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症状固定時期と後遺障害等級認定の手続き|症状固定後の治療費やトラブルも解説

監修者:アトム法律事務所 代表弁護士 岡野武志

2020年4月1日改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

交通事故によるけがが後遺症として残った場合に下される診断が「症状固定」です。

症状固定をめぐっては被害者から次のような疑問・お困りごとが多く寄せられます。

この記事では、上記のような疑問にお答えするだけでなく、事例データに基づいて算出した症状別の症状固定時期の目安についてもご紹介していますので、ご自身の場合と比べて参考にしてみてください。

症状固定の時期や症状固定後の対応は、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益の金額、治療費や入通院慰謝料、休業損害などの金額にもかかわってくるため、非常に重要です。

症状固定や症状固定後の後遺障害等級認定などについてお困りの場合は、この記事をチェックしてください。

症状固定の基本情報

症状固定とは、後遺症が残ったということ

症状固定とは、交通事故によるけがに対してこれ以上治療を続けても、大幅な改善は見込めないと判断されることです。
簡単に言い換えると、交通事故によるけがが後遺症として残ったと判断されることです。

症状固定の診断を受けたら、基本的には治療終了となり、加害者側に対する慰謝料・賠償金請求のための準備が始まります。

症状固定は誰が決める?

症状固定の時期は、基本的に医師が判断します。
加害者側任意保険会社が被害者の担当医に「そろそろ症状固定ではないか?」と質問をして、それによって症状固定の診断が下されることもあります。

ただし、症状を実際に感じるのは被害者自身です。たとえ医師に症状固定だと言われても、もう少し治療を続けてほしいという場合には、医師に相談してみましょう。

症状別・症状固定時期の目安

症状固定の時期は治療状況によって様々ですが、症状ごとに大まかな目安はありますので、症状固定時期の大まかな目安を、症状別にご紹介していきます。

むちうちの症状固定時期

アトム法律事務所がまとめたむちうちに関する実例データを見ると、むちうちの症状固定時期は平均517日(約1年5ヶ月)となっています。

ただしこのデータは、むちうち以外の症状も残っている事例も含まれています。むちうちのみの症状固定時期でいうと、一般的には6ヶ月程度になります。

骨折の症状固定時期

交通事故では様々な部位を骨折する可能性があり、それにより症状固定時期の目安も変わります。
ここでは、アトム法律事務所がまとめた症状データベースを参考に、各骨折の症状固定時期をご紹介します。

鎖骨骨折720日
(約2年)
肋骨骨折729日
(約2年)
骨盤骨折690日
(約1年11カ月)
上腕骨骨折678日
(約1年10カ月)
前腕骨骨折613日
(約1年8ヶ月)
股関節骨折877日
(約2年5ヶ月)
大腿骨骨折978日
(約2年8ヶ月)
膝の骨折646日
(約1年9ヶ月)

顔の傷の場合

アトム法律事務所がまとめた顔の傷に関する実例データによると、顔の傷の症状固定時期は平均で618日(約1年8ヶ月)となっており、最短のデータでも142日(約5ヶ月)となっています。

高次脳機能障害の症状固定時期

アトム法律事務所がまとめた高次脳機能障害に関する実例データによると、高次脳機能障害の症状固定時期は平均で846日(約2年4ヶ月)となっており、最短でも289日(約10カ月)となっています。

高次脳機能障害の特徴として、年月が経つにつれて症状が軽減していく場合があるというものがあるため、「これ以上回復が見込めない」と判断するまでには一定期間の経過観察が必要になります。

そのため、高次脳機能障害は症状固定までに時間がかかりやすく、データベースで確認できる最長日数は2311日(約6年4ヶ月)となっています。

症状固定になると何が変わる?

①治療費・休業損害・入通院慰謝料が打ち切られる

交通事故後加害者側から支払われていた治療関係費や休業損害は、症状固定を以て打ち切りとされることが一般的です。
また、入通院慰謝料も、症状固定までの入院日数・通院期間をもとに計算されます。

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②後遺傷害分の賠償金が発生する

交通事故示談金の内訳
交通事故示談金の内訳 アトム法律事務所

症状固定後は、「後遺傷害分」の慰謝料・賠償金が発生します。
「後遺傷害分」の慰謝料・賠償金とは後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益のことです。

後遺障害慰謝料後遺障害が残ったことで今後も受け続ける精神的苦痛に対する補償
後遺障害逸失利益後遺障害が残り労働能力が低下したことで減ってしまう生涯年収に対する補償

