交通事故で車椅子生活に…請求できる費用の範囲と慰謝料相場を解説
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交通事故被害者の方の中には、神経系統に障害を負ってしまったり、下半身の骨折後の予後が悪く歩行障害が残ってしまったりして、車椅子生活を余儀なくされる方もいます。
車椅子生活になると、将来的なものも含めさまざまな費用がかかり、日常生活や仕事にも支障が出たりするため、お金の問題で不安や心配が尽きないことかと思います。
この記事は、交通事故で車椅子生活になった方が請求できる費用の範囲をはじめ、歩けなくなるほどの後遺症を負った方への慰謝料や逸失利益といった損害賠償金全体の算定の仕組みを解説する記事です。
適正な賠償金を受け取るために必要な後遺障害認定も説明していますので、お役立てください。
目次

交通事故被害者が請求できる損害賠償金の内容
交通事故被害者が加害者側に請求できる損害賠償金の内容は、大きく「積極損害」「消極損害」「慰謝料」の3つに分けられます。
それぞれの損害の内訳は以下の通りです。
- 積極損害:事故により余儀なくされた支出を補償するお金
- 車椅子購入費用
- 車椅子買替費用
- 自宅改造費用(住宅リフォーム費用)
- 車両購入費用(改造費用)
- 介護費用
- 治療関係費・通院交通費など
- 消極損害:事故による将来分を含めた減収を補償するお金
- 休業損害
- 逸失利益
- 慰謝料:事故による精神的苦痛・不安を補償するお金
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
特に、積極損害として代表的な費目は、治療関係費や通院交通費などがあげられますが、車椅子生活を余儀なくされた場合、車椅子の購入費用や買替費用、自宅改造費用などさまざまな損害を請求していく必要があります。
それぞれどのような損害なのか一つずつ見ていきましょう。
車椅子購入費用
交通事故における積極損害は支払ったお金を全額請求できるとは限らず、必要性と相当性が認められる範囲でしか請求は認められません。
そのため、車椅子購入費用の実費相当額の請求が認められるかは、以下の点がポイントとなります。
車椅子購入費用請求のポイント
- 受傷の部位、程度、後遺障害の状態等を考慮して、車椅子が必要であること
- 購入する車椅子の品質や機能が必要かつ相当な範囲内であること
後遺障害の状態等から希望する車椅子等の品質や機能が必要とは認められず、価格が相当額を超えると判断される場合には、相当額を超える額については請求が認められません。
価格の相当性は、後遺障害の状態との関係で、どのような品質や機能が必要なのかで判断されるため、一概には言えませんが、これまでの判例では、車椅子購入費用として1台約50万円程度までの範囲で請求が認められている傾向にあります。
ただし、本記事内「車椅子の費用に関する裁判例」で紹介している判例からも、認められうる金額は様々であることがわかります。
一方で、必要性と相当性が認められれば、車椅子購入費用1台の範囲に請求は制限されず、実際に屋外用と室内用両方の車椅子購入費用の請求が認められているケースもあります。
必要となる車椅子の機能が争われた事案
被告側の運転ミスにより正面衝突事故が起こり、まだ年少の女の子が車椅子が必要なほど大きな怪我を負いました。
この裁判で、事故の相手方は「通常の車椅子で自走できるため、電動車椅子(アシスト型)の必要性がない」と主張したのです。
裁判所の判断
本件事故により両下肢完全麻痺等の重大な後遺障害を残した原告X1において、自走式車椅子による行動が可能な範囲にその活動が制限される謂われはなく、電動車椅子(アシスト型)が不必要である旨をいう被告の主張も採用できない。
※大阪地方裁判所 令和2年(ワ)第5257号 損害賠償請求事件 令和4年7月26日の判例より一部抜粋
このように車椅子の機能一つとっても争点となりうるのです。
【コラム】義足購入費用について
交通事故で下肢を切断することになっても、切断位置によっては、義足を用いることにより独歩が可能となる場合があります。
その場合は、車椅子購入費用ではなく義足購入費用を装具購入費として請求することができます。
ただし、車椅子購入費用と同様、必要性・相当性が認められる範囲でしか請求は認められないのが注意点となります。
車椅子買替費用
事故の怪我により、生涯にわたり車椅子が必要だと認められた場合、車椅子には耐用年数があるため、将来の車椅子買替費用についても、必要性・相当性が認められる範囲で請求が可能です。
車椅子買替費用の計算方法
具体的に請求できる車椅子買替費用の金額は以下の計算方法で算出します。
計算方法
- 症状固定時の年齢から平均余命までの期間を算出
- 車椅子の耐用年数から1の期間内での車椅子の買い替え回数を計算
- 将来の買替時期(車椅子の耐用年数経過)別に発生する利息を差し引く(中間利息控除)
1の平均余命は厚生労働省がまとめる簡易生命表にて確認可能です。参考に、令和5年の平均余命を例示します。
平均余命(令和5年)
年齢 | 男 | 女 |
---|---|---|
0歳 | 81.09 | 87.14 |
