交通事故後は何科を受診すべき?病院の選び方や早く受診すべき理由

交通事故に遭ったのであれば、なるべく早期に受診を行い、適切な治療を受ける必要があります。事故当日の受診が望ましいですが、遅くても事故から2~3日以内に受診してください。
受診や適切な治療が遅れると、完治するはずのケガが完治せず、十分な賠償を受けられないといった不利益が生じる恐れもあるので、交通事故後に適切な行動をとる必要があるのです。
また、受診後は弁護士に相談すると、適切な賠償を受けやすいでしょう。
本記事では、交通事故後にどの科に受診し、受診後はどうすべきであるかとった点を中心に解説を行っています。
目次

交通事故では病院の何科を受診すべき?
交通事故にあったら、基本的には整形外科を受診しましょう。
ただし、ケガの内容によっては整形外科以外での受診が必要な場合もあります。
詳しく解説するので、ご確認ください。
基本的には整形外科を受診
交通事故に遭った場合、どこへ行くべきか悩んだなら基本的に整形外科を受診しましょう。
整形外科では、骨や関節、筋肉、神経に関する症状や外傷を診てもらえます。交通事故によるケガの多くは、整形外科の対応範囲に含まれるのです。
整形外科を受診すると、レントゲン写真やMRI画像を撮ってもらえることがあります。
こうした画像検査からケガの状態を詳しく把握し、適切な治療方針を立ててもらえるでしょう。
また、画像検査の結果、違う科での受診が必要だと判断されれば、案内してもらえるためまずは整形外科を受診しておくと無難です。
頭に関するケガ・症状は脳神経外科を受診
頭を強く打った場合や、頭痛・めまいがする場合は脳神経外科の受診も検討しましょう。
一見頭部に目立った外傷がなかったり、直接的に頭を打ちつけていたりしなくても、交通事故の衝撃で頭が大きく振れることで、頭の内部で脳の損傷や内出血が生じていることがあります。
放置していると症状が悪化することが考えられるので、不安な場合は脳神経外科にも行っておくと安心です。
火傷や傷跡が残りそうな時は皮膚科を受診
交通事故で火災が発生し火傷した場合や、事故のケガや手術によって傷跡が残りそうな場合は、皮膚科や形成外科の受診も検討してみましょう。
なお、交通事故では傷跡も「外貌醜状」として後遺障害認定され、後遺障害慰謝料・逸失利益の補償対象となることがあります。
ただし、後遺障害認定されるためには「十分な治療を受けたにもかかわらず、完治しなかった」という事実が必要です。
そのため、火傷や傷跡の心配がある場合は早い段階で皮膚科や形成外科を受診し、できる限りの治療を受けるようにしましょう。
「複数の科で受診したい」「どの科がいいかわからない」場合は総合病院へ
交通事故でケガをした場合、基本的には整形外科で受診をしますが、頭を打ったり頭痛・めまいがしたりするなら脳神経外科、火傷や傷跡の心配があるなら皮膚科や形成外科に行く必要があります。
複数の部位をケガしていていくつもの科に行きたい場合や、どこの科へ行けば良いか判断がつかない場合は、総合病院へ行くことがおすすめです。
例えばめまいや頭痛は脳の損傷によって発生する症状である一方、むちうちで生じうる症状でもあります。この場合、どこの科に行くべきかご自身では判断しにくいでしょう。
総合病院のような規模の大きな病院であれば、どの科で受診することが適切か判断して案内してくれます。
子供が交通事故にあった場合は小児科へ行くべき?
