交通事故の保険金はいくら?慰謝料が支払われる流れと計算方法を全解説
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交通事故で怪我や損害を受けた場合、加害者側の任意保険会社などから保険金を受け取れます。
加害者側の任意保険会社から保険金を受け取るとき、注意しておきたいのは、本来の相場よりも低い金額を提示されることが多いということです。
そのため、被害者側も受け取るべき保険金の計算方法や内訳を把握しておき、適切な金額となるよう主張しなければなりません。
この記事では、交通事故の保険金の計算方法や増額のポイント、支払われるタイミングなどを解説しています。
交通事故の保険金を最大限に受け取るためにも、ぜひチェックしてみてください。
目次
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交通事故でもらえる保険金とは?
交通事故の保険金とは、保険会社から支払われる損害の補償のこと
交通事故の保険金とは、交通事故で負った損害の補償として保険会社から支払われる金銭のことです。具体的には、加害者側の保険会社から支払われる治療費、慰謝料、車の修理費などが挙げられます。
保険金の金額は損害の程度によって異なり、損害の軽重に応じて数万円程度~1億円以上になります。
交通事故が起こったときは、被害者自身が加入している保険会社からも保険金を支払ってもらえますが、大抵の場合は、加害者側の保険会社から支払われる保険金が多くの割合を占めることになります。
よって、この記事では、加害者側の保険会社から支払われる保険金を中心に解説します。
なお、被害者自身が加入している保険の利用については、『交通事故で使える保険の種類と請求の流れ』の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
交通事故の保険金の費目一覧
交通事故の保険金として加害者側の保険会社に請求できる費目は、以下のとおりです。
なお、状況によっては、以下の表に記載されている費目以外も請求できる場合があります。
治療費 | 怪我を治療するために必要となった費用 |
入通院付添費 | 被害者の入院や通院に付き添うことで生じる費用 |
入院雑費 | 入院中の日用品代や通信費用など |
通院交通費 | 通院する際に生じる交通費 |
休業損害 | 事故による休業で生じる減収に対する補償 |
入通院慰謝料 | 事故で怪我を負った精神的苦痛に対する慰謝料 |
物損の損害賠償金 | 車の修理費や代車費用など |
将来介護費 | 将来発生しうる介護のための費用 |
後遺障害逸失利益 | 後遺障害により減ってしまう将来の収入に対する補償 |
後遺障害慰謝料 | 後遺障害を負った精神的苦痛に対する補償 |
※人身事故(後遺障害なし)の費目もあわせて請求可能
葬祭費 | 通夜や葬儀、位牌などの費用 |
死亡逸失利益 | 死亡することで得られなくなった将来の収入に対する補償 |
死亡慰謝料 | 死亡した精神的苦痛に対する補償 |
※事故後に一定期間治療してから亡くなった場合、人身事故(後遺障害なし)の費目もあわせて請求可能
慰謝料は保険金の一部
交通事故の被害に遭ったとき、加害者側から受け取れる補償としては「慰謝料」がよく知られています。
「慰謝料=加害者から受け取れる補償のすべて」と誤って理解されていることも多いですが、実際は慰謝料は保険金の一部で、交通事故によって負った精神的苦痛に対する補償を指します。
「損害賠償金」「保険金」「示談金」「慰謝料」は、すべて同じ意味であると勘違いされることも多いです。改めて、交通事故の賠償におけるそれぞれの言葉の意味を整理しておきましょう。
- 損害賠償金
不法行為などによって損害を受けたとき、損害の補償として受け取る金銭のこと。
