駐車場事故の対処法!警察呼ばなかった時のリスクやコンビニ・スーパー等の事故判例

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駐車場の事故

駐車場で車をぶつけられたとき、「事故発生後に何をすればよいのか?」「道路上の事故との違いはあるのか?」「自分にどれくらいの過失があるのか?」と悩む方は少なくありません。

  • コインパーキング(例:精算機前で停車中に追突された)
  • コンビニ・スーパーの駐車場(例:歩行者や通行車両との接触)
  • 商業施設の立体駐車場(死角やスロープでの接触事故)

たとえば、こんな事故に遭遇してお悩みの方もいるのではないでしょうか。

この記事では、駐車場事故における事故後の対処法、示談金や保険対応のポイント、過失割合の考え方などを裁判例も紹介しながらわかりやすく解説します。

「駐車場で事故に遭ったけど、どうすればいいのか不安…」という方は、ぜひ参考にしてください。

本記事は「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に記載されている情報をベースに作成しております。

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駐車場事故の対処法と解決までの流れ

駐車場内で事故が起きた場合、「警察には連絡すべきか」「駐車場自体に問題があれば所有者も賠償請求できる?」といった疑問が生じがちです。

こうした疑問へお答えするとともに、駐車場事故の解決までの流れを紹介します。

駐車場事故でも警察に連絡すべき?連絡が義務な場合もある

駐車場の事故であっても、基本的には警察に届け出ましょう。

駐車場は公道ではないから警察は関係ないと考える方もいますが、場所によっては道路交通法上の「道路」とみなされ、報告義務が生じるケースが大半だからです。

警察への届け出義務がないのは、不特定多数の出入りがない私有地の駐車場に限ります。

警察への届出義務(駐車場事故)

  • 不特定多数が出入りする駐車場の場合、私有地であっても警察への事故の届出は義務
  • 不特定多数の出入りがない私有地の駐車場の場合警察への事故の届出は義務ではない
    ※損害賠償請求の観点から、届出はしておくほうが良い。

公道か私有地か判断に迷う場合でも、自己判断せずにまずは警察へ連絡を入れるのが最善の対処法です。

「道路」とみなされる駐車場は警察への連絡が必須

スーパーやコンビニの駐車場、コインパーキングのような「不特定多数の人が出入りする駐車場」は、公道だけでなく私有地であっても道路交通法が適用されるので、事故を警察に届け出ることは義務です。

報告義務がある駐車場の例

  • スーパー、コンビニ、ドラッグストア等の駐車場
  • ショッピングモールの立体駐車場
  • コインパーキング(時間貸し駐車場)

警察への届出義務を怠ると、3ヶ月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金が科されることがあります。

自宅駐車場など「私有地」で義務がない場合も届け出は行う

一方、月極駐車場や個人の敷地を使った駐車場などは不特定多数の出入りがないため、私有地であるなら道路交通法は適用されません。

報告義務がない可能性がある場所

  • 自宅のガレージ
  • 特定の契約者しか利用できない月極駐車場
  • 資材置き場など、関係者以外立ち入り禁止の敷地

もっとも、義務がないからといって不利益が生じないわけではないので注意してください。損害賠償請求の観点からは、義務がなくても届け出は行っておくべきでしょう。

駐車場の物損事故で警察を呼ばなかった?後日でも届け出るべき

駐車場での物損事故で警察を呼ばずに現場を離れてしまった場合でも、気付いた時点で速やかに警察へ連絡し、後日届け出を行ってください。

「軽くこすった程度だったので、気にせずそのまま帰ってしまった」
「相手がいなかったので、後で連絡すればいいと思った」

物損事故の場合、あとからでも誠実に届け出を行えば、しかるべき処理をしてもらえるケースがほとんどです。逆に、そのまま放置してしまうと「当て逃げ」として捜査対象になるリスクが高まります。

当て逃げの関連記事

当て逃げされた場合の対処法!被害届の出し方や慰謝料・示談についても解説

警察署へ連絡し、速やかに届け出を行う(具体的な流れ)

現場を離れてしまった後の届け出は、以下の手順で行います。

  1. 管轄の警察署を調べる
    事故が起きた場所(駐車場)を管轄する警察署を調べる。110番ではなく、最寄りの警察署または交番へ直接連絡等の相談をするのが一般的。
  2. 電話で「事故の報告をしたい」と伝える
    警察署へ電話し、「〇〇の駐車場で事故を起こしてしまい、その場では届け出ができなかったので報告したい」と伝える。
  3. 警察の指示に従う
    「現場に来てください」または「警察署に来てください」等の指示がある。事故車両の傷の確認(実況見分)が行われることもあるため、車で向かう必要があるかも含めて確認する。
    接触した相手がわかっている場合は、相手にも連絡し、誠意を持って謝罪と事情説明を行う。

