交通事故で示談しないとどうなるのか?リスクや示談拒否したいときの考え方

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示談したくない

交通事故の示談交渉で、加害者側の態度や提示された条件などから「示談したくない」と考える被害者の方もいらっしゃるでしょう。

交通事故で示談しない場合は、損害賠償請求権の消滅時効を迎え、加害者側に損害を賠償してもらえなくなるリスクが生じてしまいます。

示談したくないと思っている場合は、示談交渉を弁護士に一任する、交通事故紛争処理センターを利用する、裁判を起こすといった方法で解決を図るとよいでしょう。

この記事では、交通事故で示談しないリスク、逆に示談しない方がいいケース、示談したくないときの考え方、示談しないときに取るべき対応などを解説しています。

交通事故の損害賠償問題で損をしないために、知識を身につけていきましょう。

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交通事故で示談しないとどうなる?

交通事故の示談とは、交通事故に関する損害賠償問題を当事者同士の話し合いで解決することを言います。

交通事故を示談で解決するメリットとしては、裁判よりも早く損害賠償を受けられる可能性が高いことや、費用がかからないことがあげられます。くわしくは、『交通事故の示談のメリットは?示談金の増額と短期間での示談成立を目指す!』の記事をご確認ください。

交通事故を示談を拒否する場合は、損害賠償請求権の消滅時効を迎え、損害を賠償してもらえなくなるリスクが生じてしまいます。詳しく確認していきましょう。

時効で損害賠償してもらえなくなるリスクがある

交通事故で示談しない場合、加害者側から支払われるべき金額が確定しないため、お金を受け取ることができません。

それどころか、いつまでも示談せず、損害賠償請求権の消滅時効を迎えてしまえば、加害者側に損害賠償してもらえなくなるのです。

損害賠償請求権の消滅時効は、以下のとおりです。

損害賠償請求権の消滅時効
(2017年4月1日以降に発生した事故の場合)

損害の種類時効期間
物損部分の損害事故発生日の翌日から3年
傷害部分の損害事故発生日の翌日から5年
後遺障害部分の損害症状固定日の翌日から5年
死亡による損害死亡した日の翌日から5年
加害者不明の損害※事故発生日の翌日から20年※※

※2017年3月31日以前に発生した交通事故にも適用される可能性がある。
※※途中で加害者が判明した場合は、判明した日の翌日を起算日とし、物損部分は3年、人身部分は5年で時効となる。

なお、上記にかかわらず、保険会社に対する保険金請求の時効は起算日から3年であるため注意しましょう。

時効の完成は、損害賠償請求書を内容証明郵便で送付する催告を行う、調停を利用する、裁判を起こすといった手段で阻止することも可能です。しかし、特別な事情がない限りは、時効が完成する前に交通事故の損害賠償問題の解決を図ったほうがよいでしょう。

交通事故で示談しない方がいいケースとは?

交通事故で示談しないことにはリスクがありますが、一方で、示談しない方がいいケースも存在します。

示談は一度成立してしまうと原則的に撤回することができません。そのため、示談条件に納得できないまま示談することは避けた方がよいのです。

以下のようなケースでは、示談しない方がよい可能性があるでしょう。

  • 早く示談しようと急かされている
  • 示談金の内訳に請求できるはずの費目がない
  • 示談金の金額が適切か判断できない
  • 後遺障害認定の結果に疑義がある

それぞれのケースについて、くわしく確認していきます。

(1)早く示談しようと急かされている

示談金の算定をはじめるのは、交通事故で受けた損害のすべてが確定してからです。

交通事故の被害にあったとき、「早く示談金を支払うため」として、交通事故で受けた損害の確定を早めたり、損害のすべてが確定していない段階で示談金を算定したりすることを、加害者側から提案されるケースがあります。

