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新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。
交通事故が起きてしまったら、まずは保険会社との示談による解決を目指しますが、示談による解決が叶わなかった場合、裁判を起こすことが考えられるでしょう。
しかし、裁判には「解決までに長い期間がかかる傾向にある」というデメリットもあります。
そこでこの記事では、裁判でどれくらいの期間がかかるのか、統計をもとに解説していきます。
あわせて、裁判の流れや、裁判を検討すべきケースについても紹介していくので、参考にしてみてください。
目次
交通事故の損害賠償を巡る訴訟で、審理が終了するまでにかかる平均期間は13.3ヶ月です(令和3年「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」より)。
もっとも、この期間は裁判期間中に両者の和解で終了した事案も含むため、判決の出た裁判に限定すると平均18ヶ月程度かかります。
加えて、訴訟は第一審で終わるとは限らず、控訴審・上告審と訴訟が展開していくと、さらに訴訟期間は長くなっていきます。
実際の期間の分布は、以下のようになっています。
平均審理期間 | 割合 |
---|---|
6月以内 | 16.7% |
6月超1年以内 | 39.1% |
1年超2年以内 | 36.7% |
2年超3年以内 | 6.0% |
3年超5年以内 | 1.4% |
5年を超える | 0.1% |
※ 「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」の【資料2-2-1】より
※ 令和2年に結審した事件の統計
およそ55.8%の裁判が1年以内に、92.5%の裁判が2年以内に終了していることがわかります。一方で、1.5%程度は3年以上かかってしまう紛争も存在します。
ただし、上記の統計は訴訟中に和解が成立したケースも含んでいます。
訴訟中に和解せず、判決まで進んだ場合の平均的な裁判期間は18.6ヶ月です。
「訴訟中の和解」とは?
原告側と被告側が、争いとなっている内容および裁判の終了について、裁判所の関与のもと合意すること。
訴訟中に和解が成立すれば、その後の尋問や判決は行われないため、その分裁判が早く終わる。
いずれにせよ、訴訟を起こすのであれば基本的には1年前後かかることを覚悟しなければなりません。
交通事故の裁判にはいくつかの段階があるので、次は各段階ごとにどれくらいの期間がかかるのか、見ていきましょう。
民事訴訟の段階 | 平均期間 |
---|---|
訴え提起~第1回口頭弁論 | 3.3ヶ月 |
第1回口頭弁論~人証調べ開始 | 12.7ヶ月 |
人証調べ開始~終了 | 0.2ヶ月 |
人証調べ終了~弁論終結 | 1.7ヶ月 |
弁論終結~判決 | 2.0ヶ月 |
※ 「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」の【資料2-1-2】より
※ 平均期間は和解で終了したものを含みません
特に、「口頭弁論から人証調べ」にかかる期間が長いことがわかります。
各段階がそれぞれどのようなものなのかは、次章で解説していくのでご確認ください。
ここまで紹介してきた裁判期間は、民事訴訟におけるものです。
裁判には民事裁判と刑事裁判がありますが、交通事故の損害賠償請求では民事裁判を行います。
民事訴訟とは、私人間の生活における紛争を解決するためのものです。
交通事故の損害賠償請求問題は被害者(損害賠償金の支払いを多くしたい側)と加害者側(損害賠償金の支払いを少なくしたい側)という私人間のものなので、民事裁判を通して解決します。
一方で検察官が交通事故を起こした加害者に懲役、罰金などの刑罰を求めるのが刑事訴訟です。
民事裁判はあくまでも損害賠償請求問題を扱うものであり、加害者の刑事罰とは切り離して考えられるので、混同しないよう注意してください。
交通事故の裁判における一般的な流れは、以下の通りです。
交通事故の訴訟は、裁判所に訴えを提訴する(訴状を提出する)ところから始まり、和解や判決が出ることにより終了します。
ここからは、弁護士を代理人として選任した場合の手続きの流れを詳しく解説していきます。
交通事故における民事裁判の基本的な流れや費用について詳しく知りたい方は『交通事故の裁判の起こし方や流れ|費用と期間はどのくらい必要?』の記事も参考になるかと思います。
