トンネル内事故の対処法や防止方法。事故の損害賠償金内訳も解説
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トンネル内で起こる交通事故の結果、火災が発生したり、死傷者が出たりすることがあります。
とくにトンネル内では、前方車両に気付くのが遅れて猛スピードで追突したり、壁にぶつかった自動車に巻き込まれて火災が発生したりと、重大な事故につながるリスクも高いものです。
トンネル内で事故が起こった時の対処法や事故のリスク、被害者になった場合の損害賠償請求の流れや損害賠償金の内訳について解説します。
目次
トンネル内で事故にあったときの避難時の対応
トンネル内で事故にあったときには、後方車両に配慮して安全に停車する、道路管制センターに通報する、安全に非難するという3点がポイントです。
それぞれのフェーズごとに注意点をみていきましょう。
安全に車両を停止する
安全に車両を停車する手順は以下の通りです。
- ハザードランプなどで、後続車に停車の合図をする
- できるだけ非常駐車帯に車を入れ、サイドブレーキをかけてエンジンを切る
- 車線上に停車した場合は、停止表示板を置きいて後続車にわかるようにする
- 非常電話で道路管制センターに通報して、指示に従う
二次被害を防ぐためにも、慌てず慎重な行動が求められます。
火災発生の際はキーは残して逃げる
車を道路の左端に寄せて停車し、サイドブレーキをかけてエンジンを切ったら、キーは残したままにして、非常口から避難してください。
車のロックをして鍵を持って離れると、その後の救護活動の難易度が高くなるためです。
鍵は目につきやすいダッシュボードの上などに置くことが望ましいとされています。
道路管制センターに通報する
トンネル内には、押しボタン式通報装置が50m間隔で、非常電話が200m間隔で設置されています。
押しボタン式装置はランプがつくまで押すことで、自動的に火災を知らせることも可能です。
こうした設置装置を活用して、道路管制センターに事故の発生を報告してください。
道路管制センターは、交通管理帯への指示、警察や消防への出動要請、道路上の表示板などでの情報提供、施設の制御などを行う機関です。
煙や有毒ガス、火災や爆発の危険から身を守る
トンネルは狭いので、煙がすぐに充満する恐れがあります。
視界が見えづらくパニックを起こしてしまいがちですが、煙や有毒ガスを吸い込まないように身をかがめて、鼻と口元を布で覆って避難しましょう。
火災が起きた場合、初期消火が効果的とされています。
しかし、無理な行動はせず管制センターの指示に従うようにしてください。
安全な場所に避難する
トンネル内には、非常口や避難通路が設置されています。
非常口や避難通路に避難することで、二次被害を防ぎましょう。
車外に出る際にも、他の人や車両と接触しないように、安全に注意して行動してください。
なお、高速道路上での事故は、車中に長くとどまったり、道路上ではねられるといった事故を防ぐこともポイントです。
高速道路で事故にあったときの対応や、料金所付近での事故の過失割合については、関連記事『高速道路で事故にあった時の対処法|料金所付近の事故の過失割合は?』でも解説しています。
トンネルで事故が起こりやすい理由と事故防止の考え方
追い越しや車線変更の危険性が高い
トンネル内では、前方の車両を追い越す目的で進路を変更したり、前方車両側面を通過する行為は原則として禁止されています。(道路交通法第三十条二項)
しかし、トンネルによっては車両通行帯が設けられていることもあり、一部では進路を変えたり、追い越しも可能となっているのです。
それでもトンネル内は視界も暗く、車間距離がつかみにくいといったリスクがあります。追い越しや車線変更が認められていても、むやみな運転は避けましょう。
暗いトンネル内は車間距離が分かりづらい
トンネル内のように暗い場合は、いつのまにか車間距離が短くなりやすいです。
また見通しも悪いので、前方で渋滞が起こっていても気づきにくいケースもあります。
前方車両が減速したことに気付かずに追突してしまったり、逆に追突されてしまう事故もあるでしょう。
車間距離を十分にとることや、急な減速をしないことなどが大切です。
同じ景色が続いて漫然運転になりがち
トンネル内は同じような景色が続くため、つい注意散漫になってしまうことがあります。
トンネルが少しずつカーブしていることに気付かずに壁面に衝突してしまったり、油断しているうちに対向車線にはみだしてしまったりと、大きな事故につながりかねません。
