交通事故で手のしびれが残った場合の後遺障害認定と慰謝料相場

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手のしびれ

交通事故で手のしびれが残る原因としては、刺激を伝える流れに異常が生じるためと考えられます。具体的には、末梢神経から脊髄を通じて脳へと刺激が伝わる経路に異常が生じてしまうためです。

つまり手にしびれが発生するパターンは、神経そのものが損傷を受けてしまったパターンと、その刺激を伝える経路が圧迫されているパターンの2つに分かれます。

この記事では、交通事故で手がしびれる原因と後遺障害認定、慰謝料の相場について解説しますので、ぜひ最後までお読みください。

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交通事故による手のしびれの原因

交通事故で生じる手のしびれの原因はさまざまです。有名な原因としてはむちうちがありますが、それ以外の原因で発症することもあります。

ここでは、交通事故による手のしびれの原因5つと、それぞれの原因における通院先を紹介します。

なお、交通事故のケガには個人差があるので、参考程度にご覧いただき、くわしい診断や治療は医師の指示に従ってください。

首のむちうちやヘルニア、脊髄損傷

首のむちうち(頸椎捻挫や外傷性頚部症候群)や椎間板ヘルニアによって、手のしびれが発生することがあります。

むちうちは、交通事故の外力により首を強く振られてしまい、首付近の筋肉や神経が損傷してしまう状態です。これにより、手の麻痺やしびれがあらわれることがあります。

椎間板ヘルニアや脊髄損傷で手のしびれが生じることがあるのは、刺激を伝える経路が損傷してしまうからです。

いずれの場合も、通院先は基本的に整形外科となります。

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胸郭出口症候群

胸郭出口症候群は、肩甲骨と鎖骨の間にある神経や鎖骨下動脈(腕神経叢)が圧迫される傷病です。これにより、腕を動かすと手のしびれや痛みが出ることがあります。

胸郭出口症候群は、むちうちをきっかけとして発症することもあります。

むちうちと同様、基本的には整形外科にて診察・治療を受けましょう。

正中神経麻痺

正中神経麻痺は、手首の正中神経が圧迫されて起こる障害です。親指・人差し指・中指にかけて曲げづらくなる、肘を固定して前腕を前に出し、手首を回転させ、てのひらを下に向ける運動(前腕回内運動)ができなくなるなど、様々な症状が表れます。

親指の付け根などが委縮してしまい、見た目がサルの手のようになり、スムーズに物を掴めない状態になるでしょう。

正中神経麻痺の原因となる代表的なケガは以下の通りです。

  • 上腕骨顆上骨折
  • 腕の開放創や挫創
  • その他の骨折

正中神経麻痺が疑われる場合も、整形外科を受診しましょう。

橈骨神経麻痺

橈骨(とうこつ)神経麻痺は、手首の橈骨神経が圧迫されて起こる障害です。手の甲のほか、親指と人差し指の間がひどくしびれます。橈骨神経の損傷部位によって下垂手あるいは下垂指という変形を起こします。

橈骨神経麻痺の原因となる代表的なケガは以下の通りです。

  • 上腕骨骨幹部骨折
  • 上腕骨顆上骨折
  • モンテジア骨折

橈骨神経麻痺の原因となる上腕骨顆上骨折、モンテジア骨折などは、腕を骨折することで発生します。

橈骨神経麻痺における受診先も、基本的には整形外科です。

尺骨神経麻痺

尺骨神経麻痺は、手首の尺骨神経が圧迫されて起こる障害です。手の小指や薬指がしびれたり、伸ばしづらくなったりします。また、母指内転筋や小指外転筋など一部の筋肉が脱力し、筋委縮を起こしてしまいます。その結果、鷲の手のような形状になるのです。

尺骨神経麻痺の発症位置が肘であれば肘部管症候群、手首で発症すればギヨン管症候群といいます。

尺骨神経麻痺の原因となる代表的なケガは以下の通りです。

  • 肘の関節付近に切り傷を負った
  • 上腕骨顆上骨折、上腕骨内上顆骨折
  • 変形性肘関節症

尺骨神経麻痺が疑われる場合も、まずは整形外科を受診してみてましょう。

交通事故で手のしびれを感じるときの対処法

手のしびれの原因はさまざまですが、多くの場合受診先は整形外科となります。交通事故後に少しでも手のしびれを感じるなら、速やかに整形外科で診てもらいましょう。

交通事故によるけがの症状は、事故から数日経って出てくることもあります。
「病院へ行くほどのしびれではないから様子を見よう」「交通事故とは関係ないかもしれない」と思っている間に、どんどん悪化する可能性も否定できません。

