけることで、過失割合の変更を求めることができます。
とくに、相手と言い分が食い違っているときには客観的な証拠の提示が有効です。
具体的には次のような証拠・事実があげられます。
証拠や事実の具体例
- 実況見分調書
- ドライブレコーダーの映像
- 防犯カメラ映像
- 目撃者の証言
- 信号機の作動状況記録
- 車両の損傷状況
- 医療記録
実況見分調書やドライブレコーダーの記録、目撃者の証言や信号機の作動状況記録は事故現場の詳細を説明するために役立ちます。
車両の損傷状況や医療記録は、どういった態様で事故が起こったのか、事故の衝撃の程度を示す資料となるのです。
相手方の主張する事故状況ではこういった損傷にはならない、あるいはその程度の衝撃でこれほどの重傷を負うわけがない、といった主張の根拠資料となる可能性もあります。
以下の関連記事でも証拠の重要性を説明していますので参考にしてください。
(2)保険会社との交渉
収集した証拠をもとに、保険会社に対して過失割合の見直しを求めていきましょう。
交通事故の過失割合は、示談段階では話し合いで決まります。
事故の態様ごとに基本の過失割合はあるので、「この事故パターンなら5対5です」と言われても、直ちに受け入れる必要はありません。
5対5が基本の過失割合というだけで、あとは事故発生時の状況を反映させて最終的に過失割合を決めていきます。こうした個別の事故状況を修正要素といい、過失割合の交渉では必ず着目すべきです。
どういった主張をすればいいのか?
相手の保険会社から過失割合の提示を受けた時には、次のような点に着目して過失割合の交渉をおこなうことをお勧めします。
交渉のポイント
- 道路状況や交通環境
道幅、見通し、天候、時間帯などの要素が事故に与えた影響を説明し、あなたの過失が軽減される可能性を主張する。 - 車両の種類や大きさ
車、バイク、自転車、歩行者の順で過失は小さくなる傾向があるため、相手との車両の違いを強調する。 - 速度の差
双方の走行速度に大きな差があった場合、それを指摘して過失割合の修正を求める。 - 信号や標識の遵守状況
信号無視や一時停止違反など、交通ルール違反の有無を明確にする。
交通事故における過失割合の決まり方や原則について知りたい方は、関連記事『交通事故の過失割合とは?決め方の具体的な手順とパターン別の過失割合』もあわせてお読みください。
(3)弁護士への相談・依頼をする
交通事故にくわしい弁護士に相談すれば、保険会社から5対5と言われた件について、その妥当性を検討して見解を聞くことができます。
もし弁護士に相談をした結果、過失割合の交渉まで任せるという場合には弁護士への依頼も必要です。
弁護士に示談交渉そのものを任せることで、慰謝料自体を引き上げることができれば、さらに大きなメリットを受けることができます。
重要なことは、基本の過失割合にとらわれすぎず、具体的な事故の状況や特殊性を考慮して交渉することです。過失割合の変更は容易ではありませんが、適切な対応と交渉により、より公平な過失割合に修正できる可能性があります。
そのためには交渉経験が豊富な、交通事故に強い弁護士への相談・依頼がおすすめです。
過失割合が6対4や7対3に変更できたら賠償金の計算はどうなるのか、くわしく知りたい方は関連記事をご覧ください。
過失割合が変わらないとしてももらえるお金を増やす方法
過失割合が5対5から変更できないとしても、次のような方法で手元に入るお金を増やせる可能性があります。
もらえるお金を増やす方法
- 交通事故の慰謝料は弁護士基準で請求
- 適切な後遺障害等級認定を受ける
- 過失が大きいときには自分の保険も使う
交通事故の慰謝料は弁護士基準で請求
同じ交通事故であっても、算定基準次第で金額は大きく変わります。
交通事故の慰謝料を増やすには、弁護士基準で請求することが効果的です。弁護士基準は、裁判で認められる金額を基にしており、自賠責基準や任意保険基準よりも高額になります。
たとえば、入通院慰謝料の相場について自賠責基準と弁護士基準で比較してみましょう。
通院期間 | 自賠責 | 弁護士 |
---|---|---|
1ヶ月 | 12.9万円 | 28万円 (19万円) |
2ヶ月 | 25.8万円 | 52万円 (36万円) |
3ヶ月 | 38.7万円 | 73万円 (53万円) |
4ヶ月 | 51.6万円 | 90万円 (67万円) |
5ヶ月 | 64.5万円 | 105万円 (79万円) |
6ヶ月 | 77.4万円 | 116万円 (89万円) |
※ 慰謝料の単位:万円
