交通事故で坐骨神経痛を発症…後遺障害認定や慰謝料のポイントを弁護士が解説
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この記事でわかること
交通事故の後、足のしびれや鋭い痛みが続いていませんか?
もしかすると、坐骨神経痛の症状かもしれません。坐骨神経痛は、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などが原因で発症することもあり、重症化すると長期にわたって痛みが残るケースもあります。
この記事では、交通事故後の坐骨神経痛について、発症メカニズムから後遺障害認定の可能性、慰謝料相場、弁護士に相談すべき理由までを、交通事故に強い弁護士が詳しく解説します。
目次

交通事故後に発症する坐骨神経痛とは?
坐骨神経痛の基礎知識
坐骨神経とは、身体の下半身に(腰から足先まで)のびる、非常に長い末梢神経です。坐骨神経が圧迫されると、太ももやふくらはぎ、足の先にかけてしびれや痛み、突っ張り感が生じます。こうした神経症状が坐骨神経痛です。
坐骨神経痛が出現しているかは、仰向けの状態で伸ばした足を持ち上げ坐骨神経を刺激した際、太ももから臀部にかけて疼痛が生じ、それ以上挙上できない「ラセーグ徴候」が出るかどうかでわかります。
坐骨神経痛には、お尻、股関節、太ももなどの丁寧なストレッチングが効果的であり、中腰や前かがみを避けるなど正しい姿勢を心掛けることで症状の軽減・改善が見込まれます。
症状がひどい場合にはプレガバリンの投与といった薬物療法や神経ブロック注射が行われるパターンもあります。
坐骨神経痛は交通事故で発症する?
交通事故により、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などを負った場合、その症状の一つとして、坐骨神経痛を発症する可能性があります。
あくまで、坐骨神経痛は症状名であって、病名ではありません。
また、転倒してしりもちをついたり、車体にはさまれたりして骨盤付近を負傷した場合にも、坐骨神経痛が生じることがあるでしょう。骨盤骨折をした場合、神経障害や変形障害が残る可能性もあります。
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交通事故後に発症した坐骨神経痛は後遺障害認定される?
坐骨神経痛は、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などの症状のひとつです。治療やリハビリを続けても、症状が改善(完治)しきらずに症状固定となり、しびれや痛みといった神経症状が後遺症として残ることがあります。
こういった後遺症が残ると、後遺障害12級13号または14級9号の認定を受ける可能性があるでしょう。
坐骨神経痛で認定される後遺障害等級
交通事故で坐骨神経痛になったら、後遺障害12級13号又は14級9号に認定される可能性があります。それぞれの認定基準は下表のとおりです。
等級 | 認定基準 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
神経症状の原因が画像所見などで明らかな場合は、後遺障害12級13号に認定される可能性があります。
言い換えれば、被害者自身の主張する症状の他覚的所見が認められ、障害の存在を医学的・客観的に証明できないと、後遺障害12級13号の認定はむずかしいでしょう。
坐骨神経痛で後遺障害認定されるためのポイント
坐骨神経痛が生じる原因となったヘルニアや脊柱管狭窄症が、MRIなどの画像検査で確認できれば、後遺障害12級13号認定の可能性は高まるでしょう。
たとえば、ヘルニアの膨隆によって神経根を圧迫している様子が画像所見に写っており、圧迫部分で生じえる神経学的所見が得られるかどうかが重要です。
神経学的所見は、スパーリングテストやジャクソンテスト、SLRテスト、深部腱反射テスト、徒手筋力テストなどの神経学的検査から判断されます。
一方、MRIなどの画像検査で確認できなくても、事故の状況や衝撃の程度、事故直後からの症状の継続性などを総合的に判断したうえで、医学的に障害の存在が説明できるのであれば、後遺障害14級9号認定の可能性はあるでしょう。
たとえば、ヘルニアの場合、自覚症状の一貫性や神経学的検査の検査結果(スパーリングテストが陽性かなど)、治療経過、通院回数などが医学的に説明できるかどうかで判断されます。
したがって、交通事故後に受診する際は、医師に自覚症状や打ち付けた場所、事故状況などを細かく具体的に説明して診断書に記載してもらってください。
さらに、勝手に通院を途中でやめたりせず、病院(整形外科)にある程度の頻度かつ継続的に通院を続けましょう。整骨院や接骨院だけの通院もNGです。
関連記事『後遺障害14級9号の認定基準と慰謝料・逸失利益|認定されない理由と対処法』では14級9号認定を目指す際のポイントや、12級13号との違いを詳細に解説しています。
交通事故で坐骨神経痛になった場合の慰謝料の相場
交通事故で坐骨神経痛になった場合の慰謝料には、「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」があります。それぞれの計算方法と相場をみていきましょう。
坐骨神経痛の入通院慰謝料|計算方法と相場
坐骨神経痛で感じた痛みや、治療・リハビリで受けた苦痛といった精神的苦痛を緩和するための金銭として「入通院慰謝料」は支払われます。
弁護士が損害を算定する場合、入通院期間をもとにあらかじめ目安が設けられた以下の交通事故の慰謝料算定表を用いて計算します。
別表Ⅰ

