【必見】意外と知らない交通ルール!「違反だと知らなかった」は通用しない

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意外と知らない

「交通違反になるとは知らなかった」という声も多くみられるほど、交通ルールのなかには「意外と知られていない」「軽視されがち」なルールがあります。

交通ルールは「知らなかった」では済まされず、罰金、反則金、違反点数が規定されています。

また、事故被害者の方からは「事故相手の運転が乱暴だったから、相手の過失のほうが大きいのでは?」と相談を受けることも多く、実際に交通違反の有無は交渉においても着目すべき点です。

この記事では、意外と知らない交通ルールの中から、「歩行者妨害違反」「追い付かれた車両の義務違反」「交差点優先車妨害」を取り上げて解説します。

歩行者妨害違反|車両は横断する歩行者を妨げてはならない

歩行者優先の考え方から、横断歩道を横断していたり、これから横断しようとしたりする歩行者に対しては、車側が一時停止せねばならず、横断を妨げてはいけません。

歩行者妨害とされる行為の内容と罰則についてみていきましょう。

歩行者妨害違反とされる行為

歩行者妨害は、「横断歩行者等妨害等違反」という違反行為です。

歩行者妨害違反とされる行為

歩行者妨害とは、歩行者の横断を妨害する行為のことです。横断歩道上だけでなく、横断歩道のない交差点においても歩行者妨害は成立します。(見通しから横断しようとする歩行者がいないことが明らかな場合は除外)

歩行者側が待ってくれている、横断する気配がないようだ、このままスピードを緩めることなく行ってしまえというような行為は交通ルールに違反するものです。

また、わざとではなく「歩行者の存在に気付かなかった」という場合でも、歩行者妨害にあたる可能性はあります。横断歩道に接近する場合には十分に徐行し、基本的には停止できるような速度で進行せねばなりません。

道路交通法をチェック

道路交通法は、道路における危険の防止、交通安全の円滑化、交通に起因する障害の防止を目的としています。

歩行者妨害については道路交通法38条第1項から第3項にかけて規定されています。以下は道路交通法の該当箇所からの引用です。

車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。

道路交通法第38条1項

車両等は、横断歩道等(当該車両等が通過する際に信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等により当該横断歩道等による歩行者等の横断が禁止されているものを除く。次項において同じ。)又はその手前の直前で停止している車両等がある場合において、当該停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとするときは、その前方に出る前に一時停止しなければならない。

道路交通法第38条2項

車両等は、横断歩道等及びその手前の側端から前に三十メートル以内の道路の部分においては、第三十条第三号の規定に該当する場合のほか、その前方を進行している他の車両等(特定小型原動機付自転車等を除く。)の側方を通過してその前方に出てはならない。

道路交通法第38条3項

歩行者妨害の罰則

歩行者妨害は違反点数と反則金の罰則が規定されており、警察も厳しく取り締まっている交通ルール違反といえます。

歩行者妨害の罰則、反則金、違反点数については下表のとおりです。

歩行者妨害の罰則・反則金・違反点数

処分
罰則3月以下の懲役又は5万円以下の罰金
反則金大型車:1万2,000円
普通車:9,000円
二輪車:7,000円
原付車:6,000円
違反点数2点

歩行者が高齢者や子どもであればドライバーの過失はさらに大きい

最も優先されるべき歩行者ですが、とくに子どもや高齢者が被害者となったときには、ドライバーの過失は通常より大きいものと判断されます。

関連記事では横断歩道における事故の過失割合と慰謝料について、そして子どもや高齢者が事故の被害者となった場合の解説を行っています。あわせてお読みください。

追いつかれた車両の義務|追い付かれたら追い越しさせねばならない

道路を走行中に追いつかれた車両は、追い越そうとしている車両に追い越しをさせる義務があります。

追い越し時には接触事故のリスクが高く、注意散漫になって他車両との事故を招く恐れもあることから、無理な追い越しなくスムーズに交通を維持させるための決まりです。

具体的にどんな行為が違反とされるのか、義務が生じるケースや罰則についてみていきましょう。

どんなときに追いつかれた側が譲らないといけないのか

以下のような条件にある場合、追いつかれた車両の義務を負うことになります。

条件

  • 法定の速度内において、自車よりも最高速度が高い車両に追いつかれた場合
  • 最高速度が同じくらいもしくは遅い車両に追いつかれた場合
    • 後方車両よりも、前方の自車が遅く進行しようとしている
    • 追いついてきた車両が追い越しをしようとしている