交通事故では、加害者側から事故の補償として受け取る金銭を指す。 - 保険金
自動車保険や生命保険などの各保険会社から支払われる金銭のこと。
交通事故において、加害者側の自賠責保険や任意保険から支払われる損害補償金も「保険金」に含まれる。 - 示談金
示談で決められた損害賠償金のこと。
交通事故では、加害者側の任意保険会社との示談で損害賠償金(保険金)が決まることが多い。
そのため、交通事故における「示談金」「損害賠償金」「加害者側の保険会社から受け取る保険金」は同じものを指している場合がある。
(示談金の関連記事:交通事故の示談金相場は?一覧表や増額のコツ) - 慰謝料
損害賠償金や保険金、示談金に含まれる費目のひとつ。
交通事故では、事故により被害者が負った精神的苦痛に対する補償を指す。
(慰謝料の関連記事:交通事故の慰謝料|相場や計算方法など疑問の総まとめ)
交通事故の保険金の一部は交渉で増額できる
上記の保険金を加害者側の保険会社に請求するときは、「示談」という当事者同士の話し合いで金額を決めることが多いでしょう。
示談では、通常は加害者側の保険会社が保険金を計算して提示してくれます。
しかし、加害者側の保険会社が提示する保険金は、相場より低額なことが多いです。
とくに、以下の費目は交渉により増額できるケースが多いでしょう。
増額できる可能性が高い費目
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
- 死亡慰謝料
- 入通院付添費
- 入院雑費
- 将来介護費
- 休業損害
- 逸失利益
加害者側の保険会社から保険金の提示があったときは、鵜呑みにするのではなく、どれくらい増額の余地があるのか確認することが大切です。
提示された保険金に増額の余地があるか知るためにも、これから紹介する計算機や、それぞれの費目の計算方法を確認してみてください。
また、加害者側の保険会社から提示された保険金を増額させるには、弁護士を立てることが1番の近道になります。
弁護士に相談すれば、加害者側の保険会社から提示された保険金がどれくらい増額されるかの見込みもわかります。各弁護士事務所が実施している無料法律相談を利用し、増額の見込みを確認してみるのもよいでしょう。
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交通事故の保険金はいくらもらえる?
保険金の金額がすぐわかる!簡単計算機
保険金の一部の費目は、被害者の年齢や年収、入通院期間、認定された後遺障害等級などで金額が決まります。よって、保険金の計算にはやや手間がかかります。
以下の計算機を使えば、ご自身のケースで加害者側の保険会社からもらえる保険金がいくらか、10秒で簡単に計算できます。
年齢や入通院期間などを入力するだけで保険金の目安がわかるので、ぜひご利用ください。
なお、まだ入通院期間や後遺障害等級が確定していない方は、『交通事故の慰謝料相場|症状別の相場金額を網羅!慰謝料増額事例3選』の記事をお役立てください。
交通事故で負った怪我ごとに保険金の相場を紹介しています。
交通事故の保険金の計算方法と増額のポイント
前提知識|保険会社の基準で保険金を計算してはいけない
次に、交通事故の保険金のうち、とくに増額の幅が大きな慰謝料などの費目について、計算方法と増額のポイントを紹介していきます。
加害者側の保険会社から支払われる保険金の計算方法を確認するにあたって、前提として知っておきたいのは、「保険会社の基準で保険金を計算してはいけない」ということです。
加害者側の保険会社から受け取れる保険金には、以下のとおり3つの算定基準があります。
自賠責基準 | 加害者側の自賠責保険会社が用いる基準。 交通事故の被害者に補償される最低限の金額がわかる。 |
