交通事故で加害者が弁護士を立てた!通知受取後の対応やNG行為
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交通事故にあった後、突然「加害者の代理人を務めます」といった弁護士からの通知が届くと、不安や混乱を覚える方は少なくありません。
「これはどういう意味なのか?」「このあと何か対応が必要?」「損をしないために、何をすればいい?」
そんな疑問を感じたとき、正しい知識を持っておくことが大切です。
この記事では、交通事故で加害者側から弁護士の通知(受任通知)が届いた場合に知っておきたい対応方法や注意点をわかりやすく解説します。
加害者側が弁護士を立てる理由や、被害者側も弁護士を立てるべきかどうかといった疑問にも丁寧に答えていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
本記事では、交通事故(示談交渉)で加害者が弁護士を立てたケースを想定して解説をしていきます。
目次

加害者側から弁護士の通知が届いたら何が起こる?
交通事故の加害者側から、弁護士名義の通知が届いたら驚く方も多いでしょう。
これは「今後は弁護士が対応します」という意思表示で、加害者が弁護士に依頼したことを知らせる「受任通知」と呼ばれる書面です。
受任通知が届いた後は、加害者本人や保険会社と直接連絡を取れなくなり、連絡窓口は弁護士に一本化されます。
通知の形式や、やり取りでの注意点については、このあと詳しく解説します。
加害者側から届く受任通知とは?
受任通知とは、弁護士が依頼者の代理人となったことを、紛争の相手方に知らせる書面です。つまり、加害者側から受任通知が届いたら、「加害者側が弁護士を立てた」ことを意味します。
加害者側も被害者側も示談成立前ならいつでも弁護士を立てられるので、受任通知が届くタイミングはさまざまです。
また、通常の文書ではなく「内容証明郵便」という形式で受任通知が届くこともあるでしょう。
内容証明郵便とは
郵便局が、内容や差出人、受取人、差し出し日時などを証明してくれる郵便物のこと。
重要な書類などについて、「きちんと相手に送った」ことを後から証明できるようにするために利用されることが多い。
急に普段見慣れない内容証明郵便が届くと驚くかもしれませんが、受任通知が内容証明郵便で送られてくるのは送付されたことを証拠として残すためです。
それ以上の法的拘束力があるわけではないので必要以上に不安になる必要はありません。
通知を受けた後、してはいけない行動
受任通知が届いたら、加害者本人や加害者の保険会社と、直接のやりとりや交渉はできなくなるのが原則です。
この通知は、加害者側が弁護士に正式に依頼し、今後の連絡・交渉を弁護士が一手に引き受けることを意味しているからです。
そのため、示談交渉はもちろん、通院先の変更連絡や必要書類の送付なども、加害者や保険会社ではなく弁護士を通じて行う必要があります。
これには、加害者と被害者が直接やり取りする中で新たなトラブルが生じるのを防ぐ目的があります。
感情的な衝突や水掛け論を避けるためにも、窓口を弁護士に一本化することが重要なのです。
弁護士の連絡先や送付先などは、受任通知に記載されていますので、内容をよく確認しましょう。
不明点がある場合は、無理に自己判断せず、被害者側も弁護士に相談するのが安心です。
加害者の弁護士とのやり取りでは発言に注意
加害者側の弁護士とやり取りする際は、被害者側に不利になるような言動はしないように気を付けなければなりません。
例えば以下のような発言に要注意です。
- 雑談程度の気持ちでうっかり「こちらにも落ち度はあったので…」のようなことを言うと、のちの示談交渉で被害者側の過失を主張されるおそれがある
- ケガの状態を聞かれ、友人知人に答えるのと同じように「おかげさまで大分良くなりました」と言ってしまうと、治療費を打ち切られる可能性がある
加害者側の弁護士は、あくまでも加害者の利益を守る立場で対応してきます。
相手は法律の専門家であり、会話の中で被害者の不利な材料を引き出そうとするケースもあるため、慎重な対応が求められます。
自分で言動を判断するのが難しいと感じる場合は、被害者側も弁護士に依頼してやり取りを一任することがおすすめです。

加害者が弁護士を立てた理由とは?