裁判を行うことを示すためには、まず裁判所に訴状を提出します。訴状の枚数は被告(相手方)の数+1部です。被告が1名の場合、2部作製することになります。
訴状の形式は各裁判所のホームページでダウンロードでき、弁護士などに訴状作成を任せることも可能です。
弁護士に任せた場合、訴状作成にかかる期間は弁護士のスケジュールなどにもよりますが、おおよそ1ヶ月以内でしょう。
訴状が完成して裁判所に問題なく提出されると、それが相手方にも送付されます。
すると裁判の相手方は、訴状に対する反論をまとめた「答弁書」を作成します。
答弁書は、第一回口頭弁論期日までに被害者側に届くことが多いので、記載内容から相手方の言い分を確認しましょう。
訴訟に際しては、請求額に応じた「収入印紙代」と「切手代金」が必要です。
裁判所に訴えを起こす場合、そのぶんの手数料を収入印紙の購入という形で支払う必要があります。収入印紙の金額は、訴額に応じて以下のように定められています。
交通事故の民事訴訟にかかる印紙代
請求金額(訴額) | 収入印紙代 |
---|---|
~100万 | 10万円ごとに1,000円 |
~500万 | 20万円ごとに1,000円 |
~1000万 | 50万円ごとに2,000円 |
~10億 | 100万円ごとに3,000円 |
たとえば、請求額が500万円の場合、収入印紙は(1,000円×100万/10万)+(1,000円×400万円/20万)=30,000円となります。
実際に印紙代がいくらになるか知りたい場合は、裁判所ホームページの手数料額早見表を見てみてください。この手数料は上訴するときも発生し、控訴の場合は1.5倍、上告の場合は2倍の金額となります。
切手代金は、相手方に書類などを郵送するためのものです。
訴訟を行う場合、訴状を裁判所から当事者(原告・被告)に送る関係上、その際の郵便料を金銭または切手で支払うことも求められます。この切手代は予納郵便料といわれ、各裁判所で金額が異なります。
たとえば、東京地方裁判所の場合、当事者(原告・被告)がそれぞれ1名ずつの場合は6,000円、当事者が1名増すごとに2,000円ずつ加算されます。
予納郵便料(東京地方裁判所の場合)
金額 | |
---|---|
当事者(原告・被告)1名ずつ | 6,000円 |
当事者1名増すごとに加算 | 2,000円 |
当事者が同じ弁護士を雇っているなど、代理人が共通の場合は加算されません。
また、弁護士に依頼している場合は、弁護士費用もかかります。
こうした費用は、裁判で勝訴すれば、相手方に請求できます。
裁判の費用についてはこの記事の中でも解説しますが、『交通事故裁判の費用相場|裁判費用を加害者負担にできる?』でも解説しています。
民事訴訟は「AはBに〇〇万円払え」という判決(または和解)を求めるものです。
では、実際にはどれくらいの金額で訴訟が起こされているのか紹介します。
訴訟で請求されている金額 (訴額) | 割合 |
---|---|
~500万円以下 | 57.4% |
500万円超1000万円以下 | 12.8% |
1000万円超5000万円以下 | 21.7% |
5000万円超1億円以下 | 5.3% |
1億円超5億円以下 | 2.3% |
5億円超~算定不能 | 0.6% |
※ 「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」の【資料2-1-2】より
※ 令和2年に結審した事件の統計
請求金額が500万円以下の訴訟が最も多いですが、1000万円や1億円に至る訴訟もまったく珍しくはありません。
示談で1000万円単位の支払いが行われるのは非常にまれな例ですので、多額の賠償金が支払われうる紛争では、そのぶん訴訟を行う人が多い傾向があると言えるでしょう。
口頭弁論とは、当事者またはその代理人が法廷で、裁判官に主張を述べることです。この口頭弁論を繰り返して、互いの主張とその争点を明確にしていきます。
裁判において弁護士を立てている場合は、被害者自身が裁判に出席する必要はありません。
初回の口頭弁論は訴状や答弁書、証拠書類などの確認で完結し、5~10分で終わってしまうことも多いです。
交通事故の口頭弁論は平均で1.7回行われ、間隔は平均1.9ヶ月です。口頭弁論の最後に、次回口頭弁論の日程調整が行われます。
口頭弁論 | 平均 |
---|---|
平均口頭弁論期日回数 | 1.7回 |
平均期日間隔(月) | 1.9ヶ月 |
※ 「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」の【資料2-1-1】より