この場合、示談の時期を早めたことで、交通事故で受けたすべての損害について賠償を受けられなくなる可能性があるのです。

早く示談しようと急かされていても、交通事故で受けたすべての損害が確定するまでは示談しない方がよいでしょう。

損害が確定するタイミングは、以下のとおりです。

事故によるすべての損害が確定するタイミング

事故の種類損害確定の時期
後遺障害なしの人身事故ケガが完治した
後遺障害ありの人身事故後遺障害認定の結果が出た
死亡事故葬儀・法要を終えた

(2)示談金の内訳に請求できるはずの費目がない

交通事故の示談金には、慰謝料、治療費、休業損害といったさまざまな費目が含まれます。

交通事故示談金の内訳

示談金の内訳は、個々の事故によって異なります。たとえば、家族による付き添い看護費や、将来的な介護費を請求できる場合もあるでしょう。

しかし、加害者側は本来なら支払わなければならない費目をあえて含めずに示談金を算定していることがあります

そのような場合は、すぐに示談しないことをおすすめします。

請求できると思っていた項目が示談金に含まれていない場合は、まずは加害者側に請求の可否を確認してみましょう。

もし、加害者側に「その費目は支払えない」と言われたなら、鵜呑みにするのではなく、法律の専門家である弁護士に妥当性を確認してみてください。

(3)示談金の金額が適切か判断できない

加害者側から提示された示談金の金額が適切か判断できない場合も、すぐに示談しない方がよいでしょう。

先述のとおり、示談成立してしまうと、原則的にあとから撤回することはできません。金額が適切か判断できないまま示談すると、本来よりも大幅に少ない金額しか受け取れない可能性があるのです。

示談金のうち、慰謝料と逸失利益については、以下の計算機で相場を確認できます。

加害者側から提示された示談金が適切か判断できない場合は、ぜひお役立てください。費目ごとの詳しい計算方法を知りたい場合は、以下の関連記事も参考になります。

(4)後遺障害認定の結果に疑義がある

交通事故によって後遺症が残ったら、後遺障害等級に認定されることで、後遺障害慰謝料や逸失利益などを請求できるようになります。

しかし、後遺障害認定の申請をすれば、必ず適切な等級に認定されるとは限りません。

後遺障害認定の結果に疑義がある場合、そのまま示談してしまうと、後遺障害慰謝料や逸失利益が本来より低くなってしまう可能性があるのです。

とくに、次のようなケースでは、後遺障害認定の結果が適切かどうかを十分に検討する必要があるでしょう。

  • 想定していた後遺障害等級に認定されなかった
  • 加害者側の保険会社に後遺障害等級認定の申請を任せていた

後遺障害認定の結果に疑義がある場合は、示談せず、異議申し立てを行うとよいでしょう。

ただし、異議申し立てによって等級が変わる可能性は非常に低いので、あらかじめ交通事故に精通した弁護士に相談し、入念に対策を練ることをおすすめします。

交通事故で示談したくない!こんなときどうすればいい?

交通事故で示談しないリスクがあるとしても、「今の状態では示談したくない!」と思われる被害者の方はいらっしゃると思います。

そこで、この章で交通事故で示談したくないときの考え方をケース別に解説します。

(1)示談金が少ない

加害者側から提示された示談金が低額なため、「この条件では示談したくない」と考える被害者の方は少なくありません。

加害者側の任意保険会社は、示談金が低くなるように計算していることが多いです。

交通事故の示談金には3つの算定基準があり、同じ条件でも、どの算定基準を用いるかによって金額が変わってきます。

交通事故の示談金の3つの算定基準

自賠責基準自賠責保険会社が用いる基準。
交通事故の被害者に対して補償される最低限の金額。
任意保険基準任意保険会社が用いる基準。
自賠責基準とほぼ同額か、自賠責基準よりやや高額。
弁護士基準弁護士や裁判所が用いる基準。
3つの基準のなかで最も高額であり、法的にも適正。
示談金の3つの算定基準を比較