加害者側から弁護士の通知が届くと、「こちらに何か非があったのか」「大きなトラブルになるのでは」と不安を感じるかもしれません。
ですが、加害者が弁護士を立てる理由は、必ずしも被害者を責めるためではありません。
多くの場合、加害者自身やその保険会社が「このまま自力では対応しきれない」と判断した結果、弁護士に対応を委任するという流れです。
示談交渉が複雑になりそうな場合や、感情的なトラブルが予想されるケースでは、特に弁護士が出てくる傾向にあります。
ここからは、加害者側が弁護士を立てる代表的な理由を4つに分けて解説します。
示談金が高額になる可能性が高いから
加害者側が弁護士を立てる大きな理由のひとつに、示談金が高額になる可能性がある場合が挙げられます。
たとえば死亡事故や、重い後遺障害が残ったケースでは、慰謝料や逸失利益などの金額が大きくなりやすいため、加害者側としては慎重に対応する必要があるのです。
このようなケースでは、被害者や保険会社単独での交渉では対応しきれないと判断され、法的知識のある弁護士が代理人として交渉を進めることになります。
加害者側の弁護士は、できるだけ示談金の金額を抑える方向で交渉を進めてくるのが一般的です。
そのため、被害者としても不利な条件をのまされないよう、弁護士を立てて交渉に臨む必要性が高くなるといえるでしょう。
被害者とのトラブルに対処しきれないから
加害者側が弁護士を立てる理由として、被害者との間でトラブルが発生している、またはその可能性が高いというケースもあります。
たとえば、保険会社の担当者が休業損害の支払いを打ち切ったり、治療終了の打診をしたことで、被害者が感情的に反発するような状況が起こると、対応が複雑化してしまいます。
このようなケースでは、加害者側や保険会社だけでは手に負えないと判断し、弁護士に対応を委ねることが多くなります。
また、示談交渉で合意に至らず、調停や裁判に発展しそうな場合も、早い段階で弁護士が出てくることがあります。
訴訟に発展すれば時間や費用がかかるため、加害者側としてはできるだけ早く示談で解決したいと考え、弁護士を介して話をまとめようとするのです。
保険金詐欺を心配しているから
加害者側の保険会社は、被害者に保険金詐欺や反社会勢力とのつながりの疑いがある場合に弁護士を立てることもあります。
保険金詐欺が疑われるケースとしては、次のものが挙げられます。
- 治療が長期間に及んでいるケース
- むちうちなど、レントゲン写真やMRI・CT画像では症状の存在を証明できないケース
- 短期間に何度も交通事故に遭っているケース
保険金詐欺や反社会勢力とのつながりなどが疑われる場合、加害者側の保険会社は慎重かつ毅然とした対応が必要であると考えます。
刑事事件や大きなトラブルに発展する可能性もあるため、あらゆるリスクに備えて弁護士を立てることがあるのです。
中には、加害者側の弁護士が一定の金額以上は被害者に支払う義務がないと主張し、交通事故被害者を被告として訴訟提起をしてくるケースもあります(債務不存在確認訴訟)。
刑事処分を避けたいから
加害者側が弁護士を立てる理由として、「刑事処分を避けたい」という意図がある場合もあります。
交通事故では、被害者に対する損害賠償(民事責任)に加え、加害者が刑事罰を受けるかどうか(刑事責任)も重要な問題です。
そのため加害者の弁護士から、以下のような提案を受けることがあります。
- 示談書に「宥恕(ゆうじょ)※加害者を許す意思」の記載を求められる
- 早期示談の提案
- 加害者の反省を示すための見舞金の提示
民事責任と刑事責任は別物ではありますが、被害者との示談が成立しているか、被害者に処罰感情はあるか、加害者はどのくらい反省しているかは起訴・不起訴や刑事罰の程度に大きく影響するからです。
