交通事故の慰謝料請求方法と注意点|正しい相場と計算方法も解説

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慰謝料の請求

交通事故の被害者は、基本的に示談交渉により加害者側に慰謝料や賠償金を請求します。状況次第では、調停、ADR、裁判などの手段も必要となるでしょう。

しかし、具体的に何をしたらいいのか、請求できる慰謝料にはどんなものがあるのか、よくわからない方が多いと思われます。

そこで、本記事では慰謝料請求の方法や必要書類、慰謝料請求時の注意点などを紹介しています。
また、どれくらいの金額獲得を目指すべきなのかもわかるように、慰謝料の計算機・計算方法の確認も可能です。

記事の最後では弁護士への無料相談のご案内もしているので、ぜひご利用ください。

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交通事故の慰謝料請求の流れ

まずは、交通事故における慰謝料請求の流れを解説していきます。各段階での注意点も紹介するので、しっかりポイントをおさえていきましょう。

慰謝料の請求から受け取りまでの流れとポイント

交通事故の慰謝料は、基本的に治療や後遺障害等級認定などを経て加害者側と示談交渉することにより受け取ることが可能です。

具体的な慰謝料請求の流れを以下に示します。

示談金の受け取りまでの流れ

慰謝料請求の流れとポイント

  • 事故発生
    • 警察への届け出を怠ると罰則があるので、必ず届け出る
    • ケガをしている場合は、必ず人身事故として届け出る
    • ケガをしていないように感じても、あとから発覚することがあるので念のため病院へ行く
  • 入通院治療
    • 適切な頻度で通院しなければ、慰謝料減額のリスクがある
    • 治療中に相手方任意保険会社から、治療費の打ち切りを告げられることがある
    • ケガが完治すれば、その後示談交渉へ
    • 後遺症が残れば後遺障害申請へ
  • ケガが完治しない場合の後遺障害申請
    • 申請の結果、後遺障害等級が認定されれば、後遺症に対する補償を受けられる
    • 申請方法は2種類ある
  • 示談交渉
    • 基本的に、相手方任意保険会社の担当者と行う
    • 交渉次第で示談金額が変わる
    • 損害賠償請求権の時効前に示談を成立させなければならない

示談交渉についての詳細は後ほど本記事内で解説します。

その他の段階でするべきこと、気を付けるべきことについては、以下の関連記事から確認できます。より理解を深めたいという方はご活用ください。

関連記事

慰謝料の受け取りタイミングは示談成立から2週間後

慰謝料は示談金の一部として示談成立後に支払われます。示談成立から慰謝料の受け取りまでは約2週間ほどかかる見込みです。

つまり、示談交渉がスムーズに進み早く示談が成立すれば、その分早く慰謝料を受け取れます。
しかし、以下のような場合は、いつ示談が成立し、慰謝料がもらえるのかめどが立たない可能性があるでしょう。

  • 加害者側との示談交渉がなかなか進まない
  • 後遺障害認定に時間がかかり、なかなか示談交渉を始められない

示談成立前に慰謝料をもらう方法|被害者請求等

加害者側の自賠責保険会社に直接慰謝料を請求する「被害者請求」という手段をとれば、示談より前に慰謝料や損害賠償金の一部を受け取れます。

交通事故の慰謝料・損害賠償金は加害者側の自賠責保険と任意保険から支払われるのですが、通常はどちらも示談成立後に、任意保険からまとめて支払われます。

しかし、被害者請求をすれば、自賠責保険からの支払い分だけ先にもらえるのです。

ただし、被害者請求でもらえる金額には上限があります。
入通院慰謝料(傷害慰謝料)を例に挙げると、上限額は治療費や通院交通費、休業損害などと合わせて120万円です。
それ以上の金額は、示談交渉後に加害者側の任意保険会社から支払われます。

