交通事故の示談に納得いかない!適正な示談金・過失割合にするための対処法
交通事故の示談内容に納得いかない場合、「どうすれば示談内容を改善できる?」「納得いかないこの気持ちは正しい?」という疑問を抱きやすいです。
そこでこの記事では、交通事故の示談内容に納得いかない場合の対処法として、弁護士への相談、ADRの利用、裁判の3つを詳しく解説します。
示談内容を改善したい時の注意点も解説しているので、ご確認ください。
目次
交通事故の示談に納得いかない!どう対応すべき?
弁護士やADR、裁判所へ相談がおすすめ
交通事故の示談内容に納得いかない場合は、示談が成立する前に、弁護士や紛争処理センターなどに相談してください。
示談成立前であれば第三者を間に挟むことで、示談内容が改善する可能性があります。
それでも示談内容に納得がいかない場合には、裁判所を利用して解決する必要もあるでしょう。
それぞれの方法の具体的な概要やメリット、注意点は、本記事内で詳しく解説していきます。
自力の交渉でも納得いく示談にできる?
示談の内容に納得いかない場合、自分で交渉して内容変更を求めることも可能です。
しかし、自力での交渉となるとどうしても、加害者側の任意保険会社との交渉力・知識量の差から不利になりがちです。
例えば弁護士に交渉を依頼すれば、以下の点から自力では実現できない内容で示談を成立させられる可能性が高まります。
- 相手方保険会社は、交渉に弁護士が出てくるかどうかで許容する示談金額に差をつけていることがある
- 弁護士が出てくると相手方保険会社は裁判への発展を警戒し、交渉時の態度を軟化させる傾向にある
- 専門知識や過去の事例に精通した弁護士であれば、根拠に基づく主張ができるうえ、相手方保険会社の主張の問題点も指摘できる
したがって、本記事で詳しく解説する「弁護士への依頼」「ADRの利用」「裁判」も検討してみることをおすすめします。
自力で交渉する場合のポイントについては関連記事『交通事故の示談テクニック8つ!自分でできる交渉術と慰謝料増額の近道』で紹介しています。
示談に納得いかない時の対処法(1)弁護士への相談
法律相談で正しい示談内容の確認ができる
弁護士へは、委任契約前に法律相談をすることが一般的です。
この際、適切な示談金額や過失割合を確認できることが多いので、まずは納得いかない示談にどれくらいの変更の余地があるのか、確認してみましょう。
示談金額や過失割合はその事故固有の事情まで踏まえて柔軟に算出されるため、被害者自身で適切な内容を判断するのは非常に難しいです。
しかしながら、適切な示談内容がわかっていなければ示談交渉はできません。
また、相談の結果、思っている以上に示談金に増額の可能性があるとわかることもあるかもしれません。
法律相談後、委任契約をせずに終了しても問題ありませんし、アトム法律事務所のように無料で相談を実施している事務所もあるので、まずはお気軽に相談してみてください。
交渉を依頼すれば裁判レベルの示談金獲得も期待できる
示談に納得いかない場合、弁護士と委任契約を結んで交渉を任せれば、裁判を起こした場合に近い示談金額が得られる可能性があります。
裁判所は、「過去の判例をもとにした相場がわかる計算方法」を用いて慰謝料を計算します。
ところが、被害者自身で同じ方法で慰謝料を計算して示談交渉で主張しても、加害者側の任意保険会社は基本的に聞き入れません。
「法律の専門家でもない被害者による交渉で、裁判レベルの金額を受け入れるわけにはいかない」と考えるからです。
しかし、弁護士を立てれば加害者側の任意保険会社は以下のように考えます。