決して「バレないだろう」と放置せず、今からでも自ら申告することが、トラブルを最小限に抑えるポイントです。

警察への届出はなぜ必要?報告義務と保険適用外のリスク

警察への事故の届出が義務でない場合も、事故の届け出を行っておくべきでしょう。
人身事故・物損事故を問わず、以下の2点において極めて重要だからです。

  • 報告義務違反および「当て逃げ」「ひき逃げ」のリスク
    道路とみなされる駐車場で警察を呼ばない行為は、道路交通法上の「報告義務違反」にあたる。さらに、事故を起こしたにもかかわらず、警察への連絡や負傷者の救護を行わずに現場から立ち去る行為は、事故の種類によって重い処分が科される。
    • 物損事故の場合(当て逃げ):「危険防止等措置義務違反」などが適用され、違反点数の加算や刑事罰の対象となる。
    • 人身事故の場合(ひき逃げ):「救護義務違反」となり、免許取り消しなどの非常に重い行政処分に加え、拘禁刑を含む厳しい刑事罰が科される可能性がある。
  • 「交通事故証明書」が発行されないリスク
    自動車保険(任意保険)を使って車の修理費やケガの治療費、相手への賠償金を支払う場合、原則として警察が発行する「交通事故証明書」の提出が求められる。
    • 事実関係の証明ができない:交通事故証明書がないと、加害者側から「事故は起きていない」と言われても反論できないことがある。
    • 保険金が下りない:交通事故証明書がないと、保険会社に事故の事実を認められず、自分や相手の車の修理費、治療費などの補償が受けられない可能性がある。

交通事故証明書は、交通事故の発生を公的に証明できる書類です。警察へ届け出をしていないと、交通事故証明書は発行されません。

損害賠償請求をスムーズに行うためにも、道路交通法が適用されるか否かにかかわらず、駐車場での事故は警察に届け出ておきましょう。

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駐車場の所有者に賠償請求できることもある

駐車場側に事故の原因となりうる要素がある場合には駐車場の所有者・管理者に損害賠償請求できることがあります。

以下のような場合には、たとえ「駐車場内での事故について駐車場側は責任を負わない」とされていても、駐車場の所有者・管理者も損害賠償請求の対象になりえます。

  • 駐車場内に障害物があり、それが原因で事故が起きた
  • 駐車場の整備不足が原因で事故が起きた

ただし、駐車場側の損害賠償責任については先方ともめる可能性があります。事前に弁護士に相談することをおすすめします。

駐車場事故の発生から解決までの流れ

駐車場事故の発生から解決までの流れは次のとおりです。

  1. 負傷者の救護・安全確保・警察や保険会社への連絡
  2. ケガの治療を受ける
  3. 示談交渉で過失割合を決めて損害賠償請求する

(1)負傷者の救護・安全確保・警察や保険会社に連絡

駐車場内で事故に巻き込まれたら、まずは負傷者を救護して周囲の安全を確保します。

安全が確保出来たら、警察に連絡してください。警察が到着すると、その場で実況見分が行われることもありますが、後日改めて実況見分が行われることもあるでしょう。

実況見分の内容や流れについては、『実況見分とは?交通事故での流れや注意点!呼び出し対応や過失割合への影響』でご確認いただけます。

また、事故直後の対応が落ち着いてからで良いので、加入する保険会社にも速やかに連絡を入れてください。連絡を怠ると、本来なら利用できる保険が利用できなくなる恐れがあります。

その他、事故直後の対応で注意すべき点は以下のとおりです。

(2)ケガの治療を受ける

交通事故後はできるだけすみやかに病院を受診して治療を受けてください。

事故直後は興奮のため、痛みを感じないという方も多いです。
受診が遅れると治療費や慰謝料の請求に支障が出る可能性があるので、異常がない・ケガがないと思っていても、事故にあったら念のため病院に行きましょう。

治療中は、適切な頻度で通院することや最後までしっかり通院することが非常に重要です。
また、治療の結果、症状固定と診断され後遺症が残ったら後遺障害認定を受けましょう。

