車同士の事故の過失割合は?交差点・追突・駐車場など6つのケースを解説
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この記事でわかること
車同士の事故が起きたとき、「自分にどれくらい過失があるのか」「相手が一方的に悪いと思っていたのに、なぜか責任を問われている」と疑問や不安を感じる方は少なくありません。
交通事故の過失割合は、事故の類型や信号の状況、道路の幅や標識などの条件に応じて決まり、わずか1割の違いで示談金が大きく変わるケースもあります。
本記事では、交差点・追突・追い越し・正面衝突・すれ違い・駐車場など、代表的な車同士の事故類型ごとの過失割合を具体例とともに解説。
「なぜその割合になるのか?」がわかるよう、「基本の割合+修正要素」の考え方もしっかりご紹介します。
自分のケースがどれに当てはまるのか、ぜひ確認してみてください。
※ここで紹介する過失割合は、「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に記載されている情報をベースにしています。
目次

車同士の事故(1)交差点事故の過失割合
交差点での事故は、信号の色や道路の優先関係などが複雑に絡み合うため、事故の状況によって過失割合が大きく変わります。
特に「出会い頭の事故」や「直進車と右折車の衝突(右直事故)」は、よくあるケースのひとつです。
この章では、交差点における事故パターンごとの過失割合について、具体例や表を使ってわかりやすく解説します。
出会い頭での事故の過失割合
出会い頭の事故とは、交差点に進入した2台の車がほぼ直角にぶつかる事故で、「相手が見えづらかった」「優先関係が曖昧だった」といったケースで起こりやすいのが特徴です。
特に信号や標識の有無、道路の幅や優先関係によって、過失割合が大きく変わってきます。
【たとえば】
信号のある交差点では、以下のような過失割合になる。
- 青信号で進入したA車と、赤信号で進入したB車が衝突した場合 → 過失割合はA:B=0:100
- A車が黄信号、B車が赤信号だった場合 → A:B=20:80
このように、信号の色の違いや、交差する道路の状況によって責任の重さが変わります。以下に典型的なパターンをまとめましたので、ご自身のケースと照らし合わせて確認してみてください。
信号機のある交差点における過失割合
A/B | A | B |
---|---|---|
青/赤 | 0 | 100 |
黄/赤 | 20 | 80 |
赤/赤 | 50 | 50 |
信号がなく、交差する道の幅が同じくらいだった場合の過失割合
左方車/右方車 | 左方車 | 右方車 |
---|---|---|
双方が同程度の速度 | 40 | 60 |
減速せず/減速 | 60 | 40 |
減速/減速せず | 20 | 80 |
信号がなく、片方が明らかに広い道路だった場合の過失割合
広路車/狭路車 | 広路車 | 狭路車 |
---|---|---|
双方が同程度の速度 | 30 | 70 |
減速せず/減速 | 40 | 60 |
減速/減速せず | 20 | 80 |
信号がなく、片方に一時停止の規制があった場合の過失割合
規制なし/規制あり | 規制なし | 規制あり |
---|---|---|
双方が同程度の速度 | 20 | 80 |
減速せず/減速 | 30 | 70 |
減速/減速せず | 10 | 90 |
Bが一時停止ののち進入 | 40 | 60 |
信号がなく、片方が優先道路だった場合の過失割合
優先車 | 非優先車 |
---|---|
10 | 90 |
出会い頭の事故における過失割合は、『出会い頭事故とは?過失割合の決まり方と信号や一時停止違反などの影響』の記事が参考になります。
対向する直進車と右折車の事故の過失割合
交差点で、対向して進行する直進車と右折車が衝突する事故は、いわゆる「右直事故」と呼ばれ、両方青信号だった場合は直進車が優先されるという基本ルールがあります。
したがって、青信号同士の右直事故では右折車に多くの過失が認められ、基本の過失割合は「直進車:右折車=20:80」です。
ただし、信号の色が黄や赤だった場合や、どちらかが矢印信号を見て進行していた場合には、過失割合が大きく変動することがあります。
以下の表では、信号の状況ごとの過失割合の一例をまとめています。事故の状況を思い出しながら、当てはまるケースを探してみてください。
右直事故の過失割合(信号がある交差点の場合)
直進車/右折車 | 直進車 | 右折車 |
---|---|---|
青/青 | 20 | 80 |
黄/青から黄 | 70 | 30 |
黄/黄 | 40 | 60 |
赤/赤 | 50 | 50 |
赤/青から赤 | 90 | 10 |
赤/黄から赤 | 70 | 30 |
赤/赤(右折の矢印は青) | 100 | 0 |
右直事故についてくわしくは、『右直事故の過失割合は?交差点での早回り右折・速度超過など修正要素も解説』をご覧ください。
車同士の事故(2)追突事故の過失割合
