ライプニッツ係数とは?【一覧表あり】逸失利益や将来介護費の計算も解説
この記事でわかること
ライプニッツ係数とは、後遺障害逸失利益や死亡逸失利益、将来介護費を預金・運用することで生じる中間利息をあらかじめ差し引くための数値です。
費目によって、「労働能力喪失率」に応じたライプニッツ係数を使うのか、「平均余命」に応じたライプニッツ係数を使うのかなどが異なります。
ライプニッツ係数の一覧表や、ライプニッツ係数を用いた賠償金の計算方法を見ていきましょう。
目次
ライプニッツ係数とは?
ライプニッツ係数とは?何の計算で使う?
ライプニッツ係数とは、損害賠償金に生じる中間利息を控除するための数値です。
交通事故では、後遺障害逸失利益や死亡逸失利益、将来介護費など、本来なら将来受け取るはずの賠償金も示談成立後にまとめて支払われます。
- 後遺障害逸失利益/死亡逸失利益:交通事故に遭わなければ将来受け取っていたはずの収入に対する補償
- 将来介護費:将来にわたって必要になる介護費
この場合、大部分の金額は預金・運用しながら保管されるため、結果的に利息がつき、将来的に金額が多くなります。
つまり、示談成立時に逸失利益や将来介護費を満額そのまま受け取ると、結果的に「受け取りすぎ」になってしまうのです。
そこで、逸失利益や将来介護費から未来の利息分を差し引き、適正な金額を導き出すために用いられるのが、ライプニッツ係数なのです。
ライプニッツ係数は3年ごとに変わる
先述の通り、ライプニッツ係数は将来的に発生する利息分を控除するためのものなので、法定利率をもとに決められます。
そしてこの法定利率は、民法により3年ごとに見直されます。つまり、ライプニッツ係数も3年ごとに変わる可能性があるのです。
以下は、法定利率の一覧表です。
令和2年3月31日まで | 年5% |
令和2年4月1日から令和5年3月31日 | 年3% |
令和5年4月1日から令和8年3月31日まで | 年3% |
令和8年4月1日以降 | 未定 |
なお、法定利率が下がると中間利息として控除される金額が減るので、示談成立後に受け取れる逸失利益や将来介護費の金額は多くなります。
ライプニッツ係数を使って損害賠償金を計算
後遺障害逸失利益|ライプニッツ係数の一覧表あり
後遺障害逸失利益の計算方法は、以下のとおりです。
逸失利益=1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
後遺障害逸失利益の計算では、「労働能力喪失期間(基本的には症状固定時〜67歳)」に対応するライプニッツ係数が適用されます。
具体的に挙げると以下のとおりです。
被害者が18歳以上のときのライプニッツ係数
労働能力喪失期間 | 2020年3/31以前 | 2020年4/1以降 |
---|---|---|
1年 | 0.9524 | 0.9709 |
2年 | 1.8594 | 1.9135 |
3年 | 2.7232 | 2.8286 |
4年 | 3.546 | 3.7171 |
5年 | 4.3295 | 4.5797 |
6年 | 5.0757 | 5.4172 |
7年 | 5.7864 | 6.2303 |
8年 | 6.4632 | 7.0197 |
9年 | 7.1078 | 7.7861 |
10年 | 7.7217 | 8.5302 |
11年 | 8.3064 | 9.2526 |
12年 | 8.8633 | 9.954 |
13年 | 9.3936 | 10.635 |
14年 | 9.8986 | 11.2961 |
15年 | 10.3797 | 11.9379 |
16年 | 10.8378 | 12.5611 |
17年 | 11.2741 | 13.1661 |
18年 | 11.6896 | 13.7535 |
19年 | 12.0853 | 14.3238 |
20年 | 12.4622 | 14.8775 |
被害者が18歳未満のときのライプニッツ係数*
事故当時の年齢 | 2020年3/31以前 | 2020年4/1以降 |
---|---|---|
0歳 | 7.5495 | 14.9795 |
1歳 | 7.9269 | 15.4289 |
2歳 | 8.3233 | 15.8918 |
3歳 | 8.7394 | 16.3686 |
4歳 | 9.1765 | 16.8596 |
5歳 | 9.6352 | 17.3653 |
6歳 | 10.117 | 17.8864 |
7歳 | 10.6229 | 18.423 |
8歳 | 11.1541 | 18.9756 |
9歳 | 11.7117 | 19.5449 |
10歳 | 12.2973 | 20.1312 |
11歳 | 12.9121 | 20.7352 |
12歳 | 13.5578 | 21.3572 |
13歳 | 14.2356 | 21.998 |
14歳 | 14.9474 | 22.6579 |
15歳 | 15.6949 | 23.3376 |
16歳 | 16.4796 | 24.0377 |
17歳 | 17.3035 | 24.7589 |
*大学進学の蓋然性が認められる場合は数値が異なることもある
基礎収入は事故前の収入から算定し、労働能力喪失率は後遺障害等級から判断されます。
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死亡逸失利益
死亡逸失利益の計算方法は、以下のとおりです。
死亡逸失利益=1年あたりの基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対するライプニッツ係数
死亡逸失利益の場合は、「就労可能年数(基本的には死亡時〜67歳まで)」に対するライプニッツ係数が適用されます。
ただし、「平均余命の1/2の方が長い」「67歳を過ぎている」などの場合は、平均余命の1/2の期間に対するライプニッツ係数が適用されます。具体的な数値は、労働能力喪失期間ですでに紹介している表をご覧ください。
なお、1年あたりの基礎収入は基本的に事故前の年収から算定します。
生活費控除率は「被害者が生きていれば自身で使ってたであろう金額」を差し引くための数値で、目安は以下のとおりです。
- 男性(独身、幼児等を含む):50%
- 女性(主婦、独身、幼児等を含む):30%
▼被害者が一家の支柱の場合の場合
- 被扶養者が1人の場合:40%
- 被扶養者が2人以上の場合:30%
逸失利益は以下の計算機からも確認できますので、ご確認ください。
ただし、厳密な金額は弁護士に確認することをおすすめします。
将来介護費
将来介護費の計算方法は、以下のとおりです。
- 日額×365日×平均余命のライプニッツ係数
- 日額は、介護者によって以下のように考えられる
- 近親者による介護:8000円/日
- 職業人による介護:実費全額
将来介護費の計算では、平均余命に対応するライプニッツ係数が適用されます。
なお、日額は介護体制や後遺障害の程度などによっても変わります。詳しくは『交通事故で介護費用が請求できる2ケース』にてご確認ください。
示談交渉でライプニッツ係数について揉めることは?
示談交渉の際、ライプニッツ係数の数値そのものについて揉めることはあまりありません。
ただし、ライプニッツ係数を左右する「労働能力喪失期間」「就労可能年数」や「平均余命」などについて、加害者側と争いになることはあります。
特に逸失利益は交通事故の示談金の中でも高額化しやすい費目であるため、揉めるケースは多いです。
また、将来介護費についてはそもそも請求の妥当性から争いになることもあるため、交通事故において逸失利益や将来介護費を請求する場合は一度弁護士に相談することをおすすめします。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了