交通事故で背骨骨折(脊椎・脊柱)|後遺症ごとの後遺障害等級と慰謝料相場
交通事故で背骨(脊椎・脊柱)を骨折した場合には、骨折の仕方や部位によって適切な治療を受ける必要があります。具体的には保存療法、外科手術、リハビリなど様々で、治る過程も個人差がでてくるものです。
そして、どんなに懸命に治療を続けても後遺症が残ってしまうこともあるでしょう。
この記事では、背骨骨折の基礎知識から賠償で重要な後遺障害の認定基準、慰謝料相場やその請求方法についてを網羅的に解説します。
交通事故による背骨骨折(脊椎・脊柱)の概要
背骨は頭から足の付け根のあたりまで支える柱のような骨で、身体を支える重要な役割をもちます。まずは背骨の構造を知っておきましょう。
背骨とは首からお尻までの椎骨の集まり
背骨は椎骨という小さな骨が連なった構造をしており、7つの首の骨(頚椎)、12個の胸の骨(胸椎)、5個の腰の骨(腰椎)、1個の仙骨、数個の尾骨で構成されているものです。
たとえば、「第12胸椎圧迫骨折」などと診断を受けた場合には、12個の胸椎のうち上から12番目が骨折したという意味になります。
多くの椎骨があつまって背骨(脊椎・脊柱)を構成していることから、背骨骨折を脊椎骨折や脊柱骨折ということもあります。
脊椎における部位 | 怪我をした部位 |
---|---|
頚椎 | 首の骨折 |
胸椎 | 胸の骨折 |
腰椎 | 腰の骨折 |
仙骨、尾骨 | お尻の骨折 |
背骨骨折の代表的な症状
背骨骨折の症状は、骨折の場所や程度によって様々です。
頚椎骨折では、首周りの痛み、動かしにくさや違和感などの症状が出ることがあります。破裂骨折などの重傷事案では損傷が頸髄にまでいたり、激しい痛みや麻痺、しびれの症状も懸念されます。
胸椎骨折や腰椎骨折は、痛みが強くあらわれ、とくに寝起きや立ち上がりなど姿勢を変更するとひどくなるでしょう。また、しびれや麻痺が出てくることもあります。
仙骨や尾骨の骨折では、ときに神経の損傷を合併することがあります。下肢の筋力や知覚が低下し、排尿や排便の異常などの症状が出ることもあるのです。
背骨骨折の治療方法
背骨骨折の治療は、骨折の種類や部位によって異なってくるでしょう。
軽度の骨折では、安静にして痛み止めを服用して治癒を待つこともあります。こうした治療を「保存療法」といい、コルセットや専用装具で固定しておくこともひとつです。
ただし重度の骨折では、手術が必要になることもあります。
背骨骨折による後遺症
背骨骨折による後遺症は、骨折の程度や治療方法によって違います。軽度の骨折では、後遺症が残らずに完治することも十分あるのです。
ただし骨折の態様しだいでは、変形、動かしづらさ、神経症状などの後遺症が残ることがあります。 交通事故による背骨骨折の疑いがある場合は、ただちに病院を受診してください。
骨折にも種類がある
骨折とひとくちにいっても折れ方によって治療方法が変わります。とくに交通事故では、外部から衝撃を受けることで圧迫骨折や破裂骨折が生じやすいです。
- 圧迫骨折
- 脊椎圧迫骨折、頸椎圧迫骨折、胸椎圧迫骨折、腰椎圧迫骨折など
- 関連記事:『交通事故による圧迫骨折の後遺障害等級と慰謝料の基準を弁護士が解説』
車に追突された場合や、転落事故にあった場合など、外部からの強い衝撃により背骨がはさまれて変形することで圧迫骨折になる可能性があります。
- 破裂骨折
- 頚椎破裂骨折、胸椎破裂骨折など
外部からの激しい衝撃により、背骨の椎体が前後から押しつぶされてることで、背骨の中の神経まで損傷してしまう骨折です。神経にいたることで麻痺やしびれなどの症状があらわれます。
背骨骨折による後遺障害等級と認定基準
交通事故による背骨骨折で後遺症が残ったら、「後遺障害」に該当するかどうかの審査を受けましょう。後遺障害であると認定されれば、後遺障害の等級に応じて後遺障害慰謝料や逸失利益などの賠償金が支払われます。