通院頻度や後遺障害認定は、損害賠償金にも大きく影響する部分です。わからないことや不安なことがあれば、ためらわず弁護士に確認を取ってください。

(3)示談交渉で過失割合を決めて損害賠償請求する

ケガの完治もしくは後遺障害認定ののち、交通事故で受けた損害の算定が可能になります。

通常は、事故相手の任意保険会社が示談金と過失割合を算定し、提示してくれるでしょう。

ただし、提示内容は適切でないことが多いため、被害者側でも示談金や過失割合を確認し、適切な内容になるようしっかり交渉しましょう。

この際のポイントは以下のとおりです。

  • 示談金も過失割合も弁護士に確認しておく
  • 示談交渉も弁護士に任せることが望ましい
  • 「弁護士費用特約」があれば活用する

示談金も過失割合も、その事故特有の細かい事情まで考慮して算定します。過去の判例や専門知識などを踏まえて柔軟に算定しなければならないため、専門家である弁護士に確認を取ってください。

専門家ではない被害者自身で確認した示談金や過失割合を主張しても、根拠不足・知識不足だとして加害者側の任意保険会社は聞き入れてくれないでしょう。

示談交渉自体を弁護士に任せてしまうこともおすすめです。
弁護士を立てることで被害者側の主張が通りやすくなり、提示された示談金の大幅増額が期待できます。

駐車場内で頻発する事故とその防止策

駐車場内でよくある事故

駐車場内でよくある事故としては、以下のようなものがあげられます。

  • 当て逃げ事故
  • 出庫時、バック走行時の接触事故
  • 踏み間違いによる接触事故

駐車場内で当て逃げ事故|警察へ連絡を

駐車場では、ドアパンチを含む当て逃げの被害が多く聞かれます。

当て逃げされた場合は、すみやかに警察へ連絡しましょう。その後は、ご自身の加入する保険会社へ連絡をして、利用できる保険や特約の有無を確認してください。

当て逃げの被害にあった時の対応について詳しく知りたい方は、関連記事『駐車場での当て逃げの対処法』がおすすめです。

出庫時、バック走行時の接触事故

一般道では、基本的に同じ車線において同じ進行方向に走行することとなりますが、駐車場内では不規則な動きを取ることが多いです。
また、一般道とは異なり、駐車場内は歩行者も動き回っていることから、歩行者が急に現れることがあります。

特に、出庫時やバック走行を行っている場合には、周囲の確認が難しく、歩行者や他の車と接触してしまう危険性が高いでしょう。

駐車場内の踏み間違いによる事故

駐車場内では、駐車する際のハンドル操作やペダル操作が増えるのに加えて、他の車や歩行者にも注意を向ける必要があるので、踏み間違いを誘発しやすいといわれています。

ニュースでは高齢者の踏み間違い事故が取り上げられがちですが、運転に不慣れな若年層による踏み間違い事故も多いです。

関連記事『踏み間違い事故の対策。アクセルとブレーキを間違うのは高齢者だけでもない?』も参考に、どのような年齢層の方でも自分には関係ないと思わず、アクセルとブレーキの位置を確認して、安全運転を心がけましょう。

駐車場内での事故を防ぐポイント

駐車場内で事故を防ぐためのポイントは、以下のようなものとなります。

  • 駐車場内は十分な徐行と車間距離を保つ
  • 自分の目と耳で周囲の安全確認を行う
  • 駐車場には死角が多いことを再認識する
  • 出庫時は一旦頭出し待機を行う
  • バック駐車はさらなる注意が必要

一つずつ見ていきましょう。

駐車場内は十分な徐行と車間距離を保つ

駐車場内では、速度を十分に落として徐行してください。駐車場によっては制限速度を管理者が定めていることもありますが、単純に制限速度を守っていればいい訳ではありません。

駐車場内は、いつでも停車できる速度で走行しましょう。
また、通路が交差する場所では一時停止することで危険を避けやすくなります。

この他に、駐車場では駐車区画に入ろうと停止したり後退したりしていることが多いので、走行順路を守り、十分な車間距離を取ることも大切になります。

自分の目と耳で周囲の安全確認を行う

どのような場合でも「相手が止まってくれるだろう」「このまま進んでも大丈夫だろう」といった思い込みで運転すると事故が起きやすくなります。

特に、駐車場ではスピードが出ていないことも相まって、安全意識が薄れてしまいがちです。

駐車場であっても、いっそう気を引き締め、自分の目と耳で周囲の安全確認を行うようにしましょう。

また、たとえば信号機のある交差点の角にコンビニがあるような場合では、赤信号が変わるのを待たずしてコンビニの駐車場を通り抜けて左折しようとする運転者もいます。

このような場合では、駐車場でもあまり減速せずに進入してくる可能性が高いので、より注意するようにしてください。

駐車場には死角が多いことを再認識する

駐車場にはさまざまな形の車が停まっており、死角が多く存在します。トラックや車高の高い車は当然ですが、普通の乗用車でも小さな子どもや車椅子の方は死角に入ってしまうのです。