子供が交通事故にあった場合、小児科を思い浮かべる方も多いですが、実際には整形外科を受けることがおすすめです。
また、子供が交通事故にあった場合には、ケガが悪化しないよう様々な配慮が必要です。この点もあわせて見ていきましょう。
子供でも基本的には整形外科を受診
交通事故では、子供であっても小児科ではなく、大人と同じように整形外科などを受診するのが一般的です。
実は、一般的に小児科は小児内科のことを指します。
交通事故によるケガは基本的に外科での扱いとなるため、小児科では専門外であることが多いのです。小児外科を取り扱っている病院はあるものの、数が少ないのが実情です。
受診しやすさでいうなら、小児科より整形外科の方が良いでしょう。
子供が交通事故にあった場合の注意点
子供が交通事故にあった場合は、以下の点に注意しましょう。
- 念のため、一定期間は激しい運動を控える
- 学校や習い事先にも、交通事故にあったことを周知する
- 必要に応じてセカンドオピニオンも検討する
特に小さな子供は、自身の症状についてうまく言葉で表現できず、親や医師にケガの状態を十分に伝えられないことがあります。
親が把握しているよりも実際には痛みを強く感じていたり、症状が徐々に悪化していたりすることもあるので、交通事故後、しばらくの間は激しい運動などは控える方が良いでしょう。
また、学校や習い事先にも交通事故にあったことを伝え、配慮してもらえるようにすることがおすすめです。
病院での診断結果に疑問がある場合は、セカンドオピニオンとして別の病院にかかってみるのも良いでしょう。
交通事故後、どこの病院に行く?選び方のポイント3つ
交通事故後、何科にかかるべきかはわかったとしても、例えば周囲に整形外科の病院が数件あるとどこに行けば良いか迷うこともあるでしょう。
そこでここでは、病院選びのポイントや注意点を解説します。
(1)通いやすい立地である
まずは、通いやすい場所にある病院へ行くことがおすすめです。
交通事故による通院は、数ヶ月間続くことも多いです。病院が家から遠かったり、職場やスーパーなど普段よく行くエリアと逆方向にあったりすると、通いにくくなります。
「時間がとれない」「病院へ行くのが面倒になってしまった」などの理由で通院回数が少なくなると、治療費が十分に補償されなくなったり、慰謝料が減額されたりするおそれがあります。
普段の買い物帰りや通勤・退勤途中に立ち寄れるなど、負担なく通院を続けられる場所にある病院を選ぶことが重要です。
(2)交通事故の治療に慣れている
交通事故の治療に慣れていることも、確認しておきたいポイントの1つです。
交通事故で治療を受ける際には、警察に提出する用の診断書、加害者側の保険会社に提出する用の診断書などを病院側に用意してもらう必要があります。
後遺症が残った場合には、後遺障害認定で必要な後遺障害診断書も書いてもらわねばなりません。
また、治療費の支払いや医療照会などで、加害者側の保険会社と病院とが直接やり取りをする場合もあります。
交通事故での治療に慣れている病院の方が、こうした対応をスムーズにしてもらえるでしょう。
(3)交通事故の治療でも健康保険を使える
交通事故の治療で健康保険を使えるかも、要チェックポイントです。
交通事故の治療では、被害者側が一旦治療費を立て替えて治療を受けることがあります。この際、健康保険を利用すれば立て替え負担を軽減できます。
基本的には交通事故の治療でも健康保険を使えますが、病院によっては健康保険の利用を断られることがあります。
「交通事故の治療でも健康保険を使えることを知らない」「病院の方針として、交通事故の治療での健康保険の利用を断っている」などが考えられる理由です。
健康保険を使えるよう病院側を説得するという方法もありますが、初めからスムーズに健康保険を使える病院を選んでおけば、そうした手間はかかりません。
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任意一括対応を受ける場合でも念のため確認を
交通事故の治療費は、「任意一括対応」によって加害者側の保険会社が病院に直接支払ってくれることがあります。
しかし、任意一括対応が途中で打ち切られれば、残りの治療は被害者側で費用を立て替えながら続けなければなりません。
よって、任意一括対応を受ける場合でも、健康保険が使える病院かは念のため確認しておくことがおすすめです。
【補足】専門病院もおすすめ|ただし整骨院・接骨院は要注意
必須とまではいいませんが、近くに交通事故を専門的に扱っている病院があるなら受診をおすすめします。
ただし、整骨院や接骨院への通院は、たとえ「交通事故専門」「交通事故に強い」といった特徴があるところでも注意しましょう。
整骨院や接骨院での施術は厳密には医療行為ではないため、通院の必要性・相当性が疑われ、加害者側から治療費や慰謝料が十分に支払われない可能性があるからです。
整骨院や接骨院に通ってはいけないというわけではありません。
まずは病院で診察を受け、医師の許可を受けたうえで、病院への通院と並行しながら整骨院・接骨院に通うことがポイントです。
整骨院・接骨院に通う場合の注意点は『交通事故で整骨院に通院する際の注意点』にてご確認ください。
交通事故後は早く病院に行くべき!
