交通事故の慰謝料相場|症状別の相場金額を網羅!慰謝料増額事例3選

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交通事故の慰謝料相場は、事故の状況、被害の状況などによってさまざまですが、ひとつ共通していえることがあります。
それは、相手方任意保険会社から提示された慰謝料金額は、本来被害者の方がもらうべき金額よりも低いということです。

適切な慰謝料額を得るには、そもそも正しい慰謝料相場はどれくらいなのか把握しておかなければなりません。
この記事では、3つある慰謝料相場やケガの症状別の慰謝料相場、慰謝料相場を高めるためのポイントを解説しています。
参考にしてみてください。

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【前提】交通事故慰謝料とは?相場は3種類ある

交通事故慰謝料は精神的苦痛を補償するもの

慰謝料とは「精神的な苦痛に対する賠償金」であり、交通事故の場合は3種類あります。
それが、傷害慰謝料と後遺障害慰謝料と死亡慰謝料です。

交通事故の慰謝料

  • 傷害慰謝料
    ケガやケガの治療によって生じる精神的な苦痛に対する賠償金。入通院慰謝料ともいう。
  • 後遺障害慰謝料
    交通事故により後遺障害が残ったことで生じる精神的苦痛に対する賠償金。
    ※後遺障害とは、後遺症のうち後遺障害等級が認定されたものをいう。
  • 死亡慰謝料
    交通事故で死亡した被害者と、その遺族の精神的苦痛に対する賠償金。

交通事故の慰謝料はいずれも人身事故の場合に受けとれる費目です。物損事故では、慰謝料は原則として発生しません。
物損事故でも以下のように裁判で慰謝料が認められた事例はありますが、あくまでも例外的なケースだと考えてください。

  • 愛犬が事故によって死亡した事例
  • 車が玄関に突っ込み、1か月にわたりベニヤ板を打ち付けただけの状態で過ごさざるを得なくなった事例
  • 事故による墓石の倒壊で骨壺が外部に露出した事例

なお、慰謝料は交通事故で請求できる賠償金の一部です。
その他にも、交通事故の影響で仕事を休まざるを得なくなったときの補償(休業損害)や、入通院の雑費や交通費など請求できる費目はあります。

関連記事『交通事故|人身事故の賠償金相場と計算方法!物損事故との違いは何?』では、慰謝料以外の賠償金についても詳しく解説しているので、確認してみてください。

後遺障害慰謝料の請求には、後遺障害等級が必要

後遺障害慰謝料の請求をするには、後遺障害等級の認定を受ける必要があります。
たとえ後遺症が残っても、後遺障害等級が認定されなければ後遺障害慰謝料はもらえないので注意しましょう。

後遺障害等級認定の申請方法ついて知りたい方は、『交通事故の後遺障害とは?認定されたらどうなる?認定の仕組みと認定率の上げ方』をご確認ください。
後遺障害に該当する症状については、『【後遺障害等級表】症状別の等級や認定基準』でも解説しています。

後遺障害等級が認定されると逸失利益も請求できる

後遺障害に認定されたときは、後遺障害慰謝料の他に逸失利益も請求できるようになります。
逸失利益は、後遺障害の影響で減ってしまうと考えられる、将来的な経済的利益に対する賠償金です。

後遺障害を負うと、業務に支障が生じ給料が下がったり、昇進の機会が失われることが予想されます。
その失われた利益に対する賠償金が、逸失利益なのです。

逸失利益

逸失利益は非常に高額になりやすいので、慰謝料と同じく非常に重要な項目です。
また、逸失利益は専業主婦やまだ働いていない学生も請求できます。
逸失利益についてさらにくわしく知りたい方は、関連記事『【逸失利益の計算】職業別の計算例や早見表・計算機つき|もらえない原因と対処法』をご覧ください。

交通事故慰謝料の相場は3種類ある

実は、交通事故の慰謝料には3つの相場があります。
相場が3つもあるのは、慰謝料の計算者によって用いる算定基準が違うからです。

交通事故の3つの算定基準

自賠責基準相手方自賠責保険会社が慰謝料算定で用いる基準。
最低限の慰謝料相場がわかる。
任意保険基準相手方任意保険会社が慰謝料算定で用いる基準。
示談交渉で提示される慰謝料相場がわかる。
なお、任意保険基準での計算方法は各社で異なり非公開。
弁護士基準弁護士や裁判所が慰謝料算定で用いる基準。
過去の判例に基づく慰謝料相場がわかる。

