物損事故は保険会社に任せるだけで大丈夫?連絡が来ない場合の対応も紹介

物損事故後に保険会社に任せようと考えている方へ。
物損事故がおきたら、すみやかに保険会社に連絡をいれましょう。
保険会社からの折り返しの連絡は、通常、事故の翌日(あるいは数日以内)に来ることが多いです。
物損事故の示談交渉は、保険会社に任せることもでき、自分で交渉する手間を省けます。
しかし、保険会社が一顧客のために割ける時間は限られているため、納得のいく結果を得難い側面もあるでしょう。
この記事では、物損事故を保険会社に任せた場合の対応範囲や、任せきりにすることによるリスク、保険会社からの連絡がない場合の対処法などについて紹介します。
目次
物損事故の連絡のタイミングは?
物損事故で保険会社に連絡するのはいつ?

保険会社への連絡は、物損事故が発生したらすみやかにおこないます。
保険会社への連絡は、スムーズな保険金の受け取りのために必要です。
連絡のタイミングとしては、負傷者救護・危険防止措置→警察への通報→事故状況の記録・相手方保険の確認の後がベストです。
連絡できる状況になったら、すぐに自分の任意保険会社に連絡してください。
事故相手にも同様に、自身の保険会社に連絡をいれてもらってください。
初期対応について知りたい方は『交通事故にあった・起こしたときの初期対応と手順|事故後の流れを徹底解説』もご覧ください。
保険会社に連絡した後の流れは?
保険会社は、損害の調査をおこないます。
壊れた車両を修理工場に運び、修理費の見積もりを出します。
修理工場は、保険会社と提携している修理工場のほか、自分で選ぶこともできます。
修理費用の見積もりが出た後、保険会社は、過失割合を踏まえて、賠償額を提示してきます。
見積りの不明点を確認したり、増額交渉をおこなったりして、最終的に合意に至れば、示談となります。
実際に保険会社から示談金を請求するには、保険会社から届いた書類一式に、必要事項を記入して返送する必要があります。
請求書類は、事故の翌日以降、送られてくるでしょう。
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物損事故を保険会社に連絡しないとどうなる?
すぐに連絡しないことで、保険会社が必要な調査をできないことがあります。
この場合、もらえるはずの保険金がもらえなくなる可能性があります。
また、保険会社が損害をこうむった場合は、その損害額が保険金から差し引かれる可能性もあります。
物損事故で保険会社に連絡する内容は?
保険約款によりますが、一般的には以下のような内容を連絡することになります。
物損事故の連絡内容
- 自分の情報(氏名、住所、連絡先、保険証券番号)
- 事故の情報(発生の日時、場所、その状況)
- 相手の情報(氏名、住所、保険)
- 自力走行できるかどうか
- 目撃者の有無、住所、氏名
- 損害賠償請求されたときはその内容
- 警察への届出の有無
など
参考:一般社団法人 日本損害保険協会「約款」
物損事故で保険会社から連絡がくるのはいつ?
保険会社から連絡がくるのは、事故車両の見積もりが出た場合、代車の手配ができた場合、賠償額の積算をした場合など、進展があった時です。
ケガをした場合
物損事故扱いのままでも、ケガをした場合には、人身事故に関する賠償金(例:治療費、休業損害、入通院慰謝料など)を請求できるケースがあります。

