後遺障害認定にデメリットはない!受けないデメリットや申請方法も解説
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後遺障害認定を受けても、私生活や仕事に影響するデメリットは原則ありません。
後遺障害認定は後遺障害関連の賠償請求をするため必要なので、後遺障害認定を受けない方がむしろデメリットが大きいと言えるでしょう。
この記事では、後遺障害認定にデメリットはないと言える理由や、後遺障害認定を受ける際の申請方法を解説しています。
後遺障害のデメリットに関するよくある勘違いについても丁寧に解説しているので、ご確認ください。
目次

後遺障害認定にデメリットはある?
交通事故にあい後遺症が残った場合、基本的に後遺障害認定を受けることにデメリットはありません。
むしろ、後遺障害認定を受けない方がデメリットがあるケースが多いです。この点について、詳しく確認していきましょう。
後遺障害認定にデメリットはない
後遺障害認定を受けることに、基本的にデメリットありません。
後遺障害認定を受けたからと言って、仕事や日常生活、保険関係でデメリットを被ることはありません。
ただし、デメリットとまでは言えないものの、後遺障害認定を受ける際には以下の点には注意すべきです。
- 後遺障害認定を受ける場合は治療を終了する必要がある
- 後遺障害認定の結果が出るまでは、示談交渉ができない
後遺障害認定されるための条件の1つに、「十分な治療を行なったがこれ以上の回復は難しいという判断(症状固定)を受け、治療を終了していること」があります。
治療を終了すると、それ以降の期間については原則として、治療費や入通院慰謝料、休業損害を加害者側に請求できません。治療終了のタイミングは慎重に見極めましょう。
また、後遺障害認定の結果が出るまでは示談交渉ができません。その分、示談成立や示談金の受け取りが遅くなるため、早くまとまったお金が必要な場合は被害者請求や自身の保険の活用などをご検討ください。
関連記事
自賠責保険への被害者請求とは?やり方やデメリット、すべきケースを解説
【注意】後遺障害認定を受けない方がデメリットが大きい
後遺障害認定を受けることにデメリットはなく、むしろ受けない方がデメリットが大きいケースが多いです。
後遺障害認定を受け、後遺障害等級を獲得しなければ、たとえ後遺症が残っていても後遺障害関連の損害賠償金はもらえないからです。
後遺障害関連の損害賠償金には、以下があります。
- 後遺障害慰謝料
後遺障害が残ったことによる精神的苦痛を補償するもの - 逸失利益
後遺障害により労働能力が下がることで減ってしまう、生涯収入を補償するもの
これらの金額は後遺障害等級をもとに算定されるため、後遺障害認定されていなければ請求できないのです。

後遺障害慰謝料や逸失利益は高額になりがちで、100万円を超えることも珍しくありません。
この点から、後遺障害認定を受けない方がデメリットが大きいと言えます。
ただし、後遺障害認定を受けても、審査の結果、後遺障害等級を獲得できなければ後遺障害慰謝料・逸失利益は原則としてもらえません。
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後遺障害認定のデメリットについてよくある勘違い
後遺障害認定にデメリットはないと言われても、本当に仕事や日常生活、保険などに支障はないのか不安な方も多いでしょう。
そこでここでは、後遺障害認定のデメリットに関してよくある以下の勘違いについて解説します。
- 後遺障害認定は保険加入や就職に影響する?
- 後遺障害認定されたら周りに知られる?
- 後遺障害認定で保険料は高くなる?
- 後遺障害認定で障がい者手帳を持つことになる?
後遺障害認定は保険加入や就職に影響する?