示談成立前には被害者自身の保険から保険金を受け取ることも可能です。詳しくは以下の記事をご覧ください。

被害者請求以外の方法|内払いと仮渡金

被害者請求以外にも、以下のような方法で示談成立前の請求が可能となっています。

  • 内払い
    示談金の一部を示談成立前に支払ってもらう
  • 仮渡金
    加害者の自賠責保険から、ケガの程度に応じた前払いをしてもらう

内払いを受けるには加害者側との合意が必要となりますが、仮渡金は適切な書類をもとに請求すれば迅速に支払いを受けることが可能です。

支払い方法について詳しく知りたい方は『内払い金・仮渡金を解説|交通事故の慰謝料を示談前に受け取る方法』の記事をご覧ください。

慰謝料の請求方法と注意点|慰謝料の取り方とは

加害者側へ交通事故の慰謝料を請求する方法は、大きく3つに分かれます。

  • 加害者側の任意保険会社との示談交渉
  • 示談交渉が不調の場合における他の手段(ADRや裁判所の利用)
  • 加害者側の自賠責保険会社に対する被害者請求

それぞれについて、詳しく解説していきます。

慰謝料の請求方法(1)示談交渉|流れと交渉の内容

示談交渉とは、相手方の任意保険会社との話し合いによって慰謝料や損害賠償金の金額・過失割合を決めることです。
示談交渉の流れと、交渉の中で話し合う内容を見ていきましょう。

示談交渉の流れ

示談交渉は、次の流れで行われます。

  1. ケガの完治後または後遺障害認定終了後、相手の任意保険会社から示談金額などの提示を受ける
  2. 提示内容について交渉をし、合意に至ると合意内容をまとめた示談書が送られてくる
  3. 示談書に署名・捺印をして、相手方任意保険会社に返送する
  4. 相手の任意保険会社内で事務手続きが終わると、示談金が支払われる

示談交渉で話し合う内容

示談交渉では主に、次の2点についての話し合いが行われます。

  1. 慰謝料・損害賠償金の金額
  2. 過失割合
    過失割合とは、事故発生の責任が加害者と被害者それぞれにどれくらいあるか、割合で示したもの。
    被害者側にも過失割合が付くと、その割合分、慰謝料・損害賠償金が減額される。これを過失相殺という。

慰謝料の計算方法や相場については、本記事内で解説していくのでご確認ください。

過失割合や過失相殺については、以下の関連記事で解説しています。

交通事故被害者にも過失割合が付くことは多く、相手方は過失相殺による減額を狙ってあえて被害者の過失割合を多く見積もる傾向にあります。示談交渉に入る前に理解を深めておくと良いでしょう。

慰謝料の請求方法(2)ADRや裁判所を利用|示談交渉不成立なら

示談交渉における話し合いにより当事者双方の合意が得られない場合は、他の手段により慰謝料の請求を行う必要があります。

示談交渉以外の解決方法としては以下のようなものがあげられます。

  • ADR(裁判外紛争処理機関)において和解のあっせんをしてもらう
    ADRの担当弁護士が仲介に入りつつ話し合いによる解決を目指します
  • 裁判所において調停手続きを行う
    裁判所において調停委員の仲介の下、話し合いを行い解決を目指します
  • 裁判所に訴訟提起を行う
    民事裁判において損害賠償金の内容や金額を裁判所が判断します

ADRにおける和解や調停手続では、示談交渉と同様に当事者双方の合意が必要となりますが、民事裁判では当事者双方の合意がなくても判決により、慰謝料の金額を確定することができます。

また、訴訟手続きは時間や手間がかかるので、話し合いによる解決の可能性がある場合にはADRによる和解や調停手続きを行った方が良いといえるでしょう。

一方、示談交渉における当事者双方の主張内容に大きな違いがある場合には、時間や手間をかけたとしても裁判による強制的な解決が必要といえます。

それぞれの解決方法の手続きに関しては、以下の関連記事において確認可能です。

慰謝料の請求方法(3)被害者請求|手続きの流れと必要書類

被害者請求はすでに紹介したように、加害者側の自賠責保険会社に慰謝料請求することで、示談成立前に慰謝料の一部を受け取れます。

具体的な請求手続きの流れは以下の通りです。

  1. 加害者側の任意保険会社に被害者請求することを伝える
  2. 被害者請求に必要な書類を用意する
  3. 加害者側の自賠責保険会社に書類を提出する
  4. 加害者側の自賠責保険会社が書類を確認して被害者に保険金を支払う

被害者請求に必要な書類は、原則として次の通りです。

被害者請求に必要な書類

必要書類発行者・作成者
支払請求書請求者
請求者の印鑑証明書市区町村役場
交通事故証明書自動車安全運転センター
事故発生状況報告書運転者、被害者など
診断書医師
診療報酬明細書医療機関
通院交通費明細書請求者
死亡診断書または死体検案書*医師
省略の無い戸籍謄本*市区町村役場

