交通事故で仕事しながら通院するコツ!仕事を休んだ、働けなくなったときの補償

働く人が交通事故にあった場合、「交通事故で仕事を休んだ場合の減収はどうなる?」「仕事しながら通院するのは大変」といった不安が生じがちです。
事故で働けなくなったら、休業損害、休業補償、逸失利益といった補償を受けることができます。
もっとも、交通事故で仕事を休む場合や、以前のように働けなくなって減収した場合の補償は事故の種類や休み方、後遺障害の有無によって異なります。
また、仕事を休めないからと治療を後回しにすると、慰謝料などに悪影響が出ることがあるので、記事の内容をしっかり確認していきましょう。
目次

交通事故のケガで働けなくなった場合の補償
休業損害|治療で仕事を休んだ分の給料を補償
交通事故の治療で仕事を休んだ場合、その期間分の給料は「休業損害」として、相手方に請求できます。
請求できる金額は「事故前の収入(日額)×休業日数」で計算されますが、次の点には注意してください。
- 日額の算出方法は、職業によって違う
- 休業損害の請求のため必要になる書類も、職業によって違う
- 相手方の任意保険会社は、休業損害を低めに計算して提示してくる場合がある
- 学生がアルバイトを休んだ場合も、休業損害を請求できる
本記事では「交通事故によるケガで仕事ができない」という場合や「通院しながら仕事をする」場合の対処法や手続きについて解説していきます。
休業損害の詳しい計算方法や請求方法、職業別の1日あたりの休業損害の求め方など、基本的な部分については以下の記事で解説しているので、確認してみてください。
休業損害計算機もあり
職業別に詳しく解説
また、関連記事『休業損害証明書の書き方を解説!誰が書くのか、いつ提出するかもわかる』では給与所得者向けの「休業損害証明書」の書き方をひな形付きで解説しています。
休業補償|労災事故なら請求できる
勤務中や通勤中に交通事故が生じ、治療のために仕事を休んだ場合は、労災保険に対して休業補償も請求できます。
一般的に、休業補償は労災保険から支払われる補償、休業損害は相手方の任意保険会社から支払われる損害賠償金なので、混同しないように注意しましょう。
休業補償については、次の点をおさえておくことが大切です。
- 休業補償の計算方法は、休業損害とは違う。
- 休業補償と休業損害は、二重取りにならない範囲で両方受け取れる。
- 休業補償は、休業4日目以降の分しかもらえない。
休業補償については、『交通事故の休業補償とは?いつまでの期間もらえる?条件・計算方法を解説』の記事が参考になります。
休業損害と休業補償を併用すれば、どちらか一方だけを受け取るより多くの金額が受け取れる場合があるので、ぜひチェックしてみてください。
逸失利益|後遺障害による将来の減収を補償
交通事故によって後遺症が残った場合には、後遺症の症状が原因で働けなくなったり、仕事に支障が出てしまったりする可能性があります。
すると収入が下がったり今後の出世・昇給が見込めなくなったりしますが、こうした損害は「逸失利益」として相手方に請求可能です。

逸失利益の金額は、被害者の事故前年の収入、後遺障害の認定等級、症状固定時の年齢を用いて算定します。
しかし、逸失利益については以下の3点に留意してください。
- 逸失利益は、後遺症に対して「後遺障害等級」が認定された場合のみ請求できる
- 逸失利益は通常、症状固定~67歳までの期間分請求できるが、むちうちの場合は症状固定後5年~10年程度分しか認められないことがほとんど
- 給与所得者・個人事業主など、被害者の立場で基礎収入の算定方法が異なる
相手方の任意保険会社が提示してくる逸失利益は低めに計算されていることもあるので、被害者側でも適切な金額を確認しておきましょう。
逸失利益の計算方法・注意点
交通事故の逸失利益とは?計算方法を解説!早見表・計算機で相場も確認
交通事故で請求できるその他の損害賠償金の相場について知りたい場合はこちら▶交通事故の示談金相場は?一覧表や増額のコツ
休業損害は毎月請求できる可能性あり。請求方法を解説
休業損害は、休業と並行して月に1回、その月分の金額を請求することができる可能性があります。