※ 自賠責基準は2020年4月以降発生の事故とし、ひと月半分以上の通院を想定
※ 弁護士基準の( )内はむちうち等の軽傷用
上表からもわかるとおり、自賠責基準で支払える金額は法的に正当な金額より低いと言わざるを得ません。
そのため自賠責基準ですんなり受け入れるのではなく、弁護士基準で算定してみて慰謝料の増額交渉を検討していくべきでしょう。
もっとも保険会社の担当者は交渉ごとに慣れており、個人で増額を主張してもなかなか聞き入れてもらえず、示談交渉が進まない・保険会社から返事が来ないといったつらい結果になりかねません。
示談交渉段階で弁護士基準の金額請求を目指すならば、交通事故にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。
適切な後遺障害等級認定を受ける
後遺症が残っているなら、適切な後遺障害等級認定を受けることを目指しましょう。
後遺障害認定を受けることで、後遺障害慰謝料に加えて将来の逸失利益や介護費用なども請求できる可能性が高まります。そのため、症状が固定した後に適切な後遺障害認定を受けることは、賠償金を増やすために非常に重要な手段といえるのです。
ただし後遺障害等級認定は審査制なので、一定の基準を満たしていることを書面で主張し、審査機関に認めてもらう必要があります。
申請方法は被害者請求がおすすめ
また、審査を受けるための申請方法は(1)事前認定(2)被害者請求の2通りがありますが、とくに被害者請求がおすすめです。
被害者請求の場合、手続きの負担は大きくなりますが、後遺障害等級が認定されればすぐに自賠責保険金が支払われるというメリットがあります。
また申請書類も自分たちで用意できるので、内容をよく検討し、後遺症が認定基準を満たすものであることを明確に主張できるよう、準備に力を入れることが可能です。
腕を切断してしまったり、指を失ってしまったりといった明らかに目に見えた障害であれば事前認定でもよいのですが、後遺障害認定されるか微妙な場合には被害者請求を選択するようにしましょう。
弁護士に依頼すれば被害者請求手続きのサポートを受けられるので、手間がかかるというデメリットを軽減できます。
関連記事では後遺障害等級認定についての基本情報をまとめていますので、あわせてお読みください。
過失が大きいときには自分の保険も使う
交通事故の賠償金は、事故相手の保険会社から受け取るものがすべてではありません。
ご自身の「人身傷害保険」に保険金を請求することで、過失がついて減額された分をカバーできる場合があります。
相手の保険会社から支払われる賠償金は過失割合の影響を受けますが、人身傷害保険の保険金は過失割合の影響を受けません。
人身傷害保険の内容・補償額は約款によりますので、まずはご加入の任意保険会社に問い合わせてみましょう。
交通事故の過失割合5対5で示談する前に一度弁護士へ相談!
アトム法律事務所では交通事故の被害者の方からの相談を随時受け付けています。
- 相手の提案する過失割合5対5に納得いかない!
- 過失割合の交渉と合わせて慰謝料も増額してほしい
- そもそも相手の保険会社の対応につかれた
アトム法律事務所の無料相談は、正式な契約とは別物です。相談だけで終わる方も多いので、「ちょっと話を聞いてみたい」という方もお気軽にお問い合わせください。
5対5の過失割合では、受け取れる賠償金が半分になってしまいます。一度示談が成立すると、示談のやり直しはほぼできません。
本当に妥当な過失割合なのか、一度、法律の専門家に聞いてみてからの示談でも遅くはありません。
弁護士費用が心配な方へ
交通事故で弁護士に依頼する際には、弁護士費用特約が利用できると大きなメリットがあります。
弁護士費用特約とは、保険会社が代わりに弁護士費用を支払ってくれるというもので、おおよそ法律相談料10万円、弁護士費用300万円までを補償するケースが多いです。
ご自身の任意保険はもちろん、一定の範囲であればご家族の弁護士費用特約を利用できることもあります。
弁護士費用特約が利用できれば、過失割合が高くなってしまってもらえるお金が減ってしまっても、自分のお金の持ち出しを可能な限り減らして弁護士に依頼できるのです。
アトム法律事務所の無料相談は弁護士費用特約の有無に関係なく、事故でケガをした方なら無料で利用できます。相談から進んで契約になる際には弁護士費用特約の有無が大事になってきますので、一度確かめてみてください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了