後遺障害認定までの期間は?遅くなる原因は?遅い場合にとるべき対処法を解説

交通事故でケガを負い、症状固定後に後遺障害申請をすると「結果が出るまでにどれくらいかかるのか」「申請してから何か月も連絡がないが大丈夫なのか」と不安になる方は少なくありません。
後遺障害認定にかかる期間は、実務上、申請から1~3か月以内が目安です。
むちうちなど比較的争点の少ない傷病では、最短2週間~1か月以内で結果が出ることもあります。一方、高次脳機能障害・脊髄損傷・複雑な後遺症など医学的な判断や追加調査が必要な傷病では、6か月以上かかるケースもあります。
この記事では、後遺障害認定の平均的な期間や認定が遅くなる理由、認定が遅い場合の対処法などについてわかりやすく解説します。
目次
後遺障害認定の期間はどれくらい?申請から結果が出るまでの目安
後遺障害認定の期間は、傷病の内容や申請方法によって幅があります。まずは全体像を把握しておきましょう。
後遺障害認定にかかる平均的な期間|1~3か月
後遺障害の申請を行ってから結果が通知されるまでの期間は、実務上、申請から1~3か月以内が目安です。損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所)の調査結果によれば、後遺障害等級認定に関する調査の多くは30日以内に処理されています。
ただし、高次脳機能障害などの複雑な症状が残るケースや、複数の後遺障害があるケースでは調査に時間がかかり、90日を超えることもあります。
9割以上が申請から3か月以内に認定される
損害保険料率算出機構が公表する統計によると、後遺障害等級認定の所要日数は以下のとおりです。
2024年度 後遺障害の損害調査の所要日数
| 期間 | 割合 |
|---|---|
| 30日以内 | 71.2% |
| 31日~60日 | 15.6% |
| 61日~90日 | 7.2% |
| 90日超 | 6.0% |
参考:損害保険料率算出機構「2025年度版(2024年度統計) 自動車保険の概況」(2026年4月発行)
約7割が1か月以内、約9割が3か月以内に審査を終えていることが分かります。言い換えると、申請から3か月以上経っても結果が届かない場合は、審査に時間がかかっているケースといえるでしょう。
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傷病ごとの期間の目安
傷病によって、認定までの期間には次のような傾向があります。
【傷病別】後遺障害等級認定にかかる期間の目安
これらはあくまで目安であり、医療照会・追加資料の取り寄せ・専門医による判断が必要な場合は、さらに期間が延びることがあります。
事故発生から認定までのトータル期間
後遺障害認定までには「事故から症状固定までの治療期間」も含まれます。事故発生から後遺障害認定の結果が出るまでのトータル期間は、次のように考えるとイメージしやすくなります。
- 事故発生〜症状固定まで:おおむね6か月以上(症状による)
- 症状固定〜後遺障害診断書作成・申請まで:1〜2か月程度
- 申請〜認定結果の通知まで:1〜3か月程度
そのため、事故発生から後遺障害認定までは、トータルで半年〜1年以上かかることが一般的です。
後遺障害認定までの流れ
後遺障害認定の期間を理解するには、申請後にどのような調査が行われているのかを知っておくことが大切です。
申請から結果通知までの基本的な流れ
後遺障害申請は、自賠責保険会社を窓口として、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所が調査を行う仕組みになっています。
後遺障害の申請方法には、加害者側の任意保険会社を通す「事前認定」と、被害者側が直接自賠責に請求する「被害者請求」の2種類があります。
いずれもおおまかな流れは同じで、以下のとおりです。
後遺障害認定の流れ
- 症状固定後、医師に後遺障害診断書を作成してもらう
- 申請書類一式を自賠責保険会社に提出する
- 自賠責保険会社から自賠責損害調査事務所へ書類が送付される
- 自賠責損害調査事務所が医療照会・書類審査を行う
- 調査結果を踏まえ、後遺障害等級が認定(または非該当)される
- 結果通知書が申請者に届く
事前認定と被害者請求での期間の違いはある?