なお、加害者が刑事責任を負うかどうかは被害者の損害賠償請求権には影響しないので、示談書に宥恕文言を入れるのを拒否したり、見舞金の受け取りを拒否したとしても、示談金を受け取れます。
「示談に応じても良いが、刑事罰が軽くなりすぎるのは避けたい」といったお悩みをお持ちの方は一度弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、示談の成立や宥恕文言の有無、見舞金の受け取りなどが、加害者の刑事処分に影響をどの程度与えるかについてアドバイスができます。

加害者から弁護士の通知が届いた時の対処法
加害者側から届く受任通知には、「単に弁護士の受任を伝えるだけのもの」と「示談案の提示も兼ねているもの」があります。
届いた受任通知がどちらなのかによって、受任通知が届いた後の対処法が変わります。それぞれについて見ていきましょう。
受任通知のみなら基本は何もしなくてOK
通知の内容が「加害者が弁護士を立てました」という事実の連絡だけであれば、被害者側がすぐに何か対応する必要はありません。
たとえば、以下のようなケースです。
- 示談金や過失割合などの具体的な条件提示がない
- 連絡事項として弁護士の名前や連絡先が記載されているだけ
通知に対する返信なども基本的に不要です。
しかるべきタイミングで加害者側の弁護士から示談の申し入れが来るはずなので、それまで待ちましょう。
示談案も一緒に届いたら、すぐ返事せず中身を精査!
示談通知とともに、示談金額や過失割合の提示を受けた場合には、示談案の内容を確認し、示談案をそのまま受け入れるか示談交渉するか、加害者側の弁護士に回答を連絡しましょう。
示談を受け入れるかどうかの返答に期限はありません。
加害者側が提示する示談金額や過失割合には交渉の余地があることが多いので、焦ってすぐに回答するのではなく、以下の点をよく確認しましょう。
- 提示された慰謝料や治療費は適正か
- 過失割合に納得できる根拠があるか
- 将来的な治療費や後遺症の補償が考慮されているか
示談は一度成立すると、原則として再交渉・追加の交渉ができないので、示談案に対する回答は慎重に考えることが重要です。
自分での判断が難しい場合は、弁護士への相談をお勧めします。
例えばアトム法律事務所では無料で電話・LINE相談をしておりますので、忙しくてもご都合の良いタイミングでご相談いただけます。
加害者側の弁護士が出てきたとき、被害者も弁護士を立てるべき?
加害者側から受任通知が届き、加害者が弁護士を立てたことがわかったら、基本的には被害者側も弁護士を立てることがおすすめです。
ここではその理由と、弁護士費用の負担を軽減する方法、弁護士を立てる以外の対処法を紹介します。
自力対応では不利になるリスクがある
加害者が弁護士を立てた場合、被害者側も弁護士を立てることをご検討ください。
弁護士を相手に被害者自身で示談交渉するのは、交渉力の面でも知識量の面でも非常に難しいからです。
たとえ被害者が法的根拠や過去の判例を用いて交渉をしても、加害者側の弁護士はそれを上回る知識を以て反論してくるでしょう。
また、相手が弁護士であることに委縮して、十分に自分の主張を伝えられないケースもあります。加害者側と対等に交渉するためにも、被害者側でも弁護士を立てることが重要です。
弁護士を立てると慰謝料が増額する可能性も
弁護士を立てると、過去の判例に基づく「弁護士基準(裁判基準)」での慰謝料額獲得が期待できます。
弁護士基準の金額は、加害者側の提示額の2倍〜3倍高額であることも多いですが、高額であるが故に、裁判も起こさず被害者自身で主張しても聞き入れてはもらえないでしょう。
こうした点でも、加害者側から受任通知が届いたら弁護士を立てることがおすすめです。
弁護士を立てない場合であっても、適正な示談金額や過失割合は弁護士に問い合わせることをおすすめします。
【よくある疑問】自分の保険の示談代行やADR機関で対応もできる?