10歳 | 71.33 | 77.37 |
20歳 | 61.45 | 67.48 |
30歳 | 51.72 | 57.65 |
40歳 | 42.06 | 47.85 |
50歳 | 32.60 | 38.23 |
60歳 | 23.68 | 28.91 |
※厚生労働省「簡易生命表」より抜粋して作成
2の車椅子の耐用年数はメーカーごとにさまざまですが、裁判例では耐用年数を5年~7年程度と判断する傾向にあります。
3の中間利息控除にはライプニッツ係数という数値が用いられます。
計算例
たとえば、60歳男性の交通事故被害者が、5年ごとに買替が必要な50万円の車椅子が必要と判断された場合、平均余命は23.68年なので、23.68÷5=4.736となるため、4回分の買替費用が請求できます。
そして、各購入時期ごとの中間利息を控除して、140万2350円を車椅子買替費用として請求できます。(計算式:50万円×(0.8626(5年目)+0.744(10年目)+0.6418(15年目)+0.5536(20年目))
損益相殺について
なお、車椅子購入(買替)には公的補助を受けられることが多いため、加害者側の保険会社から車椅子買替費用から公的補助分を控除(損益相殺)すべきという旨の主張がされることがあります。
しかし、被害者の車椅子買替費用の損益相殺が争われた福岡地裁平成25年7月4日判決では「社会情勢、予算状況等により、将来も同様な公共扶助を確定的に受けられるとは認められない」として損益相殺を否定しています。
自宅改造費用(住宅リフォーム費用)
住宅内を車椅子通行できるようバリアフリーに改装したり、車椅子を2階に運ぶためエレベーターを設置したりなど、車椅子生活を余儀なくされたことによる自宅改造費用も必要性・相当性が認められる範囲で加害者側に請求可能です。
改造設置した器具や設備のうち耐用年数が明らかなものは、車椅子同様、将来の買替費用も併せて請求することも検討するのが良いでしょう。
注意点として、加害者に交通事故の損害賠償として請求できるのは、あくまで被害者の不便を解消し、生活を補助するという目的の範囲内の改造費用に限られることが挙げられます。
そのため、設置したエレベーターを家族や同居人も使用するような場合、家族や同居人の利益にもなる部分は損害として認められません。
なお、自宅の改造ではなく、転居を余儀なくされた場合にも、転居に必要となった費用を請求することができます。
車両購入費用(改造費用)
車椅子生活を余儀なくされたことにより、介護用自動車を購入したり、車椅子を車両に搬入できるようリフトを設置する改造をしたりしたことによる費用も必要性・相当性が認められる範囲で加害者に請求することができます。
自宅改造費用と同様、請求できるのは、あくまで被害者の不便を解消し、生活を補助するという目的の範囲内に限られるため、改造費用にカーナビやドライブレコーダーなどの設置費用が含まれている場合には、その部分は認められない(減額される)可能性が高いです。
介護費用
車椅子生活では、多くの場合、将来にわたって介護が必要となります。医師の指示や症状の程度によって、必要があると判断されたときには介護費用の請求が可能です。
介護費用の目安は以下の通りです。
介護費用の目安
- 職業付添人:全額
- 近親者介護:1人8,000円
被害者が必要な介護のレベルだけでなく、職業付添人の人数、職業付添人と近親者介護の併用など家庭の事情に合わせた請求が認められます。
関連記事『交通事故で介護費用が請求できる2ケース|計算方法と裁判例から金額もわかる』では裁判例を交えて認められうる介護費用の詳細を解説しています。
弁護士に交渉を任せることもおすすめ
車椅子関連の費用請求に関する相手の任意保険会社との示談交渉は、損害賠償額が高額であるほどシビアになってきます。
これまで認められた判例を参考にしながら慎重に交渉を進めていくためには、交通事故の損害賠償にくわしい弁護士のノウハウが欠かせません。
アトム法律事務所では年中無休で相談予約を受け付けています。
車椅子が必要になった方が外出されるのは大変な困難でしょう。無料相談は電話・LINEでおこなっておりますので、ご自宅からでもご利用いただけます。

治療関係費・通院交通費など
交通事故では、怪我の治療費について、治癒または症状固定までが賠償の対象として認められます。また、治療費の他にも、手術費や薬代、リハビリ代など治療関係費として請求が可能です。
さらに、通院に際して要した通院交通費に関しても請求できますので、漏れがないよう算定する必要があります。
休業損害
休業損害とは、交通事故の怪我の治療や療養のために仕事を休んだことで減ってしまった収入の補償のことをいいます。
休業損害の計算方法は、「1日当たりの基礎収入×休業日数」です。
休業損害は、会社員や自営業者のように現実の収入がない専業主婦(夫)なども請求可能です。
逸失利益
逸失利益とは、事故がなければ得られたはずの将来の収入を補償するものであり、後遺障害等級が認定された場合にのみ請求できる費目です。
逸失利益の計算方法は以下のとおりです。
逸失利益の計算方法
逸失利益=年収×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