加害者側の任意保険会社は、任意保険基準で計算した示談金を提示してくるでしょう。この金額は、弁護士基準で計算し直せば大幅に増額される可能性があるのです。

弁護士基準で計算した示談金を受け取る方法としては、弁護士に示談交渉を依頼する、交通事故紛争処理センターを利用する、裁判を起こすなどが挙げられます。被害者自身で弁護士基準の計算を主張しても、認められることはほとんどありません。

上記の方法のうち、被害者の手間が最も少ないのは弁護士に依頼する方法です。

示談金が少ないと感じるときは、まずは弁護士への無料相談を利用し、増額の余地を確かめてみるとよいでしょう。

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(2)過失割合に納得できない

「被害者側の過失割合が理不尽に高いので示談したくない」といったように、過失割合に納得できず、示談したくないと思われる方も多いです。

加害者側から提示された過失割合は、変更の余地があることも少なくありません

被害者側にも過失割合がつくと、その分だけ示談金が減額されます。そのため、加害者側は支払う金額をおさえることを意図し、被害者側の過失割合をあえて高く見積もっていることがあるのです。

交通事故の過失割合は、「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)などの書籍で確認できます。

しかし、被害者自身で適切な過失割合を判断するのはやや困難です。そのような場合は、法律の専門家である弁護士に相談し、過失割合について見解を聞いてみることをおすすめします。

(3)まだ治療したいのに治療費打ち切りと言われた

交通事故によるケガがまだ治っていないのに、加害者側の任意保険会社から「そろそろ完治していると思うので、治療を打ち切って示談交渉をはじめましょう」と言われるケースもあります。

このような場合、被害者の方は「まだ治療を続けたいので示談したくない」と思われることでしょう。

加害者側の任意保険会社は、支払う金額を減らしたり、保険金詐欺を防いだりするために、被害者の治療状況に関わらず治療費打ち切りを打診してくることがあります

治療を終えるかどうかを決めるのは、保険会社ではなく医師です。

よって、加害者側の任意保険会社から治療費打ち切りを打診された場合は、まずは医師に治療継続の要否を確認しましょう。

まだ治療を続ける必要がある場合は、医師に意見書を書いてもらうなどして、加害者側の任意保険会社と治療継続の交渉をするとよいでしょう。

(4)加害者側の態度に不満がある

「加害者側が謝罪せず、誠意を感じられないので示談したくない」と思われる被害者の方もいらっしゃるでしょう。

以下のように、加害者が著しく不誠実な態度をとった場合は、慰謝料の増額を認められることがあります

  • 反省の態度を全く示さない
  • 不合理な弁解や虚偽の供述を繰り返す
  • 被害者を挑発する言動をとる など

ただし、単に「加害者が見舞いに来なかった」「保険会社に任せきりで不誠実に思える」といったような場合では、慰謝料の増額は認められないでしょう。

「加害者側の態度に不快感を持った」「納得いくような誠意を示してもらいたい」といった理由で示談しない場合、被害者側はいつまでも示談金を受け取れず、最終的に時効を迎えて損してしまうといった状況になりかねません

一方で、加害者側は示談を拒否されたとしても、とくに困るようなことはないのです。

加害者側の態度に不満がある場合、示談しないままでいるのかどうかは、慎重に考えた方がよいでしょう。

交通事故で示談しない場合の選択肢は?