※ 令和2年に結審した事件の統計
口頭弁論を通して双方の主張や争点がはっきりしたら、次は口頭弁論の内容を踏まえ、双方が主張を客観的に裏付ける証拠を提出します。裁判所は提出された証拠の確認をし、場合によっては尋問を行います。
交通事故の裁判の場合、尋問は訴訟中に和解が成立せず、判決まで至るようなケースで行うことが多いです。
尋問が行われる期日の回数は平均で1.1回、平均的な尋問人数は0.4人です。
尋問の対象者は事故の被害者および加害者であることが多く、尋問されることになれば出廷しなければなりません。
それでは被害者が実際に尋問される場合の流れを見ていきましょう。
尋問は、あらかじめ作成・提出しておいた陳述書から主張の要点をかいつまみ、確認していくという作業です。
再主尋問、再反対尋問は当事者が望んだ場合に行われますが、時間が厳しく制限されているため、ごく短時間で収まるか実施しないこともあります。
また、当事者の尋問後に裁判官が適宜尋問をすることがあり、これを補充尋問と言います。補充尋問は裁判官の関心や心証を知る手がかりとなるため、答え方も重要です。
弁護士に依頼している場合、事前にこの主尋問の予行演習を行ってもらうよう相談するのがよいでしょう。
なお、反対尋問では主尋問での証言の信用性を揺さぶるような質問がなされます。弁護士と相談し、想定問答集を作成するなどして対策しましょう。
交通事故の民事訴訟の場合、裁判の途中で裁判官から和解を勧められることが多くあります。ここでの和解とは、裁判所の仲介のもと当事者双方が合意によって紛争を解決することです。
口頭弁論により互いの主張が十分になされ、争点整理が終了した時点で和解を勧告される案件が比較的多いようです。
実際に和解案の内容について話し合う際には、裁判所が仲介を行ってくれます。
裁判が終わる理由として代表的なものが、和解ならびに判決です。
実際の裁判がどのような理由で終えられているのかを示した表は、以下の通りです。
交通事故の民事裁判の終局原因 | 割合 |
---|---|
和解 | 73.1% |
判決 | 18.5% |
その他(訴えの取下げなど) | 8.4% |
※ 「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」の【資料2-1-2】より
※ 令和2年に結審した事件の統計
統計によれば交通事故の裁判のうち、判決という形で終えるよりも、途中で和解する案件の方がずっと多くなっていることがわかります。
一般的に、裁判官は判決よりも和解を好む傾向があります。
では、和解する場合と判決が下される場合について、もう少し詳しく解説しましょう。
和解は、裁判のどの時点でも行えます。和解が成立した時点で裁判は終了し、和解調書が作成されます。
この和解調書には判決と同じ強制執行力があり、相手方の資産などから損害賠償金を受け取ることができます。
和解に応じない場合、証人尋問ならびに当事者尋問が終了したあと、裁判所は原告・被告にそれぞれ最終準備書面を提出させます。
それにより弁論手続きは終了し、判決を言い渡す判決期日が指定されます。弁論手続きの終結から判決言い渡しまでの期間は平均2.0ヶ月です。
判決では、当事者間で争いのあった事項についての結論、賠償金額の決定が行われ、支払い命令が下されます。
一般的に、判決期日にも当事者は出頭しません。判決の言い渡しから数日後には代理人などのもとに判決正本が届くので、判決内容とその理由を確認できます。
訴訟が終了し判決または和解調書を得たのならば、一般的にはそれに従った額の支払いがなされます。
ただし、すべての相手方が命令通りに支払ってくれるとは限りません。
相手方が判決や和解調書で命じられた賠償金を支払わない場合は、強制執行を行います。
強制執行
相手が判決または和解内容に従わない場合、債権者の申立てに基づいて裁判所が強制的に債権者の権利(金銭の支払い)を実現させること
具体的には、相手方が所有している不動産や動産、債権を差し押さえて、そこから支払いを受けるのです。
なお、強制執行しても、以下の理由で万全な支払いを受けられないことがあります。
実際に金銭の回収が可能かどうかは、相手の収入や財産を事前に十分調査する必要があります。
判決に納得がいかない場合、判決正本を受け取ってから2週間以内なら、より上位の裁判所に上訴できます。交通事故の民事訴訟においては、判決に至ったうち41.8%が上訴したという統計があります。
