T字路交差点での事故の過失割合は?一時停止規制や優先道路別に解説

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T字路交差点の事故

T字路で発生した交通事故の過失割合は、大きく「直進車と右左折車との事故の過失割合」と「右折車同士の事故の過失割合」の2パターンが想定されます。

T字路で発生した交通事故の過失割合は、T字の上の直進道路の部分が優位となるのが基本です。

ただし、道幅や一時停止規制の有無などに応じて、過失割合は変わってくるので注意せねばなりません。さまざな種類が存在する交差点のなかから、本記事では「T字路(丁字路)」に焦点を当てて、T字路における交通事故の過失割合について紹介していきます。

なお、法律用語として正しくは「丁字路」となりますが、一般的には「T字路」と呼ばれることが多いので、本記事ではT字路に統一して解説を進めます。

本記事で紹介する過失割合は「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に記載されている情報をベースにしています。

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T字路で起きた直進車と右左折車との事故の過失割合

T字路で起きた直進車と右左折車との事故の過失割合は、「道幅が同幅員の場合」「直進車側が明らかに広い道路の場合」「右左折車側に一時停止規制がある場合」「直進車側が優先道路の場合」の4パターンに分けられます。

パターンごとの基本の過失割合についてみていきましょう。なお、事故の状況に応じて修正要素が加味されて、最終的な過失割合が決まりますので、修正要素もあわせて紹介します。

修正要素についてより具体的な内容については本記事内「Q.過失割合を左右する修正要素とは?」で解説しているので、あわせてご確認ください。

T字路の道幅が同幅員の場合

道幅が同幅員のT字路で直進車と右左折車が衝突した場合、基本の過失割合は「直進車30%:右左折車70%」です。

道幅が同幅員とは、直進車側の道路も右左折車側の道路も同じくらいの道幅で、一時停止規制やセンターラインがない道のことを指します。

T字路の道幅が同幅員の場合の修正要素は、以下の通りです。

基本の過失割合と修正要素

直進車右左折車
基本の過失割合3070
右左折車の明らかな先入+10-10
直進車の著しい過失+10-10
直進車の重過失+20-20
右左折車の著しい過失-10+10
右左折車の重過失-20+20

たとえば、右左折車の明らかな先入がある場合、基本の過失割合に「±10」の修正要素が加味され、直進車40%:右左折車60%の過失割合となります。

T字路の直進車側が明らかに広い道路の場合

T字路の直進車側が明らかに広い道路で直進車と右左折車が衝突した場合、基本の過失割合は「直進車20%:右左折車80%」です。

明らかに広い道路とは、交差する道路の一方が明らかに広い道幅のことを指します。明らかに広いかどうかは、客観的にかなり広いと一見できる場合です。

T字路の直進車側が明らかに広い道路の場合の修正要素は、以下の通りです。

基本の過失割合と修正要素

広い道路側の直進車狭い道路側の右左折車
基本の過失割合2080
右左折車の明らかな先入+10-10
直進車の著しい過失+10-10
直進車の重過失+20-20
右左折車の著しい過失-10+10
右左折車の重過失-20+20

たとえば、直進車の著しい過失がある場合、基本の過失割合に「±10」の修正要素が加味され、直進車30%:右左折車70%の過失割合となります。

T字路の右左折車側に一時停止規制がある場合

T字路の右左折車側に一時停止規制がある道路で直進車と右左折車が衝突した場合、基本の過失割合は「直進車15%:右左折車85%」です。

一時停止規制とは、標識・停止線等で一時停止の表示があることです。道路の道幅が同じであろうと、一方が明らかに広かろうと、一時停止規制があれば一時停止する義務が求められるので、一時停止規制がある側の過失が大きくなります。

T字路の右左折車側に一時停止規制がある場合の修正要素は、以下の通りです。

基本の過失割合と修正要素

規制なしの直進車規制ありの右左折車
基本の過失割合1585
右左折車の一時停止後進入+15-15
直進車の著しい過失+10-10
直進車の重過失+20-20
右左折車の著しい過失-10+10
右左折車の重過失-20+20