交通事故で示談しないことを選んだ場合、以下のいずれかの方法で解決を目指すことになるでしょう。

  • 弁護士を味方につける
  • 交通事故紛争処理センターを利用する
  • 裁判を起こす

それぞれの方法のメリット・デメリットについて、詳しく解説していきます。

なお、『交通事故の無料電話相談を24時間受け付けている窓口を紹介』の記事では、交通事故のトラブルに関する無料相談窓口を紹介しているので、あわせてご覧ください。

(1)弁護士を味方につける

交通事故の示談条件に納得していないため、示談したくないと考えている場合は、まず弁護士に相談することをおすすめします

弁護士は法律の専門家であり、交渉術にも長けています。弁護士を立てれば、被害者自身が交渉するよりも納得のいく示談条件になるでしょう。

弁護士を味方につけるメリット・デメリットは以下のとおりです。

弁護士のメリット・デメリット

  • メリット
    • 被害者側の主張が通りやすくなる
    • 後遺障害認定のサポートを受けられる
    • 交通事故紛争処理センターや裁判と比べ、被害者自身の手間がかからない
  • デメリット
    • 弁護士費用がかかる
      (ただし、弁護士費用特約を利用すれば、デメリットを解消可能)

交通事故を弁護士に依頼するメリットは、『交通事故を弁護士に依頼するメリット8選』でも詳しく解説しています。あわせてご一読ください。

それぞれのメリット・デメリットについて、詳しく解説していきます。

メリット(1)主張が通りやすくなる

弁護士が示談交渉を行えば、被害者側の主張が通りやすくなります。その理由は以下のとおりです。

  • 弁護士ならば、明確な根拠のある主張ができる
  • 弁護士は法律の専門家であるため、加害者側も無下に扱えない
  • 弁護士が出てくれば、加害者側は裁判への発展を危惧し、態度を軟化させる

もし、納得のいかない示談条件を提示されて「示談しない」と判断していたとしても、弁護士が主張すれば納得のいく示談条件になる可能性が高いのです。

弁護士が交渉すれば、裁判所が用いる「弁護士基準」で計算した示談金を認めてもらうことも可能でしょう。つまり、弁護士が示談交渉すれば、裁判を起こしたときと同程度の金額を請求できるのです。

メリット(2)後遺障害認定のサポートを受けられる

後遺障害認定のサポートを受けられるのは、交通事故紛争処理センターにはないメリットです。

先述のとおり、後遺障害認定は申請すれば必ず適切な等級に認定されるようなものではありません

また、申請には医師が作成する「後遺障害診断書」などの書類が必要になりますが、すべての医師が後遺障害認定に詳しいわけではありません。等級認定され得る症状であっても、書類の書き方が原因で認定されないこともあるのです。