任意保険基準 | 加害者側の任意保険会社が用いる基準。 自賠責基準とほぼ同程度か、自賠責基準よりやや高額な程度。 |
弁護士基準 | 弁護士や裁判所が用いる基準。 過去の判例にもとづいており、3つの基準の中で最も高額。 |
示談交渉で加害者側の任意保険会社が提示するのは、任意保険基準で計算した金額です。
この金額は、弁護士基準で計算し直すと、2倍~3倍に増額される可能性があります。
よって、保険金を加害者側の保険会社に請求する際は、弁護士基準で計算した金額を支払うよう、加害者側に主張することが大切になります。
次節からは、慰謝料などの各費目について、自賠責基準と弁護士基準の計算方法を紹介していきます。
なお、任意保険基準は各保険会社によって異なるうえ、公開されていないので、ここでは割愛します。任意保険基準で計算した金額は、自賠責基準とほぼ同程度~やや高額な程度となると考えてください。
(1)入通院慰謝料
入通院慰謝料は、交通事故によってケガをした精神的苦痛に対する補償です。
入通院慰謝料の金額は、治療期間に応じて決まります。
自賠責基準と弁護士基準の入通院慰謝料の計算方法を比較してみましょう。
自賠責基準と弁護士基準では、慰謝料の金額が大きく異なります。
自賠責基準に近い低額な慰謝料を提示された場合は、弁護士を立て、弁護士基準で計算した慰謝料の獲得を目指しましょう。
自賠責基準の入通院慰謝料の計算方法
自賠責基準では、以下の計算式を用いて入通院慰謝料を計算します。
自賠責基準の入通院慰謝料の計算式
日額4,300円※ × 対象日数
対象日数は、次のうちいずれか短い方
- 治療期間
- 実際に治療した日数 × 2
※2020年3月31日以前に発生した交通事故の場合、日額4,200円で計算。
弁護士基準の入通院慰謝料の計算方法
弁護士基準では、以下の2種類の算定表をもとに入通院慰謝料を算定します。
表の使い方
- 入院月数と通院月数の交わる箇所が入通院慰謝料の相場となる。
- 月数は暦にかかわらず「1月=30日」とする。
- 通院期間が45日など、30日で割り切れない場合は、日割り計算を行う。
たとえば、交通事故で骨折して通院3ヶ月(90日)、入院期間なしの場合、弁護士基準では730,000円の入通院慰謝料が支払われます。
一方、自賠責基準では、最大でも4,300円×90日=387,000円にしかなりません。
上記のように、弁護士基準と自賠責基準では慰謝料の金額に大きな違いが生じます。
なお、3ヶ月通院した場合の慰謝料額については『交通事故で3ヶ月(90日)通院|慰謝料はいくら?計算方法やむちうちの相場』でより詳しく解説しているので、あわせてご確認ください。
入通院慰謝料の増額のポイント
弁護士基準における入通院慰謝料は上記の表に従って算定されますが、治療内容や治療頻度によっては、上記の表よりも低額になることがあります。
たとえば、通院が約1年以上にわたる場合は、症状や治療内容、通院頻度などを踏まえて、実際に通院した日数×3.5日(重傷の場合は×3日)を通院期間の目安とすることがあるでしょう。
また、必要性の低い通院を続けていると、その期間分の慰謝料は認められない可能性があります。
上記のような状況を避けたいのであれば、医師の指示にしたがい、完治か症状固定と判断されるまで治療を続けるようにしましょう。
なお、通院回数は、3日に1回程度が望ましいとされています。
上記の頻度を目安に、医師と相談しながら治療を続けるとよいでしょう。
(2)後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、交通事故で後遺障害が残った精神的苦痛に対する補償です。
交通事故で後遺症が残った場合、後遺障害等級に認定されれば、等級に応じた後遺障害慰謝料が請求できるようになります。
後遺障害等級とは?
