脛骨高原骨折で後遺症は残る?後遺障害等級認定と慰謝料相場

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脛骨高原骨折で後遺症は残る?

バイク事故などで足に強い衝撃を受けると、脛骨(けいこつ。すねにある2本の骨のうち太い方。)を骨折してしまうことがあります。

とくに脛骨の膝に近い平らな部分(顆部・かぶ)の骨折を、脛骨高原骨折(脛骨プラトー骨折、脛骨近位端骨折)と呼びます。

脛骨高原骨折の治療は長引きやすく、膝関節や足関節の機能障害、痛み、変形、不安定性などといった後遺症も残りやすいため、生活や仕事への影響も大きくなりやすいです。

この記事は、脛骨高原骨折の治療法、後遺症の症状、後遺障害の等級、慰謝料の相場などを解説します。

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脛骨高原骨折の症状と治療|後遺症は残る?

交通事故による脛骨高原骨折とは?

脛骨の上部(顆部・かぶ)の骨折を「脛骨近位端骨折」といいます。

脛骨近位端骨折は、「脛骨高原骨折」「脛骨プラトー骨折」などとも呼ばれます。これは、骨折の部位(脛骨の顆部)が平らで、高原(英語でplateau・プラトー)のような形をしているためです。

脛骨高原骨折の受傷機転

脛骨高原骨折は、膝関節に強い衝撃が加わったとき、または転倒して膝を強く打ったときに起こることがあります。

交通事故では、歩行中に車と膝がぶつかったり、バイク乗車中の事故で転倒したりした場合に、膝に対して強い外力が加わり脛骨高原骨折になりやすいです。

脛骨高原骨折の特徴

脛骨高原という部位は、膝関節の中心部である膝蓋骨(ひざがね)を支える骨の部分で、膝関節の動きや衝撃を吸収する役割をもち、後遺症が残りやすい部位です。

脛骨高原骨折の症状と治療、後遺症についてみていきましょう。

脛骨高原骨折の症状

脛骨高原骨折では、膝の関節が痛む、腫れる、皮下出血がみられるでしょう。また、立ち上がることが出来なかったり、膝を動かせなくなったりします。

脛骨高原骨折の検査

脛骨高原骨折の検査としては、レントゲン、CT、MRI撮影などがあります。

脛骨高原骨折に伴う内部組織(靭帯、半月板など)の損傷の検査としては、MRI撮影をおこないます。

脛骨高原骨折の治療方法

脛骨高原骨折の治療方法は、骨折の程度によって様々です。

骨折の程度によっては手術をせずに固定して安静にする選択肢もありますが、脛骨高原骨折では手術になることもあります。

たとえば外科手術でプレートを入れて骨折箇所を固定するなどの処置が必要になることもあるでしょう。あるいはそこまで大掛かりな切開を伴わず、スクリュー固定のみで済むこともあります。

膝を曲げる練習から始め、慎重にリハビリを進めていくことになるでしょう。

脛骨高原骨折の後遺症

脛骨高原骨折は膝の脱臼や靭帯や半月板の損傷を伴うことも多いので、膝関節の痛みや腫れ、動きの悪さ、変形、動揺関節(不安定性)などの様々な後遺症が残ることも多い骨折です。

脛骨高原骨折後に、膝関節の神経症状以外に、下腿のしびれや知覚鈍麻等の神経症状、下垂足(かすいそく。つま先を甲の方へ曲げる動作ができない症状)等の運動障害があらわれた場合は、腓骨神経麻痺の後遺症も疑われます。

後遺症が残ると日常生活に大きく影響するため、 早期に治療を開始することが重要といえます。

脛骨高原骨折で認定される後遺障害等級

脛骨高原骨折では、膝関節の可動域制限、膝への人工関節挿入、痛みやしびれなどの神経症状について、後遺障害認定を受けられる可能性があります。

後遺障害認定の申請手続きそのものを詳しく知りたい方は、関連記事『交通事故で後遺障害を申請する|認定までの手続きの流れ、必要書類を解説』も参考にしてください。

膝関節の可動域制限

脛骨高原骨折による膝関節の可動域制限は、後遺障害10級11号または12級7号の認定を受ける場合があります。後遺障害等級の差は、関節が動かしづらくなった程度次第です。