突然、人や自転車が飛び出してくることもあるので、駐車場には死角が多いことを再認識しておく必要があるでしょう。

もっとも、見通しのいい場所であっても、子どもは急に走り出すといった予想できない動きをする可能性もあるので、油断は禁物です。

また、同乗のお子さんを降ろして駐車したり、手を繋がずに駐車場内を歩いたりすることもあると思いますが、駐車場内ではお子さんから目を離さないように細心の注意を払ってください。

出庫時は一旦頭出し待機を行う

駐車区画から出庫するときは車の先を少しだけ出してから一旦停止し、通路を進行する車や歩行者に対して出庫することをアピールしましょう。

通路の安全確認ができる場所までゆっくりと進み出て、再度停止した状態で周囲の安全確認を行ってから通路に出てください。

駐車のアシスト機能がついた車も豊富にありますが、そういった便利な機能ばかりに頼るのではなく、自分の目と耳で安全確認を行いましょう。

バック駐車はさらなる注意が必要

バック駐車する際は、後方を確認しましょう。近年の車は、バックギアを入れるとリバース警告音が鳴ります。警告音を聞いたら、後方に歩行者や車がいないか確認して、ゆっくりと人が歩く程度の速さで慎重にバックしましょう。

バック駐車をやり直したい時でも、すぐに前進するのではなく、再度周りに歩行者や車がいないか確認してください。焦らず、ひとつひとつの行動を丁寧に確認しながら行いましょう。

駐車場事故における過失割合の決め方

過失割合は基本の過失割合と修正要素から決まる

交通事故における過失割合は、事故の類型ごとに設定された「基本の過失割合」をもとに、実際の事故の状況に応じた「修正要素」を加えて判断されます。

駐車場事故における事故類型ごとの「基本の過失割合」には、以下のようなものがあります。

駐車場事故における基本の過失割合

事故の類型基本の過失割合
(1)駐車場の交差部分で出会い頭事故5:5
(2)通路進行車と出庫車の事故3:7
(3)通路進行車と入庫車の事故8:2
(4)入庫車と歩行者の事故9:1
(5)通路進行車と歩行者の事故9:1
(6)駐車場から道路へ出る時の事故2:8

駐車場事故における過失割合の決め方

同じような事故でも、個別の事情である修正要素によって、過失割合は違ったものになります。

駐車場事故の過失割合を決める際の修正要素には、以下のようなものがあります。

  • 駐車場内で徐行運転をしていなかった
  • 被害者が児童や高齢者であった
  • 被害者である歩行者が急な飛び出しを行ったために事故が起きた
  • 著しい過失(脇見運転、酒気帯び運転など)
  • 重過失(居眠り運転、無免許運転など)

修正要素はこれだけに限らず、過去の判例や具体的な事故の状況なども踏まえて柔軟に判断されます。

自身の具体的な過失割合が知りたい場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

過失割合の決め方や事例

駐車場事故の過失割合が10対0になるケース

駐車場での事故は、必ずしもお互いに責任(過失)があるとは限りません。状況によっては「10対0」、つまり自分にまったく過失がないと判断されることもあります。

駐車場事故で「10対0」と認定されやすい代表的なケースは以下の通りです。

  • 完全に停車中にぶつけられた
  • 相手が一方的にバックして接触
  • 明らかに危険な運転・違法な場所への駐車

コンビニ・スーパー等での実際の駐車場事故判例

コンビニやスーパーの駐車場、コインパーキングで起きた事故例を、過去の判例から見ていきましょう。

判例①コンビニ駐車場内で起きた事故の裁判例

コンビニの駐車場内で発生した被告が運転する乗用車と原告が運転する自転車との衝突事故で、過失割合が乗用車80:自転車20とされた判例を紹介します。

コンビニ駐車場内で起きた事故の裁判例

横浜地判令1・11・21(平成29年(ワ)5539号)