「事前認定」と「被害者請求」の2種類で審査自体にかかる期間に大きな違いはありません。どちらの方法でも、損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所)が同じ基準で審査を行うためです。
ただし、申請から結果通知までを見ると、両者には次のような違いがあります。
事前認定|手続きの手間は少ないが、進捗が見えにくい
加害者側の任意保険会社が手続きを代行します。被害者の手間は少ない一方、手続きを保険会社に任せることになるため、被害者側からは申請の進捗状況が見えにくくなります。
被害者請求|書類準備に手間はかかるが、内容をコントロールしやすい
被害者自身(または依頼した弁護士)が直接自賠責保険会社に請求する方法です。書類の準備に手間はかかりますが、事前認定よりも提出資料をより主体的に精査でき、進捗も把握しやすくなります。
後遺障害認定が遅いと感じるときの3つの原因
「申請してから2~3か月以上経つのに、まだ結果が出ない」という方もいるでしょう。後遺障害認定が遅くなる背景には、いくつかの典型的な原因があります。

(1)保険会社から審査機関への書類提出が遅れているケース
後遺障害認定が遅くなる理由のひとつとして、「保険会社から審査機関への書類提出が遅れている」という可能性が考えられます。
事前認定の場合
事前認定では、後遺障害申請の手続きを相手方の任意保険会社が進めます。そのため、必要書類の収集・整理も、基本的に相手方の任意保険会社が行います。
そのため、被害者側では進捗が把握しづらく、申請のタイミングをコントロールすることができません。

保険会社は、多くの案件を同時に処理していることから、必要書類の準備や確認、提出に時間がかかってしまうことがあります。結果として、審査開始までに日数を要してしまうケースもあるのです。
事前認定だから必ず遅いというわけではないですが、「なかなか結果がでない」と感じた場合は、保険会社へ進捗を確認してみるとよいでしょう。
被害者請求の場合
被害者請求では、後遺障害認定に必要な書類を被害者自身(または弁護士)が準備して、相手方の自賠責保険会社へ直接(任意保険会社を経由せずに)、提出します。
その後、自賠責保険会社から審査機関へ提出されます。被害者請求において保険会社の書類提出が遅れることがあるとすれば、この部分です。

しかし、審査機関が必要書類を受理すれば、被害者側にその旨の通知がくるため、遅れているかどうかはすぐに分かります。
もしも「遅い」と感じた場合は、申請窓口に問い合わせを行いましょう。
事前認定と被害者請求を詳しく知りたい:交通事故で後遺障害を申請する|認定までの手続きの流れ、必要書類
(2)申請書類に不足や不備があるケース
後遺障害認定が遅い理由として、申請書類に不備がある可能性も考えられます。
後遺障害の審査は、原則として申請された書類のみに基づいて行われるのが通常です。書類から後遺症の状態や事故との関連性が読み取れないと、審査機関から追加検査を求められることがあります。
このとき、再検査を受けて結果が審査機関に届くまでの間、審査は止まってしまいます。その分、認定までの時間が長引くのです。
とくに事前認定では、最低限の書類しか審査機関に申請しないこともあって、審査機関から再検査の依頼が来ることがあります。もっとも、再検査の依頼が必ず来るともいえないので、十分な資料を示せない事前認定では、適切な結果が得られない可能性も高くなるでしょう。
審査対策が不十分だと再審査が必要になることもある
後遺障害認定の審査対策が不十分だった場合、審査に時間がかかるだけでなく、適切な結果を得られない可能性もあります。ただし、適切な結果を得られなくても、異議申し立てという手続きをとれば再審査を受けることが可能です。

後遺障害認定の結果は後遺障害慰謝料・逸失利益の請求可否や金額を左右します。そのため、結果に納得できない場合は異議申し立てを検討してみるべきです。
