交通事故でてんかんを発症したら?後遺障害と慰謝料について弁護士が解説
交通事故で頭を強く打つ等の外傷を負った場合、外傷性てんかんの障害が残る可能性があります。
てんかんは、意識喪失や痙攣、顔や手足のひきつけといった発作を引き起こす脳の病気です。
外傷性てんかんが後遺障害として認められれば、後遺障害慰謝料や逸失利益等の賠償金を請求できるようになります。
交通事故で外傷性てんかんを発症する原因と症状
交通事故による頭部外傷がほとんど
交通事故で外傷性てんかんを発症する原因のほとんどは、交通事故で頭部を強くぶつける頭部外傷です。
特に、頭部外傷によって頭蓋骨陥没骨折を負った場合、高頻度で外傷性てんかんを発症するといわれています。
頭部外傷で脳に損傷を受けると、脳細胞が破壊されて神経伝達の異常が起こり、てんかんを発症します。もっとも、てんかんの詳しいメカニズムについて、現代医学では完全解明に至っていません。
外傷性てんかんの症状は様々
外傷性てんかんの症状は、発作の型や頻度、重症度によって様々です。
主な発作の型は以下の通りです。
- 意識喪失を伴う発作
- 意識を失わない発作
- けいれん発作
- 意識障害発作
- 失神発作
など
発作の頻度は、1日に何度も起こる場合もあれば、数年に1回しか起こらない場合もあります。発作の重症度も、軽いものから重いものまで様々です。
発作を繰り返すことで、正常な脳神経細胞も傷ついてしまい、症状が悪化したり他の症状を引き起こすことになります。交通事故後にてんかんの症状がみられる場合には、医療機関で適切な治療を受けることが大切です。
外傷性てんかんと交通事故に関する質問
てんかんが残っても運転免許は取得できる?
てんかんが残っていても、一定の条件を満たせば運転免許の取得は可能です。
ただし、発作が起こる頻度や程度によっては、運転免許の取得が認められないこともあります。運転免許の取得を希望する場合には、医師の診断書や臨時適性検査の受検が必要になるケースもあるでしょう。
てんかんをはじめ、一定の病気等がある場合は、運転免許試験場に設けられている相談窓口にお問い合わせください。
てんかんが残っても車を運転していい?
てんかんが残っていても、一定の条件を満たせば運転免許が取得できるので、車を運転することは可能です。
ただし、体調不良を感じたり、抗てんかん薬を飲み忘れた場合は、車の運転を控えたほうがよいでしょう。運転中に発作の予兆を感じることがあれば、すみやかに車を運転をやめ、安全な場所で休息をとるようにしてください。
てんかん症状で交通事故を起こしたらどうなる?
てんかん症状で交通事故を起こして過失が認められる場合には、事故相手に対する損害賠償責任を負わねばなりません。また、場合によっては刑事責任や行政処分の対象になることもあります。
外傷性てんかんの後遺障害等級
外傷性てんかんによる後遺障害等級は、発作の型や発作の回数などから認定基準をみたすかどうか判断されます。
外傷性てんかんで後遺障害5級
1ヶ月に1回以上の転倒するようなてんかん発作等がある場合、後遺障害5級が認定されます。
5級2号 | |
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障害内容 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
判断基準 | 1ヶ月に1回以上の発作があり、かつ、その発作が「意識障害の有無を問わず転倒する発作」又は「意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作」であるもの |
外傷性てんかんで後遺障害7級
転倒するようなてんかん発作等が数ヶ月に1回以上あるか、その他のてんかん発作が1ヶ月に1回以上ある場合、後遺障害7級が認定されます。
7級4号 | |
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障害内容 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
判断基準 | 転倒する発作等が数ヶ月に1回以上あるもの又は転倒する発作等以外の発作が1ヶ月に1回以上あるもの |
外傷性てんかんで後遺障害9級
その他のてんかん発作が数ヶ月に1回以上か、服薬でほぼ完全にてんかん発作が抑制されている場合、後遺障害9級が認定されます。
9級10号 | |
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障害内容 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
判断基準 | 数ヶ月に1回以上の発作が転倒する発作等以外の発作であるもの又は服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されているもの |
外傷性てんかんで後遺障害12級
てんかん発作が生じていなくても、脳波上に異常が認められる場合、後遺障害12級が認定されます。
12級 | |
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障害内容 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
判断基準 | 発作の発現はないが、脳波上に明らかにてんかん性棘波を認めるもの |