*死亡事故の場合に必要

この他にも、仕事を休んだ場合には「休業損害証明書」、後遺障害申請をするなら「後遺障害診断書」など、必要に応じた損害立証証明書が必要です。

被害者請求の手続きをしたくても、これだけの書類を集めるのは大変でしょう。弁護士であれば、被害者請求手続きのサポートが可能なので、手続きの負担を大幅に軽減できます。

被害者請求のより具体的な進め方は、関連記事『交通事故の被害者請求とは?自賠責へ請求すべき?やり方やメリットもわかる』にてご確認ください。

交通事故の慰謝料請求で知っておくべきこと3つ

慰謝料請求において注意すべき点を3つ解説していきます。

(1)交通事故の慰謝料請求には時効がある

交通事故の慰謝料請求には時効があり、時効期間の経過により加害者に対して慰謝料や賠償金を請求する権利を失います。
そのため、時効成立前に示談を成立させなければなりません。

基本的には時効成立前に示談が成立することが多いですが、交渉が行き詰まった場合や後遺障害認定に時間がかかった場合は、時効の成立が迫ってくることがあります。

時効成立までに示談が成立しそうにない場合には時効の成立を阻止することもできるので、弁護士にご相談ください。

では、「後遺症なしの人身事故」「後遺症ありの人身事故」「死亡事故」における慰謝料請求の時効期間と、慰謝料請求にかかる一般的な期間を紹介します。

後遺症なしの人身事故の時効期間

損害賠償請求権の消滅時効:事故日から5年
※2017年4月1日以降に発生した交通事故の場合

慰謝料請求にかかる一般的な期間

治療終了~示談開始1ヶ月程度
示談開始~示談成立1~2ヶ月程度
示談成立~示談金振り込み2週間程度

治療終了から示談開始まで1ヶ月程度かかるのは、示談前に加害者側の任意保険会社が診断書や診療報酬明細書などを取り寄せて示談金を計算するからです。

医療機関にもよりますが、こうした書類は通院が終了したその月の内に入手できるとは限りません。次の月になってから入手できることが多いのです。

後遺障害ありの人身事故の時効期間

損害賠償請求権の消滅時効:症状固定から5年
※2017年4月1日以降に発生した交通事故の場合

慰謝料請求にかかる一般的な期間

症状固定~後遺障害等級認定1~3ヶ月程度
後遺障害等級認定~示談開始1ヶ月程度
示談開始~示談成立1~2ヶ月程度
示談成立~示談金振り込み2週間程度

後遺障害等級認定の結果は、多くの場合1~3ヶ月程度で通知されます。
ただし、高次脳機能障害など等級の判断が難しい場合は、審査に数ヶ月~数年かかることもあるので注意が必要です。

高次脳機能障害に該当する症状について知りたい方は『事故後の記憶障害・性格が変わる・言語障害…高次脳機能障害の症状とは?』の記事をご覧ください。

死亡事故の時効期間

損害賠償請求権の消滅時効:死亡日から5年
※2017年4月1日以降に発生した交通事故の場合

慰謝料請求にかかる一般的な期間

死亡~示談開始2ヶ月程度
示談開始~示談成立1~2ヶ月程度
示談成立~示談金振り込み2週間程度

示談交渉は葬儀や通夜が終わった時点で開始できますが、基本的に四十九日が過ぎてから始められます。
そのため、死亡~示談開始までが2ヶ月程度かかることが多いでしょう。

(2)慰謝料は交渉次第で低額にも高額にもなる

任意保険会社が負担する部分の金額は交渉により増額が必要

すでに解説した通り、交通事故の慰謝料・損害賠償金は、加害者側の自賠責保険と任意保険から支払われます。自賠責保険の支払限度額までの金額は自賠責保険から、それを超える部分は任意保険から支払われるのです。

任意の自動車保険と自賠責保険の関係

自賠責保険からの支払額は法令で決められているので、交渉の余地がありません。
しかし、加害者側の任意保険会社からの支払額は示談交渉次第で低額にも高額にもなります。

加害者側の任意保険会社は当然、少しでも支払額が少なくなるよう低い金額を提示してきますし、被害者側が増額を求めても簡単には応じてくれません。

示談交渉で増額に成功すれば、裁判を起こした場合と同等の金額がもらえることもありますが、増額に失敗すれば、任意保険会社からの支払額がほとんど得られない可能性もあるのです。