長いトンネルに入る前にはパーキングエリアやサービスエリアで十分な休憩を取るなどして、集中を切らさないようにしましょう。
漫然運転で多い「ながらスマホ」
トンネル内は単調だから事故は起こらないだろうとスマートフォンを操作し、前方不注意の車両に衝突されてしまう事故態様も考えられます。
こうしたながらスマホによる事故に巻き込まれた場合、相手の過失が高くなったり、賠償金が相場より高くなることもあります。
詳しい解説は関連記事『ながらスマホによる事故|罰則があるのはどんな行為?被害にあったら?』にてご確認ください。
トンネルの出入口付近の明暗差に慣れない
暗いトンネルから外へ出ると、眩しさから目を開けていられなかったり、前が見えづらくなったりします。
トンネルの出口付近は渋滞していることもあるので、慌てて急ハンドルを切ったり、見えづらいまま走行を続けることは事故のリスクを高めます。
ライトは早めに点灯し、消灯する時はトンネルを十分抜けてから消灯するほか、常に車間距離を十分に確保しておきましょう。
トンネル内の事故による損害賠償金の内訳と注意点
損害賠償金獲得の流れと損害賠償金内訳
交通事故から損害賠償金の獲得までは、基本的に、治療、後遺症の有無の確認、後遺障害申請、示談交渉という流れになります。
示談交渉において具体的な賠償額が決められ、示談金という形で回収することとなるでしょう。
幸いにも事故のケガが完治した場合には、治療終了共に示談交渉を開始します。
もし後遺症が残ったならば、後遺障害申請手続きを取って結果を待ちましょう。審査結果に納得がいけば、その内容で示談交渉を開始します。
示談で損害賠償金額についてまとまったなら、示談が成立したとして示談金を受け取る流れです。
示談がうまくいかないときには、ADRや調停、裁判といった別の解決策を模索せねばなりません。
より詳しい示談の流れを知りたい方は、関連記事『交通事故の示談とは?交渉の進め方と注意点、避けるべき行動』をご覧ください。
交通事故の損害賠償金の主な内訳
交通事故において請求できる損害賠償金の内訳は、以下のようなものとなります。
もっとも、交通事故で負った損害は個々に異なるものです。
この他にも、事故態様やケガの程度によっては、介護費用や、車いす・義足などの器具の作成費用といった損害も請求できる可能性があります。
ご自身やご家族の事故についての正確な損害賠償費目を知りたい方は、弁護士にご相談ください。
トンネル内の事故でケガをしたときの慰謝料
交通事故によりケガをして治療が必要となった場合には、入通院慰謝料を請求することが可能です。
入通院慰謝料とは、ケガの痛みや通院せざるをえないことへの精神的苦痛に対する補償として支払われます。
ケガの内容にもよりますが、次のような慰謝料算定表を用いて相場額が計算されるのです。
入院月数と通院月数の交わる部分が慰謝料の相場額となります。
たとえば、トンネル内での交通事故によって1ヶ月入院して5ヶ月通院した場合、重傷の入通院慰謝料は141万円、軽傷の入通院慰謝料は105万円が相場額となるのです。
それぞれの計算方法については関連記事をご覧ください。
トンネル内の事故で後遺症が残ったときの慰謝料や賠償金
トンネル内での事故で負ったケガが治らず、後遺症が残ったときには後遺障害認定の申請手続きを検討していきましょう。
後遺障害として認定されることで、後遺障害慰謝料や逸失利益といった「後遺症」への賠償を追加請求できます。
後遺障害慰謝料の相場
後遺障害の症状や部位などで1~14級の後遺障害等級が認定され、その等級に応じた後遺障害慰謝料を受け取ることになります。
等級 | 相場額 |
---|---|
1級・要介護 | 2,800万円 |
2級・要介護 | 2,370万円 |
1級 | 2,800万円 |
2級 | 2,370万円 |
3級 | 1,990万円 |
4級 | 1,670万円 |
5級 | 1,400万円 |
6級 | 1,180万円 |
7級 | 1,000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
関連記事ではトンネル内での事故と関連の高いケガ・後遺症について解説していますので、参考にしてみてください。
なお、後遺障害認定を受けると逸失利益の請求も認められるでしょう。逸失利益については計算が複雑ですので、下記の計算機にて概算をつかんでおくことをおすすめします。