自賠責基準は、相手方自賠責保険会社が用いる慰謝料の算定基準です
自賠責保険は交通事故被害者に最低限の補償をする保険なので、自賠責基準で算出される慰謝料額も、最低限のものとなっています。

任意保険基準は、相手方任意保険会社が用いる慰謝料の算定基準です。
任意保険基準での計算方法は各社が独自に定めていて非公開ですが、自賠責基準と同等か、少し高額な程度といわれています。
示談交渉では、相手方からこの任意保険基準の金額が提示されるでしょう。

弁護士基準とは、弁護士や裁判所が用いる慰謝料の算定基準です。
弁護士基準は過去の判例などに基づいて設定されているので、3基準の中でもっとも高額かつ法的に正当な相場額がわかります。

弁護士基準による計算方法は、日本弁護士連合会(日弁連)の交通事故相談センターが発行する「交通事故損害額算定基準(通称:青本)」や「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称:赤い本)」にまとめられており、全国の交通事故実務に携わる弁護士のあいだで共有されています。

以下の計算機では、弁護士基準の慰謝料相場がわかります。
すでに任意保険会社から慰謝料額の提示を受けている場合は、計算機の結果と比べてみてください。
なお、計算機による計算はあくまでも機械的なものです。厳密な慰謝料相場は弁護士にお問い合わせてください。

各基準における慰謝料の計算方法は、以下の関連記事をご覧ください。

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症状別に交通事故の慰謝料相場を紹介

後遺症なしのときの慰謝料相場

交通事故によるケガが完治した場合、請求できる慰謝料は傷害慰謝料のみです。
傷害慰謝料は、弁護士基準では以下の表を参考に算定されます。

表には重傷用と軽傷用がありますが、基本的には重傷用を使ってください。
むちうちなど、レントゲンやMRI画像に異常が写らないケガを負った場合は、軽傷用の表を使います。

重傷用

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

軽傷用

軽症・むちうちの慰謝料算定表
軽症・むちうちの慰謝料算定表

後遺症なしなど軽傷の場合の慰謝料請求のポイントは、『軽傷の交通事故慰謝料はどれくらい?十分にもらう方法と症状別の相場』の記事で解説しています。

相手方からは「1日あたり4200円(4300円)」と言われる可能性あり

交通事故の示談交渉では、相手方任意保険会社から「傷害慰謝料は1日あたり4200円(4300円)です」などと言われることがあります。

これは自賠責基準の傷害慰謝料の算定基準であり、令和2年4月1日以降に発生した事故については、日額4300円となります。
相手方任意保険会社は、自賠責基準と同等の金額を提示してくることもあるのです。

しかし、自賠責基準はあくまでも、交通事故被害者に補償される最低限の金額です。
弁護士基準で算定し直せばもっと高額になるので、決してうのみにせず、一旦弁護士に相談することをおすすめします。

むちうちの慰謝料相場

交通事故でむち打ち症では、首の慢性的な痛み、頭痛、しびれ感、目のかすみ、耳鳴りなどの後遺症が残ることもあります。
これらの後遺症は、後遺障害12級または14級に認定される可能性があります。

今回は、後遺障害14級に認定された場合を想定し、慰謝料相場を見てみましょう。

被害者属性のモデルケース

入院期間0日
通院期間6か月
後遺障害等級14級9号

慰謝料相場金額(弁護士基準)

傷害慰謝料89万円
後遺障害慰謝料110万円
慰謝料合計199万円

むちうちによる後遺症が後遺障害12級または14級に認定されるための要件は、以下の通りです。

むちうち症の後遺障害等級

等級等級認定の要件
12級13号障害の存在が他覚的にわかるもの。
CTやMRIなど画像診断などによってむちうち症の後遺症の存在が医学的に証明されたもの。
14級9号画像診断など、他覚的な後遺症の存在はない。
しかし、受傷の状況、症状、治療の経過、各種神経学的なテストの結果、むちうち症の後遺症が発生していると説明可能なもの。

たとえ後遺症が残っても、上記の要件を満たさず後遺障害等級が認定されなかった場合は、後遺障害慰謝料はもらえません。

交通事故でむちうちになった方は、『交通事故によるむちうち(外傷性頚部症候群)の症状や治療期間|慰謝料も解説』の記事もご参考ください。

むちうちは、事故から数日後に症状が出ることもある

交通事故によるむちうち症は、事故発生時に首を前後に激しく揺さぶられることによって生じるもろもろの症状の総称です。
具体的な症状としては首の痛みや不快感などがありますが、事故直後に自覚するとは限りません。