また、初診が遅れるほど交通事故と手のしびれとの関連性を証明しにくくなり、治療費や慰謝料の請求などに支障が出る可能性もあります。

症状改善のためにも今後の賠償請求のためにも、早く病院へ行くことが重要です。

交通事故の治療で病院へ行くときの治療費の支払い方については、『交通事故被害者の治療費は誰が支払う?立て替えは健康保険を使う!』をご覧ください。

手のしびれの後遺障害等級は?認定基準を解説

交通事故後に治療やリハビリを続けても、手のしびれが残ってしまうことがあります。

こうした手のしびれの後遺症に対して「後遺障害等級」の認定を受ければ、等級に応じた「後遺障害慰謝料」を請求できるようになります。

手のしびれで認定されうる後遺障害等級は、12級13号と14級9号です。それぞれの認定基準について解説します。

12級13号

手のしびれが「局部に頑固な神経症状を残すもの」と認められると、後遺障害12級13号に認定されます。この場合、過去の判例に基づく後遺障害慰謝料の相場は290万円です。

「局部に頑固な神経症状を残すもの」とは、レントゲン写真やMRI画像など、客観的・医学的な所見から、手のしびれが後遺障害として残っていることが明らかな状態を指します。

ただし、手のしびれのような神経症状は、客観的・医学的な所見での証明が難しく、自覚症状にとどまることも多いです。

こうした場合は、後遺障害14級9号の獲得を目指すことになるでしょう。

骨折をしていて「動かしづらさ」や「変形」といった後遺症も残っており、しびれとは別に後遺障害認定を受けた場合には、後遺障害等級は併合されて繰り上がります。

こうした後遺障害等級のルールは少々複雑なので、後遺障害申請前あるいは後遺障害等級の結果通知を受けた場合には弁護士への相談が望ましいです。

後遺障害等級の併合ルールについて詳しく知りたい方は、関連記事『後遺障害等級の認定ルール「併合・相当・加重」後遺症が複数残った時の慰謝料は?』をお読みください。

14級9号

後遺障害14級9号は、「局部に神経症状を残すもの」と認められると認定される等級です。過去の判例に基づく後遺障害慰謝料の相場は、110万円です。

これは、「客観的・医学的所見は足りないが、その他の検査結果などから神経症状がが残っていると考えるのが妥当である」と判断される状態を指します。

つまり、レントゲンやMRI画像などの明らかな所見がなくても、神経学的検査など結果から手のしびれが残っていると判断できる場合は、14級9号に認定される可能性があります。

神経学的検査とは、患部をたたいたり動かしたりして刺激を与えたときに、どのような反応が見られるかを確認するテストです。

12級13号の認定につながるほどの客観的・医学的所見とは判断されにくいですが、14級9号に認定されるための所見としては採用されることがあります。

ほかにも、交通事故の態様や規模、事故直後からこれまでの治療の経過、神経症状の一貫性などを総合的に審査されるでしょう。

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手のしびれの後遺障害認定は難しい?ポイントを解説

しびれや痛みといった神経症状は、レントゲン写真やMRI画像といったわかりやすい証拠に表れないことも多いため、後遺障害認定が難しい場合があります。

では、手のしびれで後遺障害認定を受けるにはどうすればよいのか、ポイントとして以下の4点を解説します。

  • 初診から手のしびれがあると医師に伝える
  • 手のしびれの残存・程度を示す検査を受ける
  • 日常生活への影響も含めて自覚症状を主張する
  • 被害者請求で後遺障害認定を受ける

(1)初診から手のしびれがあると医師に伝える

手のしびれで後遺障害認定を受けるためには、初診の段階から医師に手のしびれがあることを伝えましょう。

後遺障害認定の審査では、症状の一貫性も見られます。

例えば交通事故による別のケガで通院していて、途中から手のしびれを医師に伝えた場合、審査では「手のしびれは初診から一貫してあったものではないから、事故後の日常生活の中に原因があるのではないか」と判断されるおそれがあるのです。

「軽度のしびれだからもう少しひどくなったら医師に言おう」と考えるのではなく、初診の段階から手のしびれがあることを明確に伝えておきましょう。

(2)手のしびれの残存・程度を示す検査を受ける

手のしびれを示すレントゲン写真やMRI画像がない場合には、神経学的検査を受けましょう。

神経学的検査は、患部に刺激を与えてどのような反応が出るかを確かめるものです。神経学的検査の結果から「手のしびれが残存していると考えるのが妥当」と判断されれば、後遺障害14級9号に認定される可能性があります。

神経学的検査には、スパーリングテストやジャクソンテストなどがあります。具体的な症状によっても受けるべき検査は異なるので、医師や後遺障害認定に詳しい弁護士にご相談ください。

(3)日常生活への影響も含めて自覚症状を主張する

後遺障害認定で提出する後遺障害慰謝料には、自覚症状を書く欄があります。

少しでも自覚症状の信頼性を高め、症状の程度が伝わるよう、単に自分が感じている症状を書くだけでなく、その症状によりどのような影響が日常生活に出ているのかまで書くようにしましょう。

例えば「手のしびれのせいでこういう作業がでできなくなった」などと書くとよいでしょう。

ただし、実際に後遺障害診断書を書くのは医師です。医師に自覚症状と、それによる日常生活への影響をしっかり伝えておきましょう。

必須の書類ではありませんが、追加書類として「日常生活報告書」や「医師の意見書」を添付することもおすすめです。

(4)被害者請求で後遺障害認定を受ける

後遺障害認定を受ける際には、「被害者請求」という方法を選ぶことも重要です。

被害者請求とは、必要書類をすべて被害者側で用意し、提出する申請方法です。すべての書類に関与できるため、内容のチェック・ブラッシュアップができるほか、日常生活報告書や医師の意見書などの追加書類も添付できます。