逸失利益の計算式に用いられる労働能力喪失率は、後遺障害等級によっておおよその目安があります。
等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
1 | 100% |
2 | 100% |
3 | 100% |
4 | 92% |
5 | 79% |
6 | 67% |
7 | 56% |
8 | 45% |
9 | 35% |
10 | 27% |
11 | 20% |
12 | 14% |
13 | 9% |
14 | 5% |
車椅子生活となってしまった場合には、重い後遺障害等級認定が予想され、数千万円規模の高額な後遺障害逸失利益が見込まれます。
事故で歩けなくなったり、車椅子が必要になったりすると、仕事への影響は非常に大きいものです。後遺障害等級認定を受け、逸失利益についてもしっかり請求していきましょう。
逸失利益の計算方法については、関連記事でくわしく解説しています。
入通院慰謝料
交通事故の治療やリハビリ期間に負ったつらさや痛みなどの精神的苦痛に対しては、入通院慰謝料の請求が可能です。
入通院慰謝料は治療期間に応じて算定し、治療期間が長くなるほど入通院慰謝料の金額も原則高額になります。
具体的には、以下の入通院慰謝料算定表により、入院と通院月数の交わる部分を入通院慰謝料相場として計算していきます。

たとえば、入院3ヶ月・通院5ヶ月となった場合には、入通院慰謝料として204万円が相場となります。
治療期間のなかには医師の指示を受けて自宅で患部を固定したり、歩けなくなってしまった状態を元に戻すためにリハビリに励んだりした期間も含むものとされています。
通院期間と入通院慰謝料からおおよその相場を割り出すことができますので、気になる方は関連記事をお読みください。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、交通事故の怪我(傷害)が完治せず、身体に後遺症が残ったことによる精神的苦痛に対する補償であり、後遺障害等級が認定された場合にのみ請求できる費目です。
歩けなくなって車椅子が必要になったときの後遺障害慰謝料の相場は後遺障害14級で110万円、後遺障害1級で2,800万円となります。
後遺障害慰謝料の相場
等級 | 慰謝料の目安 |
---|---|
1級・要介護 | 2,800万円 |
2級・要介護 | 2,370万円 |
1級 | 2,800万円 |
2級 | 2,370万円 |
3級 | 1,990万円 |
4級 | 1,670万円 |
5級 | 1,400万円 |
6級 | 1,180万円 |
7級 | 1,000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
歩けなくなって車椅子が必要になるような怪我としては、脳損傷(脳挫傷やびまん性軸索損傷など)や脊髄損傷を原因とする麻痺、高次脳機能障害、両足骨折による運動障害や歩行障害が考えられます。
様々な診断名が考えられますが、後遺障害慰謝料の金額は「後遺障害等級」によっておおよその相場があるのです。
【自動計算可能】慰謝料計算機で見通しを立てよう
入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益は下記の慰謝料計算機を使うと自動で計算できます。
交通事故の過失割合を考慮しない目安額となりますが、簡単な情報入力のみで利用いただけますので、おおよその見通しを立てたい方におすすめの計算ツールです。
車椅子の費用に関する裁判例
車椅子に関する費用について、加害者側と被害者側とで必要性や相当性の認識が食い違い、裁判にまで発展する事案もあります。
脊髄損傷の被害者の車椅子費用
交通事故で脊髄損傷を負った被害者(19歳男性)は、後遺障害1級認定を受けました。
脊髄損傷
裁判では、屋内用の車椅子(1台34万円ほど)、屋外リハビリテーション用の車椅子(1台31万円ほど)を認め、5年に1回の買い替えが必要であるとしました。介護ベッド代の請求と併せて、合計約454万円を認めたのです(さいたま地判平16.1.14)。
両下肢完全麻痺の被害者の車椅子費用
交通事故による胸髄損傷の影響で、両下肢完全麻痺となった被害者(6歳男性)は、後遺障害1級の認定を受けました。
両下肢完全麻痺
裁判では、屋外用の車椅子(1台42万円ほど)、屋内用の座位保持用車椅子(1台84万円ほど)を認め、5年に1回の買い替えが必要だとしました。リクライニングベッド、マットレス、学校生活用の起立保持具についても認定しています(福岡地判平25.7.4)。
左下肢のCRPS・神経症状の被害者の車椅子費用
交通事故で左下肢のCRPS(複合性局所疼痛症候群)や神経症状が残った被害者(48歳男性)は、併合6級の認定を受けました。
左下肢のCRPS・神経症状
裁判では、生涯にわたり車椅子による生活をよぎなくされたとして、平均余命の35年間のうち、車椅子本体42万円は6年に1回、タイヤの両輪は3年に1回、着座用クッションは毎年の買い替えが必要だと認めました(神戸地判令3.6.25)。
車椅子が必要なほど歩けなくなった場合の後遺障害等級は?