事故から数日後に症状が出てくることもあるので、事故とは関係ないと決めつけず、違和感を感じたら速やかに病院へ行きましょう。

あとから痛みが出たときの対処法は『事故で後から痛み…因果関係が疑われないためには?』の記事でも紹介しています。

椎間板ヘルニアの慰謝料相場

椎間板ヘルニアで後遺症が残ると、後遺障害12級または14級に認定される可能性があります。
ここでは、後遺障害14級に認定された場合を想定して慰謝料相場を見てみましょう。

被害者属性のモデルケース

入院期間0日
通院期間10か月
後遺障害等級14級9号

慰謝料相場金額(弁護士基準)

傷害慰謝料113万円
後遺障害慰謝料110万円
慰謝料合計223万円

椎間板ヘルニアが後遺障害12級か14級に認定されるための要件は、以下の通りです。

椎間板ヘルニアの後遺障害等級

等級等級認定の要件
12級13号障害の存在が他覚的にわかるもの。
CTやMRIなど画像診断などによって椎間板ヘルニアの存在が医学的に証明されたもの。
14級9号画像診断など、他覚的な後遺症の存在はない。
しかし、受傷の状況、症状、治療の経過、各種神経学的なテストの結果、椎間板ヘルニアが発生していると説明可能なもの。

椎間板ヘルニアは、椎間板のはみ出しが画像診断などで明らかになりやすいです。
そのため、12級に該当しやすく思えますが、実際には12級に認定されるケースは少なく、多くは14級とされるか、非該当となってしまいます。

たとえ後遺症が残っていても、上記の要件を満たさず、非該当となってしまうと、後遺障害慰謝料は請求できません。

椎間板ヘルニアは、事故との因果関係が疑われやすい

人間の背骨(脊椎)は、椎骨という小さな骨が24個連結してできています。
椎骨と椎骨のあいだには椎間板という軟骨組織があり、椎骨にかかる衝撃を吸収するクッションの役割を果たしています。
椎間板ヘルニアは、この椎間板という組織が外部にはみ出て神経を圧迫し、痛みやしびれが生じるという症状です。

椎間板ヘルニアの後遺障害認定にあたっては、交通事故との因果関係が争点となります。
椎間板ヘルニアは事故に遭わなくても発症し得る症状だからです。
とくに中腰での作業、長期間の運転、物の持ち運びなどに従事している方は発症しやすいと言われています。
たとえMRIやCTによって椎間板ヘルニアが認められたのだとしても、事故前からすでに発症していたのではないかと疑われ、非該当となったり14級に認定されたりするのです。

頭部外傷の慰謝料相場

頭部外傷では、高次脳機能障害、外傷性てんかん、麻痺などの神経症状、昏睡などの意識障害といった後遺症が残る可能性があります。

ここでは、高次脳機能障害により後遺障害3級が認定された例と、後遺障害14級が認定された例の2つをあげ、慰謝料の相場をそれぞれ見ていきます。

(1-1)被害者属性のモデルケース(後遺障害3級の例)

入院期間6か月
通院期間2か月
後遺障害等級3級3号

(1-2)慰謝料相場金額(弁護士基準)

傷害慰謝料*260万円
後遺障害慰謝料1990万円
慰謝料合計2250万円

*重症の基準を適用

(2-1)被害者属性のモデルケース(後遺障害14級の例)

入院期間1か月
通院期間6か月
後遺障害等級14級9号

(2-2)慰謝料相場金額(弁護士基準)

傷害慰謝料*149万円
後遺障害慰謝料110万円
慰謝料合計259万円

*重症の基準を適用

高次脳機能障害を負った際に認定される可能性のある等級と、各等級に認定されるための要件は以下の通りです。

高次脳機能障害の後遺障害等級(要介護の場合)

等級等級認定の要件
1級1号*“常時”介護が必要なもの
2級1号*“随時”介護が必要なもの

*別表第一

高次脳機能障害の後遺障害等級(要介護でない場合)

