交通事故の休業損害打ち切りを打診された!打ち切り時期と対応策

更新日:

休業損害の打ち切り

交通事故に遭い、長期間にわたって仕事を休まざるを得ない状況は、被害者にとって精神的にも経済的にも大きな負担となります。そのようななか突然、保険会社から「休業損害の支払いを打ち切ります」と告げられたら、どうしたらいいのかわからず不安でしょう。

休業して治療も十分にうけ、完治したり症状固定となったりしているのであれば、保険会社からの休業損害打ち切りは基本的に受け入れる必要があります。休業損害は治療のために仕事を休んだ時の補償だからです。

ただし、まだ治療や休業の必要があるなら、打ち切りの打診を安易に受け入れる必要はありません。

本記事では、休業損害の打ち切りが予想されるタイミングや、打ち切りを打診された時の具体的な対応策、さらには弁護士に相談すべき状況まで実践的なアドバイスをお届けします。

交通事故の無料法律相談
相談料 無料
毎日50件以上のお問合せ!

休業損害の打ち切りが予想されるタイミング

【前提】休業損害がもらえる期間

前提として、休業損害は「治療終了または症状固定するまでの期間中に治療のために仕事を休んだ」場合にもらえる補償であることを理解しておきましょう。

具体的には、以下の期間中は休業損害の請求が可能です。

  • 治療終了するまで(完治の時点)
  • 症状固定するまで(後遺障害認定の時点)
  • 復職が可能になるまで

原則的な考え方としては、以上のような期間が休業損害の対象となります。休業損害の目的は、交通事故による怪我の治療で仕事ができずに失った収入を補償するものだからです。

ただし、実際の支払い期間は個々の状況や保険会社の判断によって異なるので注意してください。

休業損害の計算方法や、補償の対象となる休業日数の数え方などについては『交通事故の休業損害|計算方法や休業日の数え方、いつもらえるかを解説』の記事が参考になります。あわせてご覧ください。

仕事復帰できる診断がでた時

医師から「仕事に復帰できる」という診断が出た場合、保険会社から休業損害打ち切りの打診が来る可能性があるでしょう。保険会社は休業損害を支払う必要がなくなったと考えるからです。

ここで注意すべきは、「完全に回復した」という診断でなくても、「条件付きで就労可能」という診断であれば、打ち切り理由になる可能性がある点です。

たとえば、「軽作業なら可能」「短時間勤務なら可能」といった診断でも、保険会社は休業損害の打ち切りを主張する可能性があるでしょう。

一般的な治療終了目安を迎えた時

傷害の種類ごとに、保険会社は一般的に治療期間が終了する目安を設けています。このような治療期間の目安は「DMK136」とも呼ばれおり、この目安の期間を超えると休業損害の打ち切りが検討され始める可能性が高くなるといえるでしょう。

傷害別の一般的な治療期間目安

期間
打撲1ヶ月
むちうち3ヶ月
骨折6ヶ月

もっとも、この治療期間はあくまで目安です。実際には、個々の状況によって適切な治療期間は異なります。保険会社は慣習的にDMK136を目安にして打ち切りを打診しているにすぎないケースも多々あるので、一方的に打ち切るといわれたとしても安易に受け入れる必要はありません。

症状や治療内容に変化が見られない時

治療を長期間にわたって続けても、症状や治療内容に変化が見られない場合、保険会社は「症状が固定した」と判断し、休業損害打ち切りを打診して来る可能性があるでしょう。

具体的には、リハビリや痛み止めの飲み薬・湿布のみといった保存治療が長期間続いている場合、注意せねばなりません。保険会社は「これ以上の回復は見込めない」と判断し、打ち切りを主張することがあるからです。

特に、交通事故で負った怪我がむちうちだった場合、休業損害に関して争いになりやすい傾向にあります。むちうちは外見上、怪我していることがわかりにくいだけでなく、レントゲンやMRI検査といった画像検査などでも異常所見がみえにくいことも多いです。

むちうちは実際に痛みを感じているにもかかわらず、怪我の存在が認められにくいという特徴があるため、保険会社から休業の必要性に疑問を持たれやすくなってしまう傾向にあります。