症状固定の診断を受けて後遺症が残った被害者にとっては、後遺障害慰謝料も後遺障害逸失利益も非常に重要な補償項目です。
しかしこれらは、症状固定の診断を受けたら必ず請求できるというものではありません。症状固定後に審査を受けて後遺障害等級を獲得しなければなりません。

後遺障害等級認定の審査を受ける方法について次の章で解説しますので、ご確認ください。

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後遺障害慰謝料・逸失利益の金額について

③損害賠償請求権の消滅時効がスタートする

症状固定の診断を受けると、その翌日から「損害賠償請求権の消滅時効」がスタートします。
症状固定翌日から時効成立までの期間は5年です。

損害賠償請求権の消滅時効が成立すると、被害者は加害者に対して損害賠償請求ができなくなります。そのため、時効が成立するまでに後遺障害等級認定の審査を受け、示談を成立させなければなりません。

ただしこれは、症状固定の診断を受けて後遺障害等級が認定された場合の時効です。

症状固定の診断を受けて後遺障害等級認定を受けたけれど等級が認定されなかった、という場合の損害賠償請求権の消滅時効は、事故翌日から5年となりますので注意しましょう。

症状固定を受けた場合の損害賠償請求権の消滅時効

後遺障害等級時効までの期間
認定された症状固定翌日から5年
認定されなかった事故翌日から5年

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交通事故の慰謝料請求の流れと時効について

症状固定後は後遺障害等級認定が必要

後遺障害等級認定を受ける方法

後遺障害等級認定の手続きの流れ

症状固定の診断を受けたら、次は後遺障害等級認定の申請を行います。
後遺障害等級認定の申請方法は次の通りです。

  1. 後遺障害診断書などの必要資料を用意する
  2. 用意した診断書を加害者側任意保険会社または加害者側自賠責保険会社に提出
  3. 必要資料が加害者側保険会社を通して審査機関に渡る
  4. 審査が行われ、結果が通知される

必要書類を審査機関に提出するための方法には、「被害者請求」と「事前認定」の2種類があります。

事前認定

加害者側任意保険会社を通して後遺障害等級認定の申請を行う方法。
被害者が後遺障害診断書を加害者側任意保険会社に提出すると、その他必要な手続きはすべて加害者側任意保険会社にしてもらえる。

被害者請求

加害者側自賠責保険会社を通して後遺障害等級認定の申請を行う方法。
被害者は必要書類を全て用意し加害者側自賠責保険会社に提出しなければならないが、その分提出書類の種類や内容を精査し、質を上げることができる。

簡単にご説明すると、後遺障害等級認定のための準備に時間や労力をかけられない場合は事前認定、後遺障害等級認定を獲得するために対策や工夫が必要な場合は被害者請求がおすすめです。

後遺障害等級認定の申請を行う場合には、被害者請求と事前認定のメリット・デメリットをご自身の状況と照らし合わせ、どちらの方法を選ぶかを決めることが大切です。

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交通事故の後遺障害等級認定の流れについて

症状固定から後遺障害等級認定までの期間は?

症状固定から後遺障害等級認定の結果が出るまでの期間は、1~2ヶ月程度であることがほとんどです。
多くの場合審査は30日以内に終わりますので、準備期間を入れてもあまり長くはかからない傾向にあります。

しかし、高次脳機能障害のように経過観察が必要な場合は、結果が出るまでに数カ月~数年かかることもあります。

また、後遺障害等級認定の結果に対して異議申し立てをする場合には、その分最終的な結果が出るまで時間がかかります。

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後遺障害等級認定の期間について

治療期間が6カ月未満だと等級認定されない?

後遺障害等級認定について、「症状固定までの期間が6ヶ月未満だと等級が認定されない」という情報もありますが、これは必ずしも正しいとはいえません。

確かに治療期間が短いと、「本当に症状固定に至っているのか?」「もう少し治療すれば完治するのではないか?」という疑いをもたれる可能性はあります。

しかしたとえ治療期間6ヶ月未満で症状固定になっても、症状固定と判断された医学的根拠がきちんとあれば、後遺障害等級が認定される可能性は否定できません。

ただし、症状固定までの期間が6カ月未満の場合、6ヶ月以上の場合よりも等級が認定されにくくなるというのも事実です。
治療期間6ヶ月未満で症状固定の診断が受けた場合は、弁護士のアドバイス・サポートのもとで後遺障害等級認定の申請を行うことをおすすめします。

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交通事故の症状固定を6ヶ月以内することについて

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症状固定後の後遺障害等級認定は必須?