病気や怪我が症状固定となったあと、残っている症状の程度が自賠責保険の等級に認定されること
自賠責基準と弁護士基準における後遺障害慰謝料の相場
後遺障害慰謝料は、以下のように相場が定められています。
等級 | 自賠責基準※ | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級・要介護 | 1,650 (1,600) | 2,800 |
2級・要介護 | 1,203 (1,163) | 2,370 |
1級 | 1,150 (1,100) | 2,800 |
2級 | 998 (958) | 2,370 |
3級 | 861 (829) | 1,990 |
4級 | 737 (712) | 1,670 |
5級 | 618 (599) | 1,400 |
6級 | 512 (498) | 1,180 |
7級 | 419 (409) | 1,000 |
8級 | 331 (324) | 830 |
9級 | 249 (245) | 690 |
10級 | 190 (187) | 550 |
11級 | 136 (135) | 420 |
12級 | 94 (93) | 290 |
13級 | 57 (57) | 180 |
14級 | 32 (32) | 110 |
単位:万円
※()内は2020年3月31日以前に発生した交通事故に適用
後遺障害慰謝料も、自賠責基準と弁護士基準で大きく金額が異なります。
同じ後遺障害等級でも、算定基準によって金額が1,000万円以上異なることもあるのです。
後遺障害慰謝料の増額のポイント
後遺障害慰謝料を増額させるためには、適切な後遺障害等級に認定されることが重要です。
たとえば、「手首が曲がりにくくなった」という症状では、健常な可動域と比べて4分の3以下しか可動しない場合は12級、2分の1以下しか可動しない場合は10級といったように、細かく基準が決められています。
しかし、等級認定の審査機関に後遺症の程度が正確に伝わらないと、本来ならば10級に認定されるべきなのに、12級に認定されてしまう可能性があります。
適切な等級に認定されることが、後遺障害慰謝料を増額させるポイントなのです。
後遺障害等級認定の審査は基本的に書面で行われます。
よって、後遺障害診断書の内容や各種検査結果の添付が非常に重要になります。
後遺障害等級認定の審査については、交通事故に精通した弁護士が深い知識を持っています。
後遺障害等級認定を受けるときは、弁護士に相談しつつ審査の準備をするとよいでしょう。
以下の関連記事では、後遺障害等級認定の申請手続きやポイントがまとめられています。参考にしてみてください。
後遺障害等級認定の関連記事
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(3)死亡慰謝料
死亡慰謝料は、交通事故によって亡くなった精神的苦痛に対する補償です。
なお、死亡慰謝料は被害者本人分の他に、被害者の遺族分も請求できます。
死亡慰謝料は、遺族の人数や被害者の立場によって金額が異なります。
自賠責基準と弁護士基準の死亡慰謝料の計算方法や相場をそれぞれ確認してみましょう。
自賠責基準の死亡慰謝料の計算方法
自賠責基準では、被害者本人分に遺族の人数や扶養の有無に応じて加算する形で死亡慰謝料を計算します。
慰謝料の金額 | |
---|---|
被害者本人分 | 400万円(350万円)※ |
遺族が1名※※ | +550万円 |
遺族が2名 | +650万円 |
遺族が3名以上 | +750万円 |
被害者に被扶養者がいるとき | さらに+200万円 |
※()内は2020年3月31日以前に発生した事故の場合
※※遺族とは被害者の父母、配偶者および子を指す。
弁護士基準の死亡慰謝料の相場
弁護士基準では、被害者の家庭内での立場によって、死亡慰謝料の相場が異なります。
なお、以下の相場は被害者本人分の慰謝料と被害者の遺族分の慰謝料をあわせた金額です。
被害者の立場 | 慰謝料の金額 |
---|---|
一家の支柱である場合 | 2,800万円 |
母親や配偶者の場合 | 2,500万円 |
その他 | 2,000万円~2,500万円 |
死亡慰謝料の相場は、自賠責保険で計算すると最高でも1,350万円にとどまります。
一方、弁護士基準で計算すると最低でも2,000万円となります。
死亡慰謝料の増額のポイント
死亡慰謝料は、以下のような場合に増額が認められる可能性があります。
- 遺族が精神疾患を患った場合
- 事故様態がことさらに酷いものである場合
- 結婚の前後に事故に遭うなど、被害者の無念がことさらに大きいと考えられる場合
ただし、死亡慰謝料の増額が認められるか、どの程度の増額が認められるかは、示談交渉や裁判次第です。
死亡慰謝料の増額を目指すのであれば、交通事故に精通した弁護士に一度相談してみることをおすすめします。
死亡慰謝料については、詳しくは『死亡事故の慰謝料相場は?被害者の死亡で遺族が請求すべき損害賠償金』の記事でも解説しているので、参考にしてみてください。
(4)その他の5つの費目
慰謝料以外の費目も、交渉によって増額される可能性があります。
ここからは、以下の5つの費目の増額のポイントを解説します。
- 入通院付添費
- 入院雑費
- 将来介護費
- 休業損害
- 逸失利益
(1)入通院付添費|弁護士基準の方が約1.5倍高額
たとえば、交通事故の被害者が子供であった場合、足を怪我して移動が難しい場合では、治療に家族などの付添人が必要となる場合があります。