弁護士に依頼していれば、後遺障害等級に認定されやすい書き方を主治医に伝えてもらう、医証集めを行ってもらうといったサポートをしてもらえます。

後遺障害等級認定の審査で後悔しないためには、弁護士への相談がおすすめです。

メリット(3)被害者自身の手間がかからない

弁護士を立てれば、示談交渉に関する手続きを一任することが可能です。

交通事故紛争処理センターを利用する場合、被害者がさまざまな手続きをこなさなければなりません。また、裁判も手続きが非常に煩雑になります。

一方、弁護士に依頼すれば、手続きや加害者側との連絡をすべて任せられるため、被害者は怪我の治療や仕事・学業などに専念できるようになるのです。

「示談交渉の負担を減らしたい」
「他にもやることがあるので示談交渉に時間を使いたくない」
「保険会社の担当者の態度が好ましくないので直接話したくない」

上記のようにお考えの方は、弁護士に相談してみるとよいでしょう。

デメリット|弁護士費用がかかる

弁護士に依頼するデメリットは、弁護士費用がかかることです。

軽微な事故だと、示談金の増額幅よりも弁護士費用が高くなり、結果的に損をしてしまうことにつながりかねません。

ただし、保険のオプションである「弁護士費用特約」を使えば、保険会社に一定金額まで弁護士費用を負担してもらうことができるので、デメリットを解消できます

具体的にどのくらいの弁護士費用がかかるか知りたい方は、『交通事故の弁護士費用相場はいくら?』の記事をご覧ください。

弁護士に依頼して後悔しないか不安な方には、以下の記事もおすすめです。

(2)交通事故紛争処理センターを利用する

交通事故で示談しない場合、交通事故紛争処理センター(以下、紛争処理センター)などのADR機関の利用を検討してみてもよいでしょう。

紛争処理センターは、加害者側の任意保険会社と申立人の間に立ち、中立公正な立場で和解をあっ旋してくれる機関です。人身事故の被害者ならば、誰でも無料で利用できます。

紛争処理センター利用のメリット・デメリットは、以下のとおりです。

ADRのメリット・デメリット

  • メリット
    • 費用がかからない
    • 弁護士基準の金額を請求できる
    • 審査結果は一部の任意保険会社に対して強制力がある
  • デメリット
    • ケースによっては利用できない
    • 被害者に有利な結果にならないことがある

メリット・デメリットをそれぞれ確認していきましょう。

メリット(1)費用がかからない

紛争処理センターの「法律相談」「和解あっ旋」「審査」は無料で利用できます

ただし、医療関係書類の取付け費用、センターまでの交通費(駐車場代を含む)、資料作成費(コピー代など)、通信費(電話代など)といった費用は申立人が負担することになるので、注意が必要です。

また、紛争処理センターだけではなく、「日弁連交通事故相談センター」や「そんぽADRセンター」など他のADR機関も無料で利用可能です。

メリット(2)裁判を起こしたときと同程度の金額を請求できる

紛争処理センターを利用した場合、弁護士基準に準じた金額で加害者側と合意できる可能性があります

紛争処理センターは無料で利用できるので、裁判費用や弁護士費用などのを引かれずに、高額な賠償金を受け取ることができるでしょう。

メリット(3)審査結果は一部の任意保険会社に対して強制力がある

和解のあっ旋が不調で終わった場合は、紛争処理センターに審査を申し立てることが可能です。審査では、当事者双方の意見を聞いたあと、紛争処理センターから結論を示す裁定が行われます。

申立人が裁定の結果に同意した場合、任意保険会社は裁定の結果を尊重することになっているため、和解が成立することになります。

ただし、『国内・外国損害保険会社および共済組合』に掲載されている保険会社以外は、紛争処理センターを利用する前に相手方の同意が必要です。

なお、申立人が裁定の結果に同意しなかった場合、和解は不成立となり、その後は裁判で争うことになります。

デメリット(1)ケースによっては利用できない

紛争処理センターは、以下のようなケースでは利用できないため、注意が必要です。

  • 加害者が自動車ではない事故(バイクや原付は可能)
  • 被害者側の任意保険との保険金支払いに関する紛争
  • 後遺障害認定に関する紛争
  • 申立人が治療中の場合

上記のようなケースでは、被害者自身で示談交渉する、弁護士を立てる、裁判を起こすといった方法を取る必要があるでしょう。

デメリット(2)被害者に有利な結果にならないことがある

紛争処理センターはあくまで中立公正な立場なので、被害者側にとって不利な判断を下される可能性があります

そのような判断を下された場合、合意しないことも可能です。しかし、紛争処理センターの利用にかかった時間や手間は無駄になってしまうと言えるでしょう。

紛争処理センターを利用するときは、弁護士を立てる、裁判を起こすといった方法と入念に比較検討することをおすすめします。

(3)裁判を起こす|デメリットも多いので注意

交通事故で示談しないとき、民事裁判を起こすことを検討する被害者の方も多くいらっしゃいます。

交通事故で民事裁判を起こすメリット・デメリットは以下のとおりです。

裁判のメリット・デメリット

  • メリット
    • 加害者側と徹底的に争える
    • 弁護士費用の一部や遅延損害金を請求できる
    • 自賠責が認定した後遺障害等級にこだわらず損害額を算定できる
  • デメリット
    • 手続きが非常に煩雑
    • 敗訴のリスクがある
    • 結論が出るまで時間がかかる

上記からもわかるとおり、裁判にはデメリットも多いので注意が必要です。裁判を検討している場合は、事前に弁護士に相談し、主張が認められる可能性や他の解決方法を選ぶべきかについてアドバイスを受けることをおすすめします。