1回目の上訴を控訴といい、控訴からさらに上訴することを上告と言います。
すでに紹介した通り、数こそ少ないものの3年、5年と長引いてしまう交通事故の裁判もあります。そのように期間が長引いてしまう訴訟には、いくつかの類型があるので紹介していきます。
交通事故での損害賠償金を最も大きく左右しうるのが、過失割合です。過失割合で争いがあると、裁判が長引く可能性があります。
過失割合とは何なのか、どんな時に過失割合で争いとなるのか、紹介します。
過失割合
不法行為(交通事故)で発生した損害に対して、当事者がそれぞれどの程度責任を負うかを割合で示したもの。
被害者側にも過失割合が付くと、その割合分、損害賠償金が減額される。
後ろからの追突など被害者側に一切非の無い交通事故もありますが、互いに交通事故に関してある程度責任を負っている場合も多くあります。
被害者側にも過失割合が付くとその分損害賠償金が減額されるので、過失割合は被害者側にとっても加害者側にとっても譲れないポイントです。
たとえば、加害者が被害者に与えた損害の金額が1000万円、過失割合が加害者:被害者=8:2だとしましょう。
この場合、被害者が実際に受け取れる金額は1000万円の2割減、つまり800万円になってしまいます。
特に損害賠償額が大きくなればなるほど、過失割合が1%違うだけで損害賠償金額への影響も大きくなります。
こうした事情から、過失割合が争いになることは多いのです。
過失割合は、事故状況をもとに算定されます。よって、事故が起こった状況について意見の食い違いがあると、争いになります。
具体的には、以下のような点が争点になることが多いです。
このように、交通事故当時の状況が争いとなると互いに引けず、訴訟が長引く可能性があります。事故状況は、車に搭載されているドライブレコーダーや事故現場周辺の防犯カメラ、警察が作成した実況見分調書、目撃者の証言などを通して証明していかなければなりません。
交通事故で治療を十分行っても治らない後遺障害が残った場合も、訴訟が長引く可能性があります。後遺障害があると損害賠償請求額が高額になりがちというのも理由の一端ですが、それだけではありません。
後遺障害が残ると、その症状によって将来的に生じる損害額を算定しなければならず、被害者側と加害者側で主張が食い違いやすいのです。
たとえば、顔に傷が残り被害者が大変傷ついているとしても、保険会社からは「その後の仕事に影響はないので、そのぶんの給与減少などは認めない」と主張される場合があります。
一方で、被害者ならびにその代理弁護士としては、顔の傷のため人前に出る仕事に支障が出て、生涯収入の減少も発生すると主張していきます。
本当に顔の傷が仕事や生涯収入に影響するのかは、裁判の段階では明確に判断しにくいところです。しかし、後遺障害によって生じる損害への補償額は裁判時点で決めてしまわなければなりません。
こうしたことから、後遺障害が残ると客観的に定められない事項についての争いが生じやすくなり、裁判が長引くのです。
後遺障害同様に、死亡事故の場合も損害賠償額が高額になりやすく、また遺族感情もあって互いに譲歩しづらい状況が生まれます。
また、交通事故当日ではなく事故から期間が空いて死亡した場合には、「交通事故のせいで死んだと言えるのか?」という点で争いになることもあります。
その場合、診断書や治療経過などの証拠品を用いて主張立証していくことになりますが、専門的分野の判断はむずかしく、証拠品も膨大になります。
結果、裁判が長引いてしまうことがよくあります。
鑑定とは、専門的知識と経験を持つ鑑定人に、判断や意見を求める手続きのことです。交通事故の裁判では、裁判所の指名により鑑定が実施されることがごくまれではあるものの、あります。
たとえば、被害者の怪我に関する医療的な鑑定、事故当時の衝撃を再現したり、ドライブレコーダーから再現CGを作成する鑑定などがあります。
鑑定が実施される裁判は年間数十件程度ですが、その場合、裁判にかかった平均期間は34.5ヶ月となります。これは、鑑定を実施しない場合の平均の2倍以上になります。
鑑定が必要となるほど、むずかしい専門的な分野で争っているため裁判が長引くことになります。
以下、実際に交通事故で裁判をするにあたり、被害者として十分な賠償を受けられるようになるためのちょっとしたポイントを解説します。
先に述べた通り、交通事故の民事訴訟の7割以上は和解で決着がつきます。
裁判を起こすに至ったほどなので到底和解など考えられない、というような場合でも、手続きの中で争点が整理されるにつれ和解が現実的になることもあります。