この場合、保険会社から連絡がくる時期とその内容としては、以下のようなものです。
連絡の時期 | 内容 |
---|---|
交通事故直後 | 事故状況の確認 今後の案内 |
治療中 | 通院やケガの状況の確認 |
治療終了 | 示談手続きの案内 |
示談交渉 | 示談金額の提示 |
示談成立 | 示談成立後の流れの案内 |
物損事故を保険会社に任せると、どこまで対応してもらえる?
物損事故における保険会社の対応内容
物損事故において、自分または相手の保険会社が対応してくれる内容は主に以下の通りです。
物損事故の対応例
- 示談交渉の代行
過失割合や賠償金額について、相手の保険会社と交渉してくれる
※過失割合が0%の当事者は利用できない - 修理費用の支払い
契約内容によるが、自己の車両保険が使える場合、修理費用の立替も可能 - 代車の手配
修理に日数がかかる場合、必要に応じて代車を手配してくれることがある - 保険金の支払い手続き
損害確認後、損害に応じた保険金の支払いを進めてくれる
物損事故でおりる保険金の内容
物損事故では、以下のような損害について、保険でまかなえる可能性があります。
損害 | 内容 |
---|---|
車の修理代 | 事故車両の修理費用 |
車の評価損 | 事故歴がついて下落した市場価値 |
車の買い替え代金 | 事故車両の買い替え費用 |
代車費用 | 事故車両の修理・買い替えまでの間の代車費用 |
休車損害 | 事故車両が営業車の場合に、修理・買い替えのために営業できなかった場合の損失 |
物損事故で請求できる保険金、解決の流れについては『物損事故で使える保険は?事故処理や保険利用の流れがわかる』の記事もあわせてご覧ください。
物損事故の加害者は、被害者に直接お詫びを入れるべき?
物損事故で、お詫びは法律上の義務ではありません。
そのため、保険会社に、被害者とのやりとりを完全に任せることも可能です。
ただし、被害者側が何らかの謝罪を求めているケースは多いです。
可能であれば、謝罪の機会をもうけることも考えてみましょう。
物損事故で使えない保険
物損の場合、自賠責保険は使えません。事故相手の対物保険や自身の車両保険を利用することになります。
物損事故を保険会社に任せるメリット・デメリット
保険会社に任せると、自分で進めるよりも早く、諸々の手続きを済ませられる可能性があります。
しかし、保険会社がなじみにしている業者を利用することも多いため、必ずしも被害者に親身とは限りません。
示談交渉を保険会社に任せってきりにすることもできますが(示談代行サービス)、交渉が甘くなり示談金の増額幅が少ないケースもあります。
十分に自分の味方になってくれるのか不安を感じる場合は、弁護士を立てることも検討すべきでしょう。
自分の車両保険を使ったら等級が下がる?
車両保険を使うと、等級が下がり、翌年度以降の保険料があがるデメリットもあります。
自己負担にするか、保険を使うか、よく吟味する必要があります。
物損事故はいつ解決する?保険会社に任せた場合の目安期間とは
事故の内容や当事者の対応状況によって異なるものの、物損事故の対応にかかる期間は、おおよそ2~3ヶ月程度となるでしょう。
見積もりの期間や、示談交渉がスムーズに進むかどうかにより期間が異なります。
「保険会社に任せたから大丈夫」と思っていても、想定より時間がかかることは珍しくありません。
何の動きもない状態が1週間以上続くようであれば、ご自身でも保険会社に連絡を入れる、もしくは弁護士に相談するなどの対応を考えるべきです。
保険会社の示談について詳しく知りたい方は『交通事故の示談にかかる期間の目安は?長引く原因と早く終わらせる方法』もあわせてお読みください。
物損事故を保険会社に任せる場合の注意点
保険会社に「任せきり」にすることの注意点
保険会社は事故対応のプロですが、すべてを丸投げにすることにはリスクもあります。
任せきりにするデメリット
- 状況報告が不十分になるおそれがある
- 相手方の保険会社との今後の付き合いを考えて、被害者にとって不利益な示談内容になるおそれがある
一方で、適度に関与することで、よりスムーズに解決しやすくなります。
自分でもチェックすべきポイントがある!
スムーズな解決を目指すためには、以下の点を自身でも確認しておきましょう。
- 進捗の確認:保険会社に定期的に連絡し、示談交渉の進み具合をチェック
- 示談内容の妥当性:過失割合や修理費用に納得できるかを検討する
示談内容が正当なものであるのかどうかについては、専門家である弁護士に相談して確認してもらうと良いでしょう。
相手の保険会社から連絡がこない理由や対処法
物損事故の後、相手の保険会社から連絡がなかなか来ないことで、不安になる方も多いです。
保険会社からの連絡が遅れる主な理由
保険会社からの連絡は、以下のような事情で連絡が遅れることがあります。
- 当事者(相手方)から事故報告がまだされていない
- 担当者が多忙で連絡が後回しになっている
- 過失割合など複雑な案件で社内審査に時間がかかっている
連絡がない場合の対処法
相手の保険会社からの連絡が遅いと感じた場合には、以下のような対応を検討しましょう。
- 保険会社のカスタマーセンターやそんぽADRセンターに相談する
- 相手方本人に連絡し、保険会社への報告をするよう促す
- 弁護士に今後の対応について相談する
そんぽADRセンターとは、保険会社とトラブルに関する苦情受付や、保険会社との紛争処理を主に行っている機関です。相談や苦情の申し出は基本的に無料で行えます。
弁護士特約があるなら弁護士相談も検討を
ご自身の自動車保険に「弁護士特約」がついている場合、弁護士費用を保険でカバーできる可能性があります。
弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットが生じます。
- 保険会社とのやりとりに不安がある場合のサポート
- 不利な過失割合の修正交渉
- 遅延している示談交渉の早期解決
- 損害賠償請求の法的対応
連絡が来ない・交渉がうまく進まないなど「このままで大丈夫なのか」と不安を感じたら、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。
まとめ|物損事故を保険会社に任せて不安なときは弁護士相談を
物損事故に遭ったとき、「とりあえず保険会社に任せておけば大丈夫」という考えは甘いです。
物損事故のあと、保険会社に任せるのは基本的な対応ですが、「100%信頼して丸投げ」するよりも、適度に関わることで安心かつ納得のいく解決につながります。
特に、以下のような人は弁護士への相談を検討してみましょう。
- 相手の保険会社から連絡が来ず、不安や不信感を感じている
- 示談交渉の内容に納得できない
- 損害賠償の請求を適切に進めたい
物損事故の交渉は専門的な知識が関係する場面も多いため、「ちょっとでも不安」と感じたときが、弁護士に相談するベストなタイミングです。
弁護士への相談は、「トラブルを起こしたい」ためではなく、「トラブルを避けるため」の一歩。ぜひ、気軽に相談することから始めてみてください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了