物損事故の賠償金とは?請求できるものや金額の決め方・交渉ポイントを解説

更新日:

kt eyecatch526019

交通事故に遭ったとき、ケガがなければ「物損事故」として処理されます。物損事故では修理費だけでなく、評価損や代車費用なども賠償金として請求可能です。

ただし、すべての項目が認められるわけではありません。相手方保険会社との交渉でもめることもあるため、事前に知識を備え、証拠を揃えたうえで冷静に対応することが大切です。

この記事では、物損事故で請求できる主な損害項目から、損害賠償金の金額の決め方、保険会社との交渉方法まで、できるだけわかりやすくご紹介します。

トラブルが長引きそうな場合や、金額に納得できない場合は、早めに弁護士などの専門家に相談するのも選択肢のひとつです。

交通事故の無料法律相談
相談料 無料
毎日50件以上のお問合せ!

物損事故とは?人身事故との違い

交通事故は大きく分けて「人身事故」と「物損事故」の2種類があります。人身事故は人がケガをした場合、物損事故はモノ(たとえば車や塀、電柱など)に損害が出た場合を指します。

ちなみに、物損事故では原則として「慰謝料(精神的苦痛に対する損害賠償)」は請求できません。

ただし、例外的に高額な物の破損やペットへの損害などで慰謝料が認められた判例もあります。

物損事故で請求できる損害項目

物損事故における損害賠償請求の根拠は、民法709条の「不法行為に基づく損害賠償請求権」です。

加害者が不注意(過失)で他人の物に損害を与えた場合、その損害を賠償する責任があるため、被害者は損害賠償請求が可能となります。

請求できる主な損害項目

物損事故における損害賠償では、主に以下のような費用を事故相手(または相手の任意保険会社)に請求できます。

項目名内容の説明
修理費用壊れた車や物の修理代。見積書や修理明細が重要な証拠になる。
評価損修理しても事故歴が残ることで市場価値が下がった分の補償。特に高級車や新車で争点になる。
買い替え費用修理が不可能または経済的合理性がない場合、同等品への買い替え費用が認められることがある。
代車費用車の修理中に代車が必要な場合、その費用も請求可能(必要性が認められる範囲)。
レッカー代自走できない車両を運んでもらうための費用。
休車損害営業用車両の場合、使用できなかったことで発生する営業損害。

これらは「実際に生じた損害」に基づいて請求することになります。証拠の保存が非常に大切です。

評価損とは|請求できるケース

評価損とは、「修理しても市場価値が下がる」ことへの補償です。事故に遭った場合、「事故歴あり」とされ売却価格が下がってしまうことがあります。この差額が評価損です。

特に以下の場合に認められるケースが多いです。

  • 高級車や新車
  • フレーム(骨格)に損傷があった
  • 修理費が高額となった

ただし、保険会社は全ての案件で認めてくれるとは限らず「直ったのだから価値は変わらない」と主張してくることもあります。

過去の判例では車種や修復歴の有無、高級車かどうかなども考慮されています。

こうした評価損は専門的な判断が必要になるため、実績ある交通事故専門の弁護士に相談するほうがスムーズです。

物損関連の裁判例解説

物損事故で慰謝料は請求できる?

通常、物損事故の場合、精神的苦痛への慰謝料は認められません。

物損が生じたという精神的苦痛は、修理や買い替えによって癒されると考えられているためです。

ただし、過去の判例では次のような場合に慰謝料が認められた例もあります。

  • 大切にしていたペットが事故で死傷した
  • 芸術品や思い出の品など、替えのきかない物の破損があった
  • 家屋が壊されて生活場所の変更が必要となった

こうした例外事項については、弁護士に相談するのが望ましいでしょう。

関連記事

物損事故で慰謝料がもらえた事例|原則もらえない理由と獲得を目指す方法

損害賠償金の決め方|金額はどうやって決まる?

