過失割合6対4の事故では示談金相場はどうなる?大幅減額への対処法も解説
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過失割合6対4の事故では、被害者が受け取れる示談金相場は基本的に4割減額されてしまいます。
本来の示談金の6割しか受け取れないことに驚き、どうにかしたいと思っている人もいるのではないでしょうか。
まず、もし過失割合6対4が不当なものなら、正しい過失割合に訂正すべきです。
過失割合7対3が妥当なら、示談金自体を増額させることで受取額を増やすことができます。
「過失割合6対4になったときの示談金相場の計算方法」も合わせて確認していきましょう。
目次
過失割合6対4の事故|示談金相場の計算は?
6対4の事故では示談金が4割減らされる
過失割合7対4の事故で被害者側の過失割合が4割の場合、被害者が受け取れる示談金相場は4割減額されます。
自身に過失割合がつくと、その割合分だけ示談金が減らされる「過失相殺」が適用されるのです。
損害額700万円のケースを想定し、過失割合6対4の事故の示談金相場を計算すると、以下のとおりです。
損害額 | 700万円 |
被害者側の過失割合 | 4割 |
減額 | 280万円 =700万円✕4割 |
示談金 | 420万円 =700万円-280万円 |
過失割合6対4だと加害者への支払いとの相殺も大きい
過失割合6対4の事故では、被害者は加害者から請求された金額のうち4割を支払わなければなりません。
加害者への支払い額と被害者が受け取れる金額を相殺すると、示談金は損害額の6割以下になってしまうのです。
上で示した損害額700万円のケースに、加害者から100万円請求されていたという条件も加えて受け取り金額を計算してみましょう。
加害者 | 被害者 | |
---|---|---|
損害額 | 100万円 | 700万円 |
過失割合 | 6割 | 4割 |
過失相殺で減る金額 | 60万円 =100万円✕6割 | 280万円 =700万円✕4割 |
相手に請求できる金額 | 40万円 =100万円-60万円 | 420万円 =700万円-280万円 |
実際の受け取り示談金 | 0円 | 380万円 =420万円-40万円 |
過失割合6対4になる事故事例
ここからは、「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に記載されている情報をベースにして過失割合6対4になるケースを紹介します。
基本の過失割合6対4の事故事例
過失割合が6対4になる事故としては、以下のようなものがあります。
車同士の事故
- 同じ道幅で信号のない交差点で、直進左方車(4割)と直進右方車(6割)が衝突した事故
- 信号のない同じ道幅の交差点で左方からの右折車(4割)と直進車(6割)が衝突した事故
車とバイクの事故
- 同じ道幅の交差点に、互いに赤信号で侵入した直進バイク(4割)と直進車(6割)の衝突事故
- 信号のない同じ道幅の交差点に侵入した右折バイク(4割)と、その対向からの直進車(6割)の衝突事故
車と自転車の事故
- 路外から右左折で道路に進入した自転車(4割)とその道路を直進してきた車(6割)の衝突事故
- 狭い道から広い道へ信号のない交差点に侵入した右折自転車(4割)と、その対向からの直進車(6割)の衝突事故
過失割合は修正要素も考慮して決まる
上で紹介した事故事例は、あくまでも基本的な過失割合です。
実際には、以下のような修正要素と呼ばれる要素も考慮して過失割合が決まります。
- 車の速度違反
- 事故時の道路の見晴らし
- 事故当事者の飛び出しの有無
よって、上記の事故類型に当てはまるケースでも過失割合6対4にならないことは十分ありえます。
反対に、基本的には7対3や5対5になるような事故でも、修正要素を反映させた結果6対4になることもあるので注意しましょう。
過失割合6対4を変更したい場合の対処法
(1)弁護士が算定した適切な過失割合を確認する
過失割合6対4を変更したい場合は、まず弁護士に正しい過失割合をお問い合わせください。
いくら過失割合6対4に納得いかなくても、代わりにより適切な過失割合を提示しなければ、加害者側の保険会社は納得しないでしょう。
しかし、過失割合は柔軟に算定されるものであり、誰が見ても明らかな正解があるわけではありません。知識があり算定に慣れた人でないと、適切な過失割合の算定は難しいのです。
よって、根拠のある正しい主張をするために、まずは弁護士に正しい過失割合を確認することが重要です。アトム法律事務所の無料相談では、過失割合についてもお問い合わせいただけます。
無料相談のみのご利用も可能なので、ぜひご活用ください。
(2)過失割合について加害者側に交渉する
正しい過失割合がわかったら、なぜその過失割合が正しいといえるのか、加害者側が提示する過失割合はどのような点で正しくないのか根拠を揃え、正しい過失割合になるよう交渉しましょう。