実際に判決を出すことに固執すると訴訟が長引き、また裁判官の心証の面でも不利にはたらく場合があります。
和解の可能性を最初から排除せず、その条件などを冷静に精査するようにしましょう。
交通事故の被害者は、民事訴訟を起こす際にあらかじめ弁護士費用を損害賠償金に追加して請求できます。ただし、弁護士費用として請求できるのは損害賠償額の10%程度にあたる金額です。
なお、弁護士費用を請求したい場合は、あらかじめその旨を訴状に記載しておかなければなりません。また、必ずしも満額認められるとは限らないので注意してください。
請求額によっては、実際に支払った弁護士費用に及ばないことも十分にありえますので、過信は禁物です。
裁判をするにあたり、弁護士に依頼すると弁護士費用が発生します。
弁護士費用は主に着手金・報酬金・実費に分かれ、着手金と報酬金については相手方への請求額などから決定されることが多いでしょう。弁護士費用の金額は各弁護士事務所によって異なりますので、可能であれば依頼する前に十分な見積もりと比較を行ってください。
また、訴訟に至った際には追加で着手金などを加算する事務所もありますので、見積もりの際は訴訟を考えているということも伝えるべきでしょう。
このように、弁護士に依頼するとなると、弁護士費用がどのくらいかかるのか気になり、依頼に踏み切れないという方も多いのではないでしょうか。
自動車保険や火災保険のオプションとして加入できる弁護士費用特約を利用すると、多くの場合300万円まで保険会社が代わりに支払ってくれます。
弁護士費用特約とは、保険の契約者やその家族、契約車に乗っている人などが交通事故に巻き込まれ、弁護士に解決の依頼を行うとき、その費用の補償を受けられる特約です。
実際に依頼に至らずとも、その前の相談料に関しても10万円まで補償を受けられます。
なお、保険会社によって支払いの範囲などは異なりますので、利用する前にご自身の保険会社に確認をとるのが有効です。
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交通事故に関する紛争で民事訴訟を起こすのは、期間や手続き、費用といった面で様々なハードルがあります。
結局のところ、それでも交通事故で裁判を提起することを考えるべきなのはどのような場合なのでしょうか。
交通事故による物・身体への損害に関する賠償金の請求は、いつまでもできるわけではありません。
原則として、損害および加害者を知った時から、物の損害に対する損害賠償請求権は3年・人身の損害に対する損害賠償請求権は5年経つと時効により消滅します。
ですが裁判を起こすことで、この時効の完成を阻止することができます。
たとえ時効の成立が迫っていても、訴訟を起こせば訴訟が終了するまで時効の進行がストップし(時効の完成猶予)、確定判決が出るとそれまでの時効の進行がリセットされ、新たなカウントが始まります(時効の更新)。
ですから、時効の完成を阻止する手段の一つとして訴訟は有効です。
また、時効の完成猶予の手段には他にも以下のようなものがあります。
債務の承認* | 時効の更新 |
訴訟の提起 | 訴訟終了まで時効の完成猶予 |
訴えの取下げ | 手続終了から6ヶ月が経過するまで時効の完成猶予 |
判決・和解・調停成立 | 時効の更新 |
調停の申立て | 調停終了まで時効の猶予 |
調停の不調 | 手続終了から6ヶ月が経過するまで時効の完成猶予 |
催告 | 催告から6ヶ月が経過するまで時効の完成猶予 |
裁判で認められる損害賠償金額は、「弁護士基準(裁判基準)」と呼ばれる算定基準にのっとったものとなっており、相手方任意保険会社の提示してくる金額よりも大幅に高額です。
裁判を起こさなくても示談交渉で弁護士を立てれば、弁護士基準の8~9割程度の金額を受け取れることが多いです。しかし、裁判なら弁護士基準の金額が満額認められる可能性があります。
そのため、交渉を重ねても示談で提示された金額に納得がいかないとき、さらなる増額を目指したいケースでは裁判が一つの選択肢となります。
また、判決により損害賠償金の支払いが認められると遅延損害金の請求も認められます。
これは、損害の発生(交通事故の発生)から損害賠償金の支払いが遅れたことによる利息のようなもので、通常示談した場合には支払われません。
ただし、裁判をしても和解で終了した場合は、遅延損害金を請求しない場合も多いようです。
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交通事故の遅延損害金|支払いを受けられるケースや計算方法は?