コンビニ駐車場で、駐車場内を走行していた自転車の左側と、駐車スペースから後退してきた普通乗用車の後部が衝突。自転車を運転していた男性が転倒し、頸椎捻挫等を負った。

乗用車は後方確認を怠った過失があったが、自転車側もバックランプにより車両の動きを予見できたのに安全確認を怠ったとして過失相殺が争点となった。


裁判所の判断

「…20パーセントの過失相殺をするのが相当である」

横浜地判令1・11・21(平成29年(ワ)5539号)
  • 過失割合は乗用車8割、自転車2割と認定
  • 自動車側:コンビニ駐車場では歩行者や自転車の往来が容易に予見できる
  • 自転車側:バックランプ等により車両の後退も容易に認識可能

この裁判では、治療関係費、休業損害、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益、物損等から過失相殺し、合計約433万円とその遅延損害金の請求が認められました。

判例②スーパー駐車場内で起きた事故の裁判例

スーパーの駐車場内で発生した被告が運転する乗用車と原告が運転する原付自転車との接触事故で、乗用車側に100%の過失が認められた判例を紹介します。

スーパー駐車場内で起きた事故の判例

金沢地判平29・1・20(平成26年(ワ)160号)

スーパー駐車場で出口専用の場所から進入した被告車両が、駐車スペースを探すため右折した際に、停車中の原付に前方不注視で衝突した事故。原告の主婦は右足を車両間に挟まれ重傷を負った。

被告は「原付側も動いていた」と主張し責任軽減を図り、事故状況の認定と過失割合が争点となった。


裁判所の判断

「…事故発生についての責任はもっぱら被告にある」

金沢地判平29・1・20(平成26年(ワ)160号)
  • 過失割合:原告0%、被告100%
  • 駐車場でも道路交通法が適用され標識遵守義務あり
  • 被告の「原付側も動いていた」主張を証拠不足で否定

私有地の駐車場であっても、不特定多数が利用する場所では道路交通法が適用され、標識や路面表示に従う法的義務があります。

この判例で特に注目すべきは、出口専用の場所からの進入を「本来予定されていない事態」として重大視し、停車中の車両への衝突と合わせて100%の過失を認定した点です。一般的に駐車場事故では双方過失とされることが多い中、明確なルール違反については厳格な判断が下されることを示しています。

最終的に治療関係費、休業損害、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益、物損等から既払金を差し引いた合計約623万円の請求が認められました。

判例③コインパーキング内で起きた事故の裁判例

コインパーキング内で発生した、原告自動車に被告自動車が追突した事故に関する判例を紹介します。

コインパーキング内で起きた事故の判例

東京地判平24・9・12(平成24年(ワ)第204号)

コインパーキングで停車中の車に被告車がノーブレーキで追突し、原告が右環指伸筋腱損傷(マレット指)を負った事案。

指の第一関節が自力で完全に伸ばせない状態となったが、自賠責保険では後遺障害「非該当」とされ、裁判で事故との因果関係や慰謝料の金額が争点となった。


裁判所の判断

「本件事故と相当因果関係のある慰謝料としては、90万円とするのが相当である」

東京地判平24・9・12(平成24年(ワ)第204号)
  • 右環指DIP関節の伸展で約20~30度の可動域制限を認定
  • 事故の衝撃度(車両の大破状況)を考慮
  • 自賠責非該当でも裁判では損害として認定
慰謝料

90万円

この裁判例は、自賠責保険の後遺障害等級認定で「非該当」とされた指の機能障害(マレット指)について、裁判所が90万円の慰謝料を認めた事例です。

最終的に、治療費、通院交通費、慰謝料(入通院慰謝料・後遺障害慰謝料)等から既払い金を差し引き、遅延損害金を加えた合計約99万円が認められました。

補足

コインパーキングは比較的狭いことも多いです。車同士のすれ違い時やハンドル操作ミスでの接触事故など、車同士の距離が近いことに起因した事故に注意すべきでしょう。

また、コインパーキングは一時利用者も多いです。事故相手と後日連絡がつかないとなると厄介になるので、警察へ事故発生を報告したら、双方の連絡先や加入する保険会社を確認しておきましょう。

判例④立体駐車場で起きた事故の裁判例

立体駐車場は通路が狭かったり、一方通行部分も多数あります。立体駐車場の一方通行通路を逆走して正面衝突事故を起こしたり、アクセルとブレーキを踏み間違えてしまうような事故が少なくありません。