ただし、被害者側の過失割合が減るということは、加害者側の保険会社からすれば「自社の支払い額が増える」ということです。
被害者側の主張を簡単には受け入れないでしょう。
示談交渉経験や知識量の差から言っても、交渉において被害者は不利と言わざるを得ません。
弁護士に過失割合について問い合わせた際に、示談交渉まで依頼することがおすすめです。
過失割合6対0を狙うのも1つの手
過失割合6対0のように被害者側・加害者側の過失割合を足しても10割にならない状態を「片側賠償」と言います。
この場合、被害者が受け取れる示談金は過失割合6対4と同様に4割減額されますが、被害者が加害者に支払う金額は0割で済みます。加害者への支払い分がなくなるため、実質的な獲得金額が増えるのです。
過失割合7対0の仕組み
- 被害者は自身の損害額の6割を加害者側に請求できる
- 加害者は自身の損害額の0割を被害者側に請求できる=被害者に請求できる金額はない
被害者の損害額700万円、加害者の損害額100万円を想定した例は以下のとおりです。
6対4 | 6対0 | |
---|---|---|
被害者の請求額 | 420万円 | 420万円 |
加害者の請求額 | 40万円 | 0円 |
被害者の実質獲得額 | 380万円 | 420万円 |
片側賠償は、加害者からしても「被害者に請求できる金額は0円になるが、過失割合7対3や8対2になるよりは、被害者に支払う示談金額が少なく済む」というメリットがあります。
弁護士を立てるなど十分な対策のうえで主張すれば、加害者側に聞き入れてもらえる可能性があります。
過失割合6対4のまま示談金を多くもらうには?
示談金そのもののを増額させる
6対4が妥当な過失割合である場合は、示談金そのものを増額させることで受け取り額を多くできます。
同じ4割減額でも、本来の示談金額が700万円であるのと1,000万円であるのとでは受け取り額が違うからです。
示談金 | 700万円 | 1,000万円 |
過失相殺による減額 | 280万円 | 400万円 |
実際の受取額 | 420万円 | 600万円 |
そもそも、加害者側の保険会社が提示する慰謝料や逸失利益、休業損害などは相場よりも低いことがほとんどです。
例えば加害者側が提示する慰謝料には、2~3倍も増額の余地があることが珍しくありません。
ただし、これだけの大幅増額は弁護士を立てた交渉でないと難しいのが実状です。被害者自身の交渉では微々たる増額しかできないことが多いでしょう。
自賠責保険に被害者請求する
一部のケースでは、損害賠償金を加害者側の自賠責保険のみに請求したほうが、受け取り金額が多くなることがあります。
交通事故の示談金は通常、加害者側の自賠責保険・任意保険から支払われます。基本的には加害者側の任意保険会社からすべて一括で支払われ、その際に過失相殺が適用されます。
過失割合6対4なら示談金全体に対して4割減が適用されるのです。
しかし、「被害者請求」という手続きをすれば、自賠責保険の支払い分を加害者側の自賠責保険に直接請求できます。
この場合、被害者請求分については以下のような過失相殺が適用されます。
傷害 | 後遺障害・死亡 | |
---|---|---|
7割未満 | 減額なし | 減額なし |
7~8割未満 | 2割減 | 2割減 |
8~9割未満 | 2割減 | 3割減 |
9~10割未満 | 2割減 | 5割減 |
つまり過失割合6対4なら、過失相殺されないのです。
例えば
傷害分の示談金が150万円で過失割合6対4の場合、加害者側の任意保険会社に全額請求すると、実際の受取額は90万円になります。(150万円の4割減)
一方、加害者側の自賠責保険に被害者請求する場合、120万円の上限設定*があるため請求できる金額は120万円だけです。
しかし、過失相殺は適用されないため120万円満額で受け取ることができ、加害者側の任意保険に全額請求するより多くの金額が手に入るのです。
*自賠責保険からの支払い上限額は、傷害分、後遺障害分、死亡分でそれぞれで違います。
すべてのケースで被害者請求したほうが良いとは言えないので、自分のケースで試算して被害者請求すべきか検討しましょう。
自賠責保険の支払い上限額や被害者請求の方法、自賠責保険の過失相殺については『自賠責保険から慰謝料はいくらもらえる?計算方法や支払い限度額を解説』で詳しく解説しています。
過失割合6対4の示談金相場は弁護士に相談
過失割合6対4に納得いかない、過失割合6対4でもできるだけ多くの示談金を得たいという場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。
過失割合6対4では被害者の示談金は4割も減額されてしまいます。もし過失割合6対4が不当なものなら訂正すべきですし、妥当なものであってもより多くの金額を得るためにできることはあります。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了