追突事故は、交通事故の中でも発生件数が非常に多く、基本的なルールはあるものの、状況によって過失割合が変わることもあります。
停車中の車への追突事故と、走行中の車への追突事故とで、責任の割合に差が出ることがあります。
この章では、典型的な追突事故のパターンごとに、基本の過失割合や修正要素を解説します。
被害車両が停車していた追突事故の過失割合
停車中の車に後続車が衝突した場合、基本的には追突した側が全面的に責任を負う(100:0)のが原則です。
なぜなら、停車中の車は動いておらず、後ろから走ってくる車がしっかり停止できていれば防げた事故だからです。
ただし、被害車両の停車位置や停め方が明らかに危険だった場合、たとえば以下のような場合は、被害車両にも一部過失が認められるケースがあります。
- 追突された車が急停止していた
- 停車禁止場所で長時間停まっていた
ご自身の停車状況が問題視されるかどうかは、個別の事情に左右されるため、慎重な判断が必要です。
被害車両が動いていた追突事故の過失割合
車が走行中に急ブレーキをかけたことが原因で追突された事故では、状況によっては被害者側にも過失が認められることがあります。
たとえば、以下のような「やむを得ない理由がない急ブレーキ」の場合は、追突された車にも過失が加算される可能性があります。
- 信号を見間違えて突然停止した
- 道を間違えて無理に停まった
- 小動物が飛び出してきたが、回避の必要性が薄かった
一方、やむを得ない事情による急ブレーキは、追突されても基本的に過失割合に影響しません。
- 前方に歩行者や自転車が飛び出してきた場合
- 落下物や道路の破損など、危険回避が必要な状況だった場合
つまり、「急ブレーキをかけた理由」が合理的であるかどうかが、過失割合の判断に大きく影響します。
ご自身のケースで不安がある場合は、事故状況を客観的に整理したうえで、専門家に相談してみるのが安心です。
車同士の事故(3)追い越し事故の過失割合
追い越し事故は、運転操作や判断ミスが原因で起こりやすく、発生場所によって過失割合が大きく異なります。
特に「追い越し禁止場所」での事故では追い越し側に重い責任が認められる傾向があります。
この章では、禁止場所・そうでない場所それぞれの事故について、想定される過失割合を具体的に解説します。
追い越し禁止場所における事故の過失割合
追い越し禁止の場所で事故が起きた場合は、追い越しを試みた側の責任が重く見られます。
基本的な過失割合は、追い越された車:追い越した車=10:90です。
追い越し禁止場所では「そもそも追い越してはいけない」という交通ルールが明確にあるため、追い越した車の行動そのものが重大な過失と見なされるのです。
ただし、追い越された車にも以下のような行動があった場合は、追い越された側の過失が加算されることがあります。
- 道幅に余裕がない場合でも道路の左側に寄らず、追い越しを妨害した(避譲義務違反)
- 周囲を確認せずに急な減速や蛇行運転をした
以下の表は、代表的な修正要素による過失割合の変化を示したものです。
ご自身のケースと照らし合わせて確認してみてください。
A(追い越された側) | B(追い越した側) | |
---|---|---|
Aの避譲義務違反* | +10 | -10 |
Aの道路交通法第27条第1項違反** | +20 | -20 |
Aの著しい過失 | +10 | -10 |
Aの重過失 | +20 | -20 |
Bの著しい過失 | -10 | +10 |
Bの重過失 | -20 | +20 |
*追い越しにあたって道幅に余裕がないとき、道路の左側に寄って場所を譲る義務
**追い越される際、速度を上げて追い越しを妨害する行為
追い越しが禁止されていない場所での事故の過失割合
追い越し自体が禁止されていない場所でも、追い越し中の事故が発生すれば、追い越しをした車の方に基本的に大きな責任が問われます。
この場合の基本的な過失割合は、追い越される車:追い越す車=20:80です。
ただし、以下のような事情があると、過失割合が調整されることになります。
〈追い越された側に加算される例〉
- 道幅が十分あるにもかかわらず、左側に寄らずに走行していた(避譲義務違反)
- 蛇行運転など、追い越しを妨げるような運転をしていた
〈追い越した側に加算される例〉
- 凹凸の多い道や見通しの悪い場所での無理な追い越し
- 前方の交通状況を確認せずに加速した
- 明らかにスピードを出しすぎていた
詳しい過失割合の変動パターンについては、以下の表を参考にしてください。
A(追い越された側) | B(追い越した側) | |
---|---|---|
Aの避譲義務違反* | +10 | -10 |
Aの道路交通法第27条第1項違反** | +20 | -20 |
Aの著しい過失 | +10 | -10 |
Aの重過失 | +20 | -20 |
追越危険場所*** | -5 | +5 |
Bの著しい過失 | -10 | +10 |
Bの重過失 | -20 | +20 |
*追い越しにあたって道幅に余裕がないとき、道路の左側に寄って場所を譲る義務