ここでは立体駐車場の駐車区画で起こった、後退駐車しようとする原告車両と、通路付近を走行する被告車両の衝突事故の判例を紹介します。

この裁判では、後退駐車しようとする原告車両に過失はないとの判決になりました。

立体駐車場で起きた事故の判例

東京地判平25・10・30(平成25年(ワ)第3244号)

立体駐車場3階で、後退駐車をしていた原告車に被告車が衝突。被告は「停車していた」と主張したが、警察の物件事故報告書には「駐車するのを待たず、後ろにいた車が接触」と記載されていた。また、被告車は駐車区画をまたぐ位置にあり、通常の進行経路から逸脱していた。修理費26万円の負担割合が争点となった。


裁判所の判断

「駐車区画に進入しようとする車両の動静を注視して、その安全を確認すべき注意義務」に違反した

東京地判平25・10・30(平成25年(ワ)第3244号)
  • 被告の100%過失を認定し、原告側の請求を全面的に認容
  • 決め手となったのは物件事故報告書の記載内容

決定的だったのは、警察が作成した物件事故報告書の記載内容です。この報告書は事故直後に当事者双方から聴取した内容をまとめた公文書であり、高い証拠価値が認められます。

駐車場内事故でお困りの方は、物件事故報告書の内容確認と、事故現場の状況を詳細に記録することが重要です。

駐車場内の事故でよくある疑問

駐車場内で発生した事故に関して多く寄せられる疑問についてお答えします。

Q.駐車場の利用者同士の事故は管理者に責任がない?

駐車場に重大な欠陥があり、そのために事故が起きたような場合は駐車場の管理者にも責任を問えることがあります。

もっとも、駐車場内で単に車同士が衝突したり、歩行者がはねられたりしたような駐車場の利用者同士の事故は、原則的に駐車場の管理者に責任を問うことができないのが通常です。

事故の損害賠償問題は、基本的に事故の当事者間で解決する必要があるからです。

Q.自損事故で駐車場設備にぶつかった場合の責任は?

自損事故であってもご自身で加入されている保険が使える可能性があるので、警察へ連絡した後は、ご自身の保険会社にも連絡を取りましょう。

詳しくは『自損事故で使える保険や補償の範囲は?』をご確認ください。

もっとも、駐車場の設備等に不具合があって起きたような事故においては、民法第717条の工作物責任に基づいて管理者に責任を問える場合があります。

  • 駐車場のフェンスやポールが腐って折れており、車に擦って傷がついた
  • 経年劣化した機械式立体駐車場から車が落下してきて怪我をした

駐車場内に「当駐車場内での事故やトラブルに関して一切責任を負いません」といった内容の看板が設置されていたとしても、事故の原因が駐車場の管理者にもあるようなケースでは、管理者に責任を問える可能性があるでしょう。

コインパーキングのフラップ板で車両が傷ついた?

コインパーキングの駐車スペースに入庫する際、フラップ板が上がったままであったために車両が傷つくという事故もよくみられます。

駐車スペースに入出庫する際のフラップ板は下がりきっているのが通常です。
そのため、フラップ板の故障によって事故が発生したのであれば、コインパーキングの管理者に事故の責任を問うことができるでしょう。

ただし、フラップ板は故障しておらず、単純に利用者がフラップ板の確認を怠ったことで事故が発生したような場合では、管理者に責任を問えない可能性が高いです。

駐車場事故が起きたら弁護士に相談を

駐車場事故について弁護士に相談するメリット

駐車場内で発生した事故について弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットが生じます。

  • 提示された示談金額や過失割合が適切なものかがわかる
  • 相場の金額で示談できる可能性が高まる
  • 相手方との示談交渉を行ってもらうことで負担を減らせる

相手方の保険会社は、相場よりも低い金額で示談するよう提案してくることが多いでしょう。

また、前例が乏しい駐車場事故では、道路上の事故よりも過失割合について争いになりやすいです。事故状況を正しく反映した過失割合でないと、本来なら手にできたはずの示談金が減ってしまうおそれがあります。

弁護士に依頼すれば、弁護士が適切な知識に基づいて示談交渉を行ってくれます。

そのため、相場よりも低い金額で示談したり、被害者に不利な過失割合で合意することを避けることが可能です。

弁護士が具体的に何をしてくれるのか、どういったメリットが得られるのかについて詳しくは、『交通事故を弁護士に依頼するメリット9選と必要な理由|弁護士は何をしてくれる?』の記事がおすすめです。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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