「後遺障害認定を受けること」自体が、保険の加入や就職に影響することはありません。
残念なことに、後遺症の影響により、一定程度就職先が限定されたり、保険加入時の告知義務に該当したりする可能性はあります。
しかし、それは後遺症そのものによる影響であり、「後遺障害認定を受けたか否か」によって変わるものではありません。
例えば就職先が限定されるような後遺症が残った場合、後遺障害認定を受けても受けなくても、その影響は発生するのです。
後遺障害認定はあくまでも「後遺障害関連の損害賠償金の請求可否・金額」を判断するためのものだとお考えください。
後遺障害認定されたら周りに知られる?
後遺障害認定されたことは、自分から言わない限り周りに知られることはありません。
後遺障害認定では、被害者と審査機関の間に加害者側の保険会社が入ります。
したがって、加害者側の保険会社には結果を知られてしまいますが、その他の場面で誰かに認定結果を伝える義務はなく、公的文書に結果が記録されることもありません。
治療を行った主治医や、交通事故の請求に関して相談や依頼を行った弁護士も後遺障害認定に関して知ることとなりますが、どちらも守秘義務を負っているため、誰かに伝わることはないでしょう。
後遺障害認定で保険料は高くなる?
後遺障害認定と保険料は関係ありません。
後遺障害認定は、あくまでも事故による障害の程度を認定するものであり、「後遺障害認定を受けたことがあるから保険料が上がる」といった規定はありません。
ただし、交通事故に遭って自身の保険を使えば、後遺障害認定に関係なく保険料が上がることはあります。
利用によって保険料が上がるものと上がらないものがあるので、自身の保険を使う場合は事前に確認しておきましょう。
後遺障害認定で障がい者手帳を持つことになる?
後遺障害認定を受けても、それによって障がい者手帳が交付されるわけではありません。
例えば交通事故で後遺障害1級〜6級の認定を受けた方は、障がい者手帳の交付対象となる場合があります。
しかし、実際に障がい者手帳の交付を受けるには、別途申請をしなければならないのです。
なお、障がい者手帳を持つと介護サービスや税金の優遇、割引サービスなどを受けられることもあります。
障害認定と障がい者手帳については、関連記事『後遺障害等級が認定されたら障害者手帳ももらえる?』にてくわしい解説をお読みください。
後遺障害認定は申請方法に注意!デメリットを確認しよう
ここまで解説してきた通り、後遺障害認定にはデメリットはありません。よって、交通事故で後遺症が残ったなら、基本的には後遺障害認定を受けましょう。
後遺障害認定を受ける際には2つの申請方法があります。
どちらを選ぶかは、各申請方法のデメリットから考えましょう。詳しく解説します。
後遺障害認定には2つの申請方法がある
後遺障害認定には、「被害者請求」と「事前認定」という2種類の申請方法があります。どちらの方法で申請するのか、被害者が選択可能です。
それぞれの概要は、以下のとおりです。
- 事前認定
加害者側の任意保険会社を介して、後遺障害認定を受ける方法 - 被害者請求
加害者側の自賠責保険会社を介して、後遺障害認定を受ける方法
それぞれのメリットとデメリットをまとめた表を見てみましょう。
事前認定と被害者請求のメリット・デメリット
方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
事前認定 | 申請準備の手間が少ない | 十分な審査対策ができない お金の受け取りは示談後 |
被害者請求 | 審査対策がしやすい 示談前にお金を受け取れる | 申請準備に手間がかかる 審査対策には知識が必要 |
それぞれの申請方法を詳しくみていきましょう。
(1)事前認定のデメリット
事前認定とは、加害者側の任意保険会社を介して後遺障害認定を受ける方法です。
後遺障害診断書を加害者側の任意保険会社に提出すれば、残りの必要書類は任意保険会社が用意し、審査機関に提出してくれます。

事前認定のデメリットは以下の2点です。
事前認定のデメリット
- 十分な審査対策ができない
- お金の受け取りは示談成立後
これらのデメリットについて詳しく解説します。
十分な審査対策ができない
事前認定では、加害者側の任意保険会社が後遺障害診断書以外の書類を用意してくれます。