交通事故に遭ったら、なるべく早く病院に行くべきです。いつまでに病院に行くべきなのか、なぜ早く病院に行くべきなのか解説します。
事故後は当日または2~3日以内には病院へ
交通事故に遭ったら、できるだけ早く病院へ行くべきです。事故当日または遅くても2~3日以内には病院へ行き、ケガの程度を診断してもらいましょう。
ケガの程度によっては、早期の治療が必要な場合があります。また、後遺症が残った場合、早期の診断・治療が後遺障害等級の認定に有利になる可能性もあるでしょう。
事故発生から病院を受診するまでに時間が空いてしまうと、事故でケガを負ったのではなく、日常生活で負ったケガだと判断されてしまう可能性があります。そうなると、事故とケガの因果関係が否定され、治療費や慰謝料などが受け取れなくなる可能性が高まります。
理由(1)交通事故直後は症状が出ない場合がある
交通事故に遭った場合、必ずしもすぐに症状が出るとは限りません。特に、むちうち症は症状が出るまでに数日かかることもあります。
しかし、交通事故の発生から受診まで期間が開いていると、交通事故とケガの因果関係を疑われてしまい、後の損害賠償請求に支障をきたす恐れがあるのです。
そのため、交通事故直後は、症状について自覚がなくても早期に病院へ行くことが重要です。
関連記事『交通事故で後から痛みが…対処法と因果関係の立証方法は?判例も紹介』では、後から痛みが出てきて病院を受診した場合の対処法や、交通事故の因果関係の重要性について解説しています。
物損事故として届け出た後にケガが発覚した場合は、『物損から人身への切り替え方法と手続き期限』の記事を参考に、警察への届出直しをしましょう。
理由(2)治療が遅れると後遺症が残る可能性がある
交通事故に遭ったものの、すぐに受診をしないと、治療が遅れてしまい完治せず、後遺症が残る可能性があります。
後遺症が残った場合、仕事や日常生活に支障をきたす可能性があるので、このような事態は極力避けるべきでしょう。
また、後遺症を原因とした損害について請求を行おうとしても、加害者側が「交通事故後すぐに受診して治療を行っていれば後遺症が残らなかった」と反論し、支払いを拒否してくる恐れがあります。
このような事態を防ぐためにも、交通事故後は早期に病院での受診を行いましょう。早期の治療を受けることで、後遺症の発生を防いだり、軽減したりできるのです。
理由(3)警察に診断書を提出できない
交通事故でケガを負った場合、人身事故として届け出るのが通常です。この際、事故でケガしたことを証明するための資料として「診断書」の提出が必要になります。
しかし、病院を受診していなければ診断書は当然ないので、ケガしていても人身事故として警察に報告できません。
人身事故として扱われなければ、事故状況を証明する書類の実況見分調書が作成されなかったり、事故相手に治療費や慰謝料の請求が認められなかったりするデメリットが出てきます。
実務上、物損事故のままでも事故相手が認めれば治療費や慰謝料をもらえることもありますが、この場合でも診断書がなければケガの存在を証明できないので認められる可能性は低いでしょう。
理由(4)後の賠償問題に影響が出やすい
交通事故でケガをして、治療費や慰謝料などの損害賠償金を事故相手に請求する場合、事故とケガの因果関係を証明する必要があります。
事故直後に病院を受診しておけば事故とケガの因果関係を証明しやすいです。一方、病院の受診が遅れれば因果関係の証明がむずかしくなりやすく、治療費や慰謝料などが否定されて損害賠償金を一部受け取れなくなるリスクが発生します。
さらに、後遺症が残った場合、後遺障害認定を受けることで請求が可能になる賠償金があるのですが、病院の受診が遅れれば事故による後遺障害の残存も認められなくなってしまいかねません。
事故の損害に見合った賠償金を受け取るためにも、病院の受診は重要なのです。
交通事故の治療費はどう払う?病院へ行く流れも解説
交通事故で病院に行く際に気になることとして、「治療費はどのように支払うのか」「通常と同じ流れで受診しても良いのか」があるのではないでしょうか。
ここでは、この2点について解説します。
交通事故の治療費の支払い方は2パターン
交通事故で病院を受診した場合、治療費の支払い方法には以下の2パターンがあります。
- 加害者側の任意保険会社が病院に直接治療費を支払う(任意一括対応)
- 被害者が窓口で費用を支払い、あとから加害者側に請求する

任意一括対応をしてもらえる場合、被害者は窓口で治療費を支払うことなく治療を受けられます。
任意一括対応をするかどうかは加害者側の任意保険会社次第なので、事前に確認しておきましょう。
一旦被害者側で治療費を立て替える場合は、基本的には示談交渉時に治療費を回収することになります。健康保険などを活用して、立て替えの負担を軽減しましょう。