付添看護費とは、このような付添人に対する手当です。
付添看護費も、弁護士基準で計算することによって、増額することが可能です。
自賠責基準と弁護士基準の相場を確認してみましょう。
自賠責基準※ | 弁護士基準 | |
---|---|---|
入院付添費 | 1日あたり4,200円 | 近親者の場合、1日あたり6,500円 職業付添人の場合は実費 |
通院付添費 または 自宅看護費 | 1日あたり2,100円 | 1日あたり3,300円 |
※自賠責基準は2020年4月1日以降に発生した交通事故の金額
入通院付添費は、弁護士基準で計算すると自賠責基準のおよそ1.5倍となります。
付添費用に関して詳しく知りたい方は『交通事故の付添費|付き添いに認められる範囲と相場は?慰謝料との違いも解説』の記事をご覧ください。
(2)入院雑費|弁護士基準の方が日額が高い
交通事故の影響で入院する場合、入院期間中の日用雑貨品や通信費、新聞雑誌代など、細かな雑費がかかります。
このような入院雑費は、実際に支出した額ではなく、一定の日額から計算されます。自賠責基準と弁護士基準の日額は、以下の通りです。
自賠責基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|
入院雑費 | 1日あたり1,100円 | 1日あたり1,500円 |
入院雑費においても、自賠責基準と弁護士基準で金額の差があるのです。
入院雑費として提示された金額が弁護士基準の相場よりも少ない場合は、増額を交渉してみましょう。
(3)将来介護費|請求の可否でもめることが多い
交通事故により被害者に重篤な後遺障害が残ったとき、将来的にわたって介護を受ける必要性が生じる場合があります。
そのようなときは、将来必要になる介護費用を請求できます。
将来介護費は、自賠責基準では請求できる費目に含まれていません。
将来介護費の請求が行えるケースでは、弁護士基準にもとづいて金額を計算しましょう。
将来介護費 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
近親者の介護 | 定めなし | 1日あたり8,000円 |
職業付添人の介護 | 定めなし | 1日あたり12,000円~20,000円 |
ただし、常時介護の必要がなく、随時介護で事足りる場合は、上記よりも低い金額で将来介護費が認定されることがあります。
また、将来介護費は、後遺障害の症状や程度、介護体制などさまざまな要素によって金額が変わります。また、将来介護費の必要性をめぐって加害者側と争いになることも少なくありません。
将来介護費が請求できる具体的な条件や、将来介護費の金額の考え方については、『交通事故で介護費用が請求できる2ケース』で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
休業損害|基礎収入が少なく見積もられることがある
休業損害は、事故のために休業したことによる収入の減少に対する補償です。
休業損害の金額は、1日あたりの基礎収入×休業日数で計算されます。
自賠責基準では、基礎収入は6,100円と設定されています。
なお、2020年3月31日以前に発生した交通事故の場合、基礎収入は5,700円になります。
一方、弁護士基準では、基礎収入は被害者の職業や属性などによって異なります。
たとえば、給与所得者の場合は、「事故前3か月間の収入÷実労働日数」で計算されることが多いでしょう。
加害者側の任意保険会社は、基礎収入を少なく見積もってくることが多いです。たとえば、自賠責基準と同じ6,100円としたり、事故前3か月間の収入を実労働日数ではなく90日で割ったりするなどが考えられます。
よって、休業損害は、基礎収入を適切な金額にすることが増額のポイントとなります。
関連記事では、休業損害の計算方法や請求の流れを解説しています。給与所得者だけではなく、主婦や自営業といった場合の休業損害の計算方法もわかるので、あわせてご確認ください。
後遺障害逸失利益|労働能力への影響がポイント
逸失利益は、交通事で労働能力を失ったため将来にわたって減る収入に対する補償です。
逸失利益は、以下の計算式で計算されます。
逸失利益の計算式
- 後遺障害逸失利益
- 基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
- 死亡逸失利益
- 基礎収入×(1-生活費控除率)×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
加害者側の保険会社は、労働能力喪失率や労働能力喪失期間を少なく見積もることで、逸失利益の金額を下げようとすることがあります。
- 労働能力喪失率
後遺障害により、どれくらいの労働能力が失われたかを示す割合。
後遺障害等級に応じて目安が決められている。 - 労働能力喪失期間
後遺障害により労働能力が低下したまま働く年数。
基本的には、後遺症が残ったと判断される「症状固定」時から67歳までの期間とされる。
労働能力喪失率と労働能力喪失期間を適切に計算することが、後遺障害逸失利益を増額させるポイントとなるでしょう。
逸失利益の計算方法については、『【逸失利益の計算】職業別の計算例や早見表・計算機つき|もらえない原因と対処法』の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
交通事故の保険金はいつ支払われる?