相手方の提示する逸失利益額に不審点があったり、計算の根拠があいまいな場合は、弁護士にも相場を聞いてみましょう。
後遺障害認定の申請手続きを知りたいという方は、関連記事『交通事故の後遺障害とは?認定されたらどうなる?認定の仕組みと認定率の上げ方』を参考にするか、お気軽に弁護士にお尋ねください。
トンネル内の事故で死亡したときの慰謝料や賠償金
トンネル内の交通事故により死亡してしまった場合には、死亡慰謝料、死亡逸失利益、葬儀費用が主な請求費目となります。
死亡慰謝料の相場額は被害者の家庭における立場により異なり、2,000万円から2,800万円です。
被害者の立場 | 金額 |
---|---|
一家の支柱 | 2,800万円 |
母親・配偶者 | 2,500万円 |
その他の場合 | 2,000万円~2,500万円 |
もっとも、加害者側の運転が悪質であったり、ひどい態度であったりすると増額の可能性はあります。
関連記事『死亡事故の慰謝料相場と賠償金の計算は?示談の流れと注意点』では死亡事故に関する慰謝料をはじめ、損害賠償金について解説しています。
損害賠償金の計算は相手の加害者側に任せてはいけない
損害賠償金の具体的な金額は示談交渉により決まりますが、加害者側は基本的に相場よりも低額の賠償金額を示談金として支払うと提案してきます。
そのため、相場の損害賠償金を得るためには、増額交渉が欠かせません。
相場額への増額交渉を行うには、弁護士への依頼が必要です。
被害者やそのご家族が相場額になるよう増額してほしいと主張しても、加害者側が応じる可能性は極めて低いでしょう。
示談交渉を行う際には、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士相談の関連記事
トンネル内での事故の裁判例
トンネル内でのセンターオーバーでの事故判例
この事故は、被害者の運転する四輪車に対して、加害者側の四輪車がセンターオーバーして正面衝突した事故でした。
被害者は重傷胸部外傷(右多発肋骨骨折、両肺挫傷など)、右仙骨や右恥骨骨折などの重傷を負った結果、人工肛門の増設、左ひじ関節の機能障害、右股関節の機能障害などで併合4級の後遺障害認定を受けたのです。
裁判所は、そもそもセンターオーバーの事故であること、日没前のトンネルの出口付近にいた加害車両を認識・回避することは困難であったとして、被害者に一切過失はないと認定しました。
被害者には後遺障害慰謝料1,700万円、休業損害約1,660万円、逸失利益約5,400万円、居宅のリフォーム費用約180万円を始めとした損害を認めました。(大阪地方裁判所令和3年3月24日判決)
この事故に関連するポイント
センターオーバーの事故は、規則に従って走行していた側には基本的に過失がないと認定される事故態様です。
また、この事故で非常に重い後遺障害が残ったことから、被害者が今後生活していくための居宅リフォーム費用も認められています。
交通事故の損害は一人ひとり異なるので、被害内容に応じた請求をしていかなくてはなりません。
トンネル内での渋滞停止中に起きた追突事故の判例
被害者(大型自動二輪車)は首都高速のトンネル内で、渋滞のために停止していました。そこへ制限速度を超えた準中型貨物自動車が追突し、被害者は死亡しました。
裁判所は、被害者がハザードランプを点滅させて停車していたこと、加害者側には法定速度を大幅に上回る速度かつ著しい前方不注意があったこと、被害者側へ謝罪がないことなどを指摘しました。
これらより、死亡慰謝料および遺族固有の慰謝料として合計3,400万円、死亡逸失利益約7,000万円を含んで1億円を超える損害を認めました。(東京地方裁判所令和元年12月17日)
この事故に関連するポイント
被害者が亡くなられた場合、遺族が損害賠償請求などの対応をすることになります。
突然の出来事でお辛い中とは思いますが、四十九日などある程度の法要が済んだ段階で、賠償請求についても考えていかなくてはなりません。
死亡事故の関連記事
トンネル内で事故の賠償請求は弁護士に相談しよう|無料相談あり
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まだ弁護士を入れるか迷っている方や、セカンドオピニオンを受けたいという方のご利用も問題ありません。
法律相談の予約受付は24時間体制で行っているので、いつでもご連絡ください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了