- 弁護士は法律の専門家だから、説得力がないとは言えない
- 弁護士の主張を聞き入れないと裁判を起こされ、裁判のために時間・労力を費やした挙句、裁判レベルの金額を認めることになりかねない
したがって、弁護士を立てれば納得いかない示談内容も、裁判レベルの内容に改善できる可能性があるのです。
実際に弁護士にご依頼された方の体験談は、次のとおりです。
保険会社と私の話し合いでは限界、と言われた金額の約3倍も金額の変動があり、びっくりしました。
アトム法律事務所のご依頼者様の声|右手人差指神経断裂の増額事例
結果、納得できずにいた問題もすっきり解決して頂き示談金は3倍にもなりました。アトム法律事務所はわかりやすく説明をしてくださり、相談料も明確で安心ができました。
アトム法律事務所のご依頼者様の声|右足高原骨折の増額事例
自力でここまで頑張ったのだからこれ以上の増額は難しいだろうと決めつけず、まずは一度弁護士に相談してみてください。
自己の個別的な事情を汲んだ慰謝料増額も期待できる
交通事故では、事故の個別的な事情に応じて示談金額が相場以上になることがあります。
しかし、あくまでも交渉次第であり、被害者自身の交渉では増額が認められないか、微々たる増額にとどまるのが実情です。
しかし、弁護士を立てればこうした場合でも十分な増額が期待できます。たとえば精神的苦痛に対して支払われる慰謝料は、次のような事実がある場合は相場以上になることがあります。
- 相手方の態度が不誠実
- 事故後に適切な対応をしなかった
- 事故後に証拠隠滅を図った
- 反省の態度が見えない
- 被害者を挑発する言動をとる
- 治療過程がことさらに苦痛を伴うものだった
- 麻酔ができない状態で手術を受けた
- 繰り返し手術を受けた
- 感染症や合併症を発症し、さらなる苦痛を受けた
実際の判例
被害者(男・9歳)につき、加害者は朝まで量が分からないくらい飲酒し、事故後救護せずコンビニで強力な口臭消しを購入し、衝突まで全く被害者に気がついていなかったにもかかわらず捜査段階ではこれを隠す供述をし、父母が事故後心療内科に通院したことから、基準額の3割増しを相当とし、本人分2750万円、父母各250万円、合計3250万円を認めた
事故日平16.12.2 大阪地判平20.9.26 自保ジ1784・15
加害者側の任意保険会社の方から、「通常よりも精神的苦痛が大きいため、慰謝料を増額する」と言ってもらえることはありません。
通常よりも精神的苦痛が大きいかもしれないと感じる場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士費用の負担は大幅に減らせる
法律相談は無料で行なっている事務所もありますが、委任契約となると費用がかかります。
しかし、この費用は保険に付帯している「弁護士費用特約」によって大幅に軽減できます。
弁護士費用特約を使えば、法律相談料や弁護士費用の多くを保険会社に負担してもらえるからです。
保険の約款を確認すると、「つけたつもりはなかったけれど弁護士費用特約がついていた」と言う方も多いので、一度確認してみてください。
なお、たとえ弁護士費用特約がなくても、一度弁護士に相談し、弁護士の必要性や弁護士費用の目安を確認してみてください。
弁護士費用を支払ってもなお、弁護士を立てなかった場合よりも手元に入る示談金が多くなる場合もあります。
弁護士費用特約や弁護士費用の相場を知りたい
無料相談で、「獲得が見込める示談金額」と「弁護士費用」を試算し比較することも可能です。
司法書士や行政書士に相談することはできる?