保険金が支払われるのは「示談成立から約2週間後」
加害者側の保険会社からの保険金は、示談成立から約2週間後に支払われます。
加害者側の保険会社からの保険金は、基本的にすべての損害賠償の金額が確定してから支払われることになります。
加害者側の保険会社からの保険金の金額は、示談によって決まることが多いです。
よって、基本的に示談成立後に保険金が支払われると考えておきましょう。
示談成立までにかかる期間は?
示談交渉は、交通事故で負った怪我の治療や後遺障害等級の認定が終わってから開始されます。
そのため、保険金を受け取るまでにかかる期間は、治療期間、後遺障害等級認定の審査期間、交渉期間を足した期間になります。
治療期間は交通事故で負った怪我の程度によって異なりますが、短いものでは1ヶ月程度、後遺障害等級認定を目指すなら最低でも6ヶ月程度となるでしょう。
後遺障害等級認定の審査期間は、7割以上のケースで30日以内となっています。ただし、高次脳機能障害など一部の症状では、審査に数ヶ月から数年を要することもあります。
交渉期間は、当事者間に争いのない軽微な事故であれば1ヶ月程度ですが、当事者間に対立がある事故や被害が大きな事故では半年以上かかることもあるでしょう。
交通事故の種類別に示談にかかる期間を解説した記事『交通事故の示談にかかる期間の目安は?早く終わらせたいときの対処法』もあわせてご参考ください。
保険金が支払われるまでの流れ
交通事故の発生から、加害者側の保険会社から保険金が支払われるまでの流れは、以下のとおりです。
- 交通事故が発生する。
- 負傷者の救護や警察への通報など、事故直後の対応をする。
このとき、保険会社への連絡を忘れずに行う。 - ケガの治療を行う。(完治したら示談交渉に進む。)
- ケガが治らず症状固定となったら、後遺障害等級認定の申請をする。
- 加害者側の保険会社と示談交渉をする。
- 示談成立となれば、約2週間後に保険金が支払われる。
- 示談不成立であれば、裁判やADRなどで解決を目指す。
交通事故の解決までの流れについては、『交通事故の発生から解決までの流れ』の記事もお役立ていただけます。各段階ですべきことや注意すべきことについてお伝えしていますので、ぜひご確認ください。
保険金の支払いを早めたいときは?
先述のとおり、加害者側の保険会社から支払われる保険金は、基本的に示談成立後に受け取ることになります。
ただし、治療費や休業損害は、治療や休業と並行して受け取れる場合も多いです。
とくに治療費については、加害者側の任意保険会社から病院に直接支払ってもらえることが多いでしょう。これを「任意一括対応」と言います。
また、「被害者請求」という手続きを行えば、治療費・休業損害・入通院慰謝料などについて、示談成立前に受け取ることができます。
被害者請求の仕組みや手続きの方法については、『交通事故の被害者請求とは?』の記事をご確認ください。
交通事故の保険金にまつわる疑問3つ
Q1.保険金に税金はかかる?確定申告は必要?