示談交渉による慰謝料増額は簡単ではない

「慰謝料・損害賠償金は示談交渉次第で低額にも高額にもなる」とはいえ、加害者側の任意保険会社を相手に十分な金額を獲得するのは非常に難しいでしょう。

加害者側の任意保険会社の担当者は、日々さまざまな被害者・弁護士と交渉を行うプロで、知識もテクニックも豊富だからです。

交渉を優位に進めるためにあえて被害者に不愛想に接してきたり、被害者からの質問に詳しく答えなかったりすることもあり、示談交渉で精神的負担を感じる被害者は多くいます。

示談交渉を弁護士に任せれば、交渉で生じる負担を大幅に軽減できるうえ、被害者側の主張も通りやすくなります。
相手はプロであることを踏まえ、被害者側もプロを立てることがベストなのです。

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(3)相場額の慰謝料請求を行うためには適切な通院が必要

相場額の慰謝料を請求するためには、事故直後に診断を受け、適切な頻度で通院を行うことが必要です。

通院の頻度としては、基本的に3日に1回を目安としてください。
もっとも、医師の指示がある場合にはその頻度に従いましょう。

通院の頻度が必要以上に低いと、通院期間を無理やり伸ばしていると疑われ、慰謝料が減額するおそれがあるのです。

また、通院の際には以下のような点についても注意する必要があります。

  • 整骨院に通う前に医師の許可を受ける
  • 相手方の保険会社から治療費の打ち切りを打診されても通院を検討する
  • 治療のために仕事を休む際には医師から指示を受ける

適切な通院頻度や通院の際の注意点について詳しく知りたい方は『交通事故の被害者は毎日通院した方がいい?通院頻度や期間と慰謝料の関係』の記事をご覧ください。

交通事故で請求できる慰謝料とは?

ここからは、交通事故で請求できる慰謝料について解説していきます。
また、慰謝料以外に請求できる損害についてもわかるようになっています。

請求できる慰謝料は3種類|精神的苦痛への補償

交通事故の慰謝料とは、「交通事故によって被害者が受けた精神的苦痛に対する補償」のための金銭です。

交通事故の慰謝料には、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の3種類があるので、それぞれが具体的に何を補償するのか紹介していきます。

(1)入通院慰謝料

入通院慰謝料は、交通事故による入通院で被害者が受けた精神的苦痛に対する補償として支払われる金銭です。

傷害慰謝料ともいい、交通事故によって受傷していれば、加害者側に請求できます。

  • 治療や手術が怖い、苦しい
  • 痛みやケガによる不自由さを感じる
  • 入通院による時間や行動範囲の制限が生じた
  • 治るのかな?後遺症が残ったらどうしよう…といった不安がある

交通事故後の入院や通院で感じた上記のような苦痛・不安は、入通院慰謝料として加害者側に補償を請求しましょう。

(2)後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、交通事故により後遺障害が残ったことで将来にわたって受け続ける精神的苦痛に対する補償です。

後遺障害慰謝料については、「後遺症が残れば必ず請求できるというわけではない」という点に注意してください。後遺障害慰謝料は、交通事故で残った後遺症に対して「後遺障害等級」が認定されないと請求できないのです。

後遺症と後遺障害の違い

後遺症交通事故によるケガが完治せずに残った症状のこと
後遺障害後遺症のうち「後遺障害等級」が認定された症状のこと

後遺障害等級の認定を受けるためには、申請手続きをして、審査を受けなければなりません。審査の受け方や症状別の慰謝料相場金額については、以下の記事を参考にしてみてください。

(3)死亡慰謝料

死亡慰謝料とは、交通事故によって死亡した被害者とその遺族の精神的苦痛に対する補償のことです。
交通事故の被害者だけではなく、その遺族も支払いの対象となる点が、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料と大きく違います。