**追い越される際、速度を上げて追い越しを妨害する行為
***凹凸の多い道路、スリップしやすい道路、見通しが悪い道路、狭い道路、歩行者や対向車等の通行が多い道路など
追い越し事故の過失割合についてさらにくわしく知りたい場合は、『追い越し事故の過失割合は?追い越しのルールや事故防止のポイントもわかる』をご確認ください。
車同士の事故(4)正面衝突の過失割合
正面衝突事故では、どちらがセンターラインをはみ出したかが過失割合を大きく左右します。
【センターラインがある道路での事故】
通常、センターラインを越えて対向車線にはみ出した側に100%の責任(過失割合100:0)が認められます。
ただし、以下のように「やむを得ない事情」があった場合は、衝突された側にも過失がつく可能性があります。
- 路上工事などでセンターラインを越えざるを得なかった
- センターラインの左側が、車の走行に不十分な幅である など
【センターラインがない道路での事故】
進路の区分が明確でないため、基本的な過失割合は対向車側:被害車両側=80:20が目安となります。
こちらも前方不注意や速度超過などの修正要素により、過失割合は変動することがあります。
正面衝突の過失割合については、『対向車が突っ込んできた事故の過失割合。センターオーバーによる正面衝突の対処法』で解説しています。
車同士の事故(5)すれ違い事故の過失割合
すれ違い事故とは、道幅が狭い道路などですれ違う車同士が接触してしまう事故です。
基本的には、どちらも同程度の注意義務を負っているため、過失割合は50:50とされるのが原則です。
ただし、以下のようなケースでは、どちらかの過失割合が大きくなることもあります。
- 一方の車が路肩に寄って徐行していたのに、もう一方がセンター寄りを通常速度で通過した
→ 過失割合:路肩側30〜40:中央側60〜70 - 一方のドライバーがハンドル操作を誤った(ハンドルミス)
→ ハンドルミスをした側:60%の過失
すれ違い事故は、「どちらがより注意していたか」「回避可能だったか」が判断基準となります。
自分の運転に落ち度があったかどうかを客観的に振り返ることが大切です。
車同士の事故(6)駐車場での事故の過失割合
駐車場内の事故は、道路と違って明確な優先関係がわかりづらく、トラブルになりやすいのが特徴です。
そのため、どちらが進行していたか、進路変更のタイミングなど、状況ごとに過失割合が異なります。
【通路を進行していた車A:駐車区画から出てきた車B】
→ 基本の過失割合:A:B=30:70
→ 出庫車(B)は安全確認を怠ったとされるため、より重い責任が問われます。
【通路を進行していた車A:駐車区画へ入ろうとしていた車B】
→ 基本の過失割合:A:B=80:20
→ 入庫車(B)は進路変更する立場であり、通路優先の原則が適用されます。
駐車場内では一時停止線や信号がないため、安全確認をどれだけしていたかが過失判断のカギになります。
事故直後の状況をメモや写真で残しておくと、後の示談交渉でも有利に働くでしょう。
過失割合の決め方と交渉の重要性
過失割合は、事故の種類だけでなく、運転者それぞれの行動によって変動します。
また、示談金額にも直接影響する重要な要素であり、1割の違いが大きな金額差につながることもあります。
この章では、過失割合がどのように決まるのか、なぜ正確な把握と交渉が必要なのかを解説します。
「基本の過失割合」と「修正要素」の組み合わせで決まる
交通事故の過失割合は、「基本の過失割合」+「修正要素」の組み合わせによって決まります。
- 基本の過失割合:事故のパターン(例:出会い頭、追突、右直事故など)ごとに定められた目安
- 修正要素:当事者の速度超過、急な進路変更、合図なしの右左折など、個別の事情に応じて加算・減算される要素
事故類型は同じでも、細かな運転状況によって過失割合が変動するため、個別の状況確認が欠かせません。
加害者側と意見が食い違うケースも多く、専門的な知識に基づいた交渉が重要になります。
過失割合が1割変わると示談金額も変わる
過失割合は、被害者が受け取れる損害賠償額に直結します。
たとえば、過失が1割あると、その分だけ示談金が減額されてしまうからです。
具体例
示談金300万円 × 過失1割 → 受取額270万円(30万円減額)
事故によっては、被害額が数百万円〜数千万円になることもあり、1割の差が数十万円以上になる可能性もあります。
保険会社は交渉に慣れており、被害者側に不利な過失割合を提示してくることもあるため、冷静かつ根拠をもった反論が必要です。
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車同士の過失割合は弁護士にお問い合わせください
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一方的に不利な条件を提示された場合でも、適切な主張によって改善できる可能性があります。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了