物損事故の過失割合はこう決まる!典型パターンと修理費への影響

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物損事故(ぶっそんじこ)とは、人がケガをせず、物のみに損害があった事故のことです。

物損事故では、車両の修理費、代車費用、レッカー代などの賠償請求が問題となります。

ただし、過失割合に応じて、請求できる賠償金は変わります。

過失割合とは、事故をおこした責任の大きさを割合で示したものです。事故の類型、道路の状況などに応じて、過失割合は決まります。

この記事では、物損事故の過失割合について、決める方法・タイミング、賠償金や自己負担額への影響、よくあるパターン(10対0、9対1など)、納得できない時の対処法などを解説します。

実際の裁判例や事故例も交えて、わかりやすくお伝えするので、是非さいごまでご覧ください。

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物損事故の過失割合とは?

物損事故とは?

物損事故とは、人身被害(ケガや死亡)がなく、車やガードレールなどの「物」だけが壊れた交通事故のことをいいます。

人身事故と物損事故@物損事故の過失割合

物損事故の過失割合とは?

物損事故でも、事故の原因や責任の度合いによって、事故当事者の修理費の負担割合が決まります。これを示すのが「過失割合」です。

たとえば、過失割合が「8:2」の場合は、8割が相手、2割が自分に責任があるという意味です。したがって、自分が被害を受けた側でも、修理費の2割は自分で負担しなければならない場合があります。

物損事故(過失割合8:2)の事例

Case

車両の修理費は、50万円
過失割合は、8(相手):2(自分)

  • 相手に請求できるのは80%
    • 50万円×80%=40万円
  • 自分の過失割合は20%
    • 50万円×20%=10万円
    • この10万円は、自己負担 or 自分の車両保険を使うことになる

物損事故の過失割合の注意点

物損事故の過失が自分にも認められる場合、その分の費用は相手に請求できません。さらに、相手から、過失割合に応じて、賠償請求される可能性もあります。

物損事故で自分の車両保険を使うと、車両の修理費について、自己負担額を減らすことができます。しかし、等級が下がって翌年の保険料が上がる可能性があります。

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物損事故で使える保険は?事故処理や保険利用の流れがわかる

物損事故の過失割合の決め方

過失割合の決定基準

過失割合は「判例タイムズ」に記載された事故形態別の過失割合を基準とし、事故の具体的な事情(修正要素)により基準となる過失割合に修正を行うことで決まります。

  • 「判例タイムズ」
    実際の裁判例をもとに、事故のタイプごとに数値化された基準集
  • 「修正要素」
    道路交通法などの法令違反(制限速度違反、わき見運転等)の有無といった、事故ごとに生じる個別の事情

基本の過失割合は「判例タイムズ」に基づく

判例タイムズには、事故形態別の基本的な過失割合が掲載されています。

実際に発生した事故と類似の事故形態を判例タイムズから探し、基本的な過失割合を決めることが多いでしょう。

そこから、以下のような基本的な過失割合を修正する要素があると加算・減算される可能性があります。

  • 時速15㎞以上の制限速度違反
  • 注意義務違反(例:わき見運転)
  • 事故現場の構造や見通し など

物損事故における基本的な過失割合一覧(主な事故類型)

物損事故における主な事故類型ごとの基本的な過失割合は、以下の通りです。

この一覧表は、自動車同士の事故を前提とした目安です。

過失割合まとめ

事故類型加害者被害者
停車中車両への追突100%
追突した車
0%
追突された車
信号無視による出会い頭事故100%
信号無視の車
0%
        
信号なし交差点での出会い頭70%
左方車
30%
右方車
優先道路と非優先道路90%
非優先道路
10%
優先道路
一時停止無視による進入80%
停止無視の車
20%
    
車線変更中の接触70%
車線変更の車
30%
    
駐車場内でのすれ違い接触50%50%
UターンVS直進車80%
Uターン車
20%
直進車

車同士の過失割合について、もっと詳しく知りたい方は『車同士の事故の過失割合は?交差点・追突・駐車場などの代表例を一挙紹介』の記事もご覧ください。

【コラム】バイクと車の事故

物損事故では、車の種類によって過失割合が変わることがあります。

バイクと車の事故では、バイクは車よりも交通弱者とされるため、過失割合がバイク側に有利になることが多いです。

交通弱者とは?