なお、請求権者となる遺族とは、親(養父母含む)、配偶者、子(養子含む)のことです。

兄弟姉妹や内縁の妻・夫などでも、親や配偶者、子と同じくらい被害者と関係性が強く、その悲しみも深いと認められれば、死亡慰謝料の対象になります。

物損事故では原則として慰謝料請求できない

交通事故の慰謝料は、人身事故の場合のみ加害者側に請求できます。慰謝料は、「被害者の身体の損傷に伴って生じた精神的苦痛に対する補償」だからです。

物損事故でも愛車が壊れると精神的苦痛を感じると考えられますが、被害者の身体の損傷とはいえません。

そのため、残念ながら物損事故では原則として慰謝料が請求できないのです。

ただし、物損が生じたことで被害者が大きな精神的苦痛を受けていると判断される場合には、慰謝料が認められる可能性があります。

物損事故における慰謝料ができるかどうかについては『物損事故で慰謝料がもらえた事例|原則もらえない理由と獲得を目指す方法』の記事で確認可能です。

慰謝料以外に請求できる損害がある

交通事故の被害者が請求できるのは、慰謝料だけではありません。

慰謝料は交通事故により生じた精神的苦痛に対する金銭的な補償であり、その他の損害については、損害賠償請求が可能です。

そのため、請求できる損害の費目を全て把握しておかないと、示談交渉や被害者請求で請求漏れが出る可能性があります。

損害賠償金の内訳

  • ケガをした場合の費目
    • 治療費、入院費、通院交通費、入通院慰謝料、休業損害、付き添い看護費、診断書等の作成費など
  • 後遺障害が残った場合の費目
    • 後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益、将来介護費など
  • 物損に関する費目
    • 車の修理費、代車費用、休車費用、評価損、その他壊れた物の修理費・弁償代、ペットの治療費など
  • 死亡事故での費目
    • 死亡慰謝料、死亡逸失利益、葬祭関係費など

治療費は、加害者側の任意保険会社が直接病院に支払っている場合が多いでしょう。休業損害も、休業と並行して受け取れる可能性があります。

治療費や休業損害をすでに受け取っている場合、それらは既払い金として被害者請求や示談交渉による支払額からは差し引かれます。

損害賠償金の各費目の計算方法について詳しく知りたい方は、『交通事故の損害賠償請求とは?賠償金の費目範囲や相場・計算方法を解説』の記事をご確認ください。

交通事故の慰謝料は基本的に課税されない

交通事故の慰謝料に対して税金がかかることは原則としてありません。このことは、所得税法9条によって定められています。

ただし、次の場合には税金がかかるので注意してください。

所得税過剰な慰謝料、賠償以外の目的の見舞金、本来経費に計上できるもの
相続税示談後に被害者の方が亡くなった場合の慰謝料・賠償金

慰謝料の税金がかかるケースについて詳しく知りたい方は『交通事故の慰謝料に税金がかかるケース|いくらまで非課税?税金別に解説』の記事をご覧ください。

交通事故で請求できる慰謝料相場・計算方法

慰謝料の相場・計算方法を紹介します。実は、慰謝料は計算方法が3つあるので、しっかり確認していきましょう。

慰謝料計算機なら請求すべき金額がすぐわかる

交通事故の慰謝料相場は、慰謝料計算機で簡単に計算できます。
この計算機でわかるのは、過去の判例に基づいた適正な相場額であり、この後紹介する「弁護士基準」にあたるものです。

慰謝料計算機の結果よりも加害者側の提示額が低い場合は、弁護士に依頼することで増額できる可能性があります。

慰謝料の計算方法|計算基準は3つある

交通事故の慰謝料には自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準といった3つの計算基準があり、どの基準を採用するかで金額は大きく変わります。

自賠責基準交通事故の被害者が受け取れる最低限の計算基準
任意保険基準示談交渉で加害者側の任意保険会社が提示してくる計算基準
計算方法は各保険会社が独自に決めている
弁護士基準弁護士や裁判所が用いる計算基準
裁判基準とも呼ばれる

3つの基準による慰謝料額の大小関係は、次のようになっています。

慰謝料金額相場の3基準比較

自賠責基準と任意保険基準の金額はそれほど変わらず、弁護士基準は自賠責基準や任意保険基準の2~3倍近くになることもあります。

実際に受け取れる慰謝料額は、自賠責基準の金額を最低ラインとし、任意保険基準~弁護士基準の金額となるでしょう。

弁護士基準に近い金額を獲得する方法としては、示談交渉で弁護士を立てることがおすすめです。
なぜ弁護士に依頼すると良いのかについては、本記事の「交通事故の慰謝料請求は弁護士にお任せ」を参考にしてください。

ここからは、慰謝料の計算方法を詳しく解説します。
ただし、任意保険基準の計算方法は各社で異なり非公開なので、金額が近い自賠責基準の計算結果を参考にしてください。

入通院慰謝料の計算方法

入通院慰謝料は、自賠責基準では計算式、弁護士基準では「入通院慰謝料算定表」という表を用いて計算します。
一見難しそうに見えるかもしれませんが、それほど難しくはありませんので、ゆっくりみていきましょう。