原則として、交通事故の保険金は非課税であり、確定申告の必要もありません。
所得税や相続税は、得られた利益に対して課せられるものです。
しかし、交通事故の保険金は「交通事故で生じた損害を補償する」という性質のものであり、新たに財産が増えるという性質のものではないため、非課税となるのです。
ただし、以下のような保険金は、損害の賠償ではなく利益としての性質が強いと推定され、課税対象となることがあります。
- 損害に対して著しく高額な保険金
- 被害者自身の保険会社から受け取る保険金のうち、被害者の過失割合部分
相続した保険金には税金がかかる?
死亡事故が起こった場合、被害者に支払われる保険は遺族が相続することになります。この場合は、基本的に相続税はかかりません。
しかし、被害者側と加害者側との間で示談が成立したあと、被害者が保険金を受け取る前に亡くなってしまった場合は、相続税が生じるので注意しましょう。
重い後遺障害が残るような交通事故の交渉は長引きやすいため、残念ながら交渉の途中で被害者が亡くなってしまうこともあります。交渉の長期化を避けるためにも、法律の専門家である弁護士に手続きを任せることをおすすめします。
交通事故の保険金と税金の関係については、『交通事故の慰謝料に税金がかかるケース|いくらまで非課税?税金別に解説』の記事が参考になりますので、あわせてご覧ください。
Q2.保険金が減額されるケースは?
交通事故の保険金は、損益相殺により減額されるケースがあります。
損益相殺とは?
損害を受けた者が同一の事由で利益を得ている場合、損害賠償額から利益分を差し引く処理のこと
たとえば、交通事故により怪我をして損害を負ったため、国民年金から障害基礎年金を受け取る場合を考えてみましょう。このとき、被害者は保険金と年金の二重の補償を受け取ることになります。
このような場合は、損益相殺として、保険金から受け取った年金分の金額が差し引かれることになるでしょう。
損益相殺として保険金から差し引かれる可能性があるのは、主に以下のものです。
- 自賠責保険から受け取った自賠責保険金
- 各種社会保険の給付
- 被害者側が加入している保険会社から支払われた保険金
なお、以下のものは損益相殺の対象とならないことが多いです。必ずしも保険金と同一の事由で利益を得ているとは言えないためです。
- 加害者から受け取った一般的な見舞金や香典
- 生命保険金
- 労災保険の特別支給金
- 一部の公的給付
Q3.保険金詐欺を疑われるケースは?
以下のようなケースでは、保険会社に保険金詐欺・保険金の不正請求を疑われる可能性があります。
- 保険金を増やすため、必要以上に通院回数を増やした
- 保険金を増やすため、必要以上に治療期間を長引かせた
- 保険金を増やすため、必要以上に高額な治療を受けた
治療期間や治療内容が「必要以上」であるかどうかは、基本的に医師の判断によります。
医師の指示にしたがって治療していたのであれば、保険金詐欺を疑われるようなことは基本的にないでしょう。
なお、交通事故の直後に自覚症状がない場合、「痛くないのに通院すると保険金詐欺を疑われてしまうかもしれない」と悩むこともあるかもしれません。
このような場合は、あとから痛みが出てきたときのために、痛くなくても通院しておくことを強くおすすめします。
関連記事『交通事故で痛くないのに通院して検査を受けてもいい?不正請求を疑われないポイント』では、痛くないのに通院する際のポイントなども紹介しています。ぜひあわせてご一読ください。
交通事故の保険金を増額させたいなら弁護士に相談
増額事例(1)むちうちの保険金が2倍になったケース
ここで、アトム法律事務所が実際に受任した事例から、加害者側の保険会社からの保険金が増額されたものを厳選してご紹介します。
傷病 | むちうち |
後遺障害等級 | 14級 |
加害者側が提示した金額 | 145万円 |
最終的に回収した金額 | 300万円 (155万円の増額) |
上記の事例は、弁護士にご相談いただいた時点で、すでに後遺障害14級に認定されていたものです。
弁護士が交渉した結果、わずか2ヶ月で保険金を2倍以上に増額させることができました。
加害者側の保険会社から提示された金額に増額の余地があることは少なくありません。