等級等級認定の要件
3級3号労務に服すにあたり必要となる4つの能力*について、 1つを完全に喪失したか2つ以上の能力の大部分が失われたもの
5級2号4つの能力のうち、1つ以上の能力の大部分が失われたか2つ以上の能力の半分程度が失われたもの
7級4号4つの能力のうち、1つ以上の能力の半分程度が失われたか2つ以上の能力の相当程度が失われたもの
9級10号4つの能力のうち、1つ以上の能力の相当程度が失われたもの
12級13号4つの能力について労務に影響するほど失われなかった。
しかしCTやMRIなど画像診断などによって高次脳機能障害の存在が医学的に証明されたもの。
14級9号4つの能力について労務に影響するほど失われず、画像診断などによっても他覚的な後遺症の存在はない。
しかし、受傷の状況、症状、治療の経過、各種神経学的なテストの結果、高次脳機能障害が残ったと説明可能なもの。

*4つの能力とは、意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・持久力、社会行動能力を指す。

頭部外傷による症状はさまざまある

頭部外傷では、脳挫傷、硬膜外血腫、くも膜下出血、びまん性軸索損傷などが発生し、以下のような後遺症を残すことがあります。

  • 高次脳機能障害
  • 外傷性てんかん
  • 麻痺
  • 昏睡などの意識障害

高次脳機能障害では、記憶力・判断力・注意力といった認知機能の低下、意欲の減退・攻撃性や幼稚性の高まりといった社会行動の障害など、知的な機能に関する障害が生じます。

ただし、症状の程度は誰の目から見ても明らかな場合ばかりではなく、ごく近しい友人知人が少し違和感を覚える程度であることもあります。

こうしたことから高次脳機能障害は症状の程度や有無の証明、交通事故との因果関係の証明が難しい場合もあるので、認定の手続きをする際は一度弁護士に相談すると良いでしょう。

高次脳機能障害で後遺障害認定を受けるための対策や脳挫傷で生じるその他の症状については、以下の関連記事で詳しく解説しています。

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顔の傷・外貌醜状の慰謝料相場

顔や頭部、頚部などの部分に傷あとが残った場合、傷あとの程度によって後遺障害7級、9級、12級が認定される可能性があります。
ここでは、後遺障害12級に認定された事例を仮定し、慰謝料の相場を見てみましょう。

被害者属性のモデルケース

入院期間0か月
通院期間6か月
後遺障害等級12級14号

慰謝料相場金額(弁護士基準)

傷害慰謝料89万円
後遺障害慰謝料290万円
慰謝料合計379万円

顔の傷で後遺障害等級の認定を受けるための要件は、以下の通りです。
上肢や下肢の露出面の醜状障害についても後遺障害が認められ得ますが、ここでは割愛します。

顔の傷の後遺障害等級

等級等級認定の要件
7級12号頭部に手の平大(指の部分は含まない)以上の瘢痕が残ったもの、もしくは頭蓋骨の手の平大以上の欠損があるもの。
顔面部に鶏卵大以上の瘢痕が残ったもの、もしくは10円硬貨大以上の組織陥没が残ったもの。
頸部に手の平大以上の瘢痕が残ったもの。
9級16号顔面部に長さ5センチメートル以上の線状痕が残ったもの。
12級14号頭部に鶏卵大以上の瘢痕が残ったもの、もしくは頭蓋骨に鶏卵大以上の欠損が残ったもの。
顔面部に10円硬貨以上の瘢痕が残ったもの、もしくは長さ3センチメートル以上の線状痕が残ったもの。
頸部に鶏卵大以上の瘢痕が残ったもの。

たとえ後遺症が残っていても、上記の要件を満たさず後遺障害等級が認定されなければ、後遺障害慰謝料はもらえません。

顔の傷で後遺障害認定を受けるポイントは、『交通事故による顔の傷跡(外貌醜状)の後遺障害認定|顔面骨折・神経麻痺も解説』の記事をご参考ください。

上肢の可動域制限の慰謝料相場

上肢、つまり両腕の可動域制限は、腕そのものにダメージを負うという病態の他、腕に関わる神経が頚椎から引き抜かれたり損傷したりすることで生じることがあります。

症状に応じて後遺障害1級、5級、6級、8級、10級、12級が認定される可能性がありますが、ここでは12級に認定された場合を想定し、慰謝料相場を見てみましょう。

被害者属性のモデルケース

入院期間1か月
通院期間6か月
後遺障害等級12級6号

慰謝料相場金額(弁護士基準)