慰謝料算定表の見方は、横列「入院した月数」と縦列「通院した月数」が交わる部分を慰謝料相場とします。
計算例
- 通院2ヶ月
52万円 - 入院1ヶ月、通院2ヶ月
98万円
通常は上記の別表Ⅰを使用して計算しますが、他覚所見がなく傷害の程度が軽度なむち打ち症と判断をされた場合には、下記の別表Ⅱを使用して計算します。
別表Ⅱ

特に、傷病名として「頚椎捻挫・挫傷・打撲・外傷性頚部症候群」などしか診断書に記載がない場合、相手方の任意保険会社は別表Ⅱで計算した慰謝料を主張してくることが多いので、診断書の記載内容は注意が必要です。
坐骨神経痛の後遺障害慰謝料|計算方法と相場
坐骨神経痛で後遺障害等級の認定を受けた場合、後遺障害12級で290万円、後遺障害14級で110万円を相場として後遺障害慰謝料が認められることになるでしょう。
等級 | 後遺障害慰謝料 |
---|---|
12級 | 290万円 |
14級 | 110万円 |
すでに後遺障害等級の認定を受け、相手方の任意保険会社から後遺障害慰謝料の提示を受けている場合は金額を確認してみましょう。上記の金額よりも低額である場合、弁護士による交渉で増額が見込まれます。
提示額はそのまま鵜吞みにせず、弁護士に増額見込みがあるか一度、相談してみてください。

後遺障害認定を受けたら逸失利益も請求
坐骨神経痛で後遺障害等級の認定を受けたら、後遺障害慰謝料とは別に「後遺障害逸失利益」の請求が認められるようになります。
後遺障害逸失利益とは?
不法行為がなければ将来的に被害者が得られたであろう経済的利益を失った損害の補填。交通事故においては、被害者に後遺障害が残存した場合や死亡事故の場合に請求できる損害となる。
後遺障害逸失利益は、事故前の収入、被害者の就労可能年数(原則67歳までの年数)に応じたライプニッツ係数、後遺障害等級ごとの労働能力喪失率(例:12級なら14%、14級なら5%)などをもとに算定します。
後遺障害逸失利益の計算式や考え方を詳しく知りたい方は、関連記事『交通事故の逸失利益とは?計算方法を解説!早見表・計算機で相場も確認』で紹介しているので参考にしてください。
なお、計算式が少々複雑であること、相手方の任意保険会社が仕事に支障は出ていないと主張して逸失利益を認めない可能性などを考慮すると、弁護士を立てた交渉が望ましいです。
また、慰謝料や逸失利益以外の治療費や休業損害などの交通事故の損害賠償金の費目も知りたい方は、『交通事故の損害賠償請求とは?賠償金の費目範囲や相場・計算方法を解説』をご覧ください。
交通事故の慰謝料は弁護士基準で計算しよう
ここまでで紹介した交通事故で坐骨神経痛になった場合の慰謝料相場は、弁護士基準で計算した金額です。
弁護士や裁判所といった法律のプロが損害額の算定に用いる算定基準が弁護士基準で、事故の被害者が受け取るべき最も妥当な金額を算定できる基準といえます。
慰謝料の算定基準は弁護士基準の他にも、自賠責基準や任意保険基準といった基準が存在していますが、これら3つの基準の中で最も高額となるのは弁護士基準による計算です。