提示された金額を無条件に受け入れるのではなく、無料相談などで弁護士に適切な金額を確認することをおすすめします。
増額事例(2)骨折の保険金が1,000万円超になったケース
傷病 | 右足首内踝骨折 右足首外踝骨折 |
後遺障害等級 | 12級 |
加害者側が提示した金額 | 369万円 |
最終的に回収した金額 | 1,063万円 (694万円の増額) |
上記の事例では、加害者側の保険会社が提示した保険金のうち、逸失利益に大幅な増額の余地がありました。
加害者側の保険会社は、当初は労働能力喪失期間を5年として保険金を計算していたのです。
弁護士が交渉した結果、労働能力喪失期間をおよそ30年とすることが認められ、保険金は最終的に2.9倍の1,063万円に増額されました。
弁護士を立てると保険金が増額されやすい理由
被害者本人が保険金の増額を主張しても、加害者側の保険会社が十分に聞き入れてくれることは少ないです。
任意保険会社の担当者は、示談交渉の知識も経験も豊富で、どのくらいなら被害者は条件をのむかという感覚を持っています。
また、被害者本人が適切な保険金の相場を提示しても、「今回の事案では難しい」「これが上限」などと反論してくるでしょう。
しかし、弁護士に示談交渉を依頼することで、保険金が増額される可能性は大きく上がります。その理由は以下の通りです。
- 弁護士は法律の専門知識と実務経験を持っており、保険会社の担当者に対応できるから
- 被害者側が弁護士を立てると、加害者側は裁判になることを恐れ、態度を軟化させるから
よって、加害者側と示談交渉をするときは、弁護士に依頼することが非常に重要なのです。
弁護士に依頼するメリットは、保険金の増額が目指せることだけではありません。
示談交渉がスムーズに進むことで保険金を早く受け取ったり、示談交渉以外の手続きを任せたりできることも大きなメリットです。
弁護士に依頼するメリットについては、『交通事故を弁護士に依頼するメリット8選|弁護士は何をしてくれる?』の記事でも詳しく解説しているので、ぜひ1度ご確認ください。
弁護士費用は保険のオプションを使えば大幅に節約できる
「弁護士を立てたため弁護士費用がかかり、逆に損をするのでは」と不安な方には、「弁護士費用特約」という保険のオプションの利用をおすすめします。
弁護士費用特約とは、被害者自身が加入している保険会社が弁護士費用を負担してくれるオプションのことです。
多くの場合、弁護士費用の合計300万円まで、相談料の合計10万円までを保険会社が負担してくれます。
弁護士費用が合計300万円をこえるのは、保険金が数千万円を超えるようなケースです。
よって、弁護士費用特約を使えば、多くのケースで自己負担なしで弁護士に依頼できると言えます。
弁護士費用特約は、自動車保険の他に、火災保険やクレジットカードなどにもオプションとして付帯されていることがあります。
また、被害者自身が加入している保険だけではなく、被害者の家族が加入している保険に付帯されている場合も利用できる可能性があります。
なお、弁護士費用特約を使うことで、保険料が上がることは基本的にありません。
弁護士への依頼を迷っている方は、保険の契約状況を確認し、弁護士費用特約が利用できないか確認してみるとよいでしょう。
弁護士費用特約については、『交通事故の弁護士費用特約を解説|使い方は?メリットや使ってみた感想も紹介』の記事でさらに詳しく解説しています。
まずは電話・LINE無料相談で増額の見込みを確認しよう
アトム法律事務所では、交通事故の被害者に向けて、電話・LINEによる無料法律相談を実施しています。
ご自宅にいながらスキマ時間に相談できるのが、アトム法律事務所の特徴です。
加害者側から提示された保険金が増額されるか知りたいときは、ぜひ気軽にご相談ください。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
加害者側の任意保険会社から保険金を提示されたら、請求できるはずの費目がきちんと含まれているか確かめましょう。
請求できるはずなのに「その費目は支払えない」と言われたときは、鵜吞みにするのではなく、弁護士に妥当性を確認してみてください。