交通事故の民事裁判については、『交通事故の裁判の起こし方や流れ|費用・期間や裁判になるケースを解説』の記事が参考になりますので、あわせてお読みください。

ここからは、裁判のメリット・デメリットをくわしく見ていきます。

メリット(1)加害者側と徹底的に争える

示談交渉では、被害者側と加害者側のの主張の間で落としどころを決めるため、被害者側の主張する金額や過失割合が100%認められないこともあります。

一方、裁判の判決まで争えば、裁判官により双方の主張ならびに証拠が客観的に判断され、結論が出されます。被害者側の主張に沿う証拠があれば、被害者側の主張する金額がすべて認められる可能性もあるのです。

よって、徹底的に加害者側と争いたい場合は、裁判を検討してもよいでしょう。

ただし、同様のことは加害者側にもいえるため、裁判したからといって被害者側の主張が全面的に採用されるとは限りません。

メリット(2)弁護士費用の一部や遅延損害金を請求できる

交通事故で民事裁判を起こした場合、弁護士費用も損害の一部として認められます。

もっとも、請求できるのは実際にかかった費用の10%程度が目安となることや、敗訴した場合は請求できないことには注意が必要です。

また、裁判を起こせば、慰謝料などの損害項目に加えて、事故発生日を起点に年3%の遅延損害金も請求できます(※2020年4月1日よりも前に発生した交通事故の場合、年5%)。

遅延損害金とは、交通事故の損害賠償金の支払いが遅れたことへのある種の罰金として発生する金銭のことです。くわしく知りたい方は、『交通事故の遅延損害金|支払いを受けられるケースや計算方法は?』の記事をご参照ください。

なお、裁判で勝訴した場合、裁判費用を加害者側に負担してもらうことも可能です。裁判費用については、『交通事故裁判の費用相場は?加害者が払うもの?弁護士費用も相手に請求したい』の記事でくわしく解説しています。

メリット(3)後遺障害等級にこだわらず損害を算定できる

裁判前に認定されていた後遺障害等級に納得がいかなかった場合、裁判で主張することによって、認定された後遺障害等級の相場よりも高額な損害賠償金を認めてもらえる可能性があります。

ただ、基本的には裁判所も自賠責から認定された後遺障害等級を参考にするため、相場以上の損害賠償金を認めてもらうには緻密な準備が必要になるでしょう。

デメリット(1)手続きが非常に煩雑

裁判には、提起する際の書類の準備、口頭弁論の出席、本人尋問への出席など、非常に多くの手間がかかります。

加えて、勝訴しようとするならば、事前に緻密な準備が必要となります。被害者自身で裁判の手続きをこなし、望ましい結果を得るのは、きわめて困難と言えるでしょう。

デメリット(2)敗訴のリスクがある

裁判で争った結果、被害者側の主張が認められない可能性もあります。

交通事故の被害者だからといって、裁判官が被害者の味方になってくれるわけではありません。裁判官は当事者双方の主張を聞き、公正な立場から判断を下す役割を担っています。

そのため、自分の主張を認めてもらうには、しっかりと根拠立てて主張を述べたり、事実を客観的に裏付けるような証拠を提出しなくてはならないのです。

被害者自身で主張を立証するのは非常に難しいため、基本的には法律の専門家である弁護士を頼ることになるでしょう。

デメリット(3)結論が出るまで時間がかかる

裁判は結論が出るまで長い時間がかかります。たとえ弁護士に裁判の手続きを一任したとしても、半年~数年ほどの期間を要することがほとんどです。

示談交渉であれば、弁護士に一任した場合は数週間~数ヶ月程度で示談が成立するのが一般的なので、裁判を提起する際は長期戦になることを覚悟したほうがよいでしょう。

交通事故の裁判にかかる期間をくわしく知りたい場合は、『交通事故の裁判にかかる期間はどのくらい?』の記事がおすすめです。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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