物損事故での「損害賠償金」は、被害の状況と提出した証拠にもとづいて決まります。自分がどの程度の損害を被ったのか、客観的に説明できるかが重要です。

損害賠償金(補償金)は次のポイントをもとに決定されます。

  1. 損害額を示す客観的な証拠があるか(修理見積書・写真・査定など)
    損害の内容を証明するには修理見積書や領収書などが不可欠です。代車を借りた場合も、契約書やレシートを保存しておきましょう。
  2. 損害と事故との因果関係が明確か
    事故直後の車体の写真や、事故状況がわかるドライブレコーダの映像などがあると、事故によりどのような損害が生じたいのかを証明しやすいでしょう。
  3. 補償対象になる損害かどうか
    特に、評価損については相手方の保険会社が賠償を拒否・減額する場合もあるため、根拠を持って主張することが重要です。
  4. 当事者間の過失がどの程度か
    被害者自身にも事故発生に関する責任(過失)がある場合、過失割合に応じて請求できる賠償額も変わってきます。

また、保険会社は過去の事例や内部基準をもとに計算した金額を提示することが多く、被害者として納得できる金額かどうかはきちんと判断する必要があります。

明らかに過小な提示があった場合に備え、同様のケースでの相場を調べておくと役立つでしょう。

保険会社との交渉の注意点

交渉時に気をつけたいこと

物損事故の損害賠償では、相手方の保険会社とのやり取りになることがほとんどです。

ただし、保険会社からの提示額が「すべて正しい」とは限りません。

保険会社との交渉時には、以下のような点に注意しましょう。

  • 最初に提示される金額や過失割合は、被害者にとって不利な場合も
  • 感情的に対応すると、交渉がこじれることもある
  • 専門家(弁護士)に相談すると、適正な金額での解決に近づく

特に評価損や休車損害、修理金額の妥当性は、相手と見解が分かれやすいポイントです。

金額に納得いかない場合は、証拠を揃え、冷静に交渉しましょう。第三者(弁護士)に依頼することで、負担が大きく軽減されるケースも多いです。

物損事故で損をしないための3つのポイント

物損事故における損害賠償請求は、以下の点に気を付けることで損する可能性を減らせます。

  1. 細かい損害も証拠を残す(写真・領収書・見積書など)
  2. 必要経費には理由を書き添える(なぜ代車が必要だったのか等)
  3. 保険の契約内容を確認し、補償範囲を把握する

弁護士に依頼するメリット

物損事故の示談交渉について弁護士に依頼すると、以下のようなメリットを得られます。

  • 適正な損害項目の把握
  • 評価損や慰謝料を適切な根拠にもとづいて請求
  • 法的根拠に基づいた冷静な交渉

保険会社に対してプロとしての視点で対応できるため、最終的に賠償金額が増えることもあります。

賠償金を支払う立場になったときに知っておきたいポイント

賠償金を支払う立場になった場合、以下の点を押さえておくとトラブルを防げます。

  • 速やかに加入している保険会社に連絡する
    事故発生後は、早期に保険会社に連絡し、今後の対応について指示を受けましょう
  • 逃げずに誠実に対応することが大切
    被害者との信頼関係を損なうと、トラブルが長期化する可能性があります
  • 示談交渉は慎重に行う
    どのような示談内容とするのかについては、保険会社や弁護士の指示を受けつつ慎重に決めましょう

物損事故の賠償金でよくある質問

Q.自賠責保険でも物損は補償されますか?

自賠責保険(強制保険)は、物的損害(車や建物など)は対象外です。自賠責保険は人身事故のみを補償対象としているからです。

任意保険の対物賠償保険で対応することが必要になります。

Q.車が全損した場合、全額補償されますか?

全損の場合、修理費が車の時価額を上回ると判断されたときは、その時点の車の市場価格(時価額)までが賠償範囲となります。

新車価格での補償ではないので注意が必要です。

納得できないなら相談しよう|弁護士があなたをサポート

「保険会社から提示された賠償金額が安すぎる気がする」
「請求できる補償項目をすべてカバーできているか不安」

そんなときは、専門家である弁護士に相談・依頼を行い、サポートを受けましょう。

法律相談の対象となる代表的なケース

  • 修理費・評価損・代車費用の算定が曖昧
  • 保険会社との交渉がうまくいかない
  • 自分にも過失があるケースでの賠償請求
  • 評価損の証明が難しい
  • 慰謝料請求が可能な特殊事情がある場合

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

突然生じる事故や事件に、
地元の弁護士が即座に対応することで
ご相談者と社会に安心と希望を提供したい。