この際、任意保険会社が、被害者が適切な認定を受けられるよう工夫してくれることはほぼありません。
必要最低限の書類を、必要最低限の質で提出するイメージです。
後遺障害認定は原則として書類審査なので、書類対策がしっかりできていないと適切な認定を受けられない可能性があります。
その結果、以下の不利益を被る可能性があるのです。
審査対策がしづらいことの不利益
- 本来ならもらえるはずの後遺障害慰謝料・逸失利益がもらえない
- 後遺障害認定にかけた時間や手間が無駄になる
とくに、見えない障害や自覚症状にかかわる障害は、しっかり対策をしないと後遺障害認定を受けられない・想定より低い等級認定を受けるといった可能性があります。
お金の受け取りは示談成立後
事前認定を受ける場合、後遺障害慰謝料や逸失利益は、その他の損害賠償金と同じように示談成立後に支払われます。
後遺障害認定の審査が長引いたり、その後の示談交渉に時間がかかったりすれば、なかなか損害賠償金を受け取れないのです。

ただし、損害賠償金の一部を早く受け取る方法もあります。
詳しくは『交通事故の慰謝料はいつもらえる?流れともらうまでの期間を早める方法』の記事をご覧ください。
とくに事前認定のデメリットが大きい人は?
少しでも早く自賠責の保険金を受け取りたい方、保険会社との争いにより示談交渉の長期化が予想されているという方は、事前認定のデメリットをより大きく感じてしまう恐れがあります。
事前認定よりも被害者請求の方が適しているでしょう。
交通事故の示談にかかる期間の目安を知りたい方や、保険会社と示談交渉で争点になるポイントを知りたい方は関連記事を参考にしてください。
(2)被害者請求のデメリット
被害者請求とは、加害者側の自賠責会社を介して後遺障害認定を受ける方法です。
申請者が全ての必要書類を用意し、加害者側の自賠責保険会社に提出すれば、そこから審査機関に書類が渡ります。

被害者請求で後遺障害認定の申請をすると、次のようなデメリットがあります。
被害者請求のデメリット
- 申請準備に手間がかかる
- 審査対策には知識が必要
これらについて詳しく見ていきましょう。
申請準備に手間がかかる
被害者請求で後遺障害認定を受けるには、必要書類を全て被害者本人が用意しなければなりません。
後遺障害認定の必要書類はさまざまで、複数の場所から取り寄せたり、医師に作成を依頼したりする必要があります。
交通事故で後遺症が残り動きにくかったり、後遺症を抱えて日常生活に復帰し忙しかったりする中での申請準備は簡単ではありません。
ただし、被害者請求なら書類の記載内容の確認・ブラッシュアップができますし、必要に応じて不備・不足のある部分について追加書類を添付できます。
後遺障害認定の成功率を高める工夫ができる点で、申請準備の手間は必ずしもデメリットとは言えません。
また、書類の用意は弁護士に任せることも可能です。
審査対策には知識が必要
被害者請求では審査対策のために書類をブラッシュアップさせたり、追加書類を添付したりできます。
しかし、審査対策といっても後遺障害認定の知識がないまま進めることは難しいでしょう。
狙うべき後遺障害等級を判断してその認定基準を確認したり、過去の認定事例を検討してポイントをつかんだりすることが大切です。
交通事故の後遺障害認定サポートに力を入れている弁護士にサポートを依頼してみましょう。弁護士であれば、被害者の代理人となって審査準備できることに加えて、ノウハウを生かした対応が可能です。
弁護士費用の負担は減らせる
被害者請求で弁護士のサポートを受けるには、弁護士費用がかかります。
しかし、弁護士費用は「弁護士費用特約」を使うことで、自身の保険会社に負担してもらえます。
以下の関連記事では、被害者請求を弁護士に任せるメリットや、弁護士費用を抑える方法を解説しています。ぜひご覧ください。
後遺障害認定のデメリットを避けるなら弁護士依頼と被害者請求
後遺障害認定にデメリットはないとわかっても、「認定されなかったらどうしよう」「その後の示談交渉はどうしよう」という不安はつきものです。
こうした不安を払拭するには、弁護士への依頼がおすすめです。その理由について解説します。
弁護士への依頼で後遺障害認定への不安を払拭
弁護士に依頼したうえで後遺障害認定を受ければ、以下の不安を払拭できます。
- 自分の後遺症では後遺障害認定されるかもわからないのに、申請する意味はあるのだろうか?