もっとも、異議申し立てをする場合、後遺障害認定終了までにさらに長い期間と労力がかかってしまう点には注意してください。
納得がいかない結果が返ってきた場合の対処法については『後遺障害認定されない理由と厳しい認定率…非該当から異議申し立てで逆転を目指す方法』の記事で詳しく解説しています。
(3)医療照会に対する医師の対応が遅れているケース
後遺障害認定の審査でおこなわれる医療照会が、認定の遅れにつながっているケースもあります。
医療照会
後遺症の症状や所見について、審査機関が医師に書面で問い合わせをすること。
高次脳機能障害や脊髄に関する障害などの認定審査では必ずおこなわれる。
申請書類のみでは等級を判断しかねる場合や、異議申し立てによる再審査でもおこなわれることがある。
医療照会で医師からの返答が遅れていると、その間、審査は進みません。そのため、医師からの医療照会の返答待ちにより、後遺障害認定が遅れている可能性もあります。
後遺障害認定が遅い場合にとるべき対処法
後遺障害認定が遅い場合にとるべき対処法を2つ紹介します。対処法を試してみたからといって、必ず認定が早まるともいえませんが、試してみる価値はあるでしょう。
(1)保険会社に連絡して申請状況を確認する
後遺障害認定が遅い場合、まずは書類を提出した保険会社に、申請手続きが済んでいるかどうか確認してみてください。
審査機関への書類提出が遅れていた場合、連絡を機に早急に対応してもらえる可能性があります。
ただし、すでに書類が審査機関に渡っている場合は、それ以上保険会社に何かしらの対応をしてもらうことはできません。審査の終了を待ちましょう。
(2)事前認定から被害者請求に切り替える
事前認定で後遺障害認定の申請をしたものの、保険会社内で書類がストップしているという場合は、被害者請求への切り替えも検討してみましょう。
このまま相手方の任意保険会社が書類を用意して提出するのを待つよりも、被害者請求に切替えて自分で書類を用意した方が、早く手続きが済む可能性があります。
ただし、被害者請求に切替えても、提出書類に不備があると差戻しによりかえって申請完了までに時間がかかることも考えられます。
また、的確な認定対策ができていないと異議申し立てによる再審査が必要になる可能性もあるので、被害者請求に切り替える際は、一度弁護士にご相談ください。
後遺障害の結果が出るまでに知っておきたい注意点
後遺障害認定が遅いと、結果を知るのが遅くなるだけではありません。以下の点に注意する必要があります。
注意点
- 損害賠償請求の時効に注意する
- 結果が出るまでに加害者側と安易に示談しない
後遺障害認定の遅さがどのように影響して困るのか、それぞれみていきましょう。
損害賠償請求の時効に注意する
後遺障害が関係する損害賠償請求権には、消滅時効があります。損害賠償請求権の消滅時効とは、一定の期間(時効期間)が経過すると、加害者に対して損害賠償請求をする権利が消滅する時効のことです。
時効期間が過ぎてしまうと、、慰謝料や賠償金をもらえなくなってしまいます。この時効は、後遺障害認定の結果を待っている時点ですでに進行しています。
損害賠償請求権の消滅時効
| 傷害分の時効 | 事故翌日から5年 |
| 後遺障害分の時効 | 症状固定翌日から5年 |
つまり、後遺障害認定が遅くなればなるほど、示談交渉のために残された時間が短くなってしまうのです。後遺障害認定が遅い場合は、時効までの残り時間を確認して、適切な準備をしておく必要があります。
後遺障害認定が遅くなり、損害賠償請求権の消滅時効が迫っている場合は、次のような対策を取りましょう。
消滅時効が迫っている場合の対策
- 時効の成立を延長させる手続きをとる
- 示談が速やかに成立するよう対策を練る
時効の成立延長について詳しくは『交通事故の示談に期限はある?時効期間と時効の延長方法』の記事で説明しています。
結果が出るまでに加害者側と安易に示談しない
後遺障害の認定結果が出る前に、加害者側の保険会社から提示された示談に応じてしまうと、本来受け取れたはずの後遺障害分の慰謝料・逸失利益等を受け取れなくなる可能性があります。