たとえば、自賠責基準の後遺障害慰謝料だと、後遺障害12級で94万円、後遺障害14級で32万円にしかならず、弁護士基準の後遺障害慰謝料相場の1/3以下です。
弁護士基準と自賠責基準の比較
等級 | 弁護士基準 | 自賠責基準 |
---|---|---|
12級 | 290万円 | 94万円 |
14級 | 110万円 | 32万円 |
相手の任意保険会社は、被害者に支払う金額をできるだけ抑えようと低い金額しか提示してこないと認識しておきましょう。
すでに損害賠償案や示談案などの金額提示を受けている場合、弁護士基準での慰謝料相場だとどのくらいになるのか、弁護士に相談して確認してください。
なお、下記バナーから慰謝料計算機を使うことで、弁護士基準の慰謝料相場を確認可能です。あくまで目安にはなりますが、大体の感覚を掴むためにお役立てください。
下記の関連記事でも慰謝料の計算方法について解説しているので、あわせてご覧ください。
交通事故による坐骨神経痛は弁護士に相談・依頼しよう
交通事故被害者の方が坐骨神経痛になった場合、以下の理由から弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
弁護士の介入で適切な後遺障害等級認定の可能性が高まる
弁護士に相談することで、坐骨神経痛の症状やMRI画像などから後遺障害等級が認定される可能性があるか、認定されるなら何級が見込まれるかなどのアドバイスをもらえます。
さらに、弁護士に依頼することで、相手方の任意保険会社に申請手続きを任せる事前認定でなく、被害者側自ら行う被害者請求という申請方法を選択し、認定に影響を与えるための積極的なアクションを起こせます。
具体的には、認定に役立つ資料(主治医の意見書など)を収集・作成して提出できます。こういった行動は、適切な後遺障害等級につながり、等級認定される可能性を高められるメリットがあるのです。
また、すでに後遺障害が認定済みでも、納得いかない場合は、弁護士が状況を判断して、異議申し立てという手続きにより、再審査を求めてくれることもあるでしょう。
弁護士の介入で慰謝料を妥当な弁護士基準まで引き上げられる
慰謝料の計算や請求自体は被害者だけでも可能ですが、それが実際に相手方の任意保険会社が認める可能性は限りなく低いです。
しかし、弁護士に依頼するだけで、慰謝料や示談金を弁護士基準まで引き上げた金額の獲得が目指せます。

法律の知識と交通事故案件の経験が豊富な弁護士による増額交渉で、相手方の任意保険会社も弁護士基準で計算した金額の示談を受け入れる可能性が高まるでしょう。
弁護士の介入によるその他のメリット
交通事故の損害賠償請求問題の経験が豊富な弁護士に依頼すれば、以下のようなメリットがあります。
- 相手方の任意保険会社との示談交渉を一任でき、やり取りから解放される
- 最終的な受取金額に大きく影響する「過失割合」が妥当かのアドバイスをもらえる
- これまでのノウハウをもとに、被害者一人ひとりの悩みに合ったアドバイスがもらえる
交通事故で坐骨神経痛を負ってしまった方は、まず弁護士への法律相談を活用して、慰謝料の目安、後遺障害認定の申請手続きの流れなど、気になることを聞いてみましょう。
どのような弁護士に相談すべきか迷ったら、交通事故の賠償問題に力を入れているか、後遺障害申請のノウハウを多くもっているかといった点から見極めるのが良いでしょう。以下の関連記事は弁護士選びに役立つ内容なのでご一読ください。
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交通事故で坐骨神経痛になったら弁護士に相談!
交通事故の損害賠償問題は、弁護士が加入するかどうかで結果が大きく変わります。交通事故の被害にあったら、弁護士依頼を視野に入れておきましょう。
弁護士に依頼するタイミングは、なるべく早い方がいいです。示談成立前であれば間に合いはしますが、早めの依頼によって受けられるサポート範囲が広まります。
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アトム法律事務所の弁護士費用については、ホームページ内の「交通事故の弁護士費用|相談無料・着手金無料」でも解説していますが、法律相談時に直接おたずねいただければ、弁護士がわかりやすく説明します。気軽にお問い合わせください。
弁護士費用が心配な方は特約の有無を確認
弁護士費用が心配な方は、弁護士費用特約の有無を確かめてください。
弁護士費用特約とは、弁護士費用を被害者が加入する任意保険会社が支払ってくれるという特約です。詳しくは『交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介』の記事が参考になりますので、あわせてごらんください。
被害者自身で自由に選んだ弁護士に対しても、弁護士特約は適用されるのが通常です。

弁護士費用特約の補償額は各約款ごとに異なりますが、おおよそ弁護士費用300万円、法律相談料10万円を上限とするケースが多いでしょう。
弁護士費用特約を使うだけでは保険等級に影響しないので、保険料の値上がりを気にする必要はありません。弁護士費用特約を使えば自己負担ゼロで弁護士に依頼できる可能性もあるので、しっかり確認しましょう。特約が使えるかどうかお問い合わせ前に確認いただくとスムーズなご案内が可能です。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了