傷害慰謝料149万円
後遺障害慰謝料290万円
慰謝料合計439万円

上肢の可動域制限で後遺障害等級の認定を受けるための要件は、以下の通りです。
3大関節とは、肩関節・肘関節・手関節のことを指します。

上肢の機能障害の後遺障害等級

等級等級認定の要件
1級4号両腕の3大関節のすべてが強直(固まって動かなくなる)し、かつ手指の全部の用を廃したもの
5級6号片腕の3大関節のすべてが強直し、かつ手指の全部の用を廃したもの
6級6号3大関節のうち2つの関節について、強直したか、完全弛緩性麻痺(自動運動で関節の可動域が健側の可動域角度の10%程度以下となったものを含む)したか、人工関節・人工骨頭を挿入置換してその可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
8級6号 3大関節のうち1つの関節について6級6号と同じ要件を満たすもの
10級10号3大関節のうち1つの関節について、関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されたか、人工関節・人工骨頭を挿入置換したもの*
12級6号3大関節のうち1つの関節について、関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されているもの

*人工関節・人工骨頭を挿入置換し可動域が健側の1/2以下になったものは8級6号。

たとえ後遺症が残っても、上記の要件を満たさず後遺障害等級が認定されないと、後遺障害慰謝料は請求できません。

上肢の可動域制限で後遺障害認定を受けられる基準は、『肩や手首の後遺障害・可動域制限とは?』の記事で紹介しています。

下肢の可動域制限の慰謝料相場

交通事故においては下肢(両足)にケガを負い、機能障害の後遺症が残るケースもあります。

症状に応じて後遺障害1級、5級、6級、8級、10級、12級に認定される可能性がありますが、ここでは10級に認定されたケースを想定し、慰謝料相場を見てみましょう。

被害者属性のモデルケース

入院期間1か月
通院期間6か月
後遺障害等級10級11号

慰謝料相場金額(弁護士基準)

傷害慰謝料149万円
後遺障害慰謝料550万円
慰謝料合計699万円

下肢の可動域制限で後遺障害等級に認定されるための要件は、以下の通りです。
両足の3大関節とは、股関節・膝関節・足関節を指します。

下肢の機能障害の後遺障害等級

等級等級認定の要件
1級6号両足の3大関節のすべてが強直(固まって動かなくなる)したもの
5級7号片足の3大関節のすべてが強直したもの
6級7号3大関節のうち2つの関節について、強直したか、完全弛緩性麻痺(自動運動で関節の可動域が健側の可動域角度の10%程度以下となったものを含む)したか、人工関節・人工骨頭を挿入置換してその可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの*1
8級7号 3大関節のうち1つの関節について6級6号と同じ要件を満たすもの
10級11号3大関節のうち1つの関節について、関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されたか、人工関節・人工骨頭を挿入置換したもの*2
12級7号3大関節のうち1つの関節について、関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されているもの

*1 股関節においては、屈曲・伸展(体の前側や後ろ側に曲げる)、外転・内転(外側に開いたり内側に閉じたりする)のいずれかが1/2に制限されれば等級認定の要件を満たす
*2 人工関節・人工骨頭を挿入置換し可動域が健側の1/2以下になったものは8級7号

たとえ後遺症が残っても、上記の要件を満たさず後遺障害等級が認定されなければ、後遺障害慰謝料は請求できません。

下肢の可動域制限で後遺障害認定を受けられる基準を知りたい方は、『交通事故で股関節など下肢3大関節を脱臼・骨折!人工関節・人工骨頭の後遺障害』の記事をご参考ください。

死亡事故の慰謝料相場

交通事故において被害者が死亡した場合には、死亡慰謝料が支払われます。
死亡慰謝料は、被害者の立場によって支払われる金額が変わります。

死亡事故の慰謝料(弁護士基準)

被害者の立場金額
一家の支柱2800万円
母親・配偶者2500万円
その他の場合2000万円~2500万円

また、飲酒運転が行われていた、ひき逃げされた、無免許運転だった等、事故の要因が悪質なものであった場合、さらに慰謝料が増額される可能性もあります。

死亡事故についても、後遺障害認定がされた事故と同じように逸失利益が発生します。
死亡事故の慰謝料についてくわしく知りたい方は、『死亡事故の慰謝料相場は?被害者の死亡で遺族が請求すべき損害賠償金』の記事をご覧ください。

