道路交通法違反の一覧!人身事故の違反点数や反則金・罰則・免停を解説

この記事でわかること
道路交通法とは交通ルールを定めた法律で、この法律に違反することを「道路交通法違反」といいます。道路交通法違反は、軽微なものから重大なものまでさまざまです。
違反の種類や状況によって、違反点数や反則金、罰金などの扱いが異なります。
本記事では、道路交通法違反にあたる行為の種類や、それぞれの違反点数・反則金・罰則などを解説していきます。
また、違反点数による免許停止や免許取り消しの基準についても紹介します。
目次

道路交通法違反とは?
道路交通法は、道路の危険防止と交通の安全・円滑をはかるために作られた法律です。以下の条文を確認しておきましょう。
この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする。
道路交通法第1条
自動車・バイク・自転車に乗る人、歩行者など道路を使うすべての人にとって、安全でスムーズな交通状態を実現するために道路交通法はあります。
自動車の進化や電動キックボードなど新しい乗り物の登場、スマートフォンの普及など、時代背景や社会情勢にあわせて都度改正が行われている法律です。
道路交通法に違反すると、以下のようなペナルティがあります。
- 違反点数の加算
- 反則金の支払い
- 刑事罰(罰金刑・懲役刑・禁固刑など)
道路交通法違反の違反点数の考え方
違反点数とは、交通違反や交通事故ごとに定められている所定の点数のことです。過去3年間の累積した点数が一定基準に達すると、免許の停止や取消といった処分が行われます。
違反点数は大まかにいうと、違反行為の種別に付する「基礎点数」に、交通事故を起こした場合に付する「付加点数」が加算されていく仕組みです。
なお、付加点数が加算されるのは原則、人身事故のみです。
違反点数の考え方 まとめ
- 基礎点数:道路交通法に違反すると加点される
- 付加点数:人身事故を起こすと加点される
- 過去3年間の違反点数(基礎点数+付加点数)が一定基準に達すると処分が行われる。
- 道路交通法違反のみで、交通事故は起こしていない場合、加算されるのは基礎点数のみ。
(例:検問で飲酒運転が発覚した) - 物損事故には付加点数がない。道路交通法に違反していた場合のみ、基礎点数が加算される。
道路交通法に違反すると基礎点数が加算
主な道路交通法違反ごとの違反点数は、以下のようになっています。
違反内容 | 違反点数 |
---|---|
一時停止無視 | 2点 |
スピード違反 | ・50km以上:12点 ・30km以上50km未満:6点 ・25km以上30km未満:3点 ・20km以上25km未満:2点 ・20km未満:1点 |
飲酒運転 | ・酒酔い運転:35点 ・酒気帯び運転(呼気中アルコール濃度0.25mg以上):25点 ・酒気帯び運転(呼気中アルコール濃度0.25mg未満):13点 |
ながらスマホ | ・交通の危険:6点 ・保持:3点 |
信号無視 | ・赤色等:2点 ・点滅:2点 |
ひき逃げ | ・39点~57点 (安全運転義務違反:2点+付加点数:2点~20点+救護義務違反:35点) |
当て逃げ | ・7点 (危険防止等措置義務違反:5点+安全運転義務違反:2点) |
あおり運転 | ・著しい交通の危険:35点 ・交通の危険のおそれ:25点 |
参考:警視庁「交通違反の点数一覧表」
人身事故を起こすと付加点数が加算
人身事故を起こした場合は付加点数が加算されます。
付加点数は、人身事故の発生原因や被害者のケガの度合いによって変わります。
人身事故の規模ごとの付加点数
- 死亡事故:20点
- 後遺障害が残る傷害事故:13点
- 傷害事故:3点~9点
被害者に過失があるケースや、加害者の不注意が大きくないケースでは付加点数が減少します。
交通事故の付加点数について詳しくは、警視庁「交通事故の付加点数」をご覧ください。
違反点数による免停・取消処分の基準
過去3年間の、累積違反点数による行政処分は以下の通りです。
違反回数 | 停止処分 | 取消処分 |
---|---|---|
0回 | 6点~14点 | 15点以上 |
1回 | 4点~9点 | 10点以上 |
2回 | 2点~4点 | 5点以上 |
3回 | 2点~3点 | 4点以上 |
4回以上 | 2点~3点 | 4点以上 |
- 停止処分:処分期間中は運転ができない。
- 取消処分:免許そのものが失効する。処分期間が明けたら再取得できる。
停止処分や取消処分の期間は、回数に応じてそれぞれ異なります。
たとえば、違反回数が0回の人がスピード違反で違反点数6点となった場合は、30日間の免許停止処分です。
また、違反回数が2回の状態で当て逃げをして違反点数が7点となった場合は、1年の免許取り消し処分です。
詳しくは警視庁「行政処分基準点数」をご覧ください。
【コラム】道路交通法違反の罰金と反則金の違い
道路交通法違反をすると、罰金や反則金といったお金を支払うことになる場合もあります。
罰金は刑事処分のいくつか種類があるうちのひとつで、反則金は行政処分のことです。
内容 | |
---|---|
罰金 | 刑事処分の一種。刑事裁判で決まる刑罰であり、前科となる。 |
反則金 | 行政処分の一種。反則金の納付により刑事責任を免れる制度。 |
反則金の金額は一番安くて3,000円、一番高くて40,000円で、「反則行為の種類」と大型車・普通車・二輪車・小型特殊車・原付車別の「車両の種類」で決められています。詳しくは警視庁「反則行為の種別及び反則金一覧表」をご覧ください。
道路交通法違反といっても軽微なものから重大なものまであります。原則的な考え方をすれば、道路交通法違反は刑事処分の手続きにのせることになりますが、件数も多くすべてを対応しているとキリがありません。
そこで、軽微な違反を迅速に処理するために設けられたのが反則金という制度です。
なお、違反の内容によっては刑事処分として懲役・禁錮といった刑事罰が科せられる可能性もあるでしょう。
反則金を命じられても納付しない場合や、交通違反の処分に納得できない場合などは、刑事手続きへと移行してしまうので注意してください。
道路交通法違反ごとの違反点数・反則金・罰則
いくつもある道路交通法違反のなかから抜粋して、主な違反行為を行った場合の「違反点数・反則金・科される可能性のある罰則」を解説します。
ひとつずつ、どのような違反行為なのかみていきましょう。
一時停止無視
一時停止無視のペナルティ
- 違反点数:2点
- 反則金:
普通車の場合は7,000円
二輪車の場合は6,000円 - 刑事罰:3か月以下の懲役または5万円以下の罰金
一時停止無視とは、信号がない交差点などで一時停止の標識があるにもかかわらず一時停止しない違反のことです。
