後遺障害認定にデメリットはある?申請方法別のデメリットもわかる
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後遺障害認定を受けても、「就職や保険の加入に支障が出る」「周りに後遺障害のことを知られる」などのデメリットは生じません。
認定を受ければ後遺障害慰謝料や逸失利益がもらえることを考えると、むしろメリットが大きいでしょう。
ただし、後遺障害認定における2種類の申請方法にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、これらを把握したうえで申請することが重要です。
後遺障害認定のデメリットや後遺障害認定の申請について見ていきましょう。
目次
後遺障害認定にデメリットはある?
後遺障害認定にデメリットはない
後遺障害認定を受けたことで生じるデメリットは、基本的にありません。
後遺障害認定を受ける過程で、申請準備の手間がかかかる、示談交渉の開始が遅れることで示談金の受け取りが遅くなるといった注意点はあります。
しかし、後遺障害認定により後遺障害慰謝料・逸失利益を得られるようになると考えれば、デメリットはなくむしろメリットが大きいと言えます。
後遺障害認定により得られる補償
- 後遺障害慰謝料
後遺障害が残ったことで生じる精神的苦痛への補償。後遺障害等級に応じて金額が決まり、過去の判例に沿った相場は110万~2,800万円。 - 逸失利益
後遺障害の影響で減ってしまう生涯収入への補償。事故前の年収や後遺障害等級などにより金額が決まる。「後遺障害10級、35歳男性、年収480万円」を想定すると、2,642万円が相場。
後遺障害認定を受けることでもらえる賠償金については、以下の関連記事をご覧ください。
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よくある不安1|後遺障害認定は保険の加入や就職に影響する?
「後遺障害認定された」という事実が、保険の加入や就職に影響することはありません。
交通事故で後遺症が残ると、後遺障害認定の有無に関係なく就職先が限定されたり保険加入時の告知義務に該当したりする可能性があります。
しかし、後遺障害認定を受けていれば「就職先が限定されることで減ってしまう生涯収入」の補償として逸失利益を受け取れるため、むしろ後遺障害認定を受けておいたほうが良いでしょう。
保険の告知義務については保険によって規約が異なるため、約款を確認してみてください。
よくある不安2|後遺障害認定されたことは周りに知られる?
後遺障害認定されたことは、自分から言わない限り周りに知られることはありません。
後遺障害認定で被害者と審査機関の間に入ったり、示談金の支払いをしたりする加害者側の保険会社には結果を知られてしまいますが、その他の場面で誰かに認定結果を伝える義務はなく、公的文書に結果が記録されることもありません。
後遺障害認定の申請方法は2つ|避けたいデメリットで選ぼう
後遺障害認定には、「被害者請求」と「事前認定」という2種類の申請方法があります。
後遺障害認定にデメリットはないものの、申請方法にはそれぞれメリットとデメリットがあります。
事前認定
- メリット
- 申請準備の手間が少ない
- デメリット
- 後遺障害認定の審査対策がしにくい
- 後遺障害慰謝料の受け取り時期が遅い
被害者請求
- メリット
- 後遺障害認定の審査対策がしやすい
- 後遺障害慰謝料の受け取り時期が早い
- デメリット
- 申請準備に手間がかかる
- 後遺障害認定の審査対策には知識が必要
それぞれの申請方法の流れとデメリットについて理解し、避けたいデメリットから申請方法を選ぶことも1つの手です。
事前認定・被害者請求の流れとデメリットを詳しく確認していきましょう。
事前認定の流れとデメリット
事前認定の流れ
事前認定とは、後遺障害診断書以外の必要書類を加害者側の任意保険会社に用意してもらう申請方法です。
具体的な流れは次のとおりです。
- 後遺障害診断書を用意し、加害者側の任意保険会社に提出
- 加害者側の任意保険会社がその他の書類を用意し、後遺障害診断書と合わせて審査機関に提出
- 審査後、加害者側の任意保険会社を通して結果が通知される
事前認定では、申請者は後遺障害診断書のみを用意すれば良いため手間はかかりません。
ただし、その他の書類の準備は加害者側の任意保険会社任せになるため、十分な審査対策ができません。
また、後遺障害慰謝料や逸失利益の受け取りは基本的に全て示談交渉後になる点も、事前認定のデメリットです。
これらのデメリットについて詳しく解説します。
デメリット(1)後遺障害認定の審査対策がしにくい
事前認定では、必要最低限の書類を必要最低限の質で提出することになり、審査対策用の追加書類を添付できません。
事前認定の場合、後遺障害慰謝料以外の書類は加害者側の任意保険会社が用意してくれます。この際、任意保険会社は必要最低限の書類を淡々と揃えるだけで、被害者が適切な認定を受けられるよう工夫してくれることはほぼないのです。
後遺障害認定は原則として書類審査なので、提出書類の工夫ができなければ以下のような不利益が生じる可能性があります。
- 本来ならもらえるはずの後遺障害慰謝料・逸失利益がもらえない
- 後遺障害認定にかけた時間や手間が無駄になる
デメリット(2)慰謝料の受け取りが遅くなる
事前認定では基本的に、後遺障害慰謝料や逸失利益は他の慰謝料・損害賠償金とともに示談成立後に支払われます。
一方、次に解説する被害者請求では、後遺障害認定されると結果通知と同時期に後遺障害慰謝料・逸失利益の一部が振り込まれます。