後遺障害申請の結果が出るまでは、示談書へのサインは慎重に判断することが重要です。示談交渉にどれくらいの期間がかかりそうか、早期成立のためにどんな対策を取るべきかは、事故状況や加害者側の姿勢によっても変わってきます。お悩みの方は弁護士に相談してください。
示談金を早く受け取りたい方へ
後遺障害認定が遅くなっている場合、示談金の受け取りが遅くなってしまいます。示談交渉は基本的に、後遺障害認定が終わらなければ始められないからです。
交通事故で後遺障害が残ると、仕事を休んだり辞めたりすることになり、収入が減ってしまうことになるでしょう。示談金は示談成立後に支払われるものなので、後遺障害認定が遅くなればなるほど、収入が減った状態が続いて生活に影響してしまうのです。
しかし、以下のような方法をとれば、示談成立前でもまとまったお金を早く受け取ることができます。
お金を早く受け取る方法
- 被害者請求で相手方の自賠責保険会社に、示談金の一部を請求する
- 内払い金や仮渡金として、相手方の任意保険会社に一定の金額を請求する
- 自身が加入している保険に保険金請求をする
どの方法をとるのがベストかわからない、各種手続きの方法がわからないという場合は、弁護士にご相談ください。
アトム法律事務所では、電話やLINEによる無料相談をおこなっております。アトムの弁護士による無料相談の特徴については「交通事故の無料相談」のページもご確認ください。
もっと詳しく
・交通事故の被害者請求|自賠責保険に請求するには?やり方とデメリット
・交通事故の慰謝料を先払いしてもらう方法|内払い・仮渡金などの条件を解説
後遺障害の申請・認定期間に関するよくある質問
Q.後遺障害認定にかかる期間の最短はどれくらいですか?
後遺障害認定にかかる期間の最短は、申請から1か月程度が目安です。
損害保険料率算出機構の統計によれば、後遺障害等級認定に関する調査の約7割は30日以内に処理されています。
むちうちなど比較的争点が少ない傷病で、書類が整っているケースでは1か月前後で結果が出ることがあります。ただし、医学的判断や追加調査が必要な傷病では、もう少し時間を要する場合が多いです。
Q.後遺障害の申請期間中に治療は続けてもよいですか?
後遺障害の申請期間中に治療を継続することは可能です。
ただし、後遺障害申請は「症状固定」を前提とした手続きであるため、症状固定後の治療費は原則として任意保険からの支払い対象になりにくい点に注意が必要です。継続治療の要否は、主治医と相談しながら判断してください。
Q.後遺障害認定の結果に納得できない場合はどうすればよいですか?
後遺障害認定の結果に納得できない場合は、「異議申立て」「自賠責保険・共済紛争処理機構への申請」による争いといった方法があります。
新たな医学的資料や証拠を加えて再判断を求める形になるため、専門家に相談しながら進めることが望ましいです。
まとめ|後遺障害の認定期間にお悩みなら弁護士にご相談ください
後遺障害認定にかかる期間は、申請から結果通知まで一般的に1〜3か月が目安です。損害保険料率算出機構の統計によれば約7割が30日以内、約9割が90日以内に処理されています。
むちうちなど比較的争点の少ない傷病では、最短1か月前後で結果が出ることもありますが、高次脳機能障害・脊髄損傷など医学的判断を要するケースでは、6か月以上かかることもあります。
申請から3か月以上経っても結果が届かない場合は、保険会社の書類提出の遅れ・申請書類の不備・医療照会への医師の対応の遅れといった原因が考えられます。
まずは保険会社に進捗を確認し、必要に応じて事前認定から被害者請求への切替えも検討するとよいでしょう。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律税務グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