条件(車両通行帯なし)

  • 法定の速度内において、自車よりも最高速度が高い車両に追いつかれた場合
  • 最高速度が同じくらいもしくは遅い車両に追いつかれた場合
    • 後方車両よりも、前方の自車が遅く進行しようとしている
    • 道路の中央との間に十分な広さがなく、後方車両が道路の右側にはみ出さずには追い越し・追い抜きできないとき

最高速度とは、車両ごとの法定最高速度のことです。

たとえば、一般道路では自動車と原動機付自転車では最高速度に違いがあります。一般道において自動車が先行車であり、原動機付自転車が後方車であるときは、この義務が生じることは想定されません。

一方で、法定最高速度が同じ自動車同士なら、走行している車両の速度によっては双方に義務が生じる状況が生まれます。

追いつかれた車両の義務違反行為

追いつかれた車両の義務違反にあたる行為の例は以下のとおりです。

追いつかれた車両の義務違反行為例

  • 車線変更を繰り返してに追い越すことができないようにした
  • 追い越したいことは分かっていたが、あえてゆっくり走行を続けた

こうした行為はスムーズな交通を妨げるものとして、追いつかれた車両の義務違反とされるでしょう。

追いつかれた車両の義務違反の罰則

追いつかれた車両の義務違反については、反則金と違反点数が規定されています。

追いつかれた車両の義務違反については、反則金6,000円(普通車・二輪車の場合)、違反点数は1点です。

追いつかれた車両の義務違反の罰則や反則金の詳細は下表のとおりです。

追いつかれた車両の義務違反の罰則・反則金・違反点数

処分
罰則5万円以下の罰金
反則金大型車:7,000円
普通車:6,000円
二輪車:6,000円
小型特殊車:5,000円
原動機付自転車:5,000円
違反点数1点

交差点優先車妨害|右折車・左折車は直進車を妨害してはいけない

交差点を通行する車両には優先順位が一定程度定められています。最も優先されるのは直進車両、左折車両、最後に右折車両の順です。

交差点優先車妨害の行為の具体例と罰則についてみていきましょう。

交差点優先車妨害の行為

直進車がいるにもかかわらず右折車両が先に右折をした場合、交差点優先車妨害となります。これは、交差点における優先順位に反しているためです。

重要

交差点における優先順位は、直進、左折、右折の順となる

右直事故は交通事故の中でも多い

交差点は交通事故が起こりやすいですが、とくに右直事故(右折車と直進車の接触事故)はよく起こる事故形態です。

交差点では直進車が優先されるため、基本的には右折車の過失割合が高くなる傾向にあり、右直事故の過失割合は信号のある交差点であれば基本的に直進車2:右折車8とされています。

この基本の過失割合に対して、事故の個別事情が反映されて過失割合が決まる流れです。

交通事故の過失割合は示談金全体に影響します。基本の過失割合をもとにした交渉が必要ですので、不当な過失割合が押し付けられないように注意すべきでしょう。

優先道路の考え方にも注意

交差点で衝突しそうになってヒヤリとしたり、実際に出会い頭での衝突事故が起こってしまったりすることがあります。

交差点は見通しが悪いことが多いので、ミラーの確認だけで済ませず、十分に徐行をおこない、いつでも停止できる速度で走行しましょう。

なお、交差点において知っておきたい交通ルールとして、道路そのものに優先関係がある「優先道路」の存在や、「左方優先」という考え方があげられます。

左方優先とは自分の左側から来た車の通行を優先すべきというルールです。

関連記事では、こうした優先道路や優先関係の考え方についてまとめていますので、あわせてお読みください。

実際に出会い頭で事故にあってしまった場合の慰謝料や過失割合は、関連記事『出会い頭事故とは?過失割合の決まり方と信号や一時停止違反などの影響』を参考にしてください。