相手方に請求したい金額が140万円以下の場合は、認定司法書士に相談して示談交渉を依頼することもできます。
費用は弁護士に依頼する場合より安い場合が多いですが、以下の点には気を付けてください。
- 「認定司法書士」以外の司法書士には示談交渉を頼めない
- 相手に請求したい金額(訴額)が140万円を超える事案は、認定司法書士にも頼めない
一方、行政書士には示談に関しての相談・依頼はできません。
司法書士については関連記事『交通事故は弁護士か司法書士のどちらに相談?示談交渉を依頼する決め手』で詳しく解説しているので、ご確認ください。
示談に納得いかない時の対処法(2)ADRの利用
ADRとは、裁判外で第三者が当事者の間に入り、問題解決に向けたサポートをしてくれる機関です。
交通事故の場合は交通事故紛争処理センター、日弁連交通事故相談センターが利用できます。
ADRを利用するメリットは、無料であること、間に弁護士に入ってもらえることです。
最初は電話相談や対面相談をして、必要があれば示談内容に関して弁護士に介入してもらえます。
ただし、自分で法律事務所の弁護士に相談・依頼する場合とは違い、以下のような注意点があります。
- 弁護士はあくまでも中立的な第三者として介入する
- 被害者側の弁護人として介入するわけではないため、必ずしも被害者側の味方をしてくれるわけではない
被害者側の味方として弁護士を立て、納得いかない点について徹底的に交渉したい場合は、個人的に弁護士に相談・依頼する方がおすすめです。
示談に納得いかない時の対処法(3)裁判
示談やADRにより解決するには、事故当事者双方が納得し、合意を得ることが必要です。
示談の内容について合意が得られない場合には、裁判所に訴訟提起を行いましょう。
裁判であれば、最終的に裁判所が下す判決に従う必要があるため、当事者間の合意がない場合であっても解決が可能です。
もっとも、裁判において納得のいく判決を得るには、適切な裁判手続きを行う必要があるため、専門家である弁護士に裁判手続きを行ってもらうべきでしょう。
裁判による解決を検討している方は『交通事故の裁判の起こし方や流れ|費用・期間や裁判になるケースを解説』の記事をご覧ください。
示談に納得いかない場合に注意したいこと
示談成立後は再交渉できない!不本意なまま合意しない
残念ながら、示談成立後の再交渉は一部例外を除き原則としてできません。
納得いかない部分やよくわからない部分がある状態でとりあえず示談に応じるのは避け、弁護士などに相談してみましょう。
相手方の嘘により示談を成立させてしまったなど、示談成立のプロセスに納得いかない部分がある場合は再交渉できることがあるので、『示談後、撤回や追加請求は可能?』の記事を読んでみてください。
損害賠償請求には時効がある!早めの対応が重要
納得いかない示談内容についてしっかり対応を検討することは重要ですが、時間をかけすぎると「損害賠償請求権の消滅時効」が成立してしまう恐れがあります。
損害賠償請求権の消滅時効
交通事故の相手に対して、損害賠償金を請求する権利が消滅する時効。
時効が成立すると、相手に損害賠償請求できなくなる。
損害賠償請求権の消滅時効は、損害賠償金の種類別に定められています。
傷害分 治療期間中に生じる賠償金 | 事故翌日から5年 |
後遺障害分 後遺障害の残存に対し支払われる賠償金 | 症状固定翌日から5年 |
死亡分 死亡事故における賠償金 | 死亡翌日から5年 |
※すべて2017年4月1日以降に発生した事故に対するもの
よって、示談で納得できない部分がある場合は早めにどう対応するのかを決め、行動を起こすことが重要です。
加害者側から示談内容の根拠を聞いても鵜呑みにしない
示談内容に納得いかない旨を伝えると、相手方保険会社は被害者側を納得させるようなことを言ってきます。
たとえば次のようなことを言われると、納得してしまいそれ以上交渉しても意味がないと感じるかもしれません。
- あなたが主張しているのは教科書的な相場であって、実際の相場はこれくらいです。
- 弁護士基準の金額は裁判をした場合の相場であって、示談交渉で得られる金額ではありません。
- 今回の事案特有の事情を考慮したうえで出せる最大の金額です。
しかし、相手方保険会社は示談交渉経験の豊富なプロです。
被害者を納得させる方法を熟知したうえで交渉に臨んでいるので、何を言われてもすぐに納得するべきではありません。