これは、手のしびれのように「後遺障害の残存・程度の証明が難しい症状」で後遺障害認定を受ける場合に、非常に重要です。

被害者請求の流れ

後遺障害認定の申請方法には「事前認定」もありますが、事前認定では書類のほとんどを加害者側の任意保険会社に用意してもらいます。

被害者は書類準備にほぼ関われないため、必要最低限の種類・質の書類しか提出できないことが多いです。それだけでは手のしびれについて審査機関に十分伝わらず、適切な後遺障害認定が難しくなるでしょう。

事前認定の流れ

交通事故で手のしびれが残った場合の慰謝料

交通事故による手のしびれは慰謝料の対象となります。具体的には、入通院慰謝料のみ請求できる場合と、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の両方を請求できる場合に分かれるでしょう。

それぞれについて解説します。

手のしびれに対する入通院慰謝料の相場

入通院慰謝料とは、交通事故で負ったケガの痛みや、入院や通院などの治療を強いられた精神的苦痛を緩和するためのお金です。

弁護士が入通院慰謝料を計算するときには、次のような「慰謝料算定表」を用います。慰謝料算定表は2種類あり、重傷用と軽傷用とを使いわけなくてはなりません。

どちらの表を使うかは手のしびれの原因によって異なり、たとえばむちうちが原因なら、軽傷用の表を用いるでしょう。

詳細は弁護士におたずねください。

軽傷用の表

軽症・むちうちの慰謝料算定表
軽症・むちうちの慰謝料算定表

重傷用の表

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

両方の表に共通しているのは、横列が入院月数、縦列が通院月数を示している点です。それぞれの入院・通院月数の交差する部分が入通院慰謝料相場です。

なお、慰謝料算定表の金額は裁判所でも認められた正当なものといえます。それにもかかわらず、相手の保険会社はこの慰謝料算定表の結果を下回る金額を提案してくるでしょう。

そのため、相手の保険会社が「この金額が上限です」「皆さんこの金額です」などと言われても、いったん保留にして、弁護士に増額の余地を確認してみてください。

手のしびれに対する後遺障害慰謝料の相場

後遺障害慰謝料は、後遺障害等級認定を受けられた場合に、入通院慰謝料とは別に請求可能です。手のしびれに対する後遺障害慰謝料は、後遺障害12級13号ならば290万円、後遺障害14級9号ならば110万円が相場といえます。

後遺障害慰謝料
12級13号290万円
14級9号110万円

ただし、相手の任意保険会社は通常、上記の金額に到底及ばない、低額な慰謝料しか提示してきません。相手の任意保険会社に対して増額交渉をしていかねば、上記の金額を手にすることはできないのです。

この際、示談交渉において弁護士を立てることで、相手の保険会社も態度を変えやすく、こちらの増額希望を受け入れてくれる可能性が高まります。

示談交渉で弁護士を立てると増額交渉が通りやすい

交通事故で手のしびれが生じたら弁護士に相談

交通事故で手のしびれが生じたら、弁護士にご相談ください。

手のしびれでの後遺障害認定には難しい部分があります。また、後遺障害の有無に関係なく、示談交渉では加害者側から低額な金額を提示されるため、増額交渉が必要になるでしょう。

後遺障害認定や増額交渉は、受け取れる損害賠償金に大きく影響する重要な要素です。だからこそ、後悔のないよう弁護士を立てることもご検討ください。

ここからは、具体的に弁護士からどのようなサポートを受けられるのか解説します。弁護士費用の負担を大きく下げる方法の紹介や、無料相談のご案内もいたします。

後遺障害認定や示談交渉を任せられる

弁護士は、交通事故の被害者に対して次のようなサポートが可能です。

  • 相手からの連絡を一本化して被害者に連絡がいかないようにする
  • 後遺障害認定の申請手続きをサポートできる
  • 相手が提示する金額の妥当性を見極めることができる
  • 粘り強く増額交渉を続ける

弁護士なら、上記のように後遺障害認定や示談交渉はもちろん、その他のさまざまな場面においてサポートが可能です。

交通事故後の各種対応をほぼすべて弁護士に任せられるため、安心して治療に集中したり、日常生活や仕事に復帰したりできるでしょう。

どのような被害者なら弁護士の必要度が高いのか、弁護士に頼むべき理由を解説した記事『交通事故の解決は弁護士に頼むべき?大げさではない理由|軽微な事故でも必見』もあわせてご覧ください。

弁護士事務所によっては、交通事故の被害者に向けた無料法律相談を実施している場合があります。一度問い合わせてみると良いでしょう。

弁護士費用の負担軽減方法と、無料相談のご案内

アトム法律事務所では、無料法律相談を実施しています。弁護士に依頼したいけれど費用が気になるという場合、まずは無料の法律相談からはじめてみましょう。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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