たとえば、直進車の重過失がある場合、基本の過失割合に「±20」の修正要素が加味され、直進車35%:右左折車65%の過失割合となります。

T字路の直進車側が優先道路の場合

T字路の直進車側が優先道路で、直進車と右左折車が衝突した場合、基本の過失割合は「直進車10%:右左折車90%」です。

優先道路とは、優先道路や前方優先道路といった標識が設置されていたり、センターラインが交差点を突き抜けて引かれていたりする道路のことです。優先道路側には交差点での徐行義務が原則としていないので、優先道路側でない劣後車側の過失が大きくなります。

優先道路における事故の過失割合や、優先道路の見分け方については『優先道路での事故|優先なのに過失割合がつく?優先道路の定義と見分け方』の記事が参考になりますので、あわせてご確認ください。

T字路の直進車側が優先道路の場合の修正要素は、以下の通りです。

基本の過失割合と修正要素

優先道路側の直進車劣後車側の右左折車
基本の過失割合1090
右左折車の明らかな先入+10-10
直進車の著しい過失+10-10
直進車の重過失+20-20
右左折車の著しい過失-10+10
右左折車の重過失-20+20

たとえば、右左折車に著しい過失がある場合、基本の過失割合に「±10」の修正要素が加味され、直進車0%:右左折車100%の過失割合となります。

T字路で起きた右折車同士の事故の過失割合

T字路で起きた直進車同士の事故の過失割合は、「道幅が同幅員の場合」「一方が明らかに広い道路の場合」「一方に一時停止規制がある場合」「一方が優先道路の場合」の4パターンに分けられます。

パターンごとの基本の過失割合を紹介します。なお、事故の状況に応じて修正要素が加味されて、最終的な過失割合が決まりますので、修正要素もあわせてみていきましょう。

修正要素についてより具体的な内容については本記事内「Q.過失割合を左右する修正要素とは?」で解説しています。あわせてご確認ください。

T字路の道幅が同幅員の場合

道幅が同幅員のT字路で右折車同士が衝突した場合、基本の過失割合は「直線路の右折車A40%:突き当り路の右折車B60%」です。

道幅が同幅員とは、双方の道路がどちらも同じくらいの道幅で、一時停止規制やセンターラインがない道のことを指します。

T字路の道幅が同幅員の場合の修正要素は、以下の通りです。

基本の過失割合と修正要素

直線路の右折車A突き当り路の右折車B
基本の過失割合4060
右折車Bの明らかな先入+10-10
右折車Aの著しい過失+10-10
右折車Aの重過失+20-20
右折車Bの著しい過失-10+10
右折車Bの重過失-20+20

たとえば、右折車Bの明らかな先入がある場合、基本の過失割合に「±10」の修正要素が加味され、右折車A50%:右折車B50%の過失割合となります。

T字路の一方が明らかに広い道路の場合

T字路の一方が明らかに広い道路で右折車同士が衝突した場合、基本の過失割合は「広い道路側の右折車A30%:狭い道路側の右折車B70%」です。

明らかに広い道路とは、交差する道路の一方が明らかに広い道幅のことを指します。明らかに広いかどうかは、客観的にかなり広いと一見できる場合です。

T字路の一方が明らかに広い道路の場合の修正要素は、以下の通りです。

基本の過失割合と修正要素

広い道路側の右折車A狭い道路側の右折車B
基本の過失割合3070
右折車Bの明らかな先入+10-10
右折車Aの著しい過失+10-10
右折車Aの重過失+20-20
右折車Bの著しい過失-10+10
右折車Bの重過失-20+20

たとえば、右折車Aの著しい過失がある場合、基本の過失割合に「±10」の修正要素が加味され、広い道路側の右折車A40%:狭い道路側の右折車B60%の過失割合となります。

T字路の一方に一時停止規制がある場合

T字路の一方に一時停止規制がある道路で右折車同士が衝突した場合、基本の過失割合は「規制なしの右折車A25%:規制ありの右折車B75%」です。

一時停止規制とは、標識・停止線等で一時停止の表示があることです。道路の道幅が同じであろうと、一方が明らかに広かろうと、一時停止規制があれば一時停止する義務が求められるので、一時停止規制がある側の過失が大きくなります。