等級認定基準
10級11号1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級7号1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

骨折をしてしまった側が、骨折をしていない側と比べて半分以下しか動かせない場合には10級11号認定が見込まれます。そして、動かせる範囲が4分の3程度になっている場合には12級7号の認定となるでしょう。

脛骨高原骨折で10級11号認定の裁判例

東京地判平25・3・27(平成24年(ワ)2511号)

夜間に飲食店を出た男性(症状固定時49歳)が道路横断中に、被告乗用車に衝突される交通事故に遭い、左脛腓骨骨折等を負傷。左脛骨高原骨折により左膝関節の可動域障害が残存し、後遺障害等級表の第10級11号(左膝関節の可動域障害)及び第14級5号(左膝付近の縦の皮切跡)に該当、併合第10級が認定された。後遺障害による損害の算定も争点となった。


裁判所の判断

「…本件後遺障害の内容等にかんがみれば、本件後遺障害に伴う原告の苦痛に対しては、550万円をもって慰謝するのが相当である」

東京地判平25・3・27(平成24年(ワ)2511号)
  • 後遺障害等級:併合第10級(10級11号+14級5号)を認定
  • 後遺障害慰謝料550万円を認定
  • 後遺障害逸失利益315万円を認定(基礎収入は100万。労働能力喪失率27%、喪失期間18年)
損害額合計

1545万4737円

膝への人工関節挿入

骨折の程度によっては、膝関節を人工関節に置き換える必要もあります。そうした人工関節の手術を受けると後遺障害8級7号または10級10号の認定を受ける可能性があるでしょう。

等級認定基準
8級7号1下肢の3大関節中の1関節の機能の用を廃したもの
10級10号1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

人工関節を入れたにもかかわらず、膝関節の可動域が2分の1以下になった場合には8級7号認定が想定されます。人工関節を入れた場合には少なくとも10級10号の認定となるのです。

脛骨高原骨折で8級7号認定の裁判例

大阪地判平27・2・10(平成25年(ワ)6910号)

女性(症状固定時54歳)が自転車で交差点を右折中、大型バイクと衝突し右脛骨高原骨折等を負傷。自賠責保険では12級7号と認定されたが、実際は前十字靱帯・後十字靱帯・外側支持機構の複合靱帯損傷で常時硬性装具が必要な重篤な状態。原告は、後遺障害等級8級7号に該当するとして争った。


裁判所の判断

「…右膝関節は、用を廃したものとして自賠法別表第二第8級7号に該当する」

大阪地判平27・2・10(平成25年(ワ)6910号)
  • 後遺障害等級:8級7号(膝関節の用廃)に認定
  • 後遺障害慰謝料830万円を認定(8級の弁護士基準)
  • 後遺障害逸失利益1,580万円を認定(基礎収入は女性平均賃金354万7,200円を適用。労働能力喪失率45%、喪失期間14年間)
損害賠償額

1,752万1,872円

痛みやしびれなどの神経症状

骨折後のしびれや痛みが残った場合、神経症状については12級13号または14級9号の認定を受けられる場合があります。

等級認定基準
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号局部に神経症状を残すもの

こうした神経症状については画像検査でその症状の存在が証明できれば12級13号、治療の経過や事故の衝撃などの状況から医学的に説明できれば14級9号認定を受けられる可能性があります。

脛骨高原骨折で12級13号認定の裁判例

東京地判令6・3・22(令和5年(ワ)17540号)

エステサロン経営の女性が歩行中、バイクとの衝突事故で右脛骨高原骨折・頚椎骨折を負傷。約1年8か月の治療を受け骨癒合は得られたものの、関節面に不整が認められ「右下腿痛、走れない」との症状が残存。自賠責保険で12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)に認定された後遺障害について、慰謝料と逸失利益の金額が争点となった。