歩けなくなったことで認定される後遺障害等級
歩けなくなったことで認定される後遺障害等級は1級から14級までさまざまです。ただし、生活において車椅子が必要になるほどの後遺障害は特に重いものが予想されます。
歩行障害の主な後遺障害等級と認定基準
等級 | 認定の基準 |
---|---|
1級5号 | 両下肢をひざ関節以上で失つたもの |
1級6号 | 両下肢の用を全廃したもの |
2級4号 | 両下肢を足関節以上で失つたもの |
4級5号 | 一下肢をひざ関節以上で失つたもの |
4級7号 | 両足をリスフラン関節以上で失つたもの |
5級5号 | 一下肢を足関節以上で失つたもの |
5級7号 | 一下肢の用を全廃したもの |
5級8号 | 両足の足指の全部を失つたもの |
6級7号 | 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの |
7級8号 | 一足をリスフラン関節以上で失つたもの |
7級10号 | 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
7級11号 | 両足の足指の全部の用を廃したもの |
8級5号 | 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの |
8級7号 | 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
8級9号 | 一下肢に偽関節を残すもの |
8級10号 | 一足の足指の全部を失つたもの |
9級14号 | 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの |
9級15号 | 一足の足指の全部の用を廃したもの |
10級8号 | 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの |
10級9号 | 一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの |
10級11号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
11級9号 | 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの |
12級7号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの |
12級11号 | 一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの |
12級12号 | 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの |
13級8号 | 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの |
13級9号 | 一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失つたもの |
13級10号 | 一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの |
14級8号 | 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの |
交通事故後に歩けなくなったり、車椅子が必要になったりした方は後遺障害等級認定を受けるべきと言えます。
ただし認定を受けられれば良いというわけではありません。後遺障害等級は損害賠償金額に直結するため、適切な等級認定を受けることが大切です。
以下の関連記事では、麻痺や脊髄損傷に関する後遺障害等級についてくわしく解説しています。
後遺障害等級認定の流れ
後遺障害等級認定の流れは一般的に次のように進行します。
症状固定のタイミングで医師に後遺障害診断書の作成を依頼
後遺障害等級認定の準備を開始します。
必要書類を相手の保険会社に提出
相手の自賠責保険へ直接提出するか、相手の任意保険会社に任せるかで提出先が違います。
損害保険料率算出機構が審査
原則書面審査がおこなわれます。服を着ていても分かるところに傷があれば面談が設けられることがあります。
遺障害等級認定の通知がなされる
後遺障害等級認定の審査結果が通知されます。
被害者請求であれば保険金を受け取る
後遺障害等級認定の結果に納得がいく場合には、任意保険会社との示談を始めます。
後遺障害等級認定の申請方法は大きく2つある
後遺障害認定の申請手続きには、相手の任意保険会社に手続きのほとんどを任せる事前認定という方法と、被害者自らが主体的に手続きを進める被害者請求の2つの方法があります。
歩けなくなるほどの重大な後遺障害については適切な等級認定を受けることが大切ですが、少しでも適切な等級認定を受けるためには、一般的には被害者請求が適しています。
事前認定と被害者請求の両者の違いを表にまとめると以下の通りです。
事前認定と被害者請求
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
主な申請準備者 | 相手の任意保険 | 被害者自身 |
申請書の提出先 | 相手の任意保険 | 相手の自賠責保険 |
保険金受取の時期 | 示談成立後 | 等級認定しだい |
申請書類の工夫 | ほぼできない | できる |
もっとも、足を切断してしまったというケースのように目に見える症状であるときには、事前認定でも十分な場合もあります。
ただし、どちらの後遺障害認定申請方法であっても、最終的には相手方の任意保険会社と交渉して金額を確定させることは同じです。
そのため、いずれくる相手保険との示談交渉に向けて早めに弁護士に相談しておくことは非常に重要といえます。

後遺障害とは何か、認定の仕組みについて知りたい方は関連記事をお読みください。
事故で車椅子生活を余儀なくされた場合のよくある質問
Q1.相手の保険会社が提示してくれた金額は妥当?