自賠責基準での計算方法

自賠責基準では、次の計算式によって入通院慰謝料の金額を算出します。

4300円×入通院日数
※入通院日数は、次のうち少ない方を採用

  • 入院日数+通院期間
  • 入院日数+実通院日数×2

※2020年3月31日以前の事故については、日額4200円
※慰謝料の対象となる日数は、被害者の傷害の態様、実治療日数その他を勘案して決まります。

たとえば入院7日間、実通院日数35日間、通院期間60日だった場合を想定しましょう。
まず、入通院日数を検討します。

  • 入院日数+通院期間=7日+60日=67日
  • 入院日数+実通院日数×2=7日+35日×2=77日

この場合、67日の方が少ないため入通院日数は67日として計算してください。
入通院慰謝料は4300円×67日で、28万8100円となります。

弁護士基準での計算方法

弁護士基準の場合は、「入通院慰謝料算定表」という表をもとに金額を算出します。

表は、軽傷用と重傷用の2種類を使いわけてください。

レントゲン写真やMRI画像といったいわゆる「他覚所見」に異常が写らない打撲、挫傷、むち打ち症などについては軽傷用を、それ以外は重傷用を使います。

通院月数と入院月数の交わるところが入通院慰謝料の金額です。

重傷用

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

軽傷用

軽症・むちうちの慰謝料算定表
軽症・むちうちの慰謝料算定表

通院が1ヶ月と10日のように「端数」がある場合は、表をもとに別途計算をしなければなりません。

ただ、その計算は少々複雑になってしまいます。以下の計算機に入院日数や通院日数を入力する方が早く正確に計算できますので、活用してください。

後遺障害慰謝料の計算方法

後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害等級に応じて決められています。自賠責基準の金額と弁護士基準の金額は、下表でまとめている通りです。

後遺障害慰謝料の相場

等級 自賠責*弁護士
1級・要介護1,650万円
(1,600万円)
2,800万円
2級・要介護1,203万円
(1,163万円)
2,370万円
1級1,150万円
(1,100万円)
2,800万円
2級998万円
(958万円)
2,370万円
3級861万円
(829万円)
1,990万円
4級737万円
(712万円)
1,670万円
5級618万円
(599万円)
1,400万円
6級512万円
(498万円)
1,180万円
7級419万円
(409万円)
1,000万円
8級331万円
(324万円)
830万円
9級249万円
(245万円)
690万円
10級190万円
(187万円)
550万円
11級136万円
(135万円)
420万円
12級94万円
(93万円)
290万円
13級57万円
(57万円)
180万円
14級32万円
(32万円)
110万円

*()内は2020年3月31日以前の事故の場合

同じ等級でも、自賠責基準と弁護士基準で比較した場合、最大1000万円以上も違いがあることがわかります。並べてみると、その差は一目瞭然です。

死亡慰謝料の計算方法

死亡慰謝料の金額の計算方法も、自賠責基準と弁護士基準で異なります。それぞれみていきましょう。

自賠責基準での計算方法

自賠責基準の場合、死亡した被害者本人に対する死亡慰謝料は400万円となります。(2020年3月31日以前の事故については350万円)

被害者本人分の金額に、下表で示す遺族に対する金額を足したものが、自賠責基準での死亡慰謝料です。

遺族扶養家族無し扶養家族あり
1人550万円750万円
2人650万円850万円
3人以上750万円950万円

たとえば、被害者に扶養内の遺族が2人いた場合、死亡慰謝料は400万円+850万円で1250万円となります。

弁護士基準での計算方法

弁護士基準の場合は、家庭内の立場に応じて金額が異なります。
遺族の人数は関係ありません。遺族に対する金額は、下表のものにあらかじめ含まれています。

被害者死亡慰謝料
一家の支柱2,800万円
母親・配偶者2,500万円
独身者・子供2,000万円~2,500万円

ただし、一家の支柱の場合、扶養家族が4人以上いる場合は上記の金額よりも死亡慰謝料が高額になる可能性があります。

交通事故の慰謝料が増額できる場合

ここまで各慰謝料の計算方法を紹介してきましたが、それはあくまでも一般的なものです。
たとえば以下のような事情があれば、通常通りの金額では精神的苦痛を補償しきれないとして、慰謝料が増額される可能性があります。

  • 事故の原因が加害者の重大な交通違反であった
  • 事故後における加害者の態度・言動があまりにも不誠実であり、大きな精神的苦痛を受けた
  • 被害者の親族の経済状況や精神状態が悪化した