交差点優先車妨害の罰則

交差点における基本的な優先順位を守らず、優先車の走行を妨害した場合は反則金6,000円(普通車・二輪車の場合)、違反点数は1点です。

詳細については下表にまとめています。

交差点優先車妨害の反則金と違反点数

処分
反則金大型車:7,000円
普通車:6,000円
二輪車:6,000円
小型特殊車:5,000円
原動機付自転車:5,000円
違反点数1点

被害者が意外と知らない交通事故の対応のポイント

アトム法律事務所では交通事故の被害者の方に向けて、保険会社への慰謝料請求や過失割合の交渉などをサポートしています。

交通事故の損害賠償請求に力を入れている弁護士の視点から、交通事故の被害者が意外と知らない対応時のポイントについてまとめていますので、あわせてお読みください。

反則金や罰金は被害者に対して支払うものではない

反則金とは行政処分のひとつで、比較的軽微な交通違反に対して科される処分です。「交通反則通告所」が交付されたら、指定された金融機関に反則金を納付します。

一方で重大な交通違反においては反則金では済まず、罰金や、懲役刑が科されることもあります。

なお、加害者が支払う反則金や罰金は被害者に支払われるものではありません。事故の被害にあったときの損害賠償請求については、相手の保険会社との交渉によって金額を決めることになります。

どんな損害賠償金がもらえるのかは関連記事出くわしく解説しているので参考にしてみてください。

交通事故の過失割合は交渉で決めるもの

道路交通法では様々な交通上のルールを定めていますが、事故に対する過失割合について定めているものではありません。事故の過失割合は原則として当事者同士の話し合いで決まります。

もっともゼロベースで話し合うわけではなく、これまでの事例・判例を集めた「判例タイムズ」という書籍を用いて話し合うことが多いです。

相手方の保険会社は交渉に慣れており、「判例タイムズ」の存在をよく知っているため、被害者よりも豊富な交渉スキルと知識量で過失割合の判断を迫ってくるでしょう。

被害者としても弁護士に依頼をして、法律の専門家の目線から過失割合の交渉をしてもらうことをおすすめします。

交通事故の示談はその場でしてはいけない

交通事故の示談は事故現場で済ませてはいけません。

その場で示談してはいけない理由

  • 事故直後は大丈夫だと思っても、思わぬ症状が出ることがある
  • 保険会社が事故発生を認めず、対応をしてくれないこともある
  • 相手が「治療費は払う」といっても、保険会社が拒否したり、相手が雲隠れすることもある

仕事や学校に遅れそうで時間がない、自分にも非があるので穏便に済ませたいなどと思っていても、適切に対処することが必要です。

事故対応は当事者にならないとわからないものです。関連記事も参考にして、事故後の適切な対応を心がけてください。

交通事故の慰謝料は弁護士による増額交渉で変わる

交通事故の慰謝料は、保険会社が提示してくる金額では不十分であることがほとんどです。

同じ交通事故であっても、保険会社が算定するときには自賠責基準や任意保険基準の慰謝料額にとどまります。

しかし、弁護士基準という慰謝料額まで引き上げることができれば、法的に正当な金額へ近づけることができるのです。

慰謝料金額相場の3基準比較

ただし弁護士基準については裁判で認められうる金額になるので、示談交渉段階では被害者がいくら「弁護士基準を知っている」と主張しても認めてもらえません。

示談交渉段階で弁護士を立てることで、「示談交渉が決裂したら裁判も辞さない」と暗に示すことができ、より正当な慰謝料を受け取ることにつながるのです。

交通事故の多くは、弁護士が交渉することで慰謝料を増額できる可能性が高いといえます。弁護士に依頼するメリットの詳細は関連記事をご覧ください。

まとめ|意外と知らない交通ルールは他にもある

この記事で紹介した意外と知らない交通ルールは、「歩行者妨害違反」「追い付かれた車両の義務違反」「交差点優先車妨害」でした。

交通ルールは意外と知られていないことも多いです。そのため、自身が歩行者となったときには「歩行者妨害は違反だから、車が止まってくれるだろう」と周囲を確認せずに横断を開始することは避けてください。

交通ルールを知らない人・軽視する人が多くいるということを前提に行動することも、自分を守るために必要な行動です。

交通ルールは他にも数多くあり、意外と知られていないルールや、軽視されがちなルールは多数あります。運転免許証を取得したときの初心を忘れず、自身を守るためにもルールを意識した運転を心がけてください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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