相手方の任意保険会社が提示してくる金額は、多くのケースで不十分なものが多いです。なぜなら、慰謝料の算定に用いられる基準が3つあり、保険会社があつかう基準で算定しても低くなってしまうためです。

相手方の任意保険会社は自賠責基準(国が定める最低水準の補償額)や任意保険会社独自の基準で計算して、慰謝料を提示してきます。
しかし交通事故の損害賠償を裁判所であつかうときには、弁護士基準(裁判基準)での請求が認められており、保険会社のあつかう基準よりも2~3倍金額が高くなることも多いのです。
相手方の任意保険会社が提示してくる金額は、一見すると日常生活でなかなか目にしない高額に見えることもあるでしょう。
しかし、その金額をまず疑ってみて、交通事故の損害賠償にくわしい弁護士に算定しなおしてもらうことが大切です。
Q2.子供が車椅子で通学するために親が付き添ったことへの補償は?
子どもの年齢・怪我の程度や医師の判断により母親の付き添いが必要だと認められた場合には、母親の付き添い費用が認められます。
判例でも、退院後に車椅子で登校した61日間につき、母親の通学付き添い費日額1,000円、合計6万円を認めたものがあります(東京高判平26.12.24)。
Q3.治療中に車椅子生活が続いたことは慰謝料増額の理由になる?
治療中の車椅子生活は、被害者の精神的・肉体的苦痛を増大させる要因となるため、慰謝料増額の根拠になる場合があります。
ただし相手の任意保険会社が積極的に多くの慰謝料を提示してくれるとは限りません。
被害者が受けた精神的苦痛が車椅子によって増大させられたことを、具体的な事例とともに伝えて交渉していきましょう。
交通事故後の車椅子生活や歩行障害が残った方は弁護士に相談
交通事故の損害賠償では、自分で示談交渉をすることもできますが、弁護士に示談交渉を任せることで賠償額が大きく変わります。同じ交通事故であっても、弁護士に交渉を任せること自体が増額のカギとなるのです。
また、金額面だけではなく、精神的な面でも弁護士という法律の専門家を味方にすることは大きな変化をもたらすでしょう。
弁護士に交渉を任せてしまえば、相手方の任意保険会社との面倒な交渉の電話に出る必要もなく、少しでも穏やかな日常を送ることができます。
弁護士費用特約も確認してください
交通事故の解決を弁護士に任せると、法律相談料、着手金、報酬金が発生します。弁護士に依頼するデメリットとして心配する方も多いです。
ただし、弁護士費用は、弁護士費用特約を利用することで最小限におさえることが可能です。交通事故の賠償額が大きい場合には弁護士費用特約を活用することで、自己負担を大きく軽減できます。
保険の約款次第にはなりますが、多くの弁護士費用特約では、1つの交通事故に対して弁護士費用300万円、法律相談料10万円までを補償するものが多いです。

弁護士費用がいくらになるのかは、弁護士に直接問い合わせてみてください。そうすれば、弁護士に依頼する場合と依頼しない場合とで、被害者が手にする賠償金の見通しを立てることが可能です。
「費用のことは何となく聞きづらい」と遠慮する必要はありません。弁護士もできるだけわかりやすく費用を説明しますので、今後の生活のためにも少しでも有利な結果を目指していきましょう。
アトム法律事務所の無料相談
アトム法律事務所では、交通事故の被害者からの相談を無料で行っています。法律相談では、車椅子費用のことにとどまらず、慰謝料や逸失利益の見通し、過失割合の相談まで広く受付中です。
相談のご予約は24時間365日受け付けておりますので、まずはお気軽にご連絡ください。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了