通常、交通事故に関する紛争の多くは当事者間の示談で解決されます。
しかし、加害者がそもそも話し合いに応じてくれなかったり、相手方保険会社が消極的であったりすると、必ずしも当事者間で満足のいく交渉が出来ない場合があります。
また、示談はあくまで当事者間の合意を目指すものであるため、どちらかが譲歩を拒むような場合には示談がずっと成立せず、被害者が不安定な立場に置かれることになります。
そのような時、裁判所という第三者による中立・客観的な結論をもらう方がよい場合もあります。
なお、相手方任意保険会社は基本的に裁判まで発展することを嫌がるので、示談交渉で弁護士を立てて裁判の可能性を示すと、相手方の態度が軟化する可能性があります。
実際に訴訟をするかどうかは、その後に決めても良いかもしれません。
示談の関連記事
示談が不成立となり、かつ訴訟以外の手段でも解決ができなかった場合は、自然と裁判が選択肢にあがります。しかし、示談が不成立になったあとの対処法には、ADR機関の利用や調停などもあります。
ADR機関や調停でも解決に至らない場合は、裁判を起こすことも検討してみましょう。
ADR機関・調停について、もう少し詳しく解説しておきます。
ADR機関とは、訴訟手続きによらず、民間の公正な第三者が関与し紛争解決の手助けをしてくれる機関です。
日本国内で交通事故を専門としている代表的なADR機関には、以下のものがあります。
ADR機関によっては機関の弁護士が当事者間に入り、示談(和解)の斡旋や事案の審査を行ってくれる場合があります。
なお、ADR機関はあくまでも中立の立場であるため、必ずしも被害者の望む通りの決着を目指してくれるとは限らないことには注意しなければなりません。
民事調停は裁判とは異なり、あくまでも裁判所が補助的に参加したうえで、当事者双方で解決を目指す手続きです。
具体的には、各当事者が別々に「調停委員会」と個別面談を行い、話を聞いた調停委員会が和解に向けた提案をしてくれます。
訴訟と異なり比較的早く柔軟な解決が見込める一方で、相手方が出頭するとは限らない点、証拠調べなど専門性が高い分野において慎重な調査がされるとは限らない点がデメリットです。
もしも納得ができない案が提示されたのであれば、調停を不成立とするべきです。
なお、民事調停が打ち切りに終わった場合(調停不成立)、それから2週間以内であれば調停段階で利用した収入印紙を裁判費用に流用することができます。
ですから、裁判を起こす前にまず相手方に民事調停を申し立ててみる、というのも十分とりうる方法です。
交通事故の相手方が任意保険会社に加入していないような場合、損害賠償金は相手方個人に直接請求しなければなりません。
しかし、相手方に支払い能力が無い場合、勝訴しても損害賠償金の回収は困難となります。
よって、裁判を起こすというよりも以下の対処法を検討する方が良い可能性があります。
加害者への感情だけで訴訟を起こしてしまうと、結果的に支払いは受けられず訴訟費用だけ無駄に支払ってしまうということになりかねません。
加害者が任意保険未加入である場合は、必ず事前に相手方の財産状況を確認しましょう。
交通事故で民事裁判を起こす場合、第一審においては98.4%以上の原告が訴訟代理人をつけています。この訴訟代理人には司法書士やその他一般人などが含まれますが、大多数が弁護士です。
本人で手続きを行う「本人訴訟」には弁護士費用がかからないというメリットがありますが、以下のようなデメリットもあります。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」「ネット削除依頼」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
英語:TOEIC925点
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