早くまとまったお金が必要な場合は、被害者請求の方が良いでしょう。
示談金の支払い時期については『交通事故の慰謝料はいつもらえる?支払いを早める方法を紹介』で詳しく解説しています。
被害者請求の流れとデメリット
被害者請求の流れ
被害者請求とは、必要書類を全て申請者が用意し、加害者側の自賠責保険会社を介して審査機関に提出する方法です。
具体的な流れは以下のとおりです。
- 必要書類を全て用意する
- 加害者側の自賠責保険会社に提出する
- 加害者側の自賠責保険会社から審査機関に書類が渡る
- 審査後、加害者側の自賠責保険会社を通して結果が通知される
- 結果通知とほぼ同じタイミングで、後遺障害慰謝料・逸失利益の一部が振り込まれる
被害者請求で後遺障害認定の申請をすると、次のようなメリットがあります。
- 審査対策がしやすいため、後遺障害認定される可能性が高まる
- 後遺障害慰謝料・逸失利益の一部を早くもらえる
被害者請求では、必要書類の全てを申請者が用意します。
すべての書類に関与できるため内容の確認・ブラッシュアップができますし、必要に応じてより確実かつ明確に後遺症の症状・存在を証明する追加書類を添付できるのです。
ただし、申請準備に手間がかかる、審査対策には知識が必要というデメリットもあります。
これらについて詳しく見ていきましょう。
デメリット(1)申請準備に手間がかかる
被害者請求で後遺障害認定を受けるには、必要書類を全て被害者側で用意しなければなりません。
必要書類には後遺障害診断書や診療報酬明細書などさまざまあり、複数の場所から取り寄せたり、医師に作成を依頼したりする必要があります。
交通事故で後遺症が残り動きにくかったり、後遺症を抱えて日常生活に復帰し忙しかったりする中での申請準備を、負担に思う人もいるでしょう。
ただし、こうした書類の用意は弁護士に一任することも可能です。
被害者請求で必要になる書類は、『後遺障害申請は被害者請求と弁護士依頼が正解|必要書類も紹介』で詳しく解説しています。
デメリット(2)審査対策はしやすいが知識が必要
先述の通り、被害者請求では審査対策のために書類をブラッシュアップさせたり、追加書類を添付したりできます。
しかし、効果的な審査対策のためには、狙うべき後遺障害等級を判断してその認定基準を確認したり、過去の認定事例からポイントをつかんだりすることが重要です。
後遺障害認定についての知識がないまま、適切な審査対策をすることは難しいと言わざるを得ません。
後遺障害等級の認定基準は『【後遺障害等級表】症状別の等級や認定基準』で詳しく解説していますが、自身の後遺症に合った認定対策については弁護士に相談することがおすすめです。
おすすめは弁護士を立てて後遺障害認定を受けること
「弁護士を立てて被害者請求」がベスト
後遺障害認定では、弁護士を立てて被害者請求することがおすすめです。
弁護士には、必要書類の用意も認定対策も一任できます。被害者請求のデメリットを解消し、「的確な認定対策により適切な後遺障害認定を受けやすくなる」というメリットを最大化できるのです。
後遺障害認定についてはまず、弁護士に相談してみることがおすすめです。
相談だけでも目指すべき後遺障害等級やその等級の認定基準、認定対策のアドバイスを受けられる可能性があります。
アトム法律事務所では、電話・LINEにて無料相談を実施しています。
後遺障害慰謝料・逸失利益の増額もできる
後遺障害認定を受けると、後遺障害慰謝料・逸失利益がもらえます。
ただし、これらの金額は最終的には加害者側との示談交渉で決まります。加害者側の任意保険会社は過去の判例に沿った相場よりも低い金額を提示してくることが多いため、増額交渉がうまくいかなければ少ない金額しか得られません。
たとえばむちうちの場合、後遺障害12級または14級に認定される可能性がありますが、判例に沿った金額と加害者側の提示額の相場には次のような差があります。
判例に沿った相場* | 加害者側の提示額の相場** | |
---|---|---|
12級 | 290万円 | 94万円 |
14級 | 110万円 | 32万円 |
*弁護士基準(裁判基準)と呼ばれる基準に沿った相場。
**自賠責基準と呼ばれる、国の定める最低限の基準に沿った相場。加害者側の任意保険会社は自社独自の基準を用いるが、自賠責基準のものに近いことが多い。
加害者側の提示額と判例に沿った相場は大幅に離れていることが多いため、被害者自身の増額交渉で判例に沿った相場まで増やすことはほぼ不可能です。
しかし、示談交渉で弁護士を立てれば判例に沿った金額近くまで増額できる可能性があります。
十分な後遺障害慰謝料・逸失利益を得ることで、後遺障害認定のメリットを最大化できるのです。
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「自分の場合、後遺障害認定の見込みはあるのだろうか」「後遺障害認定の対策をしっかりして、メリットを最大化したい」という場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。
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ご依頼まで進んだ場合は、弁護士費用特約を利用することで弁護士費用を保険会社に負担してもらえます。
弁護士費用特約が使えない方であれば着手金が原則無料です。
もちろん無料相談のみのご利用も可能なので、お気軽にご連絡ください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了