(1)加害者の重大な交通違反

事故の原因が加害者の以下のような行為による場合は、社会的非難の大きさや、被害者の精神的苦痛の増加が見込まれることから、慰謝料額が増加する可能性があります。

  • 無免許運転
  • 酒酔い運転
  • 著しい速度違反
  • 赤信号無視

(2)加害者の態度が悪い

事故後における加害者の態度や言動に問題がある場合に慰謝料が増額することがあります。
具体的には、下記のような事実が考えられるでしょう。

  • 加害者に反省の色が見えない
  • 被害者を挑発してくる
  • 不誠実な態度をとる
  • 悪質な態度が事故の被害を拡大させた
  • 事故後、加害者が適切な救護措置を怠った

このような事実があると、加害者の態度によって被害者の苦痛が増大したとして、慰謝料の増額が認められる可能性があります。

(3)被害者親族の経済状況や精神状態の悪化

以下のような事情がある場合には、被害者親族の精神的苦痛が大きいとして慰謝料の増額が認められる可能性があります。

  • 一家の大黒柱が亡くなったために、経済状況の悪化が見込まれる
  • 被害者が死亡したために子供のカウンセリングが必要となった

どのような事情や事実が慰謝料増額の根拠となるのかは明確に決まっているわけではないので、専門家である弁護士に確認してみるのが良いでしょう。

交通事故の慰謝料が減額される場合

交通事故の慰謝料は事情を反映して増額されることがある一方、減額されてしまうこともあります。
どのような場合に減額されてしまう可能性があるのかを確認して、思い当たる部分があれば弁護士に早めに相談してください。

また、慰謝料が減額されるケースはこの記事で紹介する事由だけではありません。些細なことと思わず、不安なことはぜひ弁護士に相談してください。

(1)身体的素因があった

身体的素因による減額とは、被害者が元々持っていた疾患が原因で損害が発生・拡大した場合に、賠償金を減額することです。具体的な事例を挙げてみます。

  • 元々腰痛持ちだったが交通事故により腰痛が悪化した
  • 以前にも事故にあってケガをしたことがあり、今回の事故で同じ症状が再発した

上記のような場合、腰痛や以前の事故によるケガが「身体的素因」とされます。
「身体的素因がなければもう少し被害は小さかったかもしれない」と考えると、事故による被害のすべてを加害者のせいだとは言い切れなくなります。

そのため、慰謝料が減額される可能性があるのです。

ただし、老化による自然な身体的要因、元々の身体的特徴(首が長いなど)は、身体的素因減額の対象とはなりません。
身体的素因と身体的特徴の区別は難しく、裁判にもなった事例があるため、不安な方は弁護士に相談することをおすすめです。

(2)心因的素因があった

心因的素因減額とは、被害者の性格・自発的意欲の欠如 ・賠償神経症(賠償金を多く得たいという願望からくる神経症 )など、被害者の心理的な要因が損害の発生・拡大を招いた場合に、賠償金を減額することです。

それぞれの心因的素因を、具体的な形に落とし込んでみます。

心因的素因具体例
被害者の性格一般的な被害者以上にケガの症状に敏感、神経質
自発的意欲の欠如ケガの回復に対する意欲が見られない、治療に消極的
賠償神経症賠償金を多く得たいという願望から、実際よりも症状が重いと思い込んでいる

特別な理由なく通院回数が異常に少なかったり、実際の症状と自覚症状との差が大きかったりすると、心因的素因減額が適用される可能性があるので、注意してください。

(3)過失割合がついた

過失割合とは、交通事故が起きた責任が被害者と加害者それぞれにどれくらいあるのかを割合で示したものです。
被害者にも過失割合がつくと、基本的にその割合分、慰謝料・賠償金が減額されます。これが過失相殺です。

交通事故では、たとえ被害者であっても過失割合がつくことは珍しくありません。加害者側の任意保険会社が提示する過失割合は被害者分が多めに見積もられている可能性があります。

そのため、加害者側の任意保険会社のいうことを鵜呑みにするのは危険です。

交通事故の慰謝料請求は弁護士にお任せ

スムーズに、十分な金額の慰謝料を請求するには、示談交渉で弁護士を立てることが一番です。
弁護士を立てるとどんなメリットがあるのかを解説します。

慰謝料請求を弁護士に相談するメリット

慰謝料請求を弁護士に依頼するメリットには、慰謝料が早くもらえる・慰謝料額がアップする・ストレスや不安から解放されるという3つがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