むちうちの症状やむちうちで適切に損害賠償請求していくためのポイントをまとめた関連記事『交通事故によるむちうち(外傷性頚部症候群)の症状や治療期間』も参考になりますので、あわせてご覧ください。

事故とは無関係な症状が悪化した時

交通事故による怪我の症状とは別に、事故と無関係な持病や新たな怪我で症状が悪化した場合、保険会社はこれを理由に休業損害の打ち切りを主張することがあります。

たとえば、交通事故によるむちうちで休業中に、持病の腰痛が悪化した場合、保険会社は「現在の休業は事故と因果関係がない」と主張する可能性があるでしょう。

休業損害を支払う義務があるのは、事故を起こして怪我を負わせたという不法行為と被害者が受けた収入が得られないという損害の間に法的な因果関係がある場合のみだからです。

休業損害打ち切りへの対応策

打ち切りを安易に受け入れない

休業損害の打ち切りを打診されたとしても、安易に受け入れないでください。治療を終了するかどうか判断できるのは、医師だけです。

保険会社は医師に治療終了時期を事前に確認してから打ち切りを打診してくるのが通常ですが、保険会社が先走って打ち切りを提案していることがあります。また、被害者の治療の進捗状況や体の具合を十分に考慮していない可能性もあるでしょう。

なぜ打ち切りになるのか、保険会社に対して詳しい理由を確認してください。保険会社に対して、書面での説明を求めてもいいでしょう。

休業継続の必要性を医師から示してもらう

仕事復帰することで症状悪化が懸念されたり、治療の効果を実感していたりするなら、休業継続の意思を示しましょう。

特に、休業継続の必要性を示すためには、医師に診断書を作成してもらうのが有効です。医師の診断書は、休業継続を主張する上で最も重要となります。以下の点を含む詳細な診断書を作成してもらってください。

  • 現在の症状の詳細
  • 治療の必要性と今後の治療計画
  • 仕事復帰が困難な理由
  • 日常生活への影響

交通事故の怪我によって仕事復帰がむずかしいと記載された診断書や意見書を保険会社に提出することで、より説得力のある主張が可能になります。

復職・配置転換など職場と相談する

怪我の状況には、いきなり完全に職場復帰するのではなく、段階的な復帰や配置転換を検討することも有効です。職場の上司や人事部門と相談できる場合は、以下のような選択肢を探ってみましょう。

  • 短時間勤務からの段階的な復帰
  • 体に負担の少ない業務への一時的な配置転換

これらの対応を検討していることを保険会社に伝えることで、完全な打ち切りではなく、部分的に休業継続を認めてもらえる可能性があります。

他の保険を活用して補償を受け取る

休業損害が打ち切られた場合の備えとして、他の保険の活用を検討しましょう。たとえば、以下のような保険が役立つ可能性があります。

これらの保険が使える場合、補償が受け取れる条件を確認し、請求の手続きを進めましょう。

なお、保険会社から休業損害が打ち切られたからといって、休業損害の請求をあきらめる必要はありません。示談成立後にはなりますが、交渉次第では打ち切られた後に生じた分の休業損害を受け取れる可能性も残っています。

休業損害打ち切りでよくある疑問

Q.勝手に保険会社が打ち切るのは許されたこと?

勝手に保険会社が休業損害を打ち切ること自体に違法性はありません。そもそも、示談成立前に休業損害を定期的に支払うことは、あくまで保険会社が任意で行うサービスの一つにすぎないからです。

本来、休業損害をはじめとした事故の損害賠償金は、示談成立後に支払えば法律上の義務は果たします。

したがって、休業を伴う治療中であったとしても、休業損害が打ち切られてしまうことは違法でもなんでもありません。

保険会社には独自の基準があり、それに基づいて打ち切りの判断を下すことがあります。言い換えるなら、保険会社に休業の必要性を認めてもらえれば打ち切られる可能性は低くなるでしょう。

打ち切りの判断に納得できない場合は、交渉や法的手段を検討する必要があります。

Q.突然、打ち切られないよう事前にできる対策はある?