裁判所の判断

「…関節面に不整が認められ、これを原因とする右下腿の疼痛等の12級13号に該当する後遺障害が残存した」

東京地判令6・3・22(令和5年(ワ)17540号)
  • 後遺障害等級:12級13号
  • 後遺障害慰謝料290万円を認定(12級の弁護士基準)
  • 後遺障害逸失利益460万9,003円を認定(基礎収入は女性平均賃金385万9,400円を適用。労働能力喪失率14%、喪失期間10年間)
損害賠償額

1047万9597円

交通事故で足を骨折したときの慰謝料相場

交通事故で足を骨折した場合には慰謝料を請求できます。慰謝料には入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の2つがありますので、それぞれの相場を確かめておきましょう。

交通事故で足を骨折したときの入通院慰謝料

交通事故で足を骨折したときの入通院慰謝料は、治療にかかった期間を基準に計算します。

下表は弁護士が用いる入通院慰謝料の算定表で、入院月数と通院月数の重なる部分が入通院慰謝料の相場となるのです。

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

たとえば、脛骨高原骨折によって入院2ヶ月・通院6ヶ月という治療期間であれば、入通院慰謝料の相場は181万円です。通院が長引いて、入院2ヶ月・通院10ヶ月の場合は入通院慰謝料相場は203万円です。

ただし、相手の任意保険会社は日額ベースで計算してくるので、弁護士基準の入通院慰謝料よりも低額で示談を迫ってくる場合があります。相手方から金額提示を受けたときにはすぐに示談書にサインせず、いったん弁護士に見解や増額の見込みを聞いてみましょう。

入通院慰謝料のおおよその金額を知るためには、自動計算ツールである「慰謝料計算機」が便利です。

交通事故で足を骨折したときの後遺障害慰謝料

交通事故で足を骨折したとき、後遺障害認定を受けていれば後遺障害慰謝料を請求できます。後遺障害慰謝料は後遺障害等級ごとに相場があるので、適切な後遺障害等級の認定を受けることが大切です。

後遺障害慰謝料の相場を以下に示します。

等級 自賠責*弁護士
1級・要介護1,6502,800
2級・要介護1,2032,370
1級1,1502,800
2級9982,370
3級8611,990
4級7371,670
5級6181,400
6級5121,180
7級4191,000
8級331830
9級249690
10級190550
11級136420
12級94290
13級57180
14級32110

※慰謝料の単位:万円/自賠責の金額は2020年4月以降に発生した事故に適用

後遺障害慰謝料は、自賠責保険から支払われる金額と、本来法的に認められている金額に違いがあります。そのため、自賠責保険から支払われる金額だけを受け取るのでは損をしてしまうのです。

たとえば、脛骨高原骨折で人工関節を入れた場合、後遺障害10級10号と認定されます。自賠責保険の支払基準では、後遺障害慰謝料が190万円とされますが、法的に適正な慰謝料額は550万円です。

慰謝料金額相場の3基準比較

交通事故の慰謝料は、同じ事故であってもどんな基準で算定するのかで金額が変わります。弁護士基準と呼ばれる金額は裁判でも認められているものですが、なかなか相手の保険会社が示談の段階で受け入れてくれるものではありません。

示談交渉の段階で弁護士を立て、弁護士基準での慰謝料獲得を目指していきましょう。

交通事故の解決事例(足の骨折編)