妊婦の交通事故でお腹の中の子供が死亡した場合

交通事故により胎児を死産してしまった場合、これは「死亡」というあつかいにはなりません。
そのため、胎児に対する死亡慰謝料は原則として認められませんが、胎児の母親の傷害慰謝料が増額される可能性はあります。

妊婦の交通事故に関する過去の裁判例としては、以下のようなものがあります。

  • 出産予定日4日前に事故に遭い子どもを死産したという事故について慰謝料800万円を認めた(高松高裁 事件番号平成3年(ネ)第248号 平成年9月17日判決)
  • 妊娠約2か月の胎児を流産したという事故で慰謝料150万円を認めた(大阪地裁 事件番号平成5年(ワ)第12545号 平成8年5月31日判決)などがあります。

交通事故慰謝料の増額相場|実例と裁判例を紹介

示談交渉による交通事故慰謝料の増額事例・相場

交通事故の被害者が本来受け取るべき慰謝料の相場は、弁護士基準にのっとったものです。
しかし、示談交渉で相手方任意保険会社は任意保険基準の金額を提示してくるので、十分な金額を得るには増額を求めなければなりません。

そこでここでは、任意保険会社基準の金額が弁護士基準の金額まで引き上げられた場合、どれくらいの増額となるのかを見ていきましょう。
これを見れば、任意保険会社の提示額には相当な増額の余地があることがわかるでしょう。

事例はいずれも、アトム法律事務所で扱ったものです。
なお、保険会社提示額、最終回収額はそれぞれ慰謝料を含めた示談金の総額となります。

ケース1.後遺障害認定により大幅に増額した事例

事故の状況信号待ちをしていた被害者車両の後方から、加害者車両が追突したという事故。
被害者は頚椎捻挫の傷害を負った。
後遺症の症状むちうち症の症状が残存した。
後遺障害等級無等級→14級9号
保険会社提示額67万5340円
最終回収額265万4268円
増額金額197万8928円

この事例では、相手方任意保険会社は後遺障害が残らなかったものとして、低額な示談金を提示してきました。
弁護士介入後、後遺障害の申請を行い14級9号の認定を受けたことで、示談金総額は約198万円増額されました。

ケース2. 相手方保険会社の提示額が低かった事例

事故の状況被害者の乗る自転車と加害者の乗る自動車が衝突したという事故。
被害者は右肩腱板断裂の傷害を負った。
後遺症の症状右肩の可動域に障害が残った。
後遺障害等級12級6号
保険会社提示額341万207円
最終回収額1000万円
増額金額658万9793円

相手方任意保険会社の提示額が低かったという事例です。
任意保険会社によっては、ほぼ自賠責基準と変わりのないような金額を提示してくる場合もあり、弁護士による交渉で最終的に倍以上の金額になるケースもあります。

ケース3. 後遺障害なしの事例

事故の状況信号待ちをしていた被害者車両の後方から加害者自動車が追突したという事故。
被害者は左肩と腰を打撲した。
後遺症の症状なし
後遺障害等級なし
保険会社提示額38万250円
最終回収額84万450円
増額金額46万200円

後遺障害認定の対象ではないような事故でも、弁護士に依頼することで示談金は増額されます。

後遺障害に認定されないような事案については、弁護士報酬との兼ね合いで弁護士に依頼しないほうが良いという事例もあります。
ただ、弁護士費用特約のある保険に加入していれば、自身の保険会社に弁護士費用を負担してもらえるので安心です。

また、上記の事例のように、弁護士報酬が差し引かれることを考慮しても、弁護士に依頼した方が良いという事例もあります。
まずは弁護士事務所の無料相談を利用し、ご自身の事故について聞いてみるのが得策でしょう。

関連記事

交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介

慰謝料は個別的な事情を考慮して増額されることも|裁判例

交通事故では、事故の状況や加害者の悪性などといった個別的な事情によって慰謝料が増額することがあります。
ここで、いくつか裁判例を見てみましょう。

ケース1. 飲酒運転による死亡事故

事故の状況加害者は酩酊状態で高速道路を転回して逆走。
被害者車両と正面衝突し、被害者が気管断裂による呼吸不全で死亡したという事故。
慰謝料の基準額2800万円
本判決の慰謝料3600万円