毎月必要書類を相手方の任意保険会社に提出すると、任意保険会社との合意があれば、1~2週間後に振り込みを受けることができるのです。
必要書類
- 給与所得者
診断書、休業損害証明書、前年度分の源泉徴収票 - 個人事業主
診断書、確定申告書(控)、白色申告者:収支内訳書(控)、青色申告者:所得税青色申告決算書(控)
※個人事業主については別途、資料を求められる場合があります。
休業損害は示談交渉の際にほかの費目と合わせて請求することもできますが、家賃など固定支出は治療で減収が生じているときも変わらず必要になるでしょう。
そのため、任意保険会社に休業損害を毎月支払ってもらえるかどうか確認することをおすすめします。
出費がかさんで休業損害で受け取る金額だけでは足りない場合は、「被害者請求」も検討してみてください。被害者請求すれば、示談成立前に示談金の一部を受け取ることができます。
被害者請求について詳しくは『自賠責保険への被害者請求とは?やり方やデメリット、すべきケースを解説』の記事も参考になりますので、あわせてご覧ください。
仕事を休む理由や休み方ごとの給与の補償
有給休暇や半休・単独事故で仕事を休む場合
有給休暇や半休を使って仕事を休む場合や、単独事故で仕事を休む場合の補償は、それぞれのケースで異なります。
次の通り、結論を簡単にまとめてみました。
- 有給休暇で仕事を休む場合:休業損害のみもらえる。休業補償はもらえない。
- 半休など一部の時間のみ休む場合:休業損害はもらえるが、出勤した時間分の金額は控除される。休業補償も同様の扱い。
- 単独事故で休む場合:休業損害は請求できないが、自身の保険で休業中の給料を補償できることがある。休業補償は請求可能。
それぞれのケースについて、もう少し詳しく解説します。
有給休暇を使って休む場合
治療のために仕事を休む際に有給休暇を取得した場合、実際には減収は生じていませんが休業損害の対象となります。
「本来なら被害者が自由に使えたはずの有給休暇を、交通事故による治療のために使わなければならなかった」ということが損害として認められるからです。
実際、有給休暇について休業損害を認めた判例もあります。もし、相手方が有給休暇を休業損害として扱っていなければ、損害賠償金に入れるよう主張しましょう。
実際の判例
小学校技術職員(男・事故時28歳)の有給休暇(37.5日)につき、事故前3ヵ月間の収入88万9600円を稼働日数(60日)で除した金額(1万4826円)を日額として55万円余を認めた
神戸地判平25.1.24 自保ジ1900・85
一方、休業補償の請求先である労災保険は、有給休暇を使った日を対象外としています。
交通事故の治療のために有給休暇を取得した場合の休業損害請求については、関連記事『交通事故で有給を使っても休業損害・休業補償はもらえる?請求時の注意点』でより詳しく解説しているので、あわせてお読みください。
半休など仕事の一部を休む場合
半休など一部の時間のみ仕事を休んだ場合は、休んだ時間分だけ休業損害を請求できます。通勤中・勤務中の事故の場合に支払われる休業補償も同様です。
たとえば、半休の場合はその日分の金額が半分になります。8時間勤務で3時間のみ休んだ場合は、その日分の金額が8分の3になるのです。
単独事故で仕事を休む場合
休業損害は交通事故の相手方に請求するものなので、相手のいない単独事故では請求できません。
ただし、自身の保険の「人身傷害補償特約(人身傷害補償保険)」から支払われる保険金には、単独事故であっても休業による減収への補償が含まれます。
人身傷害補償特約については、『人身傷害補償特約は必要?いらない?補償内容や他の保険との違いとは』で詳しく解説しています。
なお、単独事故が通勤・業務中に起きたものであれば、休業補償は請求可能です。
打撲・捻挫などの軽傷で仕事を休む場合
打撲や捻挫であっても、通院のために休業が必要なら休業損害を請求できます。
ただし、仕事がまったくできないほどの症状でないのに終日休業した場合は、休業損害が減額されたり認められなかったりする可能性もあるので注意してください。
なお、『軽傷の交通事故慰謝料はどれくらい?』では軽傷の場合の慰謝料相場を解説しています。合わせてご確認ください。
自己判断で仕事を休む場合