突然の打ち切りを防ぐためにできる事前の対策としては、通院の際に医師と密なコミュニケーションをとっておくことです。具体的には以下の点を意識して、医師に自分の体の状況を伝えましょう。

  1. 職場環境や具体的な業務内容を医師に説明する
  2. 現在の症状が仕事に与える影響を具体的に医師に伝える
  3. 日々の症状や生活の状況を簡単に記録して、医師に見せて現状を理解してもらう

保険会社は医療照会を通じて、「被害者はいつ頃、仕事を再開できそうか」「これまで通りの仕事に戻れるか」といった質問を医師に投げかけ、その回答の内容に応じて休業継続の可否を判断することがあります。

医師はこれらの医療照会が休業損害打ち切りの質問であると理解しないまま、被害者の具体的な状況を伝えるのではなく、一般的な回答をしてしまうことがあるのです。

医師が一般的な回答をしてしまわないよう、日ごろから医師に休業の必要性があることを理解しておいてもらう必要があるでしょう。

休業損害打ち切りトラブルで弁護士に相談すべき?

休業継続の必要性を適切に主張できる

弁護士に相談すれば、個別の状況を法的な観点から分析し、休業継続の必要性を保険会社に対して適切に主張する方法を提案できるでしょう。

  • 医療記録や診断書の適切な解釈と活用
  • 打ち切りの延長交渉

診断書の作成依頼や、延長交渉は被害者自身でも可能ですが、より論理的に主張を展開し、保険会社を納得させるためには、弁護士がいれば心強いです。

どういった弁護士を選べばいいか知りたい方は『交通事故弁護士の選び方で重要な厳選3点!ランキングや評判・口コミは過信注意』の記事をご覧ください。

打ち切りを見越した先回りの対応ができる

経験豊富な弁護士であれば、保険会社の動きを予測し、打ち切りが予想される前に適切な対策を講じることができるでしょう。

  • 詳細な診断書の取得方法や医師と適切なコミュニケーションをとる方法に対するアドバイス
  • 部分的な職場復帰の可能性の検討と提案

特に、交通事故案件の経験が豊富な弁護士であればあるほど、あらゆるリスクに対してアンテナを立てて柔軟に対応できるでしょう。

交通事故案件の経験が豊富な弁護士とは具体的にどのような弁護士をいうのか解説した関連記事『交通事故に強い弁護士とは?弁護士なら誰でも交通事故に詳しい訳ではない』もあわせてお読みください。

慰謝料や逸失利益等の増額も見込める

弁護士に示談交渉を依頼することで、大幅な増額が見込める可能性が高まるでしょう。休業損害に限らず、休業損害の問題はその他の損害賠償項目とも密接に関連しているからです。

  • 適切な後遺障害等級の認定サポート
  • 将来の逸失利益の正確な算定
  • 慰謝料の増額交渉

特に慰謝料に関しては、弁護士が示談交渉に介入するかどうかで最終的に得られる金額に大きな差が出てしまう項目の一つでしょう。休業損害の打ち切りは直近の生活に打撃を与えるものですが、慰謝料は今後の生活を豊かに過ごしていくために必要な賠償金です。

妥当な慰謝料や逸失利益などを獲得するなら、弁護士に相談すべきといえます。

弁護士の介入によって慰謝料はどのくらい増額するか気になる方は、『交通事故の慰謝料は増やせる?上乗せの方法をまとめて公開』の記事もあわせてご覧ください。

休業損害の打ち切りで困ったら弁護士相談

休業損害の打ち切りは、被害者の生活に直接的な影響を与える重大な問題です。休業損害打ち切りという問題に直面したら、一人で抱え込まずに、専門家のサポートを受けるようにしてください。

弁護士への相談は、多くの場合、初回相談が無料で受けられます。費用を心配する前に、まずは相談してみましょう。

アトム法律事務所は、弁護士による法律相談を無料で実施中です。法律相談の受け付けは24時間365日いつでも対応中なので、気軽にお問い合わせください。

交通事故の無料法律相談
相談料 無料
毎日50件以上のお問合せ!

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

突然生じる事故や事件に、
地元の弁護士が即座に対応することで
ご相談者と社会に安心と希望を提供したい。