てんかんは高次脳機能障害を伴う可能性もある
1ヶ月に2回以上のてんかん発作がある場合、てんかんと伴って高度の高次機能障害を発症していると考えられています。後遺障害3級以上に該当する場合は、高次機能障害として判断されることになるでしょう。
高次脳機能障害は症状によって認定される後遺障害等級が異なりますので、関連記事『高次脳機能障害で後遺障害等級認定される後遺症とは?記憶障害や性格の変化は?』も併せてお役立てください。
外傷性てんかんの後遺障害慰謝料
外傷性てんかんの慰謝料の計算方法と相場
外傷性てんかんが後遺障害等級に認定されると、後遺障害慰謝料の請求が可能です。
後遺障害慰謝料の相場は、認定された等級ごとに異なります。またあくまでも相場であって、実際の慰謝料の金額はケースバイケースで異なってくるものです。
後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
5級 | 618万円 (599万円) | 1,400万円 |
7級 | 419万円 (409万円) | 1,000万円 |
9級 | 249万円 (245万円) | 690万円 |
12級 | 94万円 (93万円) | 290万円 |
()内の金額は2020年3月31日以前の事故に適用
自賠責基準と弁護士基準の慰謝料額を比較したとき、自賠責基準が低額で、弁護士基準が高額であることがわかります。同じ交通事故であっても、どの基準で計算するかで慰謝料は変わるのです。
最も慰謝料の相場が高額になるのは、裁判所や弁護士といった法律の専門家があつかう「弁護士基準」で計算した時です。裁判前の示談段階で弁護士基準の慰謝料を目指すなら、弁護士を立てて交渉しなくてはなりません。適正な慰謝料獲得に向けて、弁護士への依頼も検討しておきましょう。
入通院慰謝料の請求も可能
交通事故の慰謝料は、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の2種類があります。このうち、交通事故後のケガの治療期間中に負った精神的苦痛を緩和する金銭のことを、入通院慰謝料としているのです。
つまり外傷性てんかんの治療期間に応じて、入通院慰謝料を請求できます。
入通院慰謝料の目安を知りたい方は慰謝料計算機を活用してみましょう。もっとも、いわゆる相場観の把握にとどめ、より精度の高い慰謝料見込額を知りたい方は弁護士への無料相談を利用してください。
外傷性てんかんの慰謝料請求ポイント
外傷性てんかんの慰謝料を請求する場合には、次の点に注意しましょう。
- 交通事故の状況を記録しておく
- 医師の診断を受けて、てんかんの診断書を取得する
- 外傷性てんかんの後遺障害等級を申請する
- 交通事故の相手方と示談交渉を行う
- 示談交渉がうまくいかない場合、弁護士に相談する
外傷性てんかんの後遺障害等級を申請する場合には、弁護士に相談・依頼して、後遺障害等級の申請サポートを受けましょう。
また、外傷性てんかんによる慰謝料請求も、専門的な知識や経験が必要となるため、弁護士に相談・依頼することをお勧めします。弁護士は、あなたの代わりに示談交渉を行い、適正な慰謝料を獲得するために尽力します。
交通事故で外傷性てんかんの後遺障害が残ったら弁護士に相談
無料相談でまずは疑問を解決しよう!
アトム法律事務所では、交通事故でケガをした方に向けての法律相談を無料でおこなっています。交通事故の影響でてんかん発作を起こすようになった場合、後遺障害申請をおこなって適正な損害賠償請求に取り掛かりましょう。
- てんかんで後遺障害認定は受けられる?
- 慰謝料はどのくらいが妥当?
- 保険会社の強気な態度にどう対応すればいい?
アトム法律事務所の無料法律相談を使って、まずは疑問を解決することをおすすめします。
アトム法律事務所の特徴
- 全国の交通事故に対応している
- 軽傷から重傷事故まで解決のノウハウを多く持つ
- 弁護士費用が後払い(法律相談料無料かつ着手金も原則無料)
依頼後の弁護士費用についての仕組みがわからないという方は、アトム法律事務所の「交通事故の弁護士費用」をご確認いただくか、法律相談時に直接弁護士にお問い合わせください。
また、弁護士費用が気になる方はご自身が使える弁護士費用特約の有無を確かめておくと良いでしょう。特約は、被害者本人の名義でなくても一定範囲内の家族名義のものが利用できる場合があります。
事故被害者がいくらの弁護士費用を支払うことになるのかは、弁護士費用特約の有無次第です。弁護士費用特約とは、被害者の弁護士費用を保険会社が支払ってくれるという特約になります。具体的な補償額は約款次第ですが、法律相談料として10万円まで、弁護士費用として300万円までと定める特約が多いです。
交通事故の損害賠償請求の件で弁護士を立てた場合、多くのケースで、弁護士費用特約の補償範囲におさまります。つまり被害者は弁護士費用を支払うことなく、自分の代理人として活動してくれる弁護士を依頼できるのです。
ご自身の損害賠償請求額はいくらなのか、そして弁護士費用がいくらになりそうか、そうした疑問も無料相談で解決できる場合があります。無料相談については依頼とは別ですし、強引な契約もないので安心してお問い合わせください。
弁護士選びのヒントになる記事も紹介します。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了