自己判断で仕事を休んだり早退したりした場合には休業損害の対象とならない可能性があります。
休業損害の対象となるのはあくまでも「治療のために休む必要性が客観的に認められる日」です。
より具体的にいうと、通院や入院で仕事ができない日や、医師からの指示で仕事を休んで療養する日です。
「ケガが痛くて仕事ができないから自己判断にはなるが休みたい」という場合は、病院へ行って医師の診察を受け、休業もやむを得ない状態であったことを証明できるようにしておくと安心です。
電気療法やマッサージのみの通院で仕事を休む場合
電気療法やマッサージを受けるだけ、薬や湿布を処方してもらうだけといった「漫然治療」のために仕事を休んだ場合、休業損害がもらえない可能性があります。
必ずしも必要な休業・治療ではなかったと判断されたり、過剰通院による保険金詐欺を疑われたりするおそれがあるからです。
「通院頻度を上げたり治療期間を長くしたりした方が多くの休業損害・慰謝料をもらえるのでは?」と無理に通院すると、かえって損害賠償金が減らされてしまうことが考えられます。
あくまでも医師の指示通りの頻度・期間で通院しましょう。
医師がすすめる治療内容が慢性治療に当たるかもしれないと思う場合は、一度弁護士にご相談ください。
親が子の治療の付き添いで仕事を休む場合
親が仕事を休み、交通事故の被害者である子供の入院・通院に付き添った場合、休業損害と付添費のうち高い方のみを請求できます。
付添費とは
1人で入院・通院などができない被害者に近親者や職業人が付き添った場合に請求できる損害賠償金。
入院付添費、通院付添費の他、自宅付添費や通学付添費もある。
近親者の入院付添費・通院付添費の相場は次のようになります。
相場 | |
---|---|
入院付添費 | 6,500円/日 |
通院付添費 | 3,300円/日 |
上記は、示談交渉で弁護士を立てた場合の相場額です。
相手方の任意保険会社が提示する金額はもっと低いことが多いので、鵜呑みにしないようにしましょう。
なお、付添費についてはそもそも請求が認められるかといった問題もあります。
子供の年齢が12歳以下ならば特に条件なく通院付添費が認められることが多いのですが、13歳以上の時には、付添いが必要と判断されるだけのケガの程度や医師の指示が必要になるのです。
その他の付添費も含め、付添費について詳しく知りたい場合は、以下の記事からご確認ください。
もっと詳しく
交通事故で仕事ができない時の疑問にお答え
いつまで仕事ができない?いつ仕事復帰できる?
いつ仕事復帰できるかはケガの程度によっても異なります。
そのため、一概には言えませんが、目安を知りたい場合は「平均治療期間」と「診断書の記載内容」が参考になるでしょう。
平均治療期間は、一般的に打撲で1ヶ月、むちうちで3ヶ月、骨折で6ヶ月と言われます。
しかし、これはあくまでも一般的な目安です。より自身のケガに即した治療期間の目安を知りたい場合は、初診後に作成された診断書に記載されている「全治日数」を見てみましょう。
ただし、全治日数も治療中に変動していく可能性があることに注意してください。
診断書は、交通事故の慰謝料や損害賠償金を適切に受け取るために重要です。診断書の重要性については、『交通事故の診断書|提出しないと慰謝料減額?提出先や費用・期限を解説』で詳しく解説しています。
いつまで休業損害を支払ってもらえる?
交通事故の休業損害が支払われるのは、原則として完治日または症状固定日までです。
症状固定
医学上一般に承認された治療方法をもってしても、その効果が期待し得ない状態になること
つまり、後遺症が残ったと判断されること

完治・症状固定前であればリハビリによる休業日も補償対象となります。
リハビリ中の期間に対する補償については『交通事故の慰謝料はリハビリでももらえる!』で解説しているのでご確認ください。
なお、症状固定日は交通事故後の流れの中でも重要なポイントです。
症状固定後は後遺障害認定の申請が必要になったり、損害賠償請求権の消滅時効のカウントが始まったりします。詳しくは『症状固定とは?時期や症状固定と言われたらすべき後遺障害認定と示談』で解説しているので確認しておくのがおすすめです。
まだ十分に仕事もできないのに治療費や休業損害を打ち切られたら?