- 後遺障害認定を受けて、適切な結果を得られるだろうか?
- 後遺症が残り大変な状況で、知識もないのに後遺障害認定対策はできるのだろうか?
弁護士なら、後遺症の状態やこれまでの検査結果などから、認定されうる後遺障害等級を判断できます。
そして、その等級の認定基準や過去の類似事例から、適切な対策を立て、被害者に代わって申請準備を進めます。
後遺障害認定について不安のある方は、まずは無料相談にてお話をお聞かせください。

後遺障害慰謝料・逸失利益の増額も目指せる
後遺障害認定を受けると、後遺障害慰謝料・逸失利益の請求が可能となります。
ただし、加害者側の保険会社は本来もらえる金額よりも低い金額を提示してくることがほとんどで、増額交渉が必須です。
この際、弁護士を立てていれば、提示された金額をしっかり増額させ、適切な金額を得やすくなります。
このことについて、「なぜ加害者側は低い金額を提示してくるのか」「なぜ交渉に弁護士が必要なのか」に分けて解説します。
なぜ加害者側は低い金額を提示してくるのか
実は加害者側の保険会社は、「自賠責基準」や「任意保険基準」という基準に沿って慰謝料を計算し、提示してきます。
しかし、これらは計算結果が低額になるよう設定されており、過去の判例に基づく「弁護士基準」と比較すると、大きな差があるのです。
その差を示した表が、以下です。なお、任意保険基準は保険会社ごとに異なり非公開ですが、自賠責基準と同等とお考えください。
後遺障害慰謝料相場の比較(弁護士基準と自賠責基準)
等級 | 自賠責基準* | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級・要介護 | 1,650(1,600) | 2,800 |
2級・要介護 | 1,203(1,163) | 2,370 |
1級 | 1,150(1,100) | 2,800 |
2級 | 998(958) | 2,370 |
3級 | 861(829) | 1,990 |
4級 | 737(712) | 1,670 |
5級 | 618(599) | 1,400 |
6級 | 512(498) | 1,180 |
7級 | 419(409) | 1,000 |
8級 | 331(324) | 830 |
9級 | 249(245) | 690 |
10級 | 190(187) | 550 |
11級 | 136(135) | 420 |
12級 | 94(93) | 290 |
13級 | 57(57) | 180 |
14級 | 32(32) | 110 |
※単位:万円
なぜ交渉に弁護士が必要なのか
示談交渉を通して十分な増額交渉を成功させるには、弁護士の存在が必要不可欠です。
弁護士が示談交渉することで、「示談でまとまらないときには裁判もあり得る」という姿勢を伝えられます。
相手の任意保険会社は、裁判になると弁護士基準での支払い命令を受ける可能性があると考え、「それであれば示談前でも弁護士基準への増額を受け入れよう」という判断をする傾向にあるのです。
弁護士への無料電話・LINE相談はこちらから
「自分の場合、後遺障害認定の見込みはあるのだろうか」「後遺障害認定の対策をしっかりして、メリットを最大化したい」という場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。
アトム法律事務所では、電話・LINEにて無料相談を実施しています。
ご依頼まで進んだ場合は、弁護士費用特約を利用することで弁護士費用を保険会社に負担してもらえます。
弁護士費用特約が使えない方であれば着手金が原則無料です。
もちろん無料相談のみのご利用も可能なので、お気軽にご連絡ください。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了