背骨骨折による後遺障害には、変形障害、運動障害(荷重機能障害)、神経障害の3つがあり、いずれも画像検査の結果が欠かせないものです。
後遺障害等級認定を受ける場合にはどんな検査や資料が必要になるのかを弁護士に確認しておきましょう。
脊柱の変形障害|6級、8級、11級認定の可能性
背骨骨折による変形障害の後遺障害等級は、変形の程度によって、後遺障害6級5号、8級相当、11級7号に認定される可能性があります。
変形障害の認定基準としては、圧迫骨折や脱臼などにより生じた椎体の高さの比較や、脊柱が倒れてしまった角度の測定により判断されるのです。X線写真の結果で測定するコブ法を用いるため、画像検査の結果は必ず提出せねばなりません。
脊柱の運動障害・荷重機能障害|6級、8級認定の可能性
背骨骨折による運動障害の後遺障害等級は、骨折部位の強直の程度によって決まります。強直の程度によって、後遺障害6級5号、8級2号に認定される可能性があります。
運動障害の認定基準としては、骨折部位をどの程度動かすことができるのかという可動域、脊椎固定術が行われたかどうか、周辺部の組織などで判断されるものです。
荷重機能障害
背骨骨折により、頚部および腰部の両方の保持に困難があるため、硬性補装具を必要とする場合も運動障害として取り扱われます。
常に頸部と腰部に硬性補装具が必要であれば後遺障害6級、常に頸部または要部に硬性補装具が必要ならば後遺障害8級に準じるものとされるのです。
神経障害|12級、14級認定の可能性
痛みやしびれなどの神経障害は、後遺障害12級13号または14級9号に認定される可能性があります。画像検査の結果が重視され、医学的に症状の存在が確認できれば12級13号と認定される見込みです。
神経障害は外からは見えないため、「しびれている」「いたい」などといった自覚症状の訴えだけでは認められにくいでしょう。
後遺障害等級認定手続きのポイント
後遺障害等級の認定を申請するためには、まず医師から後遺障害診断書をもらう必要があります。
後遺障害診断書には、背骨骨折の症状や、日常生活に支障が生じているかどうかなどが記載され、認定を受けるうえでは大切な資料です。
後遺障害診断書をもらったら、後遺障害認定に関する書類一式と共に相手方の任意保険会社または自賠責保険会社に提出します。
POINT
後遺障害認定の申請を受けるための手続きには、相手の任意保険会社に一任する方法(事前認定)と、相手の任意保険会社を介さず自賠責保険会社に直接申請する方法(被害者請求)の2つがあります。
どちらの方法にもメリットとデメリットがありますが、後遺障害認定を受けられるかが微妙な場合や、想定している等級がある場合は、自身で書類を作成・収集して、直接自賠責保険会社に申請する方法がよいでしょう。
ただし被害者請求は被害者自身での手間・負担が大きいので、弁護士に依頼して任せてしまうことをおすすめします。
後遺障害の認定申請手続きについて詳しく知りたい方は『交通事故の後遺障害とは?認定されたらどうなる?認定の仕組みと認定率の上げ方』の記事をご覧ください。
背骨骨折に関連した質問3選!
ここからは背骨骨折に関連した質問について解説します。
(1)頚椎棘突起骨折の後遺症にはどんなものがある?
頚椎棘突起骨折では、損傷の程度次第で痛みやしびれといった後遺症が残る可能性があります。
そのため後遺障害としては12級13号、14級9号の神経障害に該当しうるものです。
もっとも頚椎棘突起とは、頸椎の背中側に突き出た突起のことです。この突起自体が変形障害や運動障害といった後遺症を残す可能性はあまりありません。
(2)脊椎固定術抜釘をすると運動障害に認定されない?
脊椎固定術をおこなっていることが、運動障害の認定基準のひとつです。
つまり、抜釘のタイミング次第では後遺障害等級に影響を及ぼす可能性がありますので、症状固定の時期、抜釘の時期、抜釘するかどうかは弁護士にも相談してみましょう。
(3)軸椎骨折ではどんな後遺症が懸念される?