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交通事故で病院へ行く時の流れ
交通事故で病院へ行く流れは、次のとおりです。
- 加害者側の任意保険会社に任意一括対応の有無を確認する
- 自身の保険会社に事故にあったことや、ケガで通院することを伝える
- 病院に行き、交通事故のケガで受診することを伝え、診察を受ける
なお、被害者側で治療費を立て替える必要があり、健康保険を使いたい場合は、受診の前に加入している保険組合に連絡を入れましょう。
そして受診後は、できるだけ早く保険組合に「第三者行為による傷病届」などの書類を提出してください。
病院を受診した後は弁護士に相談しよう
交通事故の被害者となり、病院で受診し、治療を受けたのであれば、弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士は、交通事故に詳しい知識と経験を持っているため、被害者の権利を守るために活動し、より多くの賠償金を獲得することが可能です。
弁護士に相談すれば治療に専念できる
弁護士は、被害者の代理人として加害者に対する損害賠償請求を行います。
弁護士に依頼すると加害者との連絡の窓口が弁護士となるので、被害者は加害者と直接交渉する必要がなくなり、安心して治療に専念できるのです。
加害者の多くは任意保険に加入しているので、加害者側の連絡は加害者が加入している任意保険会社からとなることが多いでしょう。
その場合、任意保険会社は営業時間である平日の午前から夕方の時間帯に連絡を取ってくるため、仕事中や治療中に対応することが必要となってしまいます。
加害者側に対応することはストレスとなることも多いので、弁護士代わりに対応してもらい、治療や仕事の復帰に集中すべきでしょう。
弁護士に相談すればより多くの賠償金を獲得できる
交通事故では、示談による話し合いで賠償金額が決まることが多いです。
しかし、多くの場合で交渉相手となる加害者側の任意保険会社は、少しでも支払う金額を下げるため、相場よりも低額の賠償金額を提示してくるでしょう。
増額交渉を成功させるには法律知識が必要であり、示談経験の豊富な任意保険会社が相手では不利と言わざるを得ません。
一方、弁護士は交通事故に関する法律や判例を熟知しています。
そのため、被害者が請求できる賠償金額を正確に把握し、加害者に対して適切な請求ができます。
また、専門家である弁護士からの主張となると、任意保険会社も譲歩してくることが多いので、結果として請求金額が増加しやすいのです。
加害者側の提示額は相場の半分〜3分の1程度であることも
交通事故において、被害者が受け取るべき本来の相場は、過去の判例に基づく「弁護士基準」に沿って計算されたものです。
しかし、加害者側の任意保険会社は任意保険基準(自社基準)や、自賠責基準(国が定める最低限の基準)に沿った金額を提示してきます。
加害者側の提示額は、弁護士基準の半分〜3分の1程度しかないこともあります。
つまり、十分な金額を得るには交渉によって、提示額を2倍〜3倍も増額させなければならないということです。

大幅な増額は被害者ご自身の交渉では難しいので、弁護士への相談・依頼をご検討ください。
適切な診療科での治療を続けながら、治療が終わった後も見据えて弁護士に相談・依頼しておくことをおすすめします。
無料の法律相談あり!相談予約を24時間受付中
アトム法律事務所では、交通事故でケガをした人向けの無料法律相談をおこなっています。医師の診察と診断を受けたら治療と並行して「今後の賠償請求のこと」を考えていきましょう。

アトム法律事務所は全国の交通事故に対応しています。これまでも比較的軽いケガの事故から、後遺障害が残るほどの重篤なケガまで幅広く依頼を受けてきました。
弊所の弁護士費用体系は「交通事故の弁護士費用」でも説明している通り、法律相談料ゼロ円、着手金は原則ゼロ円です。弁護士費用は示談金確定後の後払い制になっているので、ご依頼時には基本的に費用負担なしとなります。
弁護士費用の概算については損害賠償請求額しだいになるので、治療を始めたばかりの段階で確定は難しいのですが、弁護士費用特約が使える場合は大きな心配はいりません。
弁護士費用特約について
弁護士費用特約とは、被害者に代わって、保険会社が弁護士費用を支払うという特約です。多くの特約は法律相談料10万円、弁護士費用300万円を補償上限に設定しています。
そして、交通事故の弁護士費用はこうした補償額におさまる案件が多く、被害者は自己負担ゼロで弁護士を立てることが可能です。

交通事故の治療中には、保険会社から連絡が入ることも多く、治療や家事、仕事と並行して対応するのは大変です。
そうした負担を軽減するためにも、弁護士への相談・依頼を検討していきましょう。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了