まずは専門家である弁護士に相談して、相手方保険会社の言い分が本当に正しいのか確認してみることをおすすめします。
後遺障害等級の結果が適切かも確認してみる
交通事故で後遺症が残っている場合は、後遺障害認定の結果も見直してみてください。
認定された等級より高い等級が妥当な場合は、異議申立てで再審査を受けることで等級が上がり、後遺障害慰謝料・逸失利益が増える可能性があります。
ただし、再審査は、等級アップの可能性があり、なおかつポイントをとらえた対策をおこなった状態で受けなければ時間の無駄となりかねません。
異議申立てによる再審査を検討する場合は、関連記事『後遺障害の異議申し立てを成功させる方法と流れ!失敗や納得できない結果への対策』も参考にしてみてください。
異議申し立てをするべきかどうか、どのような対策をすべきかは、弁護士に相談することもおすすめです。
加害者側が納得いかない示談案を出す理由
示談金|保険会社独自の基準で計算している
加害者側の任意保険会社が納得いかない示談金額を提示してくるのは、もともと金額が低くなるように設定された、保険会社独自の基準(任意保険基準)に基づいて慰謝料を計算しているからです。
それに対して本来被害者が受け取るべき慰謝料額は、裁判所が用いる「過去の判例に沿った基準(弁護士基準/裁判基準)」に従った金額です。
実は、任意保険基準の金額は弁護士基準の金額の半分〜3分の1程度になっていることもあります。
慰謝料の算定基準
- 相手方保険会社が用いる:任意保険基準
- 相手方保険会社が独自に定めている金額基準。各社で異なり非公開だが、自賠責基準(自賠責法で定められた最低限の金額基準)と同程度であることが多い。
- 適性な相場額の算定で用いる:弁護士基準(裁判基準)
- 過去の判例に基づく算定基準であり、法的正当性が高いと言える。
- 自賠責基準や任意保険基準より2倍~3倍高額であることが多い。
弁護士基準に基づく慰謝料額は、以下の計算機または『交通事故の慰謝料は弁護士基準で請求』の記事にて確認できます。
ただし、実際の事故状況や被害内容を踏まえて柔軟に増額・減額されるため、正確な金額は弁護士に尋ねることをおすすめします。
慰謝料が低くなる理由には、治療期間や通院日数などが関わっていることもあります▶交通事故の慰謝料に納得いかない時の原因と対処法|なぜ低額になる?
過失割合|算定者の裁量で変わってしまいやすい
交通事故の示談では、「事故が起きた責任が加害者側と被害者側それぞれにどれくらいあるか」を示した過失割合についても話し合います。
加害者側の任意保険会社が提示する過失割合は、以下の点から納得いかないものになることがあります。
- 相手方は、過失相殺による示談金減額を狙ってあえて被害者側の過失割合を大きくしていることがある
- 相手方は、事故状況を細かく把握せずに過失割合を算定していることがある
相手方が見落としている事故状況を洗い出したり、専門書や過去の事例を確認したりして改めて過失割合を算定すると、被害者側の割合が減ることも珍しくありません。
被害者側に過失割合がつくと、その割合分示談金額が減額されます。少しでも納得いかないと感じるなら、弁護士にご相談ください。
関連記事
交通事故の過失割合に納得いかない・おかしい!ゴネ得を許さず割合を変更
示談に納得かないなら行動しないと損!無料相談はこちら
示談内容に納得いかない場合は、まず専門家に相談してみることで、効率的かつ効果的な対応が見えてきます。
アトム法律事務所では、LINEや電話にて無料の法律相談を受け付けています。
相談のみのご利用も可能ですし、ご依頼まで進んだ場合には次の方法によって費用の負担を減らせます。
- 弁護士費用特約がある場合
- ご加入の保険会社に弁護士費用を負担してもらえるため、多くのケースで自己負担金なく弁護士が立てられます
- 弁護士費用特約がない場合
- 着手金が原則無料となるため、すぐに大きなお金が用意できない方でも安心してご依頼いただけます。
補償金額や弁護士費用特約を使える人など具体的なことは、『交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介』の記事で解説しています。
弁護士への相談自体にまだ迷いがある方は、関連記事『交通事故で弁護士介入が必要な6ケース|相談の時期や弁護士の選び方』も参考にしてみてください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了