軸椎とは第二頚椎のことで、背骨のうち首の部分に当たる7本ある頚椎のうち、上から2番目に位置する部分です。
交通事故で頭部や頸部に衝撃を受け、頸椎を骨折してしまうとき、軸椎骨折として後遺障害が残る場合があります。後遺障害としては、変形がみられることによる変形障害や可動性が下がることで運動障害にあたる可能性があるでしょう。
交通事故による背骨骨折の慰謝料相場と増額の見通し
交通事故で背骨を骨折してしまったら、慰謝料、休業損害、治療費といった損害賠償請求をするべきです。また後遺障害等級認定を受けたならば、後遺障害に関する賠償金も請求できます。
ここからは慰謝料がいったいどれくらいになるのか、どうやって請求するのかをみていきましょう。
背骨骨折の慰謝料相場と計算方法
背骨骨折で請求できる慰謝料は、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料があります。
それぞれの慰謝料相場額と計算方法について解説を行います。
入通院慰謝料の相場額
入通院慰謝料とは、背骨骨折の治療のために入院・通院した場合に請求可能です。計算方法は治療期間がベースになっているので、治療期間が長いほど慰謝料は高額になるでしょう。
入通院慰謝料の具体的な相場額は、以下の表を用いて計算します。
上記の計算表からすると、仮に6ヶ月通院した場合に116万円が相場です。入院をしていればさらに高額になる可能性があります。
後遺障害慰謝料の相場
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に応じておおよその相場があるものです。
以下に後遺障害慰謝料相場を示します。
等級 | 相場額 |
---|---|
1級・要介護 | 2,800万円 |
2級・要介護 | 2,370万円 |
1級 | 2,800万円 |
2級 | 2,370万円 |
3級 | 1,990万円 |
4級 | 1,670万円 |
5級 | 1,400万円 |
6級 | 1,180万円 |
7級 | 1,000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
たとえば、第12胸椎圧迫骨折で変形障害が残った場合、変形の程度によって、後遺障害6級5号、8級相当、11級7号に認定される可能性があります。後遺障害6級5号なら1,180万円、8級相当なら830万円、11級7号なら420万円が相場になるのです。
ただし、表に記載した金額相場は裁判で認められてきた金額です。相手の任意保険会社がこうした金額を積極的に提案してくれるものではなく、弁護士を立てて交渉し、この金額に近づけねばなりません。
背骨骨折の慰謝料請求方法
慰謝料の請求方法には、示談、ADR、裁判の3つがあります。
交通事故ではいきなり裁判を起こすのではなく、まずは裁判外で当事者同士が話しあって、合意の上で金額を決める示談で解決することが多いです。
示談段階から弁護士を立てて交渉することで、ADRや裁判まで進まずとも、裁判で得られる金額に近づけることを目指します。
もっとも示談交渉が決裂した場合には、ADRや裁判といった次の段階へ進みます。
ただしADRや裁判をしたからといって、必ず被害者側の主張が通るわけではありません。
そのため、法律の専門家である弁護士に依頼をして、最善の方策を取るべきでしょう。
補足
慰謝料のほかにも、休業損害、逸失利益といった損害賠償を請求できる可能性があります。こうした金額についても、相手の任意保険会社の提示額を信じ込まず、弁護士に見積もってもらってください。
とくに後遺障害が残った場合に請求できる逸失利益は、被害者の年齢、事故前の年収、後遺障害等級など様々な要素を総合して計算します。複雑な計算式になるので、弁護士に計算をしてもらいましょう。
関連記事
- 休業損害の計算について
『交通事故の休業損害|計算方法や休業日の数え方、いつもらえるかを解説』 - 逸失利益の計算について
『【逸失利益の計算】職業別の計算方法を解説!早見表・計算機つき』
慰謝料や逸失利益については、以下の計算機を利用することで知ることが可能です。ご自身で請求できる金額がいくらか知りたい方は、一度ご利用ください。
背骨骨折で慰謝料請求するなら弁護士に相談しよう
弁護士に相談・依頼することで相場額への増額可能
背骨骨折により慰謝料を請求する場合には、弁護士への相談や依頼を行うことで相場の金額を得られる可能性が高まります。
法律の専門家である弁護士であれば、慰謝料やそのほかに請求できる損害賠償金の金額を適切に計算することが可能でしょう。
また、相場よりも低い金額で示談しようとする加害者側に対して、弁護士から主張を行ってもらうと、専門家による根拠のある主張であることから、相場額への増額が成功しやすくなるのです。
相場額への増額だけでなく、後遺障害等級の認定や示談交渉を代わりに行ってもらえるというメリットもあるため、弁護士への相談を検討してみてください。
弁護士に頼する具体的なメリットについて
アトムなら無料の法律相談可能
アトム法律事務所では、無料の法律相談を行っております。
そのため、費用面を気にせず、慰謝料の相場額や、相場の金額を得るためにすべきことについて相談が可能です。
弁護士に依頼する際の費用が気になる方は、弁護士費用特約の利用をご検討ください。
弁護士費用特約とは
弁護士に支払う費用を、保険会社が代わりに負担してくれる特約。
多くのケースで、弁護士費用は保険会社が負担する限度額内に収まるので、自己負担を気にせず弁護士への依頼が可能となる。
仮に、弁護士費用特約が利用できない場合でも、アトム法律事務所では、依頼の時点で原則として費用をいただいておりません。
加害者側からの支払いがなされた後に、費用をいただいているため、金銭面に不安がある方でも依頼が可能です。
無料の法律相談の受付は24時間行っていますので、一度ご連絡ください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了