一時停止無視の違反は、自動車だけでなく、自転車や原付バイクなども対象です。もっとも、自転車に限っては違反による反則金は設定されていません
一時停止無視による事故について詳しくは、関連記事『一時停止無視による事故の過失割合!停止線のみ・標識なしの場合も解説』をご覧ください。一時停止無視の基本的な意味や事故の過失割合について解説しています。
スピード違反
スピード違反のペナルティ
- 違反点数:1点~12点
- 反則金:
普通車は9,000円~35,000円
二輪車は7,000円~30,000円 - 刑事罰:6か月以下の懲役または10万円以下の罰金
(一般道路で30km以上・高速道路で40km以上超過の場合)
スピード違反とは、道路交通法などで定められている最高速度を超えたスピードで走行する違反のことです。正式には「速度超過違反」と呼ばれます。
反則金の金額は、超過した速度に応じて異なります。
関連記事『スピード違反による事故の過失割合|故意の有無や死亡事故かどうかは関係ある?』では、スピード違反による事故の過失割合について解説しています。過失割合は最終的に受け取れる賠償金の金額に影響を与えるので、気になる方はあわせてご確認ください。
飲酒運転
飲酒運転のペナルティ
- 違反点数:13点~35点
- 反則金:なし
- 刑事罰:
酒気帯び運転は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金
酒酔い運転は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金
飲酒運転とは、読んで字のごとくお酒を飲んで車を運転する違反行為です。飲酒運転は、「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の二つにわけられます。
- 酒気帯び運転:血中や呼気中に一定以上のアルコールが検出される場合
- 酒酔い運転:アルコール濃度に限らず、アルコールの影響で正常な運転ができない恐れがある場合
なお、飲酒運転に反則金の適用はありません。
飲酒運転について、さらに深掘り解説したこちらの関連記事『飲酒運転の法律知識|同乗者・自転車・二日酔いでも罰則の対象になる』もおすすめです。
ながらスマホ
ながらスマホのペナルティ
- 違反点数:3点または6点
- 反則金:なし
- 刑事罰:
ながらスマホをした場合は、6か月以下の懲役または10万円以下の罰金
ながらスマホで事故を起こした場合は、1年以下の懲役または30万円以下の罰金
ながらスマホとは、走行中にスマホやカーナビなどを操作したり注視して運転する違反行為です。
ながらスマホで事故を起こした場合、反則金の適用はありません。
ながらスマホについて詳しくは、関連記事『ながらスマホによる事故|罰則があるのはどんな行為?』をご確認ください。
信号無視
信号無視のペナルティ
- 違反点数:2点
- 反則金:
普通車は9,000円(点滅信号無視は7,000円)
二輪車は7,000円(点滅信号無視は6,000円) - 刑事罰:
過失の場合は、2万円以下の罰金
故意の場合は、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金
信号無視とは、信号機が表示する信号や警察官などの手信号に従わない違反行為です。自動車やバイクなどに限らず、自転車や歩行者も指示に従わなければなりません。
反則金の金額は、信号機の色や点滅に応じて異なります。
関連記事『信号無視による事故の過失割合は?10対0にならない場合の理由もわかる』では、信号無視による事故パターン別の過失割合について解説しています。
ひき逃げ
ひき逃げのペナルティ
- 違反点数:39~57点
- 反則金:なし
- 刑事罰:
救護義務違反の場合は、10年以下の懲役または100万円以下の罰金
報告義務違反の場合は、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金
ひき逃げとは、人が死傷するような事故があったにも関わらず必要な措置を講じずに現場から立ち去る行為のことです。
ひき逃げと当て逃げは、被害を受けたのが人か物かの違いですが、いずれも事故後に必要な措置を行わなかった点が共通します。
なお、ひき逃げに反則金の適用はありません。
関連記事
当て逃げ
当て逃げのペナルティ
- 違反点数:7点
- 反則金:なし
- 刑事罰:
危険防止措置義務違反の場合は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金
報告義務違反の場合は、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金
当て逃げは、人の死傷はなく車や物などとの事故があったにも関わらず必要な措置を講じずに現場から立ち去る行為になります。
通常、物損事故には違反点数が付きませんが、逃げてしまったことにより、危険防止措置義務違反と安全運転義務違反に該当する可能性があります。それぞれの違反点数は5点と2点で、両方とも該当すると認められれば7点の違反点数になります。
なお、当て逃げに反則金の適用はありません。
関連記事
当て逃げされた場合の対処法|慰謝料請求や示談の方法についても解説
あおり運転
あおり運転のペナルティ
- 違反点数:25点または35点
- 反則金:なし
- 刑事罰:3年以下の懲役または50万円以下の罰金
(妨害運転によって著しい交通の危険を生じさせると「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」)
あおり運転とは、前方車両や周囲の車両に対して威嚇・挑発する危険な運転のことです。正式には「妨害運転」と呼ばれます。
道路交通法では、無意味に対向車線にはみ出す・むやみに急ブレーキをふむ・車間距離を極端につめるなどの10項目が違反行為として取り締まりの対象となっています。
あおり運転に反則金の適用はありません。
関連記事『あおり運転をされたらすべき対応』では、あおり運転された時にどう対処すればいいのか、あおり運転の被害にあわないための対策などについて解説しています。
道路交通法違反による事故と賠償金
道路交通法違反をはじめ、交通事故によって損害を受けたら事故相手に対して損害賠償請求が可能です。事故で請求可能な賠償金について解説します。
事故で請求できる賠償金一覧
交通事故で怪我を負うなど損害を被ったら、治療費・休業損害・入通院慰謝料などを請求できます。
さらに、怪我が完治しなかった場合は後遺障害等級の認定を受けることで、逸失利益・後遺障害慰謝料を追加で請求可能です。