交通事故によるけがに対して症状固定の診断が下されたものの、そこまで重大な後遺症ではないし、後遺障害等級認定をするほどでもない…。

そう思っている方でも、後遺症が残ったのであれば後遺障害等級認定の審査を受けるべきです。その理由は、次の2点です。

  • 後遺障害等級が認定されると、受け取れる慰謝料・賠償金がアップする
  • あとから後遺傷害分の慰謝料・賠償金を請求したくなっても、示談成立後に新たに賠償請求することはできない

たとえ軽い後遺症でも、後遺障害等級が認定された場合の後遺障害慰謝料金額・逸失利益金額は決して軽視できるものではありません。
たとえばむちうちによるしびれや痛みで後遺障害14級が認定されれば、後遺障害慰謝料だけでも32万円~110万円が受け取れます。

後遺障害等級認定の申請をしても等級が認定されない可能性はありますが、申請だけでもしてみる価値はあると言えます。

以下の計算機では、後遺障害慰謝料や逸失利益の金額が簡単に分かります。まだ等級が分からない段階でも、1~14の等級を入力し、その金額を確認してみてください。

また、初めは特に気にならないような軽い後遺症だったとしても、それが長期間続くとなるとだんだん気になってくることもあります。
しかし、示談が成立した後に「やっぱり後遺障害等級認定を受けて加害者側に賠償請求したい」と思っても、基本的には再交渉や追加の交渉はできません。

そのため、たとえ「そこまでの後遺症ではないのに…」と思っても、症状固定の診断を受けたのであれば後遺障害等級認定の申請をすることをおすすめします。

症状固定でよくあるトラブルと解決法

保険会社に症状固定を打診された

医師から症状固定の診断を受ける前に、加害者側任意保険会社から「そろそろ症状固定ですね」「治療費を打ち切ります」との打診を受けることもあります。

しかし、いつを症状固定とするかは医師が中心となって決めるべきことです。たとえ加害者側任意保険会社から症状固定や治療費打ち切りを打診されても、まだ治療が必要なのであれば医師に相談しましょう。

加害者側任意保険会社から症状固定の打診を受けた後でも、医師による症状固定の診断がまだなのであれば、理論上は治療関係費は加害者側に請求できます。

しかし、場合によっては示談交渉の際に症状固定時期をめぐってもめる可能性がありますので、心配な場合は弁護士にご相談ください。

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交通事故治療費の請求方法と打ち切られたときの対応について

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症状固定後も治療・リハビリをしたい

医師から症状固定の診断を受けた後でも治療費やリハビリを続けることはできます。
医師により症状固定の診断がされた後の治療費・リハビリ費用については、次の場合は加害者側に請求できる可能性があります。

  • 症状をこれ以上悪化させないために、現状維持のための治療・リハビリが必要
  • 症状固定後に交通事故を原因とする新たな症状が発覚した

ただし、上記のような事情があっても実際の示談交渉ではもめる可能性が高いです。

本当ににその治療・リハビリが必要なのか、新たに発覚した症状は本当に交通事故を原因としているのかについて、医学的に証明できなければなりません。

症状固定後の治療費・リハビリ費用については示談交渉が難航する可能性が高く、場合によっては裁判になることも考えられますので、症状固定後も治療やリハビリを希望する場合には、事前に弁護士に相談するべきでしょう。

医師が後遺障害診断書を書いてくれない

医師による症状固定の診断を受けたので後遺障害等級認定を受けたいと思っても、担当医が後遺障害診断書を書いてくれない場合があります。

その理由としては、以下のようなものがあります。

  • 完治させられなかったことを明記するのがはばかられる
  • 後遺障害等級認定やその後の賠償請求に巻き込まれることを防ぐため、医師や病院の方針により後遺障害診断書を書かないことになっている
  • 忙しくて手が回らない

通院を始める時点で後遺障害等級認定に理解のある医師・病院かどうかを確認しておくことが望ましいですが、症状固定後に後遺障害診断書を書いてもらえないという事態に陥った場合には、直ちに弁護士にご相談ください。

症状固定後に後遺障害診断書を書いてくれる医師を探そうと思っても、治療経過を実際に見ていない別の医師に後遺障害診断書を書いてもらうことは非常に難しいです。

そのため、後遺障害診断書の作成を拒否する医師を説得することになります。このとき、弁護士が説得に入る方が良い場合もありますので、1人で悩まず弁護士にご相談ください。

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まとめ

症状固定の時期については、医師と相談のうえで決めるということが原則になります。もし症状固定の時期に納得がいかず困っている場合は、弁護士にご相談ください。

また、症状固定後の後遺障害等級認定は、最終的に受け取れる慰謝料・賠償金の金額に大きく影響します。少しでも不安がある場合は、専門家である弁護士がお力になりますので、ご連絡ください。