T字路の一方に一時停止規制がある場合の修正要素は、以下の通りです。

基本の過失割合と修正要素

規制なしの右折車A規制ありの右折車B
基本の過失割合2575
右折車Bの一時停止後進入+15-15
右折車Aの著しい過失+10-10
右折車Aの重過失+20-20
右折車Bの著しい過失-10+10
右折車Bの重過失-20+20

たとえば、右折車Aに重過失がある場合、基本の過失割合に「±20」の修正要素が加味され、右折車A45%:右折車B55%の過失割合となります。

T字路の一方が優先道路の場合

T字路の一方が優先道路で右折車同士が衝突した場合、基本の過失割合は「優先道路側の右折車A20%:劣後車側の右折車B80%」です。

優先道路とは、優先道路や前方優先道路といった標識が設置されていたり、センターラインが交差点を突き抜けて引かれていたりする道路のことです。優先道路側には交差点での徐行義務が原則としていないので、優先道路側でない劣後車側の過失が大きくなります。

T字路の一方が優先道路の場合の修正要素は、以下の通りです。

基本の過失割合と修正要素

優先道路側の右折車A劣後車側の右折車B
基本の過失割合2080
右折車Bの明らかな先入+10-10
右折車Aの著しい過失+10-10
右折車Aの重過失+20-20
右折車Bの著しい過失-10+10
右折車Bの重過失-20+20

たとえば、右折車Bに著しい過失がある場合、基本の過失割合に「±10」の修正要素が加味され、右折車A10%:右折車B90%の過失割合となります。

T字路事故の過失割合でよくある質問

Q.過失割合を左右する修正要素とは?

修正要素とは、事故の状況に応じて基本の過失割合から、過失を加算したり減算したりするものです。

T字路事故で用いられる修正要素とその意味は、主に以下の通りです。

  • 明らかな先入
    明らかな先入とは、T字の下の縦部分側を走行する車両が明らかに先に交差点に進入しており、T字の上の直進部分側を走行する車両が衝突を回避できたであろう状態のこと
  • 一時停止後進入
    一時停止後進入とは、一時停止規制がある側の車両が、一時停止と左右確認を行って、一時停止規制がない側の車両が接近していることを認識していたものの、速度と距離の判断を誤って交差点に進入して、減速しなかった相手車両と衝突してしまった状態のこと
  • 著しい過失
    著しい過失とは、脇見運転等による前方不注視、著しいハンドル・ブレーキ操作不適切、携帯電話の通話・画面の注視によるながら運転、時速15km以上30km未満の速度違反、酒気帯び運転 などのこと
  • 重過失
    重過失とは、酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、時速30km以上の速度違反、過労・病気および薬物の影響その他の理由により正常な運転ができない恐れがある場合 などのこと

なお、修正要素もあくまで目安にすぎません。事故状況は個別の状況に応じてさまざまなので、より厳密な過失割合にするには弁護士に相談することをおすすめします。

Q.バイクや自転車が絡む事故の過失割合はどうなる?

バイクや自転車が絡むT字路における交通事故の過失割合に関しては、交差点における交通事故の過失割合を参考にして決められることになります。T字路における交通事故の過失割合は、車同士のみを想定しているからです。

実際には、車とバイク、車と自転車、バイクと自転車など、T字路では多くの事故態様が存在することにはなります。しかし、車同士以外の場合、参考にする過失割合は交差点における交通事故の過失割合となるので注意してください。

交差点事故の過失割合については『交差点での事故の過失割合は?信号あり・信号なしのパターンで解説』の記事が参考になりますので、あわせてご確認ください。

なお、いずれにしても、参考にする過失割合は目安でしかありません。事故の状況を詳細に反映させなければ正しい過失割合にはならないので、一度、弁護士に相談しておくことをおすすめします。

T字路事故でケガを負ったら弁護士相談

T字路事故の過失割合といっても、直進車と右折車の衝突であったのか、右折車同士の衝突であったかや、道幅・一時停止規制の有無などによって、過失割合は大きく異なります。

T字路事故の過失割合や慰謝料の金額について、疑問や不安がある場合は、弁護士に相談してみましょう。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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