交通事故の慰謝料を上げる方法はある?示談金の増額ポイントとは

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交通事故の慰謝料

この記事をごらんになっているあなたは、以下のいずれかに当てはまるでしょうか?

  • 保険会社との示談交渉中、保険会社の対応に憤りを感じた
  • 保険会社から慰謝料の提示を受け、低額だと感じた
  • 保険会社に慰謝料の増額を交渉したが合意できそうにない

当記事では、交通事故被害者側からの交渉で慰謝料額を上げることができるのかどうか、また、上げる方法にはどのようなものがあるのかについて解説していきたいと思います。

今後の示談交渉に、ぜひお役立てください。

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慰謝料(示談金)を上げる方法・タイミング

保険会社から慰謝料額が提示されたあと、被害者側から交渉することによって慰謝料額を上げることはできるのでしょうか?

結論から言うと、示談前のタイミングであれば増額はできる可能性があります。

示談交渉中であれば示談は成立しておらず、慰謝料額の合意には至っていないからです。
つまり、示談交渉中ならば、保険会社からの提示額はあくまで「提案」にすぎず、まだ金額は確定していないのです。

示談が成立してしまっている場合は、基本的に慰謝料額を上げることはできません。
示談は、示談金が確定し、ひとたび解決すれば、二度とやり直しができないのが原則だからです。

(和解の効力)
当事者の一方が和解によって争いの目的である権利を有するものと認められ、又は相手方がこれを有しないものと認められた場合において、その当事者の一方が従来その権利を有していなかった旨の確証又は相手方がこれを有していた旨の確証が得られたときは、その権利は、和解によってその当事者の一方に移転し、又は消滅したものとする。

民法 第六百九十六条

上記は、示談(和解)の効力を条文にしたものです。
解釈としては、示談後は仮に事実と違うことが判明したり、新たな証拠が出てきた場合であっても、これ以上は請求できないといっているのです。

よって、慰謝料を上げる方法は、示談成立前に増額を求めることとなります。

ただし、慰謝料の種類によって細かい増額の方法は違うので、これから詳しく解説していきます。

慰謝料を上げる方法|慰謝料の種類ごとに解説

慰謝料は3種類ある

示談金のうち、増額がもっとも期待できるのは「慰謝料」であるといえます。

まずは、以下3つの慰謝料の種類を確認しましょう。

  1. 入通院慰謝料
  2. 後遺障害慰謝料
  3. 死亡慰謝料

被害者のケガの状態および慰謝料請求方法によって、認められる慰謝料の種類が変わってきます。

では慰謝料の種類ごとに、金額を上げる方法ついて解説していきましょう。

入通院慰謝料額を上げる方法

事故のケガなどにより入院や通院をした場合、入通院慰謝料を請求できます。入通院慰謝料とは、入院や通院における身体的・精神的苦痛などをお金に換えたものです。

入通院慰謝料を増額させるためのポイントは、以下の2点です。

  • 「弁護士基準」で金額を計算
  • 弁護士に増額交渉を任せる

それぞれ解説していきます。

「弁護士基準」で金額を計算

入通院慰謝料は、保険会社が計算した場合と弁護士が計算した場合とで、金額に大幅な差が出る仕組みになっています。

弁護士が用いる計算方法(以下、弁護士基準といいます)では、過去の判例に基づいた慰謝料額がわかります。
それに対して加害者側の任意保険会社が用いる計算方法(以下、任意保険基準といいます)は、弁護士基準の半分~3分の1程度であることが多いのです。

加害者側から慰謝料額の提示を受けた場合は、必ず弁護士基準の金額を比較しましょう。
弁護士基準の大まかな金額は、以下の計算機から確認できます。無料で利用できるので、使ってみてください。

弁護士に増額交渉を任せる

加害者側から提示された金額を弁護士基準の金額まで増額させることは、非常に難しいです。

弁護士基準の金額は本来裁判を起こした場合に得られる金額なので、裁判も起こさずに弁護士基準の金額を求めても、加害者側は受け入れてくれないのです。

しかし、専門知識と国家資格を持つ弁護士による交渉なら、裁判を起こさなくても弁護士基準の金額獲得が見込めます。

また、入通院慰謝料は事故の個別的な事情によって増額させることも可能です。

入通院慰謝料は本来、入通院期間によって金額が決まるものです。
しかし、被害者が幼児をもつ母親で育児に忙しかったり、どうしても外せない仕事があったりして入通院期間が短くなってしまった場合は、事情を考慮して慰謝料額が増やされる可能性があるのです。