交通事故の治療費は、治療と並行して相手方の任意保険会社が病院に直接支払ってくれることが多いです。
しかし、まだ治療が必要で十分に仕事もできない状態なのに、途中で治療費や休業損害を打ち切られることがあります。
この場合は、ひとまず被害者側で治療費を立て替えながら最後まで治療をし、示談交渉時に立て替えた治療費・打ち切り以降の休業損害を請求することになります。
治療費や休業損害を回収するまでの間は以下のような方法で負担を減らせるので参考にしてみてください。
- 治療費の立て替えでは健康保険を使う
もっと詳しく▶交通事故で健康保険は使える - 相手方の自賠責保険への被害者請求により休業中の給与をまかなう
もっと詳しく▶自賠責保険への被害者請求とは? - 自身の保険への保険金請求により休業中の給与をまかなう
もっと詳しく▶交通事故で使える保険の種類と請求の流れ
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忙しくて休めない…仕事しながら通院する際のコツ
仕事を休めなくても治療は後回しにしない
交通事故でケガをしたものの仕事は休めない、という場合は、治療を後回しにせず仕事をしながら通院しましょう。
通院を後回しにすると、慰謝料などが十分にもらえない事態に陥ります。
仕事を優先して、治療を後回しにすると生じる可能性のあるデメリットは次の通りです。
- 相手方の任意保険会社に「その程度の通院頻度で良いということは必ずしも必要な治療ではなかったのでは?」と判断され、治療費が正しく支払われない可能性がある
- 被害者が治療に消極的だったために治療期間が延びたとして、慰謝料が減額される可能性がある(心因的素因減額)
- 初診が遅れた場合は、ケガと事故との関連性がわかりにくくなり、そもそも「交通事故によるケガかどうか」が疑われてしまう
とくに、頚椎捻挫(いわゆる、むちうち)のような比較的、症状が軽いケガの場合、仕事や家事・育児で忙しいと痛みを我慢して治療を後回しにしがちです。
しかし、これでは治療費や慰謝料の請求に支障が出る可能性があるので、必ず医師の指示通りに治療を受けましょう。
詳しく解説
仕事後に通いやすい整骨院・接骨院の利用も検討
病院が遠くて仕事をしながらでは通いにくい、勤務時間と病院の診察時間が合わない、などの理由でお困りの場合は、整骨院や接骨院への通院も検討してみてください。
病院と比べると開院時間が長く、交通アクセスも比較的便利であることが多いからです。
ただし、整骨院や接骨院は厳密には病院ではないので、適切な補償を受けるためには次の点を守ることが大切です。
- 初診は病院で受ける
- 事前に病院の医師から、整骨院・接骨院への通院の許可を得ておく
- 病院への通院も月に1回以上の頻度で継続する
整骨院・接骨院で治療を受ける場合の注意点や流れについては、『交通事故の治療の流れ|整骨院と整形外科のどちらに通うのが正解?』で詳しく解説しています。
整骨院や接骨院への通院を考えている場合には、ぜひ確認しておいてください。
転院することも可能
転院して、現在通院している病院自体を変えることも可能です。
転院する際は、通院先や相手方の任意保険会社に転院することを伝え、転院によるもめ事が生じないよう心がける必要があります。
転院の方法や注意点について詳しく知りたい方は『交通事故で病院を変える注意点と流れ|セカンドオピニオンや紹介状は必要?』の記事をご覧ください。
煩雑な手続き・相手方の対応は弁護士に任せる
相手方との示談交渉に関するやり取りについては、専門家である弁護士に任せることで治療や仕事に専念すべきです。
仕事と治療の両立は、ただでさえ身体的・精神的・時間的負担がかかります。
そのうえ交通事故の場合は、仕事と治療の合間を縫って相手方とのやり取り、示談交渉の準備、各種事務的な手続きなどもしなければなりません。
また、示談交渉開始後は、仕事中で相手方の保険会社から交渉の電話がかかってくることがあります。
弁護士に依頼すれば、示談交渉や交渉のために必要な手続きを弁護士に任せることができるため、治療や仕事に集中することが可能です。
それだけでなく、休業損害や慰謝料の減額につながりかねない通院頻度や休業理由などについてもアドバイスをもらえるので、安心して治療を受けられるでしょう。

休業の補償や治療と仕事の両立は弁護士に相談を
弁護士に相談・依頼するメリット
弁護士に相談・依頼することで、相手方との示談交渉やそのために必要な手続きを任せることが可能となり、被害者自身は治療や仕事に専念することができます。
これ以外にも、弁護士に相談・依頼することで以下のようなメリットを受けることができるでしょう。
弁護士依頼のメリット
- 相手方と直接やり取りすることで生じるストレスが軽減される
- 被害者自身では実現できないような示談金の大幅増額が期待できる
- 示談の早期解決によって早く示談金を受け取れる可能性がある
- 示談交渉に至るまでのさまざまな疑問・不安も相談できる
特に、示談金の増額は被害者にとって大きなメリットとなります。
弁護士に依頼することでどの程度の増額が見込めるのかは、相談時点である程度見積もることができるので、まずは弁護士への相談を行ってみると良いでしょう。
無料の相談窓口はこちら|依頼にかかる初期費用も原則0円
アトム法律事務所では、電話・LINEで無料相談をおこなっています。相談だけのご利用ももちろん可能です。
依頼まで進んだ場合の弁護士費用については、弁護士費用特約を使うことで、自己負担を回避できます。
また、弁護士費用特約がなくても着手金は原則無料となっているため、初期費用がかかりません。
交通事故による休業や仕事と通院の両立に不安や疑問がある場合は、お気軽に弁護士にご相談ください。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了