どのような方でも共通して請求することになる主な項目は以上の通りです。
このほかにも、人それぞれ事故で被る損害は異なりますので、請求に漏れがないようしっかりと把握しておく必要があるでしょう。どのような損害を請求できるのか示談金の内訳について知りたい方は『交通事故の示談金|内訳・金額から示談交渉まですべて解説』の記事も参考にご覧ください。
また、慰謝料と逸失利益に関しては、治療期間や後遺障害認定の有無、年齢などを入力するだけで、目安の金額を計算できます。以下の慰謝料計算機をお使いください。
あくまで目安にはなりますが、自身の損害がいくらなのかある程度把握するのに役立ちます。
もし、相手方の任意保険会社から提示された金額よりも、計算機の結果の方が高額になるなら弁護士に一度相談してみるのがいいでしょう。弁護士が示談交渉を代わりに行うことで、増額の可能性が高まります。
道路交通法違反があると慰謝料が増額する?
事故を起こした加害者に、故意もしくは重大な過失が認められるような道路交通法違反があれば、慰謝料が増額される可能性があるでしょう。
著しいスピード違反、飲酒運転、ひき逃げなどの場合は、慰謝料が増額されやすい傾向にあります。また、事故後に加害者が悪態をついたり、嘘の証言をしたりするなど不誠実な態度があった場合も、慰謝料増額の可能性があるでしょう。
道路交通法違反による事故にあったら?
道路交通法違反による事故で怪我を負うなどの被害を受けたら、弁護士に相談しましょう。
相手方が任意保険に加入している場合、示談交渉の相手は保険会社の担当者になるのですが、被害者だけで対応していると適切な金額の示談金を提示してきません。
適切な金額の示談金を受け取るためには、弁護士にご相談ください。アトム法律事務所では、弁護士による無料の法律相談を行っています。

法律相談の予約受付は24時間いつでも可能です。電話だけでなく、LINEやメールの窓口も用意していますので、使いやすいツールからお問い合わせください。

なお、交通ルールのなかには意外と知られていないものもありますが、「知りませんでした」という言い訳は通用しません。
関連記事『【必見】意外と知らない交通ルール!「違反だと知らなかった」は通用しない』では、「歩行者妨害違反」「追い付かれた車両の義務違反」「交差点優先車妨害」といった交通ルール違反の内容や罰則を紹介しているので、参考にしてみてください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了