交通事故の慰謝料が早くもらえる

交通事故の慰謝料は、基本的に示談成立後に振り込まれます。
そのため、示談が長引くとその分慰謝料獲得が遅くなります。

しかし、弁護士が示談交渉を行うと交渉がスムーズに進むため、より早く慰謝料を受け取れる可能性が高まるのです。

また、もし示談交渉が長引いた場合でも、示談成立前にお金を受け取る被害者請求の方法についてアドバイスを受けられます。
少しでも早くお金を受け取りたいという方は、弁護士に交渉を依頼することがおすすめです。

慰謝料額がアップする

弁護士に示談交渉を依頼すると、相場額である弁護士基準での金額を主張することができます。

弁護士基準の金額は高額であるため、被害者自身が主張しても聞き入れてもらえる可能性が非常に低いものの、弁護士が交渉をすると加害者側の任意保険会社の態度が軟化する傾向にあります。

そのため、より高い金額で示談が成立する可能性が高いのです。

ストレス・不安から解放される

弁護士に示談交渉を依頼すると、被害者は加害者側の任意保険会社とやり取りする必要がなくなります。
また、示談交渉の進み具合や加害者側の主張については、弁護士がわかりやすく報告・解説するので、安心です。

そのため、仕事や家事の最中に加害者側の任意保険会社に連絡を取る手間がなくなり、よく理解できないまま示談が進んでしまう不安もなくなります。

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アトムがお財布にやさしい理由

交通事故の慰謝料請求でお困りの場合は、アトム法律事務所にご相談ください。

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アトム法律事務所は、金銭的な負担なく弁護士への相談や依頼を行える可能性があります。
その理由は、以下の2つです。

  1. 無料相談を受け付けている
  2. 着手金は原則無料・弁護士費用後払い

アトム法律事務所では交通事故の被害者を対象とした無料相談を行っています。

また、相談や依頼の際に事務所へ足を運ぶ必要がないので、ケガや仕事などで事務所までお越しいただけない方にも気軽に相談が可能です。

弁護士費用特約を利用できれば、相談料や弁護士費用を加入している保険会社に負担してもらえるので、弁護士に気軽に依頼できます。

着手金は原則無料・弁護士費用後払いとなっています。示談金獲得前の段階で大きなお金を支払う必要がないので、ご安心ください

また、無料相談時には、弁護士から費用倒れにならないかきちんとご案内いたしますので、心配し過ぎる必要はないでしょう。

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交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介

アトムの弁護士と解決実績

弁護士といっても交通事故に強い弁護士、刑事事件に強い弁護士といったように、それぞれ強みがあります。
アトム法律事務所には、交通事故案件に強い、経験豊富な弁護士が多数在籍しているため、安心してご依頼ください。
実際の増額実績をご紹介します。

1180万円から1500万円への増額

傷病名あばら骨折、右手の骨折(右橈骨遠位端骨折、右環指中手骨骨折、多発肋骨骨折等)
後遺障害の内容手首関節と薬指の可動域制限
後遺障害等級11級

96万円から288万円への増額

傷病名足小指骨折
後遺障害の内容足小指の神経症状
後遺障害等級14級9号

441万円から2153万円への増額

傷病名足首骨折
後遺障害の内容足首の可動域制限
後遺障害等級10級11号

この他にも「交通事故の解決事例」ページでは、アトム法律事務所の弁護士が実際に解決に導いた事例をまとめていますので、ご興味のある方はぜひ参考になさってください。

アトム法律事務所には、どれくらいの慰謝料・賠償金額が妥当なのか、加害者側の任意保険会社の提示額にはどれくらいの増額の余地があるのかといったご相談も多数寄せられています。

まずはお気軽にご相談ください。

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アトム法律事務所では、90%以上のご依頼者様にご満足いただいています。
弁護士への相談は初めてで緊張されている方や、難しい状況にあり悩んでいる方のお力になれるよう、弁護士・事務員一同努めております。

まずは無料相談をご利用ください。

最後に、実際にご依頼者様から頂いたお手紙を一部ご紹介します。

始めての経験で右も左も解らない状態でしたので、とても助かりました。

保険会社からの金額も妥当なものかわらなかったので相談しました。結果、4倍もの金額が出て、おどろきました。

思っていたよりも多い示談金でしたので、満足です。

ご依頼者様の実際の声を他にも知りたい方は「ご依頼者からのお手紙」のページをご覧ください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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