東京地方裁判所 平成15年3月27日判決 事件番号平成13年(ワ)第7065号

この事例では、「加害者の過失が一方的かつ、極めて重大・悪質であること」「加害者が逆走するに至った遠因が、日ごろから飲酒運転を重ね規範意識が極めて鈍磨してしまっていたという点にあること」「被害者の妻の精神的打撃が大きいこと」「被害者らに対する謝罪の意思の表明の在り方等において配慮に欠けた面があったこと」などが考慮され、基準額より800万円の増額となりました。

ケース2. 傷害事故発生後、加害者が救護もせず現場から逃げた事案

事故の状況被害者は自転車で走行中、加害者車両に衝突されて転倒し負傷した。
加害者は救護義務を果たさずに現場から逃亡。
さらに友人に身代わりを頼んで警察の追求から逃れようとした。
追加で認められた慰謝料50万円

東京地方裁判所 平成15年4月24日判決 事件番号平成13年(ワ)第2548号

この事例では、加害者の行動によって被害者が著しい不安感、焦燥感、失望感等の精神的苦痛を被ったとされました。
傷害慰謝料等とは別に、さらに別個に50万円の慰謝料が認められました。

個別的な事情による慰謝料増額は示談交渉でも可能

交通事故慰謝料は、他にもさまざまな事情を考慮して増額される可能性があります。
慰謝料増額につながりうるケースをはじめ、交通事故の慰謝料に関する網羅的な情報については『交通事故の慰謝料|相場や計算方法など疑問の総まとめ』でも紹介しているので、読んでみてください。

ここでは事情を考慮して慰謝料が増額された裁判例を紹介しましたが、裁判となるとさまざまな手続きの手間がかかりますし、解決までに時間がかかる、被害者に不利な判決が出る可能性もあるといったリスクもあります。

そのため、まずは弁護士に相談し、示談交渉にて増額を交渉してもらうことがおすすめです。
示談交渉で増額が成功すれば、裁判より早く示談金を受け取れる可能性が高いです。

裁判については『交通事故の裁判の起こし方や流れ|費用・期間や裁判になるケースを解説』の記事が参考になりますので、確認してみてください。

交通事故の慰謝料相場を上げる2つのポイント

(1)弁護士基準での支払いを目指して示談交渉をする

示談交渉では、任意保険基準の金額を提示する相手方保険会社に対して、弁護士基準の金額を求めていく必要があります。
しかし、被害者自身による交渉では十分に聞き入れてもらえる可能性は低いです。

被害者は相手方任意保険会社よりも示談交渉経験が浅く、どうしても知識も少ないので、たとえ正しい慰謝料額を主張していても、たくみに跳ね返されてしまうのです。

しかし、弁護士に示談交渉を依頼すれば、以下の点から弁護士基準の金額獲得が見込めます。

  • 弁護士は専門知識と資格を持つ専門家なので、相手方任意保険会社と対等に交渉ができる
  • 弁護士が出てくると相手方任意保険会社は裁判になることを恐れ、態度を軟化させる
  • 相手方保険会社は、交渉人が被害者本人ならここまでしか出さない、弁護士が出てきたらここまで許容するという目安を設定していることがある

交通事故の慰謝料増額を目指すなら、なるべく早く弁護士に相談するべきと言えるでしょう。

弁護士基準で計算したとき、慰謝料がだいたいどれくらいもらえるのかは、「慰謝料計算機」ですぐわかります。以下の慰謝料計算機は、個人情報の登録もなく、すぐに使える便利ツールです。

(2)適切な後遺障害等級の認定により慰謝料増額

後遺障害慰謝料は後遺障害等級に応じて決まるので、適切な等級に認定されることは非常に重要です。

しかし、以下のようなことから適切な等級よりも低い等級が認定されたり、そもそも等級が認定されなかったりすることは珍しくありません。

  • 通院日数・治療の実績が少ない
  • 必要な検査が行われていない
  • 医学的な証拠に乏しい
  • 後遺障害診断書などの記載内容が不十分 など

上記の点に気を付けることで、適切な等級に認定される可能性は高まりますが、これらは医師に相談していれば安心というものでもありません。
たとえば、医学的な観点から必要な検査と後遺障害等級認定で必要な検査や、医学的によい診断書の内容と後遺障害等級認定で有利になる診断書の内容は違うことがあるのです。

後遺障害等級認定については、弁護士が詳しく把握しています。
適切な等級認定を受け、慰謝料相場を上げるためにも、弁護士に相談することがおすすめです。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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