交通弱者とは、交通事故で大きな被害を受けやすい人のことを指します。

四輪車対四輪車は対等ですが、四輪車対バイクの場合、バイクの運転者は交通弱者です。

交通弱者の序列:歩行者<自転車<単車<四輪車


交通強者は、交通弱者に進路を譲る・減速する等して衝突を回避すべき注意義務が課され、過失割合が大きくなる傾向があります。

バイクと車の過失割合については、『バイクと車の事故の過失割合は?直進・右折などケース別に解説』の記事もご覧ください。

基本的な過失割合の見直しが必要な状況

事故ごとの具体的な過失割合は、基本的な過失割合に、事故ごとの個別の事情である修正要素を加えることで決まります。

主に、以下のような事実が修正要素として扱われるでしょう。

  • 時速15㎞以上の制限速度違反
  • 脇見運転
  • 酒酔い運転
  • 著しいハンドルの不操作

この他にも、事故類型ごとに過失割合が修正される要素があります。

詳しく知りたい場合は専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

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過失割合の修正要素はどのようなものがある?事故類型別に紹介

自分のケースに当てはまらないときは?

「判例タイムズの表に自分の事故パターンが載っていない」「相手の主張と食い違っている」などの場合、過失割合の判断に迷うことがあります。

そういった時は、以下の方法で対応を検討しましょう。

  • 自分の事故状況を図に描いて整理する(事故発生位置、信号、車線等)
  • ドラレコ映像や警察の事故証明を確認
  • 保険会社に異議申し立てや再調査を求める
  • 弁護士に相談して、正当な過失割合を主張する

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交通事故の過失割合でもめる5ケース&対処法|証拠が無い時どうする?

過失割合はいつ決まる?保険対応の流れ

過失割合は、事故直後にすぐ確定するわけではありません。
基本的には、示談交渉における話し合いで過失割合が決まります。

事故発生後、示談交渉による過失割合の決定までの流れは、以下の通りです。

  1. 警察や保険会社へ事故の連絡
  2. 当事者双方からの事故状況確認
  3. 事故現場の調査(警察の記録やドライブレコーダー映像)
  4. 保険会社から過失割合の提示
  5. 示談交渉による過失割合の決定

示談交渉において合意が得られない場合は、裁判や調停といった手続きが必要となるでしょう。

物損事故の過失割合の具体的なケース

10対0になる主なケース

過失割合が10対0となる主なケースは、以下の通りです。

  • 赤信号無視の車と衝突した
  • 路肩や駐車場内で完全に停車しているところにぶつけられた
  • センターラインオーバーの車と衝突した

このようなケースでは過失がゼロの側は、生じた損害の全額を請求することが可能となるでしょう。

ただし、ドライブレコーダーや目撃証言がないと10対0の主張が通りづらいこともあります。

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交通事故で過失割合が10対0になる場合とは?示談交渉の注意点も解説

9対1になる主なケース

過失割合が9対1となる主なケースは以下の通りです。

  • 優先道路を走行中に、非優先道路から出てきた車と衝突した
  • 追い越し禁止の道路上で追い越しを行った車と衝突した
  • 道路外への右折して侵入しようとした車と衝突した

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9対0になるケース

過失割合が、9対0になるケースもあります。

このような処理を片側賠償(かたがわばいしょう)といいます。

片側賠償には、法律上の根拠はありませんが、当事者間で示談を締結するために必要な場合には、このような解決方法をとるケースもあります。

過失割合9対0の仕組みやメリットについて、もっと詳しく知りたい方は『交通事故の過失割合9対0とは?片側賠償のメリットや過失相殺の計算例を紹介』の記事もあわせてご覧ください。

過失割合に納得できない場合の対処法

「提示された割合に納得できない…」「修正してほしい」という場合、以下の対応が可能です。

  • 客観的な証拠を提示する(ドライブレコーダー映像、目撃証言、警察の事故証明など)
  • 保険会社に再調査・再検討を依頼する
  • 自分の保険会社に代理交渉をお願いする(示談代行サービス)
  • 弁護士に相談する

過失割合の交渉は法律的な知識や交渉力が求められるため、弁護士への相談は非常に効果的です。

弁護士費用特約を利用できる場合には、相談・依頼する際の金銭的な負担を抑えることができます。

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【コラム】物損事故の違反点数

物損事故でも、例外的に違反点数が付くことがあります。

具体的には、追突したあと事故現場を去った当て逃げ事故や、重過失が認められる事故などです。以下のような場合です。

詳しくは、『追突事故の違反点数一覧|通知はいつ来る?罰金や処分の流れも解説』の記事もご覧ください。

まとめ|物損事故の過失割合に納得できないなら早めの対応を

物損事故における過失割合は、事故の状況や証拠によって大きく左右されます。

「相手が完全に悪いのに10対0にならない」「保険会社の提示した割合がどうにも納得できない」などのトラブルも少なくありません。

納得できる結果を得るためには、以下のような行動が大切です。

  • 事故直後から証拠をきちんと集めておく
  • 提示された割合の根拠をしっかり確認する
  • 必要に応じて弁護士の助けを借りる

過失割合は示談や保険金に大きな影響を与えるため、自分の事故ケースがどう評価されるかを把握し、適切に対応しましょう。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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