弁護士を立てる以外で、第三者のサポートを受ける方法として「示談代行サービス」とADR機関の利用があります。
こうした方法でも加害者側が立てた弁護士に対応できるのか、解説します。
自身の保険会社の「示談代行サービス」
被害者側が加入している任意保険会社の「示談代行サービス」を使えば、無料で保険担当者に示談交渉を任せられます。
保険会社の担当者は仕事として日々示談交渉しているプロなので、被害者自身で示談交渉するより有利な結果が見込めるでしょう。
もっとも、保険会社の担当者は法律の専門家ではないので、法的な問題で加害者側の弁護士と納得いく示談結果になるように徹底的に交渉してほしいのであれば、被害者も弁護士を立てる方が確実です。
また、「示談代行サービス」を利用できるのは、被害者にも損害賠償金の支払い義務が発生するケースに限られる点には注意が必要です。
おすすめ記事
交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センターなどのADR機関
交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センターを利用すれば、弁護士による相談や示談交渉(和解)のあっ旋・審査を無料で受けられます。
弁護士が間に入ってくれることで、加害者側の弁護士と直接示談交渉するよりも有利な結果が見込めるでしょう。
もっとも、間に入ってくれる弁護士はあくまで中立で公正な立場であるため、加害者側が立てた弁護士と対等に示談交渉するには、やはり被害者側も弁護士を立てる必要があります。
関連記事
受任通知が届いたら弁護士に相談
「受任通知は届いたけれど、示談交渉はまだ先だし弁護士への相談・依頼はもう少ししてからで良いのではないか」と考える方も多いですが、弁護士に早く相談すればサポートの幅が広がります。
例えば後遺障害認定の前に弁護士に相談・依頼すれば、後遺障害認定のサポートができます。適正な後遺障害等級を獲得しやすくなり、示談金アップにつながるでしょう。
最後に、弁護士への依頼で不安視されがちな弁護士費用について解説し、無料電話・LINE増段のご案内をします。
弁護士費用が不安な方へ|費用特約&無料相談の活用
自身の保険に「弁護士費用特約」が付いている場合、弁護士費用は保険会社に負担してもらえます。
保険会社が負担してくれる上限額は「法律相談料10万円・弁護士費用300万円」であることが多いです。
基本的に弁護士費用がこの上限額を超えることはあまりありません。そのため、自己負担金0円で弁護士を立てることができるのです。

特約がなくても諦めなくていい
保険に弁護士費用特約が付いていない場合は、アトム法律事務所では着手金が原則無料になります。
電話・LINE相談も無料なので示談金獲得前に支払うお金が不要になるのです。
成功報酬は発生しますが、それを差引いても弁護士を立てた方が多くの示談金を獲得できることが多いです。
弁護士への無料電話・LINE相談はこちら
弁護士に相談すれば、今後の対応の流れ、示談金増額の可能性、弁護士費用の見積もり、弁護士がつくことのメリットなどを詳しく聞くことが可能です。
アトム法律事務所では、交通事故の被害者の方を対象に無料相談を実施しています。24時間365日いつでも相談を受け付けています。
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アトム法律事務所の弁護士は、交通事故の案件を多数取りあつかってきた実績があります。どの弁護士に依頼すべきか迷っている方は、交通事故案件の経験が豊富なアトムの弁護士にご相談ください。




まとめ|交通事故の加害者側から弁護士の受任通知が来たら
- 受任通知は代理人として弁護士がついたという事実を伝えてくるもの
- 受任通知が届いたら弁護士に窓口が一本化され、保険会社や加害者本人と直接のやり取りができなくなる
- 加害者側が弁護士を立てるのは問題解決を図っていきたいから
- 加害者側が弁護士を立てたら、被害者自身も弁護士に相談・依頼したほうがよい
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了