他にも、事故によって生じた精神的苦痛の種類や程度を鑑みて、慰謝料が増額されることはあります。(関連記事:交通事故の精神的苦痛で請求できる慰謝料は?苦痛の種類や計算方法がわかる

ただし、加害者側保険会社が慰謝料の金額を計算する場合、そのような被害者の事情を考慮してくれる可能性は少ないでしょう。
たとえ事情を説明しても、増額に応じてもらえるとは限りません。

だからこそ、弁護士を立ててきちんと増額を求めていくことが大切です。

後遺障害慰謝料額を上げる方法

後遺障害慰謝料は、後遺症に対して「後遺障害等級」が認定されると請求できる慰謝料です。
後遺障害慰謝料を増額させるためのポイントは、以下の2点です。

  • 適切な後遺障害等級の認定を受ける
  • 弁護士基準の慰謝料額を請求する

それぞれについて詳しく解説していきます。

適切な後遺障害等級の認定を受ける

後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害等級に応じて決まります。
たとえばむちうちの場合、後遺障害12級または14級に認定されることが考えられますが、後遺障害慰謝料(弁護士基準)は12級で290万円、14級で110万円と大幅に違います。

そのため、適切な等級に認定されることは非常に重要です。
適切な等級に認定されるためには、症状固定日に注意すること「被害者請求」で等級認定に申請することがポイントとなります。

症状固定日について

症状固定日とは、医師から「これ以上治療を続けても大幅な改善は見込めないので、治療を終わりましょう」と診断された日を言います。
症状固定を以て、後遺症が残ったことになるのです。

症状固定のタイミング

通常、症状固定日は医師が判断しますが、場合によっては加害者側の保険会社から早く症状固定にするよう催促されたり、治療費の補償打ち切りを宣告されたりすることがあります。
しかし、治療が不十分なまま症状固定とした場合、後遺障害等級が認定されにくくなり、最悪の場合、後遺障害慰謝料がもらえなくなります。

適切な後遺障害等級に認定されるためにも、かならず医師の指示に従って症状固定まで治療を続けましょう。

関連記事

症状固定の目安時期や、症状固定を催促されたときの対処法がわかる:症状固定とは?時期や症状固定と言われた後にする後遺障害認定と示談

「被害者請求」について

後遺障害認定を受けるためには、審査機関に必要書類を送って審査を受けなければなりません。
この手続きには「被害者請求」と「事前認定」の2種類がありますが、適切な等級を獲得するためには被害者請求の方がおすすめです。

被害者請求は提出書類を全て被害者自身で用意するので、必要に応じて追加書類を添付するなど、適切な等級を獲得するための対策を講じられます。

しかし、事前認定は書類の用意をほぼすべて加害者側の任意保険会社が行うので、必要最低限の書類しか提出してもらえず、適切な等級に認定されないリスクが高まるのです。

弁護士基準の慰謝料額を請求する

後遺障害慰謝料にも、入通院慰謝料と同様に、弁護士基準・任意保険基準があります。
同じ後遺障害等級でも、任意保険基準の金額は弁護士基準の金額よりも大幅に低額です。

弁護士を通して弁護士基準の慰謝料額を請求すれば、増額が期待できます。

死亡慰謝料額を上げる方法

死亡慰謝料とは、交通事故により死亡した本人とその遺族に対する慰謝料です。
死亡慰謝料の場合も、加害者側が提示してくる任意保険基準の金額と弁護士基準の金額には大きな開きがあるので、弁護士基準の金額を主張しましょう。

以下は、弁護士基準で計算される死亡慰謝料の金額です。

被害者の立場金額
一家の支柱2800万円
母親・配偶者2500万円
その他の場合2000万円~2500万円

任意保険の基準は一般公開されているわけではありませんが、おおよそ以下の額であると考えられます。

被害者の立場金額
一家の支柱1700万円
母親・配偶者1500万円
その他の場合1500万円

上記はあくまで推測ですが、弁護士基準より低いことは確実です。
加害者側から提示された金額を鵜呑みにすると、十分な金額を受け取れなくなるので、増額交渉をしましょう。

慰謝料以外の示談金を上げる方法もある

示談金とは、請求できる費目全全体のこと

交通事故の「示談金」とは

交通事故の被害者が請求しうる損害賠償金のすべて。
交通事故の解決金のことをいい、治療費・休業損害・入通院慰謝料・逸失利益・後遺障害慰謝料・修理費などがある(事故の態様により内容も異なる)。

交通事故の示談金については、『交通事故の示談金|内訳・金額から示談交渉まですべて解説』の記事が参考になる。

交通事故の示談金のうち、交渉次第でどの項目を上げる(増額させる)ことができるのは、休業損害・逸失利益・慰謝料です。
慰謝料についてはすでに解説した通りなので、ここでは休業損害と逸失利益について解説しておきます。

休業損害の金額を上げる方法

休業損害の金額を上げるためには、まず提示された金額の正当性を確かめ、増額の余地があれば示談交渉にて増額交渉することが必要です。

休業損害とは、事故によって仕事ができなくなった場合に請求できる所得の補償です。
給与所得者の場合、事故前の収入を基礎として損害額が計算されます。

サラリーマンなどの給与所得者はもちろん、自営業などの事業所得者であっても、休業中の固定費(家賃や従業員給料など)などを含めた損害の請求が可能です。
また、主婦・主夫であっても休業損害(主婦手当)はもらえます

ただし、加害者側は、1日当たりの収入や休業日数を少なく見積もって休業損害を計算していることがあります。また、給与所得者の場合は有給休暇を使った日も休業損害の対象となるので、きちんと休業損害の対象日に含まれているか確認しましょう。

そして、休業損害の金額が正しくないとわかった場合は、示談交渉で正しい金額を請求してください。

なお、万が一、休業損害が増額どころか支払項目にすらなかった場合は、弁護士などに相談されることをおすすめします。

交通事故の休業損害の計算方法や職業別の日額の求め方を知りたい方は、関連記事『交通事故の休業損害|計算方法や休業日の数え方、いつもらえるかを解説』も参考にしてください。

逸失利益の金額を上げる方法

逸失利益には、後遺障害逸失利益と死亡逸失利益とがありますが、ここでは後遺障害逸失利益についてご説明します。
まず逸失利益とは、事故にあったことにより得られなくなった将来の利益をいい、将来の収入を計算して支払われます。

逸失利益とは

後遺障害逸失利益の請求は、後遺障害等級が認定されていることが条件です。
そのため、正確な後遺障害等級が認定されるようしっかり行動していれば、おのずと逸失利益も増額されることになるでしょう。

また、たとえ正確な後遺障害等級が認定されていても、加害者側は逸失利益が少なくなるよう計算していることがあります。
提示された逸失利益の金額を鵜呑みにするのではなく、本当に正しく金額が計算されているか確認することが大切です。

逸失利益の計算や、請求できる人物・金額については、関連記事『【逸失利益の計算】職業別の計算例や早見表・計算機つき|もらえない原因と対処法』で詳しく解説しています。
ぜひ参考にしてください。

実費請求の項目は増額できない

治療費については基本的に実費請求になります。
よって、「相場」という概念がケガの状態により変わってくるため、増額対象にはなりません。
実費以上のものを請求してしまうと、架空請求になってしまうでしょう。
物損事故の修理費についても同じことがいえます。

過失割合の交渉でも慰謝料は上げられる

3つの慰謝料に共通する「金額を上げる方法」として、弁護士基準の金額を請求するというものがありました。
慰謝料を上げる方法にはもうひとつ、「適切な過失割合になるよう交渉する」というものもあるので解説していきます。

過失割合とは?

交通事故当事者の「責任の割合」を数字で表したもの。
「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準[全訂5版](別冊判例タイムズ38)」から、似ている事故類型の過失割合を探し、そこから「修正要素」を加減して最終的に数字が決定する。

過失割合の交渉で慰謝料が上がる理由

被害者側に過失割合が付いてしまうと、その割合分、慰謝料や損害賠償金が減らされてしまいます。これが「過失相殺」です。

加害者側の任意保険会社は、過失相殺によって示談金額を減らすために、わざと被害者側の過失割合を多く見積もっていることがあります。
この場合、示談交渉で正しい過失割合を主張し、被害者側の過失割合を減らすことができれば、その分慰謝料・損害賠償金額が上がるのです。

具体的に解説

加害者側が、過失割合として「被害者:加害者=30:70」を主張してきた場合、そのままだと被害者が受け取れる示談金は30%減らされてしまう。

しかし、交渉によって「被害者:加害者=10:90」になれば、被害者の示談金は10%減額で済み、受け取れる金額が増える。

過失割合の交渉で慰謝料を上げる方法

過失割合は、示談交渉で当事者同士の話し合いによって決定します。
過失割合を決定づける要素は、以下の2点です。

  • 参考にする事故類型の過失割合
    過失割合は、似ている事故類型の過失割合(基本の過失割合)をベースにして決めていく
  • 過失割合に反映させる修正要素
    「加害者側の速度違反」「被害者側の信号無視」などといった「修正要素」に応じて基本の過失割合を増減させ、最終的な過失割合が決まる

加害者側が提示してくる過失割合は、適切ではない基本の過失割合をベースにしていたり、加害者にとって都合の悪い修正要素が反映されていなかったりする可能性があります。
提示された過失割合がどのようにして導き出されたものなのか、相手方に確認してみましょう。

加害者側保険会社に過失割合の決定をゆだねてしまうと、正当な過失割合にならない可能性があるので注意してください。

なお、加害者側保険会社は過失割合について熟知しています。
一方で交通事故被害者は過失割合に詳しくないことが多いので、交渉ではいくら被害者側の主張正しくても、不利になる可能性が高いです。

また、被害者自身では本当に正しい過失割合を算定することは難しいので、過失割合に関しては弁護士に任せるといいでしょう。

過失割合や基本の事故類型については、関連記事『交通事故の過失割合とは?決め方の具体的な手順とパターン別の過失割合』で全体像を解説しています。
あわせてお読みください。

アトム法律事務所の慰謝料増額事例

最後に、アトム法律事務所の慰謝料増額事例・解決実績をご紹介したいと思います。
これまでご説明してきた「慰謝料を上げる方法」についてまずは簡単にまとめておきましょう。

  • 慰謝料を上げる方法1 
    慰謝料は「弁護士基準」で計算すること
  • 慰謝料を上げる方法2 
    正確な「後遺障害等級認定」を得ること
  • 慰謝料を上げる方法3 
    被害者が不利にならない「過失割合」が決定すること

では、事例を紹介していきます。

増額事例1

「適切な後遺障害等級認定の申請で示談金が増額された事例」
診断:足小指骨折
後遺障害の内容:足小指の神経症状
等級:14級9号

被害者様は、後遺障害等級認定の申請前に弁護士相談。
示談金の大幅な増額が見込まれるとアトムの弁護士が判断し、後遺障害等級認定の申請手続をサポート。
結果、弁護士交渉もかねて、示談金の額が3倍に増額。

増額事例2

「弁護士の慰謝料計算と示談交渉で示談金額が4.6倍に増額した事例」
診断:左足首骨折
後遺障害の内容:左足首の可動領域制限
等級:12級7号

すでに加害者側保険会社から示談金提示のあった被害者様。
提示の金額が低いと感じ、弁護士に相談・依頼したところ、3週間で示談が成立。
弁護士基準で慰謝料額などを再計算し、弁護士のスムーズな交渉のすえ納得の解決を得た。

増額事例3

「弁護士による交渉で手取り額が2,000万円を超えた事例」
診断:鎖骨骨折
後遺障害の内容:左肩の可動域制限
等級:後遺障害10級10号

示談金額が低いのではないか、とアトム法律事務所のLINE無料相談サービスでお問い合わせ。弁護士が確認したところ、後遺障害の逸失利益に大幅な増額の余地があることを確認できた。
弁護士依頼から約4ヶ月間で、約3.7倍にあたる2,300万円まで増額。依頼者様の手取り額は2,000万円を越え、満足のいく結果となった。

交通事故の慰謝料・損害賠償金は、被害者自身の交渉でも多少増額させられる場合があります。しかし、十分に増額させるためには弁護士のサポートが必要です。

ご自身の任意保険に「弁護士費用特約」がついていれば、弁護士費用は保険会社に負担してもらえます。
また、アトム法律事務所では無料相談を行っているので、まずはお気軽にご連絡ください。

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まとめ

  • 交通事故の慰謝料を上げる方法は存在する
  • 慰謝料増額のためには弁護士基準による計算や交渉術が必要
  • 後遺障害慰謝料の金額を上げるには「正確な等級認定」が必要
  • 慰謝料は過失割合とその交渉・決定によって増額できる

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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