こちらでは、過去に、アトム法律事務所の弁護士が取り扱った解決事例のうち、脛骨骨折に関する事案をご紹介します。

腓骨・脛骨骨折(後遺障害12級7号)で2.3倍増額した事例

腓骨脛骨骨折の増額事例

弁護士相談の段階で後遺障害等級が既に認定済だったものの、慰謝料などの金額に増額の余地があったケース。


弁護活動の成果

提示額の944万円から、弁護士による2か月でのスピード解決により2.3倍増額し、最終的な受取金額が2207万円まで増額された。

年齢、職業

40~50代、男性・経営者

傷病名

右足腓骨骨折、右足脛骨骨折

後遺障害等級

12級7号

脛骨高原骨折(後遺障害12級13号)で2.1倍増額した事例

膝脛骨高原骨折の増額事例

弁護士相談の段階で後遺障害等級が既に認定済だったものの、慰謝料などの金額に増額の余地があったケース。


弁護活動の成果

提示額の436万円から、3か月でのスピード解決により2.1倍増額し、最終的な受取金額が916万円になった。

年齢、職業

40~50代、男性・自営業

傷病名

左膝脛骨プラトー骨折

後遺障害等級

12級13号

交通事故で脛骨高原骨折を負ったら弁護士に相談

脛骨高原骨折(足の骨折)のまとめ

脛骨高原骨折は、膝関節内の骨折であり、治療期間が長引きやすいケガです。

後遺症も残りやすく、関節の可動域制限、痛み、変形、不安定性などの交渉が想定されます。

脛骨高原骨折の後遺症は、後遺障害級から級に認定される可能性がありますが、後遺障害慰謝料は~円が相場です(弁護士基準)。

交通事故の賠償問題は、弁護士を入れることで次のようなメリットがあります。

  • 損害賠償金全体の増額交渉を任せられる
  • 後遺障害等級認定の申請手続きをサポートできる
  • 疑問や不明点について助言してもらえる

これら以外にも弁護士に依頼するメリットは多数ありますが、どういった弁護士に相談するべきかは悩んでしまうものでしょう。

足骨折の賠償請求を任せる弁護士選びのポイント

交通事故の損害賠償請求を弁護士に任せるときには、次のような点に注目して弁護士を探すことをおすすめします。

  • 交通事故の解決実績の多さ
  • 説明が分かりやすいかどうか
  • 費用倒れのリスクはないか

解決実績はホームページで確認できることが多いです。軽傷案件だけでなく、骨折のような重傷案件にも対応していると、後遺障害等級認定の申請にも慣れているので、安心して任せることができます。

また、説明の分かりやすさにも注目です。法律や損害賠償の用語は聞きなれないものも多いですが、できるだけ噛み砕いて話をしてくれる弁護士だと、コミュニケーションもスムーズに進みます。

費用倒れとは、被害者の手元に入ってくるお金が、弁護士に依頼することでかえって減ってしまう事象です。弁護士費用は法律事務所によって異なるので、費用の仕組みについて分からないままにせず、理解できるまでしっかりと確認しましょう。

こうした点に注意して、まずいきなり正式に依頼するのではなく、法律相談の活用をおすすめします。関連記事ではどのような弁護士に依頼すると良いのか、また、弁護士に依頼して後悔してしまう事例を紹介しているので参考にしてください。

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法律相談では、正式に依頼した場合の弁護士費用についても気兼ねなくおたずねください。その際には、あらかじめ利用可能な弁護士費用特約の有無を確かめておいていただくとスムーズです。

弁護士費用特約とは

保険会社が弁護士費用の全部または一部を負担するというもの。事故の損害賠償請求においては弁護士による交渉で、慰謝料が増額することが多いため特約に加入している場合は利用した方がよい。

特約の補償上限としては、法律相談料10万円、弁護士費用300万円としているケースが多いです。そのためほとんどの交通事故の弁護士費用は、弁護士費用特約で全額支払うことができ、被害者の自己負担は0円になることが多いでしょう。

弁護士費用特約のメリット

もっとも足の骨折による損害賠償請求額が数千万円になる場合には、弁護士費用特約の補償上限を超える可能性もあります。弁護士費用は損害賠償請求額しだいとなる部分が多いので、まずは弁護士がお話をお伺いさせていただいて、弁護士費用の見通しをお伝えすることになるのです。

まずはお気軽に、アトム法律事務所の無料法律相談を使ってみてください。正式依頼とは全く別なので、法律相談の利用のみで終わっても問題ありません